社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



新型コロナウイルス感染症に関する障害者雇用納付金等の申告申請のQ&A

新型コロナウイルス感染症に関する障害者雇用納付金等の申告申請のQ&A

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構により、新型コロナウイルス感染症に関連した障害者雇用納付金等の申告申請のQ&Aが公表されています。

https://www.jeed.go.jp/disability/om5ru80000002u8f-att/q2k4vk000003oqee.pdf

制度の詳細
https://www.jeed.go.jp/disability/koyounohu/index.html


障害者雇用納付金制度は、障害者を雇用することは事業主が共同して果たしていくべき責任であるとの社会連帯責任の理念に立って、事業主間の経済的負担の調整を図るとともに、障害者を雇用する事業主に対して助成、援助を行うことにより、障害者の雇用の促進と職業の安定を図るため「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき設けられた制度です。

常用労働者の総数が100人を超える事業主において障害者法定雇用率(※)未達成の事業主に納付金を収める必要があり、その納付金を財源として障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金、在宅就業障害者特例報奨金、特例給付金及び各種助成金を支給が行われています。

なお、障害者雇用納付金の申告・納付や障害者雇用調整金等の支給申請については、新型コロナウイルス感染症に伴う提出期限の延長や納付免除等の措置は取られていません。

(※)2021年(令和3年)3月1日より、現行の2.2%から、2.3%に引き上げられました。

新型コロナウイルス感染症に関するQ&A

月毎の実労働時間に含めるもの・含めないものについては、記入説明書のP20~21に記載しています。
併せてご確認ください。

Q1 新型コロナウイルス感染症に感染した障害者が休業し、賃金も休業手当も払っていない場合、実労働時間にどのように計上したらいいですか。

新型コロナウイルスに感染した労働者には、感染症法に基づき、都道府県知事から就業制限や入院の勧告等が行われます。そのため、新型コロナウイルスに感染した障害者の休業期間については、賃金又は傷病手当金、休業手当等の支給の有無を問わず、所定及び実労働時間に計上してください。休業期間のうち、休日を除く日数(時間)を含めます。

Q2 新型コロナウイルス感染症に感染した方の濃厚接触者となった障害者を休業させ、賃金も休業手当も払っていない場合、実労働時間にどのように計上したらいいですか。

保健所から濃厚接触者と言われた方は、上記Q1と同じ扱いとします。
そうではない場合、賃金も休業手当も払っていないのであれば実労働時間には含めることはできません。
例えば、接触確認アプリで陽性者との接触通知があったことのみを理由として障害者を休業させ、賃金又は休業手当等を支給していない場合は、実労働時間には含めることはできません。

Q3 障害者が感染を恐れて自主的に休みました。そのような休暇制度はなく、賃金も休業手当も払っていない場合、実労働時間にどのように計上したらいいですか。

記入説明書P20の実労働時間に《含めるもの》に該当する休暇制度を取得していない場合は、記入説明書P21の「傷病欠勤以外の欠勤」の取扱いのとおりとなります。

Q4 「小学校休業等対応助成金」を受給しました。この対象期間は、実労働時間に計上していいですか。

「小学校休業等対応助成金」は、対象労働者に対し有給(賃金全額支給)の休暇(労働基準法上の年次有給休暇を除く。)を取得させた事業主が対象となる助成金であるため、実労働時間に計上します。

Q5 労働者が「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」を受給しました。この対象期間は、実労働時間に計上していいですか。(地方自治体が実施した同内容の支援金を含む。例:山梨県新型コロナウイルス対策子育て家庭休業助成金

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」は、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止を理由に事業主から命じられて当該労働者が休業したにもかかわらず賃金又は休業手当の支払がない場合に支給される支援金・給付金です。事業主が賃金又は休業手当を支給していない休業期間については、実労働時間に含めることはできません。

Q6 自治体からの要請に基づき休業し、協力金(東京都感染拡大防止協力金、大阪府の休業要請支援金等)を受給しました。この対象期間について、障害者の実労働時間に計上していいですか。

協力金は労働者への賃金や休業手当等の支払を前提とした制度ではないため、協力金を受給したかどうかは、実労働時間に含めるか含めないかに影響しません。
休業中に雇用障害者に対して賃金の全額又は休業手当や労使協定に基づき賃金の一部を支払った期間については、実労働時間として計上することができます。

Q7 コロナ禍により休業していた期間について、賃金補償として給与の6割を支払っていました。雇用調整助成金の支給は受けていません。この期間については実労働時間にどのように計上したらいいですか。

<令和3年度申告申請から取扱いを変更しました。>
雇用調整助成金の支給の有無に関わらず、休業中に雇用障害者に対して賃金の全額又は休業手当や労使協定に基づき賃金の一部を支払った期間については、実労働時間に計上します。休業した理由がコロナ禍によるものではない場合も同様です(記入説明書P20にも記載しています。)。

Q8 緊急事態宣言の発令後、勤務時間を短縮しています。この場合、短時間労働者となるのですか。

雇用障害者を除く常用雇用労働者については、所定労働時間をもって雇用区分を判断するため、就業規則雇用契約書等により、その方が通常の週に勤務すべきこととされている時間で判断できます。
雇用障害者については、所定労働時間と実労働時間との相違等を確認し判断します。詳しくは、記入説明書P18以降をご確認ください。

Q9 コロナ禍のため、雇用契約の変更は行わず、労使協定により労使合意のもと一定期間所定労働時間を短縮することとしました。この場合、週所定労働時間は、短縮後の時間となりますか。

労使協定により短縮した後の時間を週所定労働時間としてください。
「週所定労働時間」とは、就業規則雇用契約書等により、その方が通常の週に勤務すべきこととされている時間をいい、労使協定により勤務すべきこととされた時間もこれに含みます。

Q10 身体障害者手帳及び療育手帳は、再認定(再判定)の時期が1年間延長されたと障害者本人から聞きました。何か証拠書類の提出は必要ですか。

身体障害者手帳及び療育手帳の再認定(再判定)については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、自治体によっては、再認定(再判定)を実施する期日を延長する等の対応がとられています。厚生労働省が策定した「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」に留意の上、自治体等からの再認定延長に係る通知の有無や延長された期間等を確認してください。延長されたことの証拠書類の提出は不要ですが、当機構から、状況を確認させていただくことがあります。

Q11 障害者が新型コロナウイルス感染症への感染を恐れて外出を自粛し、精神障害者保健福祉手帳の更新手続を行っていません。障害者として計上できますか。

精神障害者保健福祉手帳の更新手続は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、令和2年3月1日から令和3年2月末日までの間に有効期間を迎える者のうち、更新時に医師の診断書を添えて提出する必要がある場合、診断書の提出が1年間猶予されています。
診断書の提出が1年間猶予されているだけで、更新手続は必ず必要です。手帳の有効期限が切れている期間については、原則として障害者として計上できません。詳しくは記入説明書P34をご確認ください。

【令和3年3月12日追加掲載】

Q12 新型コロナウイルス感染症によって休業を強いられ、経営が厳しいが、納付金に免除や減免の制度はないので

すか。

免除や減免の制度はありません。

Q13 会社が在宅勤務となり出社できないため、期限までに申告申請ができません。どうすればいいですか。

申告申請期間の延長は予定していません。 障害者雇用調整金等の支給金については、申請期間を過ぎた申請に対しては支給できませんので、必ず期間内に提出してください。
なお、令和3年1月以降、申告申請書等への代表者印の押印は不要となりました。

Q14 通常の週の所定労働時間が一定でない雇用契約を締結している労働者(シフト勤務者)について、休業期間中の所定労働時間(勤務計画時間(シフトを組んだ時間))は0時間になるのですか。

通常の週の所定労働時間が一定でない場合の取扱いは記入説明書P10 に記載しています。休業期間中の勤務計画をどのように計画したかは、企業によって異なりますので、0時間ではないこともあり得ます。 なお、休業期間中に休業手当を支払っていた場合などは、記入説明書P20 のとおり、休業期間中の所定労働時間(勤務計画時間(シフトを組んだ時間))を実労働時間に含めるため、例えば休業した月の勤務計画時間が120 時間であれば、実労働時間も120 時間となります。 詳しくは、次ページのQ&Aをご確認ください。

f:id:sr-memorandum:20210317202505p:plain

2021年4月1日よりパートタイム・有期雇用労働法が中小企業にも適用されます!

2021年4月1日よりパートタイム・有期雇用労働法が中小企業にも適用されます!


同一企業内における正社員(無期雇用フルタイム労働者)とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けることができるよう、パートタイム・有期雇用労働法※1 や施行規則、同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)、パートタイム・有期雇用労働指針が施行されます。
※1 パートタイム労働者だけでなく、有期雇用労働者も法の対象に含まれることになりました。
法律の名称も、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」から「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」)に変わります。

これを踏まえて、改正のポイントと「パート・有期労働ポータルサイト」についてご案内します。

改正のポイント

正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者※2 )について、以下の1~3が統一的に整備されています。

1 不合理な待遇差の禁止

同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。
ガイドライン(指針)において、どのような待遇差が不合理に当たるかを例示されています。

裁判の際に判断基準となる「均衡待遇規定」「均等待遇規定」 が法律に整備されています。
f:id:sr-memorandum:20210314195528p:plain

2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができるようになります。
事業主は、非正規雇用労働者から求めがあった場合は、説明をしなければなりません。
f:id:sr-memorandum:20210314195825p:plain

3.行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR) ※3の整備

都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きが行われます。(主に、特定社会保険労務士が代理になります
「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」についても、行政ADRの対象となります。
※2 派遣労働者についても、改正後の労働者派遣法により、上記1~3が整備されています。
※3 事業主と労働者との間の紛争を、裁判をせずに解決する手続きのことをいいます。

同一労働同一賃金ガイドライン」の概要

(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇禁止等に関する指針)
このガイドライン(指針)は、正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差が不合理なものでないのか、原則となる考え方及び具体例を示したものです。原則となる考え方が示されていない待遇や具体例に該当しない場合については、各社の労使で個別具体の事情に応じて議論していくことが望まれます。
基本給、昇給、賞与、各種手当といった賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生等についても記載しています。
(詳しくはこちら)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

f:id:sr-memorandum:20210314210916p:plain:w500

要注意すべきは基本給や賞与よりも手当

通勤手当

ハマキョウレックス事件
契約社員について通勤手当の格差を違法と判断

九水運輸商事事件
パート社員について通勤手当の格差を違法と判断

アートコーポレーション事件
アルバイトについて通勤手当の格差を違法と判断

扶養手当

日本郵便(大阪)事件
契約社員について扶養手当の格差を違法と判断
※定年後再雇用者契約社員については、違法とはされませんでした。(ハマキョウレックス事件

皆勤手当

井関松山製造所事件
契約社員について精勤手当の格差を違法と判断

長澤運輸事件
定年後再雇用契約社員について精勤手当の格差を違法と判断

ハマキョウレックス事件
契約社員について皆勤手当の格差を違法と判断

九水運輸商事事件
パート社員について皆勤手当の格差を違法と判断

無事故手当

ハマキョウレックス事件
契約社員について無事故手当の格差を違法と判断

夏期冬期休暇

日本郵便(佐賀)事件
契約社員について夏期冬期休暇の格差を違法と判断

私傷病休暇

日本郵便(東京)事件
契約社員について私傷病休暇の格差を違法と判断
※アルバイトについては違法とされませんでした。(大阪医科薬科大学事件

待遇差の理由について説明義務が生じることからもあり、特に手当については性質・目的を整理することが必要です。
そのうえで、性質・目的から判断して、非正規従業員に支給しないことを理由付けできない手当については、手当自体の見直しや非正規従業員への支給を検討する必要があります。
また、整理した性質・目的は、就業規則や賃金規程等に明文化しておくべきです。

f:id:sr-memorandum:20210314211209p:plain

パート・有期労働ポータルサイトを活用しましょう

厚生労働省で、「パート・有期労働ポータルサイト」が設置されています。
part-tanjikan.mhlw.go.jp

本サイトでは、令和2年(2020年)4月1日に施行された「パート・有期雇用労働法」の解説動画等、事業主の皆様が同法に沿った対応を進めるためのコンテンツが多数掲載されています。
特に、自社の状況を自らチェックするツール(対応状況チェック・職務分析・職務評価導入支援サイト)が非常に有用ですので、自ら確認の上、最寄りの社会保険労務士等にご相談されることをお勧めします。
https://drive.google.com/file/d/1X9uksad76Yyehnp6lOV83KYzdTpZOqJz/view?usp=sharing

f:id:sr-memorandum:20210314221759j:plain:w500
f:id:sr-memorandum:20210314221811j:plain:w500

休業支援金・給付金の申請にご協力ください/休業支援金を申請できます

休業支援金・給付金の申請にご協力ください/休業支援金を申請できます

休業支援金・給付金の申請にご協力ください

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000751997.pdf

新型コロナウイルス感染症の影響により従業員を休業(シフト制で働く従業員の勤務時間や勤務日を削減した場合を含みます)させた場合、休業手当の支払いには、雇用調整助成金を活用できますので、これをご活用いただき、雇用の維持に努めていただくようお願いします。

◆ 一方、休業手当の支払いが困難な場合には、従業員の方が直接申請できる、厚生労働省から直接支給する「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下、「休業支援金」)があります。従
業員への周知や申請に協力いただくようお願いします。
(中小企業については令和2年4月以降の休業、大企業については令和3年1月8日以降(令和2年11 月7 日以降に時短要請等を発令した都道府県はその要請の開始以降)及び令和2年4~6月の休業が対象です。)
◆ 申請にあたり事業主に協力いただくことは、休業の事実について確認するための書類の作成などで、金銭的な負担はありません。
従業員が休業支援金の支給申請やその相談をしたことのみを理由として、解雇や雇止め、労働条件の不利益変更等を行った場合、労働契約法に照らして無効となる場合等があります。
◆ 休業支援金の申請には期限があります。該当する方へは早めに周知いただくようお願いします。
・詳しくは、厚生労働省HPへ
https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html
・お電話でのお問い合わせはコールセンターへ
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金コールセンター
電話 0120(221)276 ※月~金 8:30~20:00
(土日・祝日 8:30~17:15)

コロナの影響で勤務時間が減りお困りの労働者の方は休業支援金を申請できます

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000752074.pdf


◆ コロナの影響により休業(時短勤務、シフト削減を含みます)させられた労働者の方で、事業主から休業手当の支払いを受けることができなかった方に、国から支給する「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下、「休業支援金」)があります。
(中小企業については令和2年4月以降の休業、大企業については令和3年1月8日以降(令和2年11 月7 日以降に時短要請等を発令した都道府県はその要請の開始以降)及び令和2年4~6月の休業が対象です。)
要件に該当すると思う場合には、遠慮なく申請してください。
◆ 休業支援金の支給を申請する際、事業主の協力を得て書類を作成すれば、審査が早く進みますので、事業主に相談してください。
事業主に協力いただくことは、休業の事実について確認するための書類の作成などで、金銭的な負担はありません。
・事業主が不安を感じている場合は、「事業主の皆様へ~厚生労働省からのお願い~休業支援金・給付金の申請にご協力ください」(HP に掲載しています)を提示するなど、ご活用ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000751997.pdf

事業主に協力してもらえない場合でも、そのことを書類に書けば申請できます。
◆ 労働者が休業支援金の支給申請やその相談をしたことのみを理由として、事業主が、解雇や雇止め、労働条件の不利益変更等を行うことは、労働契約法に照らして無効となる場合等があります。
休業支援金の申請に関連して職場のトラブルなどがあれば、総合労働相談コーナー(※)にご相談ください。
※ 全国の都道府県労働局や労働基準監督署などに設けられており、解雇、雇止め、配置転換、
休業手当の未払い、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題について、
ワンストップで相談の受付等を行っています。
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

◆ 休業支援金の申請には期限があります。早めに申請しましょう。
・詳しい要件や申請方法などは、厚生労働省HPへ
https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html
・お電話でのお問い合わせはコールセンターへ
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金コールセンター
電話 0120(221)276 ※月~金 8:30~20:00(土日・祝日 8:30~17:15)

労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について(令3.2.22労災発0222第1号)

労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について(令3.2.22労災発0222第1号)

令和3年度における労災補償業務の運営に当たっては、特に下記に示したところに留意の上、実効ある行政の展開に遺憾なきを期されたい。



https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210309K0040.pdf

第1 労災補償行政を巡る状況への対応

新たな感染症である新型コロナウイルス感染症に係る労災請求件数は4,000 件以上に上り、今後も相当数の労災請求が想定されることから、引き続き、迅速かつ公正に対応するとともに、労働者から積極的に労災請求がなされるよう、事業場等に対する請求勧奨に係る要請について徹底していくことが肝要である。
また、過労死等や石綿関連疾患など職業性疾病を巡る国民の関心は高く、過労死等に係る労災請求件数は2,900 件以上に上るほか、石綿関連疾患に係る労災請求件数も1,200 件以上に上るなど、多くの複雑困難事案の処理を求められている状況にあり、これらの労災請求事案に引き続き適切に対応していく必要がある。
さらに、毎月勤労統計に係る追加給付事案や令和2年9月に施行された改正労災保険法に基づく複数事業労働者への保険給付について適切に対応していく必要がある。
一方、現下の定員事情や行政経費に係る予算事情など、労災補償行政を取り巻く環境は厳しさを増しているところである。
このような状況の中で、労災補償行政に対する国民の期待に応え、労災請求事案に適切に対応するためには、厚生労働本省、都道府県労働局(以下「局」という。)及び労働基準監督署(以下「署」という。)が、より一層連携して効率的な業務運営に取り組み、また、的確な事務処理の実施に必要な体制確保と人材育成を行うことが重要となっている。
このため、令和3年度においては、特に次の事項に留意し、労災補償行政を推進することとする。

新型コロナウイルス感染症への迅速・的確な対応
② 過労死等事案などの的確な労災認定
③ 迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理等の徹底
④ 業務実施体制の確保及び人材育成

第2 新型コロナウイルス感染症への対応

1.迅速・的確な労災認定

新型コロナウイルス感染症(以下、本項目において「本感染症」という。)については、令和2年4月28 日付け基補発0428 第1号(令和2年12 月1日改正)「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」(以下「1号通達」という。)により、医療従事者等については業務外で感染したことが明らかな場合を除き原則として労災保険給付の対象とし、それ以外の労働者については、当分の間、調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、労災保険給付の対象とすることとした。
このため、1号通達に基づき、本感染症に係る労災請求があった場合には、引き続き、本省への報告及び必要な本省協議を漏れなく行うこと。また、速やかに調査に着手するとともに、集団感染事案等の調査の効率化による処理の迅速化を図るなど、業務により感染した労働者が迅速かつ公正に労災保険給付を受けられるよう的確に対応すること。

2.請求勧奨の実施

業務により本感染症にり患した場合であっても、労災保険給付の対象となることや制度の不知等により、請求を行っていない労働者がいることが考えられるほか、事業主においても、様々な理由で、新型コロナウイルスに感染したと思われる労働者への労災請求に関する説明や手続き等の支援がなされていない場合があることも考えられることから、きめ細かな対応を図る必要がある。
このため、本感染症における労災補償の取扱い等については、厚生労働省ホームページに「新型コロナウイルスに関するQ&A」を掲載するとともに、各種労使団体に対して、請求勧奨に係る要請等を行っているところである。
局署においては、令和2年5月19 日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡「集団感染が発生した医療機関等における労働者の感染が疑われる事案を把握した場合の労災請求勧奨等の対応について」、令和2年8月7日付け基安労発0807 第1号・基補発0807 第1号「新型コロナウイルス感染症に係る集団感染が発生した事業場に対する感染拡大防止の要請等について」、令和2年11 月20 日付け基補発1120 第1号「新型コロナウイルス感染症に係る当面の対応について」等に基づき、引き続き、事業場等に対する請求勧奨の取組みに係る要請を行うこと。特に、集団感染が発生した事業場等を把握した場合については、適切な時期に請求勧奨に係る要請を確実に行うこと。

第3 過労死等事案に係る的確な労災認定

1.労働時間の的確な把握

労働時間は、脳・心臓疾患における業務の過重性や精神障害における業務による心理的負荷の強度の評価に係る重要な要因であるので、その的確な把握・特定は、適正な労災認定に当たり必要不可欠なものである。
このため、労災認定のための労働時間は、労働基準法32条で定める労働時間と同義であり、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであることに留意の上、当該労働者の労働時間については、使用者の指揮命令下にあることが認められる時間を的確に把握すること。
その際、タイムカード、事業場への入退場記録、パソコンの使用時間の記録等の客観的な資料を可能な限り収集するとともに、上司・同僚等事業場関係者からの聴取等を踏まえて事実関係を整理・確認し、始業・終業時刻及び休憩時間を詳細に特定した上で、当該労働者が実際に労働していると合理的に認められる時間を的確に把握すること。
また、労働時間の把握に当たっては、例えば、移動時間については、使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当することに十分留意するほか、別途配付予定の「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」(仮称)を参考に労働時間を適切に把握すること。
なお、個々の事案における労働時間の特定に当たっては、平成30年3月30日付け基監発0330第6号、基補発0330第5号(令和3年1月5日改正)「過労死等事案に係る監督担当部署と労災担当部署間の連携について」(以下「連携通達」という。)に基づき、関係者の聴取等の必要な調査を行い、監督部署と協議を行った上で、労災部署において適切に労働時間を特定すること。

2.過労死等事案に係る関係部署との連携

過労死等事案については、その発生を防止するための対策が労働基準行政における重要な課題となっていることを踏まえ、局署においては、引き続き労災部署と監督・安全衛生部署との緊密な連携を図るとともに、本省とも情報の共有を図る必要がある。このため、連携通達及び平成29 年3月31 日付け基監発0331 第1号・基補発0331第6号・基勤発0331 第1号・基安労発0331 第1号「『過労死等ゼロ』緊急対策を踏まえたメンタルヘルス対策の推進に当たっての具体的手法について」等を踏まえ、署管理者は、労災部署において把握した情報や労災請求・決定に関する情報が監督・安全衛生部署に共有されるよう、監督・安全衛生部署と密接な連携を図ること。
また、局管理者は、過労死等事案に係る調査の進捗及び労災部署と監督・安全衛生部署における情報共有等の状況について的確に把握し、労災部署と監督・安全衛生部署における情報共有や協議が的確になされるよう署管理者に対し必要な指示を行うとともに、社会的に注目を集める可能性の高い事案については、本省への所要の報告を確実に行うこと。

3.過労死等の認定基準の見直しについて

心理的負荷による精神障害の認定基準(以下「精神障害の認定基準」という。)については、パワーハラスメント防止対策の法制化等を踏まえ、心理的負荷評価表へのパワーハラスメントの追加等を行ったことから、改正後の認定基準に基づき適切に対応すること。
また、脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準については、「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」において検討を行っているところである。その検討結果を踏まえ、認定基準の改正を行う予定であり、
その改正に伴う事務処理等については、別途通知する予定であるので、適切に対応すること。

4.労災認定基準の適切な運用

(1)脳・心臓疾患
ア 対象疾病以外の疾病
業務による過重負荷に関連して、脳・心臓疾患の認定基準に掲げる対象疾病以外の疾病が発症したとして労災請求された事案については、専門医等に対し、対象疾病に該当するか否か等の医学意見を徴した上で、対象疾病に該当しない場合は、本省に相談すること。

イ 業務の過重性の評価
過重負荷の評価に当たっては、脳・心臓疾患を発症した労働者と同程度の年齢、経験等を有する健康な状態にある者のほか、基礎疾患を有していても日常業務を支障なく遂行できる同僚又は同種労働者にとっても、特に過重な業務であったか否かという観点からの検討を行うこと。

ウ 労働時間以外の負荷要因の評価
業務の過重性の評価に当たり、不規則な勤務等の労働時間以外の負荷要因についても的確に調査を行った上で、医学的にみて身体的、精神的負荷が特に過重と認められるものがある場合には、これを含めて、客観的かつ総合的な判断を適切に行うこと。

(2)精神障害
ア 専門家意見の収集
精神障害の認定基準においては、認定要件を満たすか否かについて、主治医意見により判断すべき事案、専門医意見により判断すべき事案及び専門部会意見により判断すべき事案を示しているところであり、局においては、署に対して当該認定基準に基づく医学意見の収集方法について、適切な指導を行うこと。

パワーハラスメントに係る心理的負荷の評価
精神障害事案については、上司、同僚等からの聴取等の調査を尽くした上で、業務による出来事の事実認定を行うことが重要である。
このため、特に、請求人がパワーハラスメントを主張する事案については、関係者が相反する主張をする場合があることから、当事者の事業場内における役割、指揮命令系統等を把握した上で、可能な限り第三者から聴取を行う等により、業務上必要性がない又は業務の目的を逸脱した言動等の有無につき、確認を行った上で、心理的負荷の評価を適切に行うこと。

第4 石綿関連疾患に係る的確な労災認定

(中略)

第5 その他の職業性疾病事案に係る的確な労災認定

(中略)

第6 迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理の徹底

労災保険制度は、被災労働者及びその遺族に対し、必要な保険給付を行うことにより、迅速かつ公正な保護を図ることを目的としている(労働者災害補償保険法第1条)。この目的を実現するため、遵守すべき事務処理手順を定め全国斉一的な運用を行っているところであるが、特に、次の事項に留意すること。

1.基本的な事務処理の徹底

労災保険給付の事務処理については、労災保険給付事務取扱手引(以下「給付事務手引」という。)や平成30年5月21日付け基発0521第2号「今後の労災保険給付等の適正な事務処理に当たって留意すべき事項について」により指示しているところであるが、今後とも適正な給付のための調査を徹底すること。
特に、法令、通達に基づいた調査、判断等の基本的な事務処理について、管理者から職員に十分な指導を行うなど、改めてその徹底を図ること。
また、調査に当たっては、保険給付の決定のために真に必要な調査を行うことを基本とし、決定に不要な資料の収集を行わないこと、必要な資料の不足が生じないようにすることなど過不足のないよう調査を行うこと。
さらに、関係資料を収集する際、被災労働者やそのご遺族等から同意書等を徴する場合は、機微な個人情報を収集することに特に留意の上、保険給付に当たり、明らかに不必要な資料に係る同意書等を徴することがないよう徹底すること。

2.迅速処理に向けた的確な進行管理及び適正な事務処理の徹底

長期未決事案については、署長管理事案、局管理事案による管理など、長期未決事案の発生防止のために取り組んでいるところであるが、平成30年10月9日付け基発1009第2号「今後の保険給付の迅速処理に当たって留意すべき事項について」に基づき的確な進行管理を行うこと。
特に、複雑困難事案にあっては、定期的に開催している事案検討会等を通じて、初動調査の早期着手、各調査項目についての期限を付した具体的な指示など、今後の処理方針等についての具体的な指導を行うこと。

3.請求人等への懇切・丁寧な対応

被災労働者及びそのご遺族の請求人等に対する丁寧で分かりやすい説明の実施については、平成23 年3月25 日付け基労発0325 第2号「今後における労災保険の窓口業務等の改善の取組について」(以下「窓口改善通達」という。)により指示しているところであるが、引き続き、これを徹底するとともに、相談等の段階で、調査が困難であることや業務上外の見込み等について言及することは厳に慎むこと。
特に、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求については、感染経路が不明な場合であっても労災保険給付の対象となること等、本感染症に係る労災補償の取扱いに基づき、適切な窓口対応を徹底すること。
また、事務処理に長期間を要している事案については、請求人に対し、定期的に処理状況の説明を行うこと。

4.報道機関に対する的確な対応

過労死等事案など労災認定された個別の事案について社会的関心が高まっていることを背景に、局署において報道機関等から取材を受ける機会が増えていることから、その対応に当たっては、被災労働者及びそのご遺族等の個人情報保護の観点に十分留意すること。
なお、社会的関心が高いと考えられる事案に係る取材等を受けた場合は、速やかに本省へ報告すること。

5.不正受給防止に対する的確な対応

労災保険に係る不正受給事件は、社会に与える影響が大きく、労災保険制度に対する不信を招来し、制度の適正な運営を大きく阻害することにもなりかねないものである。
このため、不正受給を防止するための事務処理等については、給付事務手引により指示しているところであり、特に投書等により不正受給の疑いが生じた事案については、署は時機を逸することなく必要な調査を実施する等適切な対応を行うとともに、本省への速やかな報告を徹底すること。
また、特別加入者に係る不正受給防止対策については、平成29年12月7日付け基補発1207第1号「労災保険の特別加入者に係る不正受給防止対策の徹底について」に基づく調査や事務処理を徹底すること。
なお、不正受給者に対して支給した保険給付については、労働者災害補償保険法第12条の3第1項に基づき費用徴収を行うこととなるため、保険給付支払日から時効が進行することに留意し、債権発生通知書による局への報告や不正受給者に対する納入告知の実施等、必要な事務処理を速やかに実施すること。

6.労災かくしの排除に係る対策の一層の推進

全国健康保険協会協会けんぽ)の各都道府県支部から健康保険法の保険給付について不支給(返還)決定を受けた者の情報を得た場合において、被災労働者に対して、労災請求の勧奨を行うとともに、
①労災かくしが疑われる場合、
②新規の休業補償給付支給請求書の受付に際し、労働者死傷病報告の提出年月日の記載がない場合には、
速やかに監督・安全衛生部署に対して情報の提供を行うこと。
また、平成3年12月5日付け基発第687号「いわゆる労災かくしの排除について」に基づき、労災保険のメリット制の適用を受けている有期事業の事業場にあっては、メリット収支率の再計算及び返還金の回収等が生じる場合があることから、労災かくしが判明した場合には、徴収主務課室に対し、速やかに、給付見込額や支払予定時期などの必要な情報を提供すること。

7.労働者性の判断

労働者性の判断のうち、一般的に問題になることが多い法人の役員、請負制の大工、委託契約の外務員等判断が困難な事案については、適宜、監督部署に協議しつつ必要な調査を行い、的確に労働者性を判断すること。

8.給付基礎日額の算定

給付基礎日額の算定に当たっては、これまでも指示しているとおり、割増賃金の算定基礎に算入すべき手当が含まれているかどうかについて、就業規則等により確認することに加え、事業場に対して手当の算定根拠について必要な確認を行うこと。
また、被災労働者の勤務実態等を踏まえ、適用される労働時間制度について疑義が生じる場合には、適宜、監督部署に協議しつつ必要な調査を行い、的確に給付基礎日額を算定すること。

9.テレワーク中に負傷等した場合の労災補償の取扱い

テレワークを導入する事業場等が増加していることに伴い、今後、労働者がテレワーク中に負傷したこと等による労災請求の増加が想定されることから、適切に対応していく必要がある。
このため、労働者がテレワーク中に負傷等した場合については、平成30年2月22日付け基発0222第1号・雇均発0222第1号「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインの策定について」等に基づき、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じた災害は、労災補償の対象となること、
また、その際、私的行為等業務以外が原因であるものについては労災補償の対象とはならないといった基本的な考え方を踏まえ、適切に対応すること。
なお、労働者がテレワーク中に負傷等した場合の保険給付については、厚生労働省ホームページに掲載のパンフレット「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」において明記しているので、事業場等への説明に当たっては、適宜、活用すること。

10.障害(補償)等年金を受ける者の再発に係る取扱い

障害(補償)等年金を受ける者が再発した場合の事務処理の留意点については、平成27年12月22日付け基補発1222第1号「障害(補償)年金を受ける者が再発により傷病(補償)年金又は休業(補償)給付を受給する場合の事務処理上の留意点について」により指示しているところであるが、いまだ適切さを欠く状況がみられる。障害(補償)等年金を受ける者が再発した場合、障害の状態によっては、再発により療養する期間について、傷病(補償)等年金の支給要件を満たす可能性があることから、改めて、当該通達に基づき適切に事務処理を行うこと。
また、再発が多いと考えられるせき髄損傷に係る相談対応に当たっては、リーフレット「せき髄損傷に併発した疾病の取扱いについて」を使用することなどにより、懇切・丁寧な説明に努めること。

11.第三者行為災害に係る事務処理

(1)第三者行為災害に係る事務処理の留意点
求償事案については、当該債権について消滅時効の期限が到来する前に納入告知を行うことを従前より指示してきたところであり、引き続きその事務処理の徹底を図ること。特に、令和2年4月1日施行の民法改正を反映した時効の管理については、「第三者行為災害事務取扱手引(令和2年4月)」により適切に実施すること。
また、労災保険給付を第二当事者となる自動車損害賠償責任保険及び自動車損害賠償責任共済(以下「自賠責保険等」という。)より先行して受給した第一当事者が、その後、自賠責保険等より労災保険の給付事由と同一の事由に基づく損害賠償金を受領したことを把握した場合には、自賠責保険等にその内訳(慰謝料及び逸失利益)やその金額の計算根拠等について照会し、自賠責保険等により支払われた損害賠償金と労災保険給付に重複して支払われた逸失利益が存在していないか確認する必要がある。
なお、慰謝料分については、労災保険給付と重複するものではないことに留意すること。
併せて、第一当事者が労災保険自賠責保険等に対して同一損害による重複請求を行った場合で、何らかの事情により労災保険自賠責保険等から同一損害に係る保険給付が二重に行われる事案については、平成9年2月24日付け労働基準局補償課長事務連絡「求償調整事務を行う際の留意事項について」で通知しているとおり、損害の重複てん補が生じる原因を作った側が回収を行うとしていることから、自賠責保険等との連携を密にした調査を行い、労災保険自賠責保険等より先行して給付を行った場合は、保険会社等に回収責任があると認められる事情を明確に指摘した上で求償を行うこと。
なお、第一当事者が人身傷害補償保険に請求を行っている場合についても 、平成16年3月17日付け基発第0317001号「第三者行為災害の事務処理における人身傷害補償保険の取扱いについて」で通知しているとおり、適切に事務処理を行うこと。

(2)外部委託について
納入督励及び債権回収に係る外部委託事業については、令和3年度においても弁護士又は弁護士法人を受託者として実施する予定であり、事務処理に係る留意点等については別途通知するので、より一層積極的に活用すること。
また、第三者行為災害事案に係る支給調整等事務については、令和元年8月28日付け基補発0828第2号「第三者行為災害支給調整等事業に係る外部委託について」により通知したところであり、令和3年度においても継続して事業を実施するので、効果的かつ効率的な事務処理のため、積極的に活用すること。

12.特別加入制度の周知・広報等

近年、働き方の多様化に伴い、特別加入制度についての社会的な関心が高まってきているところ、本省において、関係省庁、関係団体へのリーフレットの送付や、厚生労働省ホームページ上の特別加入制度関係の紹介ページを掲載等により、特別加入制度の積極的な周知・広報を実施しているところである。各局においても、様々な機会を捉え、積極的に周知広報に努めるとともに、労災保険制度の照会等が行われた場合は、適切に対応すること。
また、労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第11号)が、令和3年1月26日付けで公布され、令和3年4月1日付けで施行されることとなり、第二種特別加入の対象範囲の拡大等を行うこととしているが、これに係る事務処理等については、別途、年度内に通知する。

13.定期報告の取扱い

令和元年度より、日本年金機構への情報照会の本格運用が開始され、マイナンバーによる情報連携により併給調整に必要な情報を取得できることとなったことから、令和2年度から障害(補償)年金及び傷病(補償)年金の受給権者からの定期報告を一部廃止しているので、令和2年3月31日付基保発0331第1号「労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令の施行等に伴う傷病(補償)年金及び障害(補償)年金の定期報告の一部省略等にかかる年金事務の取扱いについて」に基づき、廃止対象者について、各種リストによる受給条件の変動状況等の確認を引き続き実施すること。
また、遺族(補償)年金の一部の受給権者(受給資格者が受給権者1名のみの場合)の定期報告については廃止することとしており、具体的な事務処理については別途通知する予定である。
なお、新型コロナウイルス感染症にかかる緊急事態宣言の発令に伴い、令和2年度の定期報告の提出期限を令和3年3月31日に延期したところであるが、4月以降の対応については別途通知する予定である。

14.労災診療費に係る事務処理の留意点

(1)労災診療費の的確な審査の実施等
労災診療費については、労災診療費算定マニュアル(令和2年6月版)及び平成21年2月20日付け基労補発第0220003号「労災診療費に係る重点審査について」等に基づいて審査を実施しているところであるが、ここ数年の会計検査院による決算検査報告において、「労災保険指定医療機関等が労災診療費を誤って算定して請求していたのに、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことなどが認められる。」として、不当事項として指摘を受けている。
このため、局においては、的確な審査体制の構築を行うとともに、労災保険指定医療機関等に対して、関係団体と連携し、特に算定誤りの多い項目や新設項目を中心にあらゆる機会を活用して算定基準の周知を行うこと。また、誤請求の多い医療機関に対して個別指導を行うなど再発防止に取り組むこと。
併せて、平成25年4月8日付け基労発0408第1号「地方厚生局等から提供された診療報酬返還等に関する情報提供の労災診療費審査業務への活用等について」及び平成25年4月8日付け基労補発0408第1号「地方厚生局等から提供された診療報酬返還等に関する情報の労災診療費審査業務への活用等における留意事項について」に基づき、提供を受けた情報について積極的に活用すること。
また、労災保険柔道整復師算定基準及び労災保険あん摩マッサージ指圧師・はり師きゅう師施術料金算定基準についても、診療費と同様、関係団体等を通じた算定基準の周知を行い、それぞれの施術料金算定基準等に基づく的確な審査を実施すること。

(2)労災レセプトオンライン化の普及促進
令和2年6月12日付け労災発0612第1号「労災レセプト電算処理システムの普及促進に向けた取組について」に基づき、令和2年6月から令和5年3月末までの間を新たな普及促進強化期間(第3期)として、令和2年度は労災指定医療機関等への個別訪問、説明会を原則としてオンライン(テレビ会議)により実施してきたところである。
令和3年度においても、引き続きオンラインによる取組を行う予定であるが、局においては、地区医師会等の関係団体等との会合、新規労災指定時の説明会等でのパンフレットの配付等、あらゆる対外業務活動の場を活用して利用勧奨を実施すること。

15.社会復帰支援に向けた適切な症状把握等

令和2年11 月10 日に内閣に報告された令和元度会計検査院決算検査報告において、「特別加入者である中小事業主から提出を受けた請求書の内容の調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことが原因の不適正な支給が認められた。」として、不当事項として指摘を受けたところである。
ついては、傷病労働者(特別加入者を含む。)から提出された請求書の内容を適正に審査した上で支給決定を行うことは当然のことであり、特に療養を1年以上にわたって継続している傷病労働者については、症状及び療養の経過を適切に把握し、療養期間が必要以上の長期にわたることのないよう、昭和59 年8月3日付け基発第391 号「適正給付管理の実施について」に基づき、事務処理を適切に実施すること。
なお、令和2年11 月18 日付け基補発1118 第1号「適正給付管理の実施に係る事務処理上の留意点について」において、調査対象者及び医療機関への周知や地方労災医員等の活用について指示しているので、改めて内容を確認の上、事務処理を適正に行うこと。

16.行政争訟に当たっての的確な対応

(1)行政事件訴訟の的確な追行
令和2年度における訴訟追行状況をみると、職場での客観的事実の把握とそれに伴う適切な補充調査・証拠収集の実施、意見依頼事項を精査した上での医学意見書の収集等が十分に行われなかったため、的確な主張ができずに敗訴した事例が認められた。
このため、訴訟追行に当たっては、平成22年8月4日付け事務連絡(最終改正令和2年3月16日)「労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について」に基づく的確な訟務の追行の徹底を図ることとし、新件協議結果等に基づく指示を踏まえ、国側の主張を補強するため、関係者からの補充調査及び医学意見書の依頼等を確実に実施することにより、客観的な証拠に基づき、裁判所を説得し得る主張・立証を的確に行うこと。

(2)審査請求事案の公正・迅速な処理審査
新規審査請求事案及び請求受理後6か月以上経過した長期未決事案が増加傾向にあることなどから、局管理者は、「労災保険審査請求事務取扱手引」第3部のⅢ「局管理者における取組み」に基づき、毎月、事案ごとに処理状況を把握した上で、処理が遅延している場合には、その原因を明確にした上で遅延を解消するために必要な助言・指導や組織的支援を行い、適切な進行管理のもと迅速処理に努めること。
また、労働者災害補償保険審査官は、的確に争点整理を行った上で審理に必要な資料の収集等を確実に実施することにより、公正・迅速な審査決定を行うこと。

(3)不服申立て及び訴訟における取消事案の情報共有
局管理者は、訴訟等において取消となった事案に関して、原処分と判断が異なった争点(労働時間数の認定手法、給付基礎日額の特定に係る判例など)等について、各種会議や職員研修において、署管理者をはじめとする職員に対して説明し、情報共有を図ること。

17.地方監察の的確な実施等

地方監察は、関係法令、通達等に基づく事務処理の実態を的確に把握し、迅速・適正かつ効率的な事務の運営とその水準の維持・向上を図るととともに、公正妥当な基準に基づき客観的に検査、評価することにより行政の斉一性を確保することを目的としている。その上で、地方労災補償監察官及び労災年金監察官は、地方労災補償監察官監察指針を踏まえた計画的かつ効果的な監察を実施すること。
特に、是正改善を要する事項については、単に指摘するのみならず当該問題の生じた背景、原因を的確にとらえた対応策を検討のうえ具体的な指示・助言を行い、確実に是正改善させるとともに、適正な事務処理の継続が確保されているかを確認すること。
また、地方監察結果と併せ、令和2年度中央監察結果と自局の取組状況を検証し、改善すべき事務処理等について、翌年度の業務実施計画、監察計画等に反映させるとともに、会議等のあらゆる機会を通じてすべての労災担当職員に周知・徹底し、適正な事務処理を定着させること。

18.個人情報等の厳正な管理

(1)特定個人情報の適切な取扱いの徹底
労災年金たる保険給付に関する事務における特定個人情報等の取扱いについては、令和2年9月1日付け基発0901第2号「労災保険給付個人番号利用事務処理手引の改定について」において指示しているところである。
個人番号利用事務において、①事務取扱者に対する定期的な研修として、新たに事務取扱担当者になる者及び直近の研修受講日から2年を経過した者に対して実施すること、②事務取扱担当者名簿を年度ごとに作成すること、③人事異動・休職等に伴うユーザー情報の登録・変更等を適切に行うこと、④管理者による特定個人情報ファイルのアクセス記録の確認を毎月1回定期的に行うことについて、徹底すること。

(2)個人情報の漏えい防止
個人情報の漏えい防止については、平成28年3月28日付け地発0328第5号「都道府県労働局における保有個人情報漏えい防止及び発生時の対応について」により指示されているところであるが、令和2年度においても、多くの情報漏えい事案が生じており、いずれの事案も、基本的事務処理が徹底されていないことによるものであったことから、改めて基本的事務処理を確認し、個人情報の管理を徹底すること。

(3)石綿関連文書の保存
石綿関連文書の保存については、平成27年12月18日付け地発1218第4号・基総発1218第1号「石綿関連文書の保存について」に基づく保存がなされるよう、引き続き管理を徹底すること。

19.複数事業労働者への労災保険給付

複数事業労働者が安心して働くことができるような環境を整備するため、複数就業先の賃金に基づく給付基礎日額の算定や、給付の対象範囲の拡充等を内容とする改正労災保険法が令和2年9月1日から施行されているところであり、その施行に関する具体的な事務処理については、令和2年8月21日付け基発0821第1号「雇用保険法等の一部を改正する法律等の施行について(労働者災害補償保険法関係部分)」等の関係通達に基づき適切に処理すること。
また、複数事業労働者の複数業務要因災害に係る労災認定については、脳・心臓疾患の認定基準及び精神障害の認定基準を改正したところであり、これらに基づき適切に対応すること。

20.押印を求める手続きの見直し

規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)において、行政手続における書面規制・押印、対面規制の抜本的な見直しが求められており、原則として全ての見直し対象手続について、恒久的な制度的対応として、規制改革推進会議が提示する基準に照らして順次、必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行うことが求められたため、所要の改正を行ったところである。
局署においては、令和3年1月7日付け基管発0107第1号、基補発0107第1号、基保発0107第1号「労災保険における請求書等に係る押印等の見直しの留意点について」に基づき、請求人等の押印又は署名(以下「押印等」という。)がない場合であっても、記名等があれば、受付することとして差し支えないものとし、今後は、押印等がないことのみをもって不備返戻を行わないこと。また、請求人等の記名等について、全て同一の筆跡と思われる場合や全て情報通信機器を使用した印字である場合等、記名等の信ぴょう性につき疑義が生じた場合については、必要に応じて、請求人等への電話照会等により、確認を行うこと。

第7 外国人労働者への懇切丁寧な対応

1.外国人労働者に対する労災保険制度の周知及び請求勧奨の取組

(1)外国人労働者に対する周知等
外国人労働者については、我が国の労災保険制度について知識が十分でない場合も多い上、労働災害に遭われ亡くなった労働者のご遺族にあっては、母国にあって我が国の労災保険制度を不知であることから、機会をとらえて母国語等による周知等を行い、制度不知による請求漏れのないよう、きめ細かな対応を図る必要がある。
外国人労働者に対する労災保険制度については、「(日本で働く外国人向け)労災保険請求のためのガイドブック」(14 言語※)等を活用した労災保険制度の説明を行うことに加え、平成31 年3月26 日付け基監発0326 第1号・基安安発0326 第3 号・基安労発0326 第1号・基安化発0326 第1号・基補発0326 第1号「外国人労働者が被災者である労働災害に関する労災保険制度の周知等の対応について」に基づき、監督・安全衛生部署において外国人労働者が被災者である労働者死傷病報告を受理した場合は、当該報告の写しが労災部署に提供されるので、事業主に労災保険制度の説明を行い、請求勧奨するとともに、外国人労働者に対する周知を依頼すること。
※日本語、英語、中国語、ポルトガル語スペイン語タガログ語ペルシャ語ネパール語ミャンマー語、韓国語、タイ語インドネシア語カンボジア語ベトナム語

(2)外国人技能実習生に対する周知等
外国人技能実習生に対する労災保険制度の周知については、監督・安全衛生部署からの情報に加えて、平成29年10月27日付け基補発1027第2号「今後の技能実習生の死亡災害に関する労災保険給付の請求勧奨等について」に基づき、外国人技能実習機構等から死亡災害の情報提供を受けた際には、実習実施者に対して外国人労働者のご遺族に労災保険制度の周知を依頼するなど、引き続き請求勧奨に努めること。
なお、外国人技能実習生に対する労災保険給付の状況を把握する必要があることから、平成28年3月31日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡「外国人労働者に対する労災補償状況の把握に係る自由区分コードの登録について」に基づき、自由区分コードの入力を徹底すること。

(3)特定技能外国人に対する周知等
特定技能外国人に対する労災保険制度の周知については、平成31年3月15日付け基監発0315第3号・基安安発0315第1号・基安労発0315第4号・基安化発0315第3号・基徴収発0315第1号・基補発0315第2号「特定技能外国人の労働条件等の確保に当たって留意すべき事項について」に基づき、法務省出入国在留管理局から死亡災害の情報提供を受けた際には、事業主に対して外国人労働者のご遺族に労災保険制度の周知を依頼するなど、請求勧奨に努めること。
なお、特定技能外国人に対する労災保険給付の状況を把握する必要があることから、令和元年5月30日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡「特定技能外国人に対する労災補償状況の把握に係る自由区分コードの登録について」に基づき、自由区分コードの入力を徹底すること。

2.外国人労働者からの相談対応

外国人労働者外国人労働者を使用する使用者等からの窓口相談に対しては、「外国人労働者相談コーナー」が設置されている局監督課又は署においては、労災請求等に関する相談も受け付けることとしているので、これを活用すること。「外国人労働者相談コーナー」が未設置の局署にあっては、外国人労働者等の電話相談に対応する「外国人労働者向け相談ダイヤル」を活用し、的確に対応すること。「外国人労働者相談コーナー」及び「外国人労働者向け相談ダイヤル」の対応言語は13言語、局署の閉庁後や休日の電話相談に対応する「労働条件相談ほっとライン」(委託事業:平日17時~22時、土日・祝日9時~21時)の対応言語は14言語としているため、適切に案内を行うこと。
※対応言語:日本語(労働条件相談ほっとラインのみ)、英語、中国語、ポルトガル語スペイン語タガログ語ベトナム語ネパール語ミャンマー語、韓国語、タイ語インドネシア語カンボジア語モンゴル語

第8 毎月勤労統計等に係る追加給付対応

毎月勤労統計及び賃金構造基本統計調査に係る追加給付事案への対応については、適宜情報提供等行っているが、引き続き公表資料等の各種情報に留意の上、被災労働者等からの電話相談、窓口相談に懇切・丁寧に対応すること。
また、局署で処理が必要となる追加給付に係る事務処理について、毎月勤労統計に係る対応は平成31年3月15日付け基管発0315第1号・基補発0315第3号・基保発0315第1号「労災保険の追加給付等について」等において、賃金 構造基本統計に係る対応は令和2年11月26日付け基保発1126第1号「労災保険給付に係る「令和元年賃金構造基本統計調査」の数値の一部訂正に伴う当面の機械処理について」において、それぞれ指示しているところであるが、今後も必要に応じて通知するので、適切に対応すること。

第9 労災補償業務の実施体制の確保と人材育成

(1)業務実施体制の確保
厳しい定員事情や行政経費に係る予算事情など、行政を取り巻く環境が依然として厳しい中、労災補償業務の迅速かつ公正な事務処理を行うためには、局署一体となって実施体制を確保する必要がある。
そのため、本省においては、コールセンターをはじめとする外部委託等を引き続き確実に実施していくこととしているが、局署においては、再任用職員や非常勤職員を有効に配置し、職員と連携して事務処理を進めるよう体制を整えること。
特に、当面の労災補償の業務運営に当たっては、新型コロナウイルス感染症に係る労災請求や精神障害に係る労災請求の状況に対応する必要があることなどから、各局の行政需要に応じた応援体制を構築するなど、迅速・的確な対応をするための業務実施体制の確保を図ること。

(2)人材育成
将来にわたって、労災補償業務の迅速かつ公正な事務処理を実施していくには、職員の人材育成及び資質の向上を図ることが不可欠である。そのため、今年度から始まった「労災補償行政職員初級研修」や専門研修をはじめとした本省研修を受講するとともに、局内研修や再任用職員を活用した研修により業務に必要な知識を確実に付与すること。特に、経験年数の少ない職員に対しては、OJTなどの研修に加え、その後、研修効果を確認しスキル向上させるためにフォローアップ研修などを積極的に行うこと。
なお、本省においては、局から支援の要望があった場合、要望内容に応じ、非常勤職員を含めた職員の能力向上のための研修の実施や、事務処理の習熟に効果的な資料やノウハウの提供等必要な支援を引き続き行うこととしている。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案の概要

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案の概要

令和3年(2021年)3月9日付けで、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案」が第204回通常国会に提出されました。

この法律が成立することにより、事業者には、変更前は努力義務であった、社会的障壁の除去の実施に係る必要かつ合理的な配慮の提供が義務付けられることになります。

なお、施行日は公布の日から3年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。


(変更前)
事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。

(変更後)
事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

https://www.cao.go.jp/houan/pdf/204/204gaiyou_7.pdf

1.経緯

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)附則第7条においては、施行(平成28年4月)後3年を経過した場合に事業者による合理的配慮の在り方その他の施行状況について所要の見直しを行う旨規定されている。このため、障害者政策委員会において議論が行われ、令和2年6月に意見書が取りまとめられている。この意見書等を踏まえ、以下の措置を講ずる。

2.概要

障害を理由とする差別の解消の一層の推進を図るため、事業者に対し社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をすることを義務付けるとともに、行政機関相互間の連携の強化を図るほか、障害を理由とする差別を解消するための支援措置を強化する措置を講ずる。

① 国及び地方公共団体の連携協力の責務の追加

国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策の効率的かつ効果的な実施が促進されるよう、適切な役割分担を行うとともに、相互に連携を図りながら協力しなければならないものとする。

② 事業者による社会的障壁の除去の実施に係る必要かつ合理的な配慮の提供の義務化

事業者による社会的障壁(障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの)の除去の実施に係る必要かつ合理的な配慮の提供について、現行の努力義務から義務へと改める。

③ 障害を理由とする差別を解消するための支援措置の強化

(1)基本方針に定める事項として、障害を理由とする差別を解消するための支援措置の実施に関する基本的な事項を追加する。
(2)国及び地方公共団体が障害を理由とする差別に関する相談に対応する人材を育成し又はこれを確保する責務を明確化する。
(3)地方公共団体は、障害を理由とする差別及びその解消のための取組に関する情報(事例等)の収集、整理及び提供に努めるものとする。

※施行期日:公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日

f:id:sr-memorandum:20210311205216p:plain:w400

【労働時間】北九州市事件(福岡高判令2.9.17労経速2435号3頁)

北九州市事件(福岡高判令2.9.17労経速2435号3頁)

バス運転手の待機時間のうち1割は労働時間に当たるとした原判決を取り消し、請求がいずれも棄却された裁判例

1.事件の概要

Y市は、交通局を設置してバス事業を営んでいる。Xらは、交通局の嘱託員として雇用され、定期路線バスの運転業務に従事するものである。
交通局では、1日の勤務番のうち、バスが終点に到着した後、次の出発時間まで待機する場所(転回場所)ごとに、その待機の時間を「調整時間」として設定していた。調整時間のうち、乗務員が遺留品の確認、車内清掃、車両の移動等に要する時間を「転回時間」として定め、転回時間を除いた調整時間を「待機時間」と称していた。
Y市は、調整時間のうち、転回時間については労働基準法32条の労働時間として時給を支払っていた。他方、待機時間についてはその時間に応じて1時間当たり140円を待機加算として支払っていた。
また、Y市は、平成24年2月20日付け「転回場所における労働時間の取扱いについて(通知)」と題する文書(以下「本件通知」という)により、転回場所における労働時間・休憩時間の取扱いについての通知を行っていた。

・調整時間=①転回時間+②待機時間
①転回時間:遺留品の確認、車内清掃、車両の移動等⇒労働時間として時給を支給
②待機時間:⇒労働時間ではないが、1時間当たり140円を待機加算

Xらは、Y市に対し、本件の待機時間は手待時間()であって労基法上の労働時間に当たる主張し、未払時間外割増賃金、付加金等の支払いを求めて提訴した。
手待時間とは、作業等に従事していなくても(することがなく手が待っていても)、使用者の指示があれば、直ちに作業に従事しなければならない、使用者の指揮監督下に置かれている時間をいいます。手持時間は、労働時間となります。

原審である福岡地裁判決は、待機時間が一般に労基法上の労働時間に当たるとは認められないとしつつ、転回時間内に終了できない業務が発生したり、転回場所や始発場所でのバス移動等においてもなお労働時間と考えられる時間が全く存在しないとまでは見受けられないこと等から、待機時間のうち1割を労働基準法上の労働時間に当たると認めるのが相当と判示していた。
これに対して、双方控訴したのが本件である。

(原審の要旨)
Xら乗務員は、調整時間中において、乗客の有無や周囲の道路状況等を踏まえて、適切なタイミングでバスを移動させることができるよう準備を整えておかなければならず、また、バスの移動業務がない転回場所やバスの移動業務を終えた後においては、実作業が特になければ休憩をとることができるものの、バスから離れて自由に行動することまで許されているものではなく、一定の場所的拘束性を受けた上、いつ現れるか分からない乗客に対して適切な対応をすることができるような体制を整えておくことが求められていたものであるから、乗務員らは、待機時間中といえども、労働からの解放が保障された状態にはなく、使用者の指揮監督下に置かれているというべきである。
よって、本件の事実関係の下においては、転回時間であるか待機時間であるかを問わず、調整時間の全てが労基法上の労働時間に該当するというべきである。

2.判決の要旨

ア Xら18名は、本件通知は、乗務員が手持時間の限度で自由であることを明らかにしたものであって、待機時間が労基法上の休憩時間であることを周知したものではないと主張する。

しかしながら、本件通知には、調整時間のうち転回時間を労働時間とし、その余の時間(待機時間)を休憩時間とした上で、休憩時間は各自が自由に使える時間とする旨や、突発的業務等で指示された休憩時間を取得できなかった場合には、休憩時間を労働時間に変更するため所定の用紙に記入して提出する必要がある旨が記載されていることからすれば、本件通知が、Y市において、待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱うことを内容とするものであることは明らかである。そして、Y市は、本件通知を点呼場の操車室や乗務員控室に掲示して、その内容を乗務員に対し通知することで、これを周知したものと認めることができる。

イ Xら18名は、Y市が労基法上の休憩時間と待機加算の支給される待機時間(以下「本件待機時間」)とを明確に区別して取り扱ってきたことなどから、交通局の乗務員は、待機時間が労基法上の労働時間ではなく休憩時間として取り扱われていたことを認識しておらず、大半の乗務員は待機時間に労働から解放されているとの認識を有していなかったと主張する。

しかしながら、待機加算は、もともと交通局が当時交通局で唯一の労働組合であったY社交通局労働組合との間で協定書を作成し、労基法上の労働時間として扱っていた調整時間のうち転回時間を除く時間を労基法上の労働時間ではないことを前提として中休手当相当額を支給することとされたことから支給されるようになったものであり、その金額が1時間当たり140円と低額であることに照らすならば、その支払は本件待機時間が休憩時間であることを前提としてされていたものであるというべきである。
そして、Y社は、平成24年2月20日付けの本件通知により、待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱うことを乗務員に周知していたものであり、交通局の労働組合も、平成22年、S3及びS6の各転回場所における待機時間について、乗客が乗車している場合は実働時間とするよう要求し、平成25年4月及び平成26年4月にも、待機時間中の乗車等の勤務の申告を徹底させ、実働時間にすることを求めていたことに照らすならば、本件においてXら18名が支払を求めている未払賃金の期間(平成25年6月から平成29年6月まで。本件請求期間)において、交通局の乗務員は、Y市が待機時間を労基法上の労働時間ではなく休憩時間であると取り扱っており、待機時間には労働から解放されているとの認識を有していたものと認めるのが相当である。

ウ Xら18名は、乗務員が、待機時間中、5分以上にわたってバスを離れることはなく、仮に離れていたとしても、それはトイレに行ったためであると主張する。

しかしながら、ドライブレコーダーの記録によれば、複数の乗務員が、休憩施設の有無にかかわらず、転回場所において5分以上バスから離れることがあったことを認めることができ、その全てがトイレに行く目的であったということはできないから、バスから離れることが許容されていたというべきである。ドライブレコーダーの記録の撮影範囲が限られているなどXら18名の主張する事情は、いずれも同記録の信用性を失わせるものではなく、原審証人Q1の証言及び前件訴訟におけるQ2の証言は、いずれも転回場所から5分以上バスから離れることがあることを否定するものではない。他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。

エ(ア) Xら18名は、Y市が、①本件通知以降も、乗務員に対して、バスを早めに始点バス停につけて乗客を乗せるように指示し、②バスのドアが開く際に「お待たせしました。」との自動音声を流し、③「お客さんから尋ねられたら答えてあげてください。」とか乗客からの質問への対応の仕方等を指示し、④「経営改善についてのQ&A」と題する文書(以下「本件Q&A]という。)のとおり対応するよう指示しているなどとして、乗務員は、待機時間中に乗客対応や車内の温度調整をすることを労働契約上義務付けられていたと主張する。

しかしながら、上記①の指示をもって、乗務員が待機時間中に乗客対応を行うことを義務付けられていたということができないことは、補正して引用した原判決が説示するとおりである。
上記②の自動音声についても、乗務員は、トイレ以外の理由でも、バス車内に乗客を乗せた状態でバスを離れているところ、Y市が、本件通知により、待機時間を休憩時間であると取り扱うことを乗務員に通知し、乗客からの問い合わせに対してもその旨を説明していたことに照らすならば、乗務員がバス車内に乗客を乗せた状態でバスを離れることはY市に許容されていたということができる。

上記③及び④も、労基法上の労働時間として定められた時間中に乗務員が乗客から尋ねられた場合についてのものと解するのが相当であって、乗務員が待機時間をバスの社外で過ごすことを否定するものではない。

これらの事情を総合すると、上記①ないし④の事情をもって、乗務員が待機時間中に乗客対応等の業務をすることを労働契約上義務付けられていたということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
(中略)

(ウ)Xら18名は、乗務員は、車両に異常があれば、待機時間中であっても、点検、修理等のためにバスを移動させたりするよう指示されていたと主張する。

しかしながら、車両に異常が生じた場合の対応は、日常の業務ではなく、そのような業務を行った場合には遅れ時分等報告書によってこれを労基法上の労働時間として申告すべきものであるから、上記対応をするよう指示されていることをもって、乗務員が、待機時間中に突発的なバスの移動に臨機応変に対応することができるよう備えておくことを労働契約上義務付けられていたと評価することはできない。
したがって、乗務員が、待機時間中に突発的なバスの移動に臨機応変に対応することができるよう備えておくことを労働契約上義務付けられていたということはできない。

以上のとおりであるから、本件請求期間中、本件待機時間について、乗務員が労働契約上の役務の提供を義務付けられており、Y市の指揮命令下に置かれていたと認めることはできない。

3.解説

(1)労働時間とは
労基法は、「休憩時間を除き・・労働させてはならない。」(第32条)としており、規制の対象となるのは休憩時間を除く、実際に労働させる時間(実労働時間)です。休憩時間と実労働時間を合わせた時間を拘束時間と呼ぶことがありますが、拘束時間労基法によっては特に規制されていません。
実労働時間には、実際に作業に従事している時間だけではなく、作業と作業との間の待機時間である手待時間も含まれます。労基法は手持時間が特に多い労働を断続的労働として特別扱いしていることが、その表れと考えられます。

(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2.使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの


この手持時間と休憩時間は、次のように区別されます。

手持時間
使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならず、その作業上の指揮命令下に置かれている時間。

休憩時間
使用者の作業上の指揮命令から離脱し、労働から解放され、労働者が自由に利用できる時間。

以上を踏まえて、通説・行政解釈は、労働時間を「労働者が使用者の指揮命令のもとにある時間」と解しており、厚生労働省のパンフレットによると、

① 使用者の明示的・黙示的な指示により労働者が業務を行う時間は労働時間に当たる。
② 労働時間に該当するか否かは、労働契約や就業規則などの定めによって決められるものではなく、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か等によって判断される。

とされています。
f:id:sr-memorandum:20210310200051p:plain:w400
判例も同様に、「労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう」(最一小判平12.3.9民集54巻3号801頁 三菱重工業(会社側上告)事件)とし、工場作業員の始業前・終業前の更衣・移動時間や始業準備行為の時間、ビル管理人の深夜仮眠時間、マンション管理人の居室での不活動時間について、当該更衣・移動や準備を使用者から義務付けられ、または余儀なくされたか、仮眠室での待機や警報や電話への対応を義務付けられていたか、断続的な業務への従事を指示されたか、などによって、使用者の指揮命令下に置かれていると評価できるかどうかを判断しています。
つまり、問題の時間において、労働者が業務に従事しているといえるか、業務従事のための待機中といえるか、それら業務従事またはその待機が使用者の義務付けや指示によるのか、などを考慮して労働性を判断しています。

本件の待機事件について、原審は「いつ現れるか分からない乗客に対して適切な対応をすることができるような体制を整えておくことが求められていたものであるから、乗務員らは、待機時間中といえども、労働からの解放が保障された状態にはなく、使用者の指揮監督下に置かれているというべきである。」としており、業務従事のための待機であって、それが使用者の指示であったと評価し、1割は労働時間に当たる判断したと考えられます。

これに対して、本件では、
ドライブレコーダーの記録などにより、乗務員はトイレ以外の理由でも、バス車内に乗客を乗せた状態でバスを離れている事実がある。
②Y市が、本件通知により、待機時間を休憩時間であると取り扱うことを乗務員に通知し、乗客からの問い合わせに対してもその旨を説明していた。
ことを主な理由として、バス車内に乗客を乗せた状態で、乗務員がバスを離れることをY市に許容されていたと評価され、乗客に対して適切な対応が求められるのは、「労基法上の労働時間として定められた時間中に乗務員が乗客から尋ねられた場合についてのものと解するのが相当」としました。

障害年金診断書の提出期限特例措置について

障害年金診断書の提出特例措置について

障害年金診断書の提出期限について、次のような特例措置が講じられ、提出期限が延長されています。
延長された期限までに障害年金診断書が提出された場合は、障害年金の支払いの一時差止めは行われないようです。


○提出期限が令和3年2月末日の方
 令和3年(2021年)5月末日まで

○提出期限が令和3年3月末日、4月末日または5月末日の方
 令和3年(2021年)6月末日まで


詳細はこちら
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2021/202103/0308sindansho.html

(3月5日時点)雇用調整助成金の緊急事態宣言等対応特例について

(3月5日時点)雇用調整助成金の緊急事態宣言等対応特例について


すでに発表されている緊急事態宣言等対応特例について、最新情報が公表されましたので概要をまとめました。

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000743294.pdf

1.雇用調整助成金の特例措置に係る大企業の助成率の引き上げ

雇用調整助成金では、これまで大企業の助成率は最大で3/4でしたが、緊急事態宣言に伴い、以下に示す大企業の助成率が最大10/10となります。

(1)特に業況が厳しい全国の事業主

【対象となる事業主】
AとBそれぞれの月平均値の生産指標(売上げ高等)を比較し、Aが30%以上減少している事業主
A:令和3年1月(※)から遡って3か月間の生産指標
※休業の初日が令和3年2月1日以降にある場合においては、休業の初日が属する月
B:Aの3ヶ月間の生産指標に対して、前年同期または前々年同期の生産指標

f:id:sr-memorandum:20210225205332p:plain

【対象となる休業等】
1月8日から4月末までの休業等(短時間休業を含む)

【助成率】
解雇等を行わなかった場合:10/10
解雇等を行った場合:4/5

(2)営業時間の短縮等に協力する事業主

【対象となる事業主】
以下のすべてを満たす飲食店や催物(イベント等)を開催する事業主等
①特定都道府県知事による要請等を受けて、
②緊急事態措置を実施すべき期間を通じ、
③要請等の対象となる施設(要請等対象施設)の全てにおいて、
④営業時間の短縮、収容率・人数上限の制限、飲食物の提供を控えることに協力する

【対象となる休業等】地域により異なります
要請等対象施設における以下の期間(※1)を含む判定基礎期間の休業等(短時間休業を含む)

・埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県:令和3年1月8日~令和3年4月30日
・栃木県、岐阜県、愛知県、京都府大阪府兵庫県、福岡県:令和3年1月14日~令和3年3月31日


【助成率】
解雇等を行わなかった場合:10/10
解雇等を行った場合:4/5

※1:各特定都道府県における緊急事態措置を実施すべき期間及びその末日の翌月末までの期間

2.雇用維持要件の緩和

【対象となる事業主】①と②は全国・③~④は地域毎
①直近3ヶ月の生産指標が前年(又は前々年)同期と比べて30%以上減少している全国の大企業事業主
全国の中小企業事業主
③埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の知事の要請を受けて営業時間の短縮等に協力している大企業事業主
④栃木県、岐阜県、愛知県、京都府大阪府兵庫県、福岡県の知事の要請を受けて営業時間の短縮等に協力している大企業事業主

【緩和の内容】
上記の【対象となる事業主】について、緊急事態宣言等対応特例の対象となる期間の休業等の雇用維持要件について、
○比較期間が、
「令和2年1月24日から判定基礎期間の末日まで」 から
令和3年1月8日から判定基礎期間の末日まで
に変更されます。
○「判定基礎期間末日の労働者数が各月末の労働者数平均の4/5以上」の要件を適用外となります。

比較期間(令和3年1月8日から判定基礎期間の末日まで)に
 解雇等を行わなかった場合は助成率10/10
 解雇等を行った場合は助成率4/5

(助成率のチェック)
f:id:sr-memorandum:20210308212218p:plain

※3:Ⅰ~Ⅳの分類

①特に業況の厳しい全国の大企業事業主
②全国の中小企業事業主
③埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県で要請を受けて営業時間の短縮等に協力している大企業事業主
 ④栃木県、岐阜県、愛知県、京都府大阪府兵庫県、福岡県で要請を受けて営業時間の短縮等に協力している大企業事業主
 Ⅰ~Ⅲ以外の事業主
※4:Ⅰ-③・Ⅱの企業における要請等対象施設以外の施設における休業等については、Ⅳの企業と同様です。(雇用維持要件の緩和は適用されません)。
※5:「判定基礎期間末日の労働者数が各月末の労働者数平均の4/5以上」が適用されます。

3.緊急事態宣言等対応特例の支給申請

(1)提出書類

特例の対象となる休業等についてまだ申請していない事業主は、令和3年5月31日までに次の書類を提出します。

①営業時間の短縮等に協力する大企業事業主
「追加支給申請に係る申出書(様式)」、「事業活動の状況に関する申出書(様式)」、「支給要件確認申立書(様式)」、「支給申請書(様式)」、「助成額算定書【要請対象施設/要請対象施設以外】(様式)」、「休業実績一覧表【要請対象施設/要請対象施設以外】(様式)」、「休業協定書」、「生産指標の確認のための書類」、「休業させた日や時間がわかる書類」、「要請対象施設の所在地、その施設における対象労働者を確認できる書類」

②特に業況が厳しい全国の大企業事業主
「追加支給申請に係る申出書(様式)」、「事業活動の状況に関する申出書(様式)」、「支給要件確認申立書(様式)」、「支給申請書(様式)」、「助成額算定書(様式)」、「休業実績一覧表(様式)」、「休業協定書」、「生産指標の確認のための書類(30%以上の減少がわかる書類)」、 「休業させた日や時間がわかる書類」

③中小企業事業主
「追加支給申請に係る申出書(様式)」、「事業活動の状況に関する申出書(様式)」、「支給要件確認申立書(様式)」、「支給申請書(様式)」、「助成額算定書(様式)」、「休業実績一覧表(様式)」、「休業協定書」、「生産指標の確認のための書類」、 「休業させた日や時間がわかる書類」

※:特例の対象となる休業等についてすでに支給申請している事業主の方は、4を参照して下さい。
※:2回目以降の申請では提出が不要な書類もあります。詳しくは雇用調整助成金ガイドブックをご覧下さい。

(2)申請期限

通常は、判定基礎期間の末日の翌日から起算して2か月以内に支給申請を行う必要がありますが、緊急事態宣言等対応特例に係る申請については、令和3年3月31日までに判定基礎期間の末日がある休業等について、令和3年5月31日まで申請を可能とします。
f:id:sr-memorandum:20210225212200p:plain

4.その他

支給申請はお済みでまだ支給決定されていない事業主の方
● 管轄の労働局等にご連絡下さい
● 差額(追加支給分)をどのような形で支払うか、管轄の労働局にお伺いください。
※ 審査の状況によっては、一旦支給決定し、そのあと追加支給申請となる場合があります。

すでに支給決定された事業主の方
● 追加支給のために、追加支給申請の手続きが必要となります
● 令和3年5月31日までに次の書類をご提出ください

①営業時間の短縮等に協力する大企業事業主
「追加支給申請に係る申出書(様式)」、「支給要件確認申立書(様式)」、「支給申請書(様式)」、「助成額算定書【要請等対象施設/要請等対象施設以外】(様式)」、「休業等実績一覧表【要請等対象施設/要請等対象施設以外】(様式)」、「支給決定通知書」、「休業させた日や時間がわかる書類(対象労働者を増やした場合)」「要請等対象施設の所在地、その施設における対象労働者を確認できる書類」

②特に業況が厳しい全国の大企業事業主
「追加支給申請に係る申出書(様式)」、「事業活動の状況に関する申出書(様式)」、「支給要件確認申立書(様式)」、「支給決定通知書」、「生産指標の確認のための書類」、「休業させた日や時間がわかる書類(対象労働者を増やした場合)」

③中小企業事業主
「追加支給申請に係る申出書(様式)」、「支給要件確認申立書(様式)」、「支給決定通知書」、「休業させた日や時間がわかる書類(対象労働者を増やした場合)」

お問い合わせ先

ご不明な点は、下記のコールセンターもしくは最寄りの都道府県労働局およびハローワークまでお問い合わせ下さい。

学校等休業等助成金・支援金、雇用調整助成金コールセンター
0120-60-3999  受付時間9:00~21:00 土日・祝日含む

5.主なQ&A

その他のQ&Aはこちらをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

Q.両方の特例内容に該当するのですが、どちらを選べば良いでしょうか

業況に関する特例は全国で適用されますので、業況に関する特例をお選び下さい。

Q.特例に係る支給申請はどうやって行えばよいですか。

特例用の様式を厚生労働省のホームページに掲載していますので、ダウンロードいただいた上で申請を行ってください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyouchouseijoseikin_20200410_forms.html

Q.既に特例用の様式を使わずに支給申請を行ってしまったのですが、どうしたら良いでしょうか

まずは、管轄の労働局等にご連絡下さい。既に支給決定通知書をお受け取りになっている場合は、所定の様式を用いて追加支給申請を行っていただくことになります。

Qこれまで二若しくは三の連続する判定基礎期間をまとめて支給申請をしてきましたが、本特例が実施された後も特例実施前と実施後の判定基礎期間をまとめて支給申請できるでしょうか。

まとめて支給申請をしていただくことは可能です。その際、緊急事態宣言等対応特例の期間とその前の期間で支給請書類が異なりますので、必ずそれぞれの判定基礎期間ごとに申請書類の作成を行って下さい。

Q.助成率引き上げの対象となる休業等の期間がよくわかりません。

特に業況の厳しい事業主の方については、全国一律で、令和3年1月8日~令和3年4月30日までを1日でも含む判定基礎期間の休業等が対象となります。
・営業時間の短縮等に協力する事業主の方については、各都道府県における緊急事態措置を実施すべき期間及びその翌月末までの期間を1日でも含む判定基礎期間の休業等が対象となります。
例)栃木県の場合:令和3年1月14日~令和3年3月31日までを1日でも含む判定基礎期間

Q特定都道府県以外の都道府県に事業所を設置している事業主が、特定都道府県内の要請等対象施設において要請等に応じて休業等を実施した場合、特例の対象となりますか。

特定都道府県内で要請等対象施設について実施する休業については対象となります。

Q.特定都道府県内で要請等対象施設において休業等を実施している事業主が、要請等対象施設以外の施設についても休業をしています。この場合、要請等対処施設に該当しない施設の助成率はどのようになるでしょうか。また、支給申請はどのように行うのでしょうか。

特定都道府県の知事の要請等の内容(期間、施設の制限等)に応じて協力する店舗で就労する労働者のみが対象になります。そのため、本特例事業主が実施した要請等対象施設以外の施設での休業等には従来の助成率(最大3/4)、及び雇用維持要件(令和2年1月24日からの確認)が適用されます。
支給申請を行う場合は、要請等対象施設、要請等対象施設以外の施設についてそれぞれ所定の様式を作成し、申請を行ってください。


f:id:sr-memorandum:20210308213356j:plain:w400
f:id:sr-memorandum:20210308213520j:plain:w400
f:id:sr-memorandum:20210308213550j:plain:w400
f:id:sr-memorandum:20210308213704j:plain:w400
f:id:sr-memorandum:20210308213745j:plain:w400
f:id:sr-memorandum:20210308213817j:plain:w400

令和3年3月末から電子申請に限り36協定届の本社一括申請が可能になります!!

令和3年3月末から電子申請に限り36協定届の本社一括申請が可能になります!!

これまでは、全ての事業場について1つの過半数労働組合と36協定を締結している場合のみ、本社一括届出が可能でしたが、令和3年3月末から、事業場ごとに労働者代表が異なる場合であっても、電子申請に限り36協定の本社一括届出が可能になります。

私は、約400の店舗がある会社の本社で総務をしていたことがありますが、全国の店舗から捺印してもらった36協定と従業員代表者選出の回議用紙(各従業員が賛否に○を付けて署名したもの)を回収し、内容をチェックし、各店舗の所轄労働基準監督署に郵送で提出し、さらに控えを返送してもらうというすごく無駄で骨の折れることをやってました。

それを思うと感慨深いものがあるので、ちょっと考察してみると、以前は次のようなプロセスです。

① 36協定締結の依頼(本社から通達)
② 36協定届等を本社に提出(郵送)
③ 36協定届と回議用紙の内容をチェック
④ 36協定届を労基署に提出(郵送)
⑤ 36協定控えを本社で受理(郵送)
⑥ 36協定控えを各店舗にPDFで送信(メール)

実際、今どうやっているかは知りませんが、電子申請による本社一括申請でこのプロセスはどうなるでしょうか?

電子申請であっても、各店舗で作成して調印した36協定の内容を確認のうえ、申請する必要があります。
従って、本社で一括申請するにしても、店舗から原本のPDF等を電子メールなどで送ってもらうことは必要になりますので、プロセス数自体は次のように変わりません。

① 36協定締結の依頼(本社から通達)
② 36協定届等を本社に提出(メール)
③ 36協定届と回議用紙の内容をチェック
④ 36協定届を労基署(電子申請)
⑤ 36協定控えを本社で受理(PC画面)
⑥ 36協定控えを各店舗にPDFで送信(メール)

でも、郵送のところが全てメールと電子申請で済むようになり、郵送費と郵送に要する時間も節減できるため、やはり画期的に効率よくなります。

ちなみに、現在勤務している社労士事務所では、クライントのほとんどで、36協定届が36協定を兼ねているため、労使双方の捺印がある36協定届の原本をお預かりし、その内容に基づいて提出代行しています。

f:id:sr-memorandum:20210305205113p:plain:w400


f:id:sr-memorandum:20210305211520j:plain:w300
f:id:sr-memorandum:20210305211551j:plain:w300

令和7年4月より高年齢雇用継続給付が縮減!!

令和7年4月より高年齢雇用継続給付が縮減!!

1.改正の趣旨

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)による高年齢者雇用確保措置の進展等を踏まえ、高年齢雇用継続給付の給付率が見直されます。

2.改正の内容

○ 令和7年度から新たに60歳となる労働者への同給付の給付率を15%から10%に縮小(令和7年4月1日施行)
※ 賃金と給付の合計額が60歳時点の賃金の70.4%を超え75%未満の場合は逓減した率
※ 令和7年3月31日までに60歳になっている方(誕生日が昭和40年4月2日以前の方)は、従前どおりの給付率
※ 見直しに当たり、高年齢労働者の処遇の改善に向けて先行して取り組む事業主に対する支援策とともに、同給付の給付率の縮小後の激変緩和措置についても併せて講ずる。

【改正前の内容】
被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者であって、60歳以後の各月に支払われる賃金が原則として60歳時点の賃金額の75%未満となった状態で雇用を継続する高年齢者に対し、65歳に達するまでの期間について、60歳以後の各月の賃金の15%を支給。
※賃金と給付の合計額が60歳時点の賃金の70.15%を超え75%未満の場合は逓減した率

改正前(現行)についての詳細はこちらをご確認ください。
sr-memorandum.hatenablog.com

3.支給額の見込み

昨年こちらで予想したとおりの計算式になるものと思われます。
sr-memorandum.hatenablog.com

θ=\frac{賃金額}{60歳到達時の賃金}    (1)
支給額=賃金額×α    (2)

θ≧75% ⇒ α=0
75%>θ≧64% ⇒ α=\frac{24-32×θ}{55×θ}
64% >θ ⇒ α=0.1

式(1)と式(2)より、
\frac{賃金+支給額}{60歳到達時の賃金}  =θ(1+α)

θ=64%とすると、α=0.1なので、

\frac{賃金+支給額 }{60歳到達時の賃金}   =64%×(1+0.1)=70.4%

となり、賃金と給付の合計額が60歳時点の賃金の70.4%を超え75%未満の場合は逓減した率となることがいえ、パンフレットの内容と矛盾しないためです。

実際に式を当てはめてグラフにしてみました。
f:id:sr-memorandum:20210303203940p:plain:w300
(注) %は60歳時点の賃金に対する割合です。

なお、60歳到達時の賃金には上限があり、賃金にも最低額の定めがあります。

4.高年齢労働者処遇改善促進助成金(仮称)について

※創設される予定のものです。

①概要

○雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を推進する等の観点から、60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇の改善に向けて取り組む事業主に対し支援を行う。

②支給対象事業主

雇用保険適用事業所であって、以下の要件をいずれも満たす事業主
・60歳から64歳までの高年齢労働者の賃金規定等を改定し、6か月以上適用していること。
・当該事業所に雇用される労働者に係る高年齢雇用継続基本給付金の受給額が一定割合(賃金規定等改定前後を比較して95%)以上減少していること。

高年齢雇用継続基本給付金の受給額が一定割合減少していることの意義
事業主が賃金を増やす(θを増加させる)ことによって、支給額増やすこと意味しています。例えば、高年齢雇用継続基本給付金を受給している従業員の賃金を、60歳到達時の賃金の75%以上にすれば給付金の額は0円に減少します。

③助成内容等

○当該事業所に雇用される労働者(申請対象期間の初日において雇用されている者に限る。)に係る、賃金規定等改定前後を比較した高年齢雇用継続基本給付金の減少額に、以下の助成率を乗じた額を助成
       ・大企業:2/3 中小企業:4/5

※ 助成率は令和4年度までの率。令和5・6年度は、大企業:1/2、中小企業:2/3となる予定。
※ 1回の申請の対象期間は6か月とし、最大4回(2年間)まで申請可能。2回目以降も、初回の申請時に適用された助成率を適用。

f:id:sr-memorandum:20210303204945j:plain:w400
f:id:sr-memorandum:20210303204953j:plain:w400