社会保険労務士川口正倫のブログ

横浜市の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



2021年4月1日から36協定届が新しくなります

2021年4月1日から36協定届が新しくなります

特に区別していない会社も多いとは思いますが、36協定と36協定というのは別のものです。
36協定という、使用者と労働者の間の契約を締結し、締結した旨とその概要を労働基準監督署に届け出るのが36協定です。
今回、押印・署名が廃止されるのは、36協定についてです。
一方、36協定の方は労基署に提出しないとはいえ、契約の一種ですので、通常の契約書と同様に、締結したことを証することができるよう、記名押印もしくは署名をして会社で保管しておくことになります。
ですので、押印・署名をしなくても労働基準監督署に36協定を提出することはできますが、36協定届と36協定を区別していない会社では、これまでと同様に記名押印もしくは署名により提出すべきです。


1.主な変更点

①36協定届における押印・署名の廃止

労働基準監督署に届け出る36協定届について、使用者の押印及び署名が不要となります。
※記名はしていただく必要があります。

②36協定の協定当事者に関するチェックボックスの新設

36協定の適正な締結に向けて、労働者代表(※)についてのチェックボックスが新設されます。
※労働者代表:事業場における過半数労働組合又は過半数代表者

2.施行時期

2021年4月1日

3.新書式

こちらからダウンロードできます。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/index.html

記載例
https://www.mhlw.go.jp/content/000708408.pdf

2022年4月1日より有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

2022年4月1日より有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

このリンクの法改正の内容によると、有期雇用労働者の育児及び介護休業取得要件及び各休業給付のうち、引き続き雇用された期間が1年以上という要件が無くなり、緩和されるようです。
ただし、第6条1項並びに2項、及び第12条2項の規定に変更はないため、労使協定により「当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない労働者」について、育児休業及び介護休業を取得することができない旨を定めれば、いずもれ取得できないことは従前どおりです。

2022年(令和4年)4月1日改正施行の育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の条文
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000806832.pdf


雇用保険法施行規則改正内容
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H210726L0050.pdf


育児介護休業法

施行日:2022年(令和4年)4月1日

育児休業の申出:

【現 行】
育児休業の申出)
第5条 労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、次の各号のいずれにも該当するものに限り、当該申出をすることができる。
一 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者

 その養育する子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者

2(現行どおり)
3 労働者は、その養育する1歳から1歳6か月に達するまでの子について、次の各号のいずれにも該当する場合に限り、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者であってその配偶者が当該子が1歳に達する日(以下「1歳到達日」という。)において育児休業をしているものにあっては、第1項各号のいずれにも該当するものに限り、当該申出をすることができる。
一 ~ 二(条文省略)

4~7(条文省略)


【変更後】
育児休業の申出)
第5条 労働者は、その養育する1歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、その養育する子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの。第3項及び第11条第1項において同じ。)が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。

3 労働者は、その養育する1歳から1歳6か月に達するまでの子について、次の各号のいずれにも該当する場合に限り、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者であってその配偶者が当該子が1歳に達する日(以下「1歳到達日」という。)において育児休業をしているものにあっては、当該子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。
一 ~ 二(条文省略)

4~7(条文省略)

※第5条2号に「第3項及び第11条第1項において同じ。」という文言が追加されたことから、「当該子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約が・・・」の「労働契約」は「労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの」となります。


介護休業の申出

【現行】
(介護休業の申出)
第11条 労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、次の各号のいずれにも該当するものに限り、当該申出をすることができる。

一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年以上である者

 第3項に規定する介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6月を経過する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者

2~4(省略)


【変更後】
(介護休業の申出)
第11条 労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、第3項に規定する介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。

※「(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)」が削除されたのは、第5条2号に「第3項及び第11条第1項において同じ。」という文言が追加されたことによるものです。

雇用保険法施行規則

施行日:2022年(令和4年)4月1日(4月1日以降の休業より、適用になるようです)

育児休業給付:

【現 行】
(法第61条の7第1項の休業)
第101条の22 育児休業給付金は、被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この款において同じ。)が、次の各号のいずれにも該当する休業(法第61条の7第3項に規定する支給単位期間において公共職業安定所長が就業をしていると認める日数が10日(十日を超える場合にあつては、公共職業安定所長が就業をしていると認める時間が80時間)以下であるものに限る。)をした場合に、支給する。

一 ~ 三(条文省略)
四 期間を定めて雇用される者にあつては、次のいずれにも該当する者であること。

イ その事業主に引き続き雇用された期間が一年以上である者

 その養育する子が一歳六か月に達する日までに、その労働契約(契約が更新される場合にあつては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者


【変更後】
(法第61条の7第1項の休業)
第101条の22 育児休業給付金は、被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この款において同じ。)が、次の各号のいずれにも該当する休業(法第61条の7第3項に規定する支給単位期間において公共職業安定所長が就業をしていると認める日数が10日(十日を超える場合にあつては、公共職業安定所長が就業をしていると認める時間が80時間)以下であるものに限る。)をした場合に、支給する。

一 ~ 三(現行どおり)
四 期間を定めて雇用される者にあつては、その養育する子が一歳六か月に達する日までに、その労働契約(契約が更新される場合にあつては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者であること。

介護休業給付

【現 行】
(法第61条の4第1項の休業)
第101条の16 介護休業給付金は、被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この款において同じ。)が、次の各号のいずれにも該当する休業(法第16条の4第3項に規定する支給単位期間において公共職業安定所長が就業をしていると認める日数が10日以下であるものに限る。)をした場合に、支給する。

一 ~ 三(条文省略)
四 期間を定めて雇用される者にあつては、次のいずれにも該当する者であること。

イ その事業主に引き続き雇用された期間が一年以上である者

ロ 介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約(契約が更新される場合にあつては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者


【変更後】
(法第61条の4第1項の休業)
第101条の16 介護休業給付金は、被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この款において同じ。)が、次の各号のいずれにも該当する休業(法第16条の4第3項に規定する支給単位期間において公共職業安定所長が就業をしていると認める日数が10日以下であるものに限る。)をした場合に、支給する。

一 ~ 三(現行どおり)
四 期間を定めて雇用される者にあつては、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約(契約が更新される場合にあつては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者であること。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の対象となる休業期間及び申請期限の延長

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の対象となる休業期間及び申請期限の延長

予想通り延長されました。
感染者数が増える一方ですが、個人的には「独りめし専用営業」で飲食店とカフェの通常営業ぐらいは認めてもらいたいです。素人の考えですが、ウイルスは胃に流されれば胃酸で死滅するので、本来は飲食中に感染するリスクは少ないと思います。食べたり飲んだりするのを止めて長話していると、感染するんじゃないんですかね。

なお、雇用調整助成金やこの新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金で支出が増えてるため、雇用保険の保険料率の値上げが検討されているようです。

以下に、厚生労働省のホームページの内容をそのまま掲載します。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20061.html


新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(以下「休業支援金」という。)について、中小企業のシフト制労働者等の令和2年4月から9月までの休業に関する申請期限などを令和3年7月末としていたところですが、今般、対象となる休業期間及び申請期限を下記のとおり延長することとしましたのでお知らせします。

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① 令和2年10 月30 日公表のリーフレットの対象となる方(下記のいずれかに該当する方)
・いわゆるシフト制、日々雇用、登録型派遣で働かれている方
・ショッピングセンターの休館に起因するような外的な事業運営環境の変化に起因する休業の場合
・上記以外の方で労働条件通知書等により所定労働日が明確(「週〇日勤務」など)であり、かつ、労働者の都合による休業ではないにもかかわらず、労使で休業の事実について認識が一致しない場合

② 労働契約上、労働日が明確でない方(シフト制、日々雇用、登録型派遣)
その他の詳しい情報については、厚生労働省の休業支援金のHPをご覧下さい。
(参考)休業支援金・給付金HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/kyugyoshienkin.html

「業務改善助成金」の特例的な要件が8月より緩和・拡充

「業務改善助成金」の特例的な要件が8月より緩和・拡充

厚生労働省により、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引き上げを図るため、「業務改善助成金」制度が設けられていますが、新型コロナウイルス感染症の影響により、特に業況が厳しい中小企業・小規模事業者に対して、8月1日から、対象人数の拡大や助成上限額の引き上げが行われます。
また、助成対象となる設備投資の範囲の拡大や、45円コースの新設・同一年度内の複数回申請を可能にするなど、使い勝手の向上が図られるようです。
この制度では、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げ、生産性を向上するための設備投資などを行う中小企業・小規模事業者に対し、設備投資などに要した費用の一部が助成されます。
ちなみに、全ての地域で28円を目安に、10月から最低賃金が引き上げられる見込みです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19902.html

詳細は、下記の及びホームページをご覧ください。
また、ホームページの中に、制度の概要や申請書の記載方法などを解説した動画を掲載される予定とのことです。

助成金制度の詳細はこちら 】
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsu

1.業務改善助成金とは

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。 生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部が助成されます。
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(※1)10人以上の上限額区分は、以下のいずれかに該当する事業場が対象となります。
・賃金要件:事業場内最低賃金900円未満の事業場
・生産量要件:売上高や生産量などの事業活動を示す指標の直近3ヶ月間の月平均値が前年又は前々年の同じ月に比べて、30%以上減少している事業者
(※2)ここでいう「生産性」とは、企業の決算書類から算出した、労働者1人当たりの付加価値を指します。助成金の支給申請時の直近の決算書類に基づく生産性と、その3年度前の決算書類に基づく生産性を比較し、伸び率が一定水準を超えている場合等に、加算して支給されます。

2.支給の要件

① 賃金引上計画を策定すること
計画により、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる(就業規則等に規定)

② 引上げ後の賃金額を支払うこと
③ 生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと
( (1) 単なる経費削減のための経費、 (2) 職場環境を改善するための経費、 (3)通常の事業活動に伴う経費などは除きます。)
④ 解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと など

※その他、申請に当たって必要な書類があります。

3.助成額

申請コースごとに定める引上げ額以上、事業場内最低賃金を引き上げた場合、生産性向上のための設備投資等にかかった費用に助成率を乗じて算出した額を助成します(千円未満端数切り捨て)。 なお、申請コースごとに、助成対象事業場、引上げ額、助成率、引き上げる労働者数、助成の上限額が定められていますので、ご注意ください。

4.生産性向上に資する設備・機器の導入例

・POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
・顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
・専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上 など

5.特に業況の厳しい事業主(※1)への特例

(※1)前年又は前々年比較で売上等▲30%減

①対象人数の拡大 ・ 助成上限額引上げ

現行では、賃金引上げ対象人数について、最大「7人以上」としているところ、最大「10人以上」のメニューを増設し、助成上限額を450万円から600万円へ 拡大 。
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②設備投資の範囲の拡充

現行では自動車(特種用途自動車を除く)やパソコン等の購入は対象外。コロナ禍の影響を受ける中にあっても、賃金引上げ額を30円以上とする場合には、以下の通り、生産性向上に資する自動車やパソコン等を補助対象に拡充。
・乗車定員11人以上の自動車及び貨物自動車
・パソコン、スマホタブレット等の端末及び周辺機器(新規導入)

6.全事業主を対象とする特例

①45円コースの新設

現行で最も活用されている30円と60円の中間に45円コースを増設。選択肢を増やすことで使い勝手が向上。

②同一年度内の複数回申請

現行では、同一年度内の複数回受給を認めていないが、年度当初に助成金を活用し、賃上げを実施した事業場であっても、10月に最賃の引上げが行われ、再度賃上げを行うケースが想定されるため、年度内の複数回申請を可能とする。

2021年(令和3年)9月1日から、育児休業給付に関する被保険者期間の要件を一部変更になります

2021年(令和3年)9月1日から、育児休業給付に関する被保険者期間の要件を一部変更になります

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000809393.pdf


育児休業給付金」の被保険者期間の要件が、2021年(令和3年)9月1日から一部変更となります。
これにより、これまで要件を満たさなかった場合でも、支給の対象となる可能性があります。
特に、勤務開始後1年程度で産休に入った方などは対象となる可能性がありますので、一度ご確認ください。

原則の育児休業給付の被保険者期間

【現行】
育児休業開始日を起算点として、その日前2年間に賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上(*1)ある完全月が12か月以上あること。

【改正後】(追加:ANDではなくOR
被保険者期間において上記要件を満たさないケースでも、産前休業開始日等(*2)を起算点として、その日前2年間に賃金支払基礎日数(就労日数)が11日以上(*1)ある完全月が12か月以上ある場合には、育児休業給付の支給に係る被保険者期間要件を満たすものとなる。

*1 11日以上の月が12か月ない場合、完全月で賃金支払基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として算定します。
*2 産前休業を開始する日前に子を出生した場合は「当該子を出生した日の翌日」、産前休業を開始する日前に当該休業に先行する母性保護のための休業をした場合は「当該先行する休業を開始した日」を起算点とします。

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育児休業開始の直前まで、産前産後休業を取得すると、育児休業開始日を基準にすると、直前の2か月から3か月(14週間)の間は就労日数が11日に満たないことになります。産前産後休業の直後に育児休業を開始することが制度設計上予定されているにも関わらず、不利な扱いになってしまうため、改正前の条件を満たさない場合は、産前休業開始日等を基準とすることを可能にするための変更です。

[休業開始時賃金月額証明書の記載の仕方]

改正後の方法によって被保険者期間を確認する場合、休業開始時賃金月額証明書の④および⑦の「休業等を開始した日」欄に産前休業開始日等を記載してください。それ以外の記載方法はこれまでと同様です。
詳しくは、事業所の所在地を管轄するハローワークにご相談ください。

【解雇】小川建設事件(東京地決昭57.11.19労働判例397号30頁)

小川建設事件(東京地決昭57.11.19労働判例397号30頁)

1.事件の概要

Xは、総合建設業、一般土木建築工事等を目的とするY社の町田営業所で事務員として勤務していた。 Xの町田営業所での勤務時間は午前8時45分から午後5時15分までであり、その具体的職務内容は本社・外回りの社員・顧客からの電話連絡の処理、営業所内の清掃、本社と営業所との通信事務、営業所内の書類整理等であった。
XはY社に勤務する傍ら、神奈川県模原市所在のキャバレーAにおいて、昭和55年4月8日から同年5月15日まではリスト係として、また同年6月10日からは会計係として勤務した。Xの同キャバレーでの勤務時間は午後6時から午前0時までであり、リスト係としての職務内容はホステス、客の出入りチェックであり、会計係の職務内容は客からの飲食代金の領収、ホステスの指名料、ドリンク料等の記帳であった。
なお、Xは昭和56年3月4日以降同キャバレーの勤務をやめており、この点に関して、Xは、同人は同キャバレーから解雇されたものであるところ同解雇は無効であるとして、同キャバレーに対する地位保全等仮処分を横浜地方裁判所に申請していたが、昭和57年9月30日、債権者は同キャバレーを自己都合により退職したものであつて解雇されたものではないとの理由等により、同申請は却下されるに至つた。
Y社の就業規則第31条には「社員が次の各号の一に該当するときは、その情状に応じ前条の規定による制裁を行う。......(4)会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇われたとき......」なる定めが存在し、同第30条において制裁の種類として、譴責・減給・出勤停止・昇給停止・降格・論旨解雇・懲戒解雇を規定しているところ、Xの前記キャバレーAへの二重就職がY社に知れるところとなり、Y社はXに対し、昭和57年1月23日付内容証明郵便により、右二重就職は会社就業規則第31条4項に該当するので懲戒解雇にすべきところを通常解雇にとどめるとして、通常解雇の意思表示をなし、同意思表示は、昭和57年1月25日、Xに到達した。
これに対して、Xが従業員としての地位保全と賃金支払の仮処分を求めたのが本件である。

2.判決の概要

① 就業規則における兼業制限規定の合理性
法律で兼業が禁止されている公務員と異り、私企業の労働者は一般的には兼業は禁止されておらず、その制限禁止は就業規則等の具体的定めによることになるが、労働者は労働契約を通じて一日のうち一定の限られた時間のみ、労務に服するのを原則とし、就業時間外は本来労働者の自由であることからして、就業規則で兼業を全面的に禁止することは、特別な場合を除き、合理性を欠く。しかしながら、労働者がその自由なる時間を精神的肉体的疲労回復のため適度な休養に用いることは次の労働日における誠実な労働提供のための基礎的条件をなすものであるから、使用者としても労働者の自由な時間の利用について関心を持たざるをえず、また、兼業の内容によつては企業の経営秩序を害し、または企業の対外的信用、体面が傷つけられる場合もありうるので、従業員の兼業の許否について、労務提供上の支障や企業秩序への影響等を考慮したうえでの会社の承諾にかからしめる旨の規定を就業規則に定めることは不当とはいいがたく、したがつて、同趣旨のY社就業規則第31条4項の規定は合理性を有するものである。

② Xの行為のY社就業規則第31条4項該当性
Y社は、Xの採用面接にあたつて他へ二重就職する予定であることをY社に告知し、Y社はこれにつき黙示の承諾を与えた旨主張するが、本件疎明資料および審尋の結果によれば、Xは、Y社採用面接に際し、月給として最低13三万円を希望し、月給が13万円に満たない場合には他にアルバイトすることも考えなければ生活していけない旨を述べたことは窺われるが、その後、実際にキャバレーAに勤務を始めるにあたって、XがY社に対してその勤務先や勤務内容等を具体的に特定して二重就職の具体的承諾を求めたこと、あるいは、Y社がXの二重就職をすることを黙示に承諾していたことを認める疎明はなく、したがつて、X者の右キャバレーへの勤務は債務者就業規則第31条4項にいう「会社の承諾を得ないで在籍のまま他に雇われたとき」に該当するものと認めることができる。

③ 本件解雇の相当性
Y社就業規則第31条4項の規定は、前述のとおり従業員が二重就職をするについて当該兼業の職務内容が会社に対する本来の労務提供に支障を与えるものではないか等の判断を会社に委ねる趣旨をも含むものであるから、本件Xの兼業の職務内容のいかんにかかわらず、債権者が債務者に対して兼業の具体的職務内容を告知してその承諾を求めることなく、無断で二重就職したことは、それ自体が企業秩序を阻害する行為であり、Y社に対する雇用契約上の信用関係を破壊する行為と評価されうるものである。 そして、本件Xの兼業の職務内容は、Y社の就業時間とは重複してはいないものの、軽労働とはいえ毎日の勤務時間は6時間に互りかつ深夜に及ぶものであつて、単なる余暇利用のアルバイトの域を越えるものであり、したがつて当該兼業がY社への労務の誠実な提供に何らかの支障をきたす蓋然性が高いものとみるのが社会一般の通念であり、事前にY社への申告があつた場合には当然にY社の承諾が得られるとは限らないものであつたことからして、本件Xの無断二重就職行為は不問に付して然るべきものとは認められない。
更に、審尋の結果および本件疎明資料によれば、Xには、本件二重就職の影響によるものか否かは明らかではないが、就業時間中居眠りが多く、残業を嫌忌する等の就業態度がみられ、また、本件解雇後の事情ではあるが、Y社は、X採用面接に際して債務者に提出した履歴書中には「クラブB」や「C株式会社」等水商売関係への勤務経歴を脱漏させていた節がみられることや、前記キャバレーAでの地位保全等仮処分事件のX本人尋問において、後の供述で訂正はしたものの、Y社に雇用されている事実を隠蔽する供述をしたことなどがY社のXに対する信用を一層失わしめることとなつたことがそれぞれ認められる。
これらの事情を総合すれば、Y社が前記Xの無断二重就職の就業規則違背行為をとらえて懲戒解雇とすべきところを通常解雇にした処置は企業秩序維持のためにやむをえないものであつて妥当性を欠くものとはいいがたく、本件解雇当時債権者は既に前記キャバレーAへの勤務を事実上やめていたとの事情を考慮しても、右解雇が権利濫用により無効であるとは認めることができない。

3.解説

従業員の兼業を禁止する就業規則の規定ついて、「就業規則で兼業を全面的に禁止することは、特別な場合を除き、合理性を欠く。」としながらも、兼業の許可制については合理的であるとし、Y社就業規則第31条4項の規定の効力を認めています。
ここで、就業規則の合理性が問題となっているのは、当時は判例法理であった「合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められる。」(秋北バス事件 最大判昭和43.12.25民集22巻13号3459頁)という論法に沿うものです。なお、現在この法理は労働契約法第7条に明文化されています。
本裁判例は下級審なので、終局的にどうかはわかりませんが「就業規則で兼業を全面的に禁止することは、特別な場合を除き、合理性を欠く。」ということは、兼業を全面的に禁止した規定は合理性を欠くため、従業員と会社の間の労働契約の内容ではない(禁止した規定自体が無効)と判断される可能性があります。(もっとも、限定的な解釈により、「会社が許可しなかった場合に禁止する趣旨である」と判断される可能性もありますが)

労働契約法第7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。

Y社では、兼業を許可制にしていたため、Xの兼業は就業規則違反となりました。

そして、次の段階としてXの兼業の実態が解雇に相当するかが判断されています。
兼業の実態が、もしXが許可を申請したならばY社は、許可する必要があるようなものであれば、単なる手続違反ということになり解雇の相当性は否定されます。
この「許可する必要があるようなもの」というのは、会社は好き勝手に不許可とすることができないことを意味します。

本来、労働時間以外の行動は自由であるのが原則なので、それを禁止できる場合には制限があり、一般的に次のような場合が該当すると言われています。

労務提供上の支障がある場合
② 業務上の秘密が漏洩する場合
③ 競業により自社の利益が害される場合
④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

本件においては、「軽労働とはいえ毎日の勤務時間は6時間に互りかつ深夜に及ぶものであつて、単なる余暇利用のアルバイトの域を越えるものであり、したがつて当該兼業がY社への労務の誠実な提供に何らかの支障をきたす蓋然性が高い」とし、実際に「就業時間中居眠りが多く、残業を嫌忌する等の就業態度」があったことから①に該当とする判断されています。

これだけであれば、反省し兼業を止めていれば解雇が認められるかは微妙ですが、「X採用面接に際して債務者に提出した履歴書中には「クラブB」や「C株式会社」等水商売関係への勤務経歴を脱漏させていた節がみられることや、前記キャバレーAでの地位保全等仮処分事件のX本人尋問において、後の供述で訂正はしたものの、Y社に雇用されている事実を隠蔽する供述をしたことなどがY社のXに対する信用を一層失わしめることとなつたことがそれぞれ認められる。」という経歴詐称が疑われる事情もあったことから、信頼関係が修復できないとして解雇が認められました。
なお、「キャバレー」というのは、現在のキャバクラのようなものらしく、「自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合」にも相当するように思えますが、会計係であったことから触れられていないのかと思います。

雇用推進助成金の65歳超継続雇用促進コースの支給要件にある60歳以上雇用保険被保険者とは

雇用推進助成金の65歳超継続雇用促進コースの支給要件にある60歳以上雇用保険被保険者とは

先日、定年を60歳から65歳に引き上げる就業規則の変更を受託したので、「65歳超雇用推進助成金」の「65歳超継続雇用促進コース」を利用できないか内容を確認してみました。
主な支給要件は次のとおりです。

① 労働協約又は就業規則により、次の[1]~[4]のいずれかに該当する制度を実施したこと。
[1]65歳以上への定年引上げ
[2]定年の定めの廃止
[3]希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導入              
[4]他社による継続雇用制度の導入

② ①の制度を規定した際に経費を要したこと。 ※2
③ ①の制度を規定した労働協約又は就業規則を整備していること。 ※2
④ 支給申請日の前日において、高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置を実施している事業主であること。 ※2 
⑤ 支給申請日の前日において、高年齢者雇用安定法第8条又は第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと。 ※2
⑥ 高年齢者雇用確保措置を講じていないことにより、同法第10条第2項に基づき、当該雇用確保措置を講ずべきことの勧告を受けていないこと及び、法令に基づいた適切な高年齢者就業確保措置を講じていないことにより、同法第10条の3第2項に基づき、当該就業確保措置の是正に向けた計画作成勧告を受けていないこと(勧告を受け、支給申請日の前日までにその是正を図った場合を含みます。)。
⑦ 支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。期間の定めのない労働契約を締結する労働者又は定年後に継続雇用制度により引き続き雇用されている者に限る。)が1人以上いること。

※1 1回目の申請の定年年齢が70歳未満かつ希望者全員の継続雇用年齢が70歳以上である場合であって、2回目の申請の際に新たに定年年齢を70歳以上に引き上げた、もしくは定年の定めを廃止した場合は助成対象となります。
※2 ①[4]の措置制度を実施し支給申請を行う場合は、以下の要件も満たす必要があります。
  ・②において、他の事業主の労働協約又は就業規則に制度を規定した際の費用全額を申請事業主が負担している必要があること。
  ・③において、他の事業主の労働協約又は就業規則に規定を行う必要があること。
  ・④及び(5)において、他の事業主も要件を満たしている必要があること。

「定年60歳で、解雇要件に該当しない限り、希望者全員を65歳まで1年毎の有期契約で再雇用する制度」を、「定年65歳で、解雇要件に該当しない限り、希望者全員を70歳まで1年毎の有期契約で再雇用する制度」に変更するだけなので、要件を満たしそうだと思っていたら、次の要件がちょっと気になりました。

⑦ 支給申請日の前日において、当該事業主に1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。期間の定めのない労働契約を締結する労働者又は定年後に継続雇用制度により引き続き雇用されている者に限る。)が1人以上いること。

この会社には、1年以上継続雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者で、期間の定めのない労働契約を締結している従業員が一人だけおり、形式的には要件を満たしていました。
しかし、その従業員は、60歳台後半に期間の定めのない労働契約で雇用されたという経緯があり(現在70歳台前半)、今回変更する就業規則の対象にはなりません。
そこで、違和感を感じて「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」の某支部に問い合わせました。

回答は、やはり「⑦の要件を満たす従業員がいても、変更する就業規則の対象外となる場合は助成金の支給対象にはなりません。」とのことでした。

「当該事業主に1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。期間の定めのない労働契約を締結する労働者又は定年後に継続雇用制度により引き続き雇用されている者に限る。)」
という支給要件の意義は、定年の引き上げ等の恩恵を受ける60歳以上の従業員(雇用保険被保険者で勤続1年以上)が存在することにあるようです。

※ 電話で確認しただけなので、機構の担当者が間違った回答をしたという可能性がないとは言い切れません。不審に思う場合は、各自お問い合わせください。万一間違っていたとしても、私は一切責任を負いません。悪しからず。

※ 「65歳超雇用推進助成金」の詳細については、下記をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139692.html

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「令和3年版 労働経済の分析」が公表されました

「令和3年版 労働経済の分析」が公表されました

厚生労働省から、令和3年版の「労働経済の分析(労働経済白書)」が公表されました。

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、2020年には「宿泊業, 飲食サービス業」などの産業で雇用者数が減少に転じる一方、休業者数や非労働力人口が増加しました。
同時に、医療、福祉、生活必需品の小売など、感染症の拡大下でも業務継続が求められる分野では、働く環境をめぐる新たな課題が浮き彫りになりました。
さらに、緊急事態宣言を契機に多くの労使がテレワークを初めて経験し、新しい働き方として関心を集める一方で、その定着に向けた課題も明らかとなりました。
 
今般の経験を踏まえ、こうした危機下において働く方々の雇用や生活を守り、誰もが意欲をもって働き続けられる環境整備に向けて、今回の「労働経済白書」では、新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響について、さまざまな観点から分析を行われたようです。

下記に骨子を抜粋しましたが、詳細はリンクをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19846.html


新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響等

○ 「宿泊業,飲食サービス業」など、対人サービスを中心とした産業の雇用者数が減少。
※ 「宿泊業,飲食サービス業」の雇用者数:2020年平均で対前年比25万人減少(2019年364万人→2020年339万人)
リーマンショック期は「製造業」で最大の減少:2009年平均で対前年比60万人減少(2008年1,084万人→2009年1,024万人)

○ 「医療、福祉」等の産業で女性の正規雇用労働者が増加する一方で、特に「宿泊業,飲食サービス業」等で女性の非正規雇用労働者を中心に減少。
リーマンショック期は男性の正規雇用労働者、非正規雇用労働者を中心に減少。

○ 子育て世帯の女性や学生の非労働力人口が増加。
※ 主に2020年第Ⅱ四半期(4-6月)に大きく増加。
※ 2020年12月時点では、非労働力人口の水準は全体としては前年並みに戻っている。

○ 政策の下支え効果もあり、リーマンショック期と比べ、総雇用者所得の減少は小幅。
⇒ 特例を講じた雇用調整助成金等の活用により2020年4~10月の完全失業率は2.6%ポイント程度抑制されたと推計。
※ 一方、雇用調整助成金等の支出は、成長分野への労働移動を遅らせる、雇用保険財政のひっ迫といった影響をもたらしている。

新型コロナウイルス感染症の拡大による影響とは別に、働き方改革の進展を背景として、2019年には、月間総実労働時間や長時間労働者の減少、年次有給休暇の取得率の上昇。また、2020年には、パートタイム労働者の特別給与が増加。

感染拡大下で業務の継続を求められた労働者の分析(新たなアンケート調査による分析)

○ 「医療業」「社会保険社会福祉・介護事業」等の業種において、特に女性の労働者で肉体的負担や精神的負担が増大。
○ 勤め先において、業種別ガイドラインの遵守、人員体制の強化、柔軟な働き方を実施している場合に、「仕事を通じた満足度」が上昇した労働者の割合が高い。

テレワークを活用して働いた労働者の分析(新たなアンケート調査による分析)

○ 感染拡大前からテレワークを実施していた企業や労働者の方が、感染拡大下でテレワークを始めた企業や労働者よりも、テレワークの継続割合が高い。
※ テレワークの継続割合(2020年12月時点):感染拡大前に始めた労働者は82.2%、感染拡大下に始めた労働者は56.7%
(※)川口追記:「テレワーク」自体は、働き方の一つとしてコロナ以前より、研究されており、実施している企業もありました。

○ テレワークで仕事をする際の生産性や満足感は、オフィスで働く場合と比べて一般的に低下するものの、感染拡大前からテレワークを実施していた労働者では低下幅が小さい。
(※)川口追記:生産性と満足感は上がると思っていましたが、意外な結果です。でも、手を動かくことに集中する場合は、いずれも上がると思います。うまく使い分けることが大切ですね

○ 企業において、業務範囲・期限や仕事の評価基準を明確にすること、業務の裁量をもたせること等のマネジメント上の工夫や、テレワークをする際の環境整備に取り組むことで、テレワークをする際の充実感・満足感が高くなっている。


働き方改革に関連した指標の状況(労働時間・休暇取得・賃金の推移)

・労働時間については、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制の導入(大企業:2019年4月、中小企業:2020年4月施行)、年5日の年次有給休暇の確実な取得(2019年4月施行)等を背景に、2019年、2020年と比較的大きく減少。週労働時間60時間以上の雇用者の割合も男性を中心に減少傾向。年次有給休暇の取得率は、2019年(調査年は2020年)に全ての企業規模で大きく上昇。
・賃金については、働き方改革関連法の同一労働同一賃金(雇用形態間の不合理な待遇差の解消)に関する規定の大企業での施行(大企業:2020年4月、中小企業:2021年4月施行)等を背景として、2020年には感染拡大の影響があったにもかかわらず、パートタイム労働者の特別給与が増加。

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テレワークを活用して働いた労働者の分析(新たなアンケート調査による分析)

・テレワークの継続状況をテレワークの開始時期別にみると、感染拡大前からテレワークを実施していた企業や労働者の方が、感染拡大下でテレワークを始めた企業や労働者よりも継続割合が高い。
・テレワークについて労働者に尋ねた指標(オフィスで働く場合を100として0~200の間で回答)をみると、「生産性・効率性」「充実感・満足感」では、指標の平均値はオフィスで働く場合(100)を下回っているものの、感染拡大前からテレワークの活用経験がある労働者の方が、感染拡大下で初めて活用した労働者よりも指標の平均値が高い傾向にあり、低下幅が抑えられている。
※感染拡大期より前からテレワークを活用してきた企業では、業務の性質等によりテレワークに取り組みやすかった結果、生産性や満足感等が高くなっている可能性があることにも一定の留意が必要。
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・労働者がテレワークを実施しなくなった理由をみると、業務の性質や感染の影響などの他律的な理由を除けば、テレワーク時の仕事の進め方やテレワークのための環境整備といった労務管理上の工夫により対応可能な事項(赤囲み箇所)に関する事項が挙げられている。特に2020年4~5月の緊急事態宣言下にテレワークを始めた労働者の方が、それらの回答割合が高い。企業においても、同様の項目を課題として捉えている割合が高い。
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・テレワーク時の仕事の進め方に関し、「業務範囲・期限の明確性」「業務の裁量性」「評価基準の明確性」の設問について、肯定的に回答した労働者の割合は、いずれも、感染拡大前から活用経験がある労働者の方が、感染拡大下で初めて活用した労働者よりも高い。「充実感・満足感」の指標について、上記設問に該当する労働者と該当しない労働者に分けて比較すると、該当する労働者の方が、平均値がやや高い傾向にある。
・テレワークをする際の環境整備の状況について「テレワーク時の設備は充実している」と回答した労働者の割合は、感染拡大前から活用経験がある労働者の方が、感染拡大下に初めて活用した労働者よりも高い。「充実感・満足感」の指標を、上記設問に該当する労働者と該当しない労働者に分けて比較すると、該当する労働者の方が平均値が高い。
(※)川口追記:普段からテレワークを定期的に実施し、従業員がある程度慣れていれば、「充実感・満足感」ともに高くなるものと思われます。
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【解雇】関西金属工業事件( 大阪高判平19.7.17労判943号5頁)

【解雇】関西金属工業事件(大阪高判平19.7.17労判943号5頁)

1.事件の概要

Xら10名は、工事用照明器具、電撃殺虫器等の製造及び販売を営むY社で正社員として勤務し、Xらは、いずれも全日本金属情報機器労働組合全大阪金属支部(以下「本件組合」という)の組合員である。
平成14年11月30日に、松下電工との取引が完全に解消され、Y社の売上高が減少したため、Y社は変更解約告知による労働条件の変更を行ったが、Xら10名は変更後の労働条件による新規募集に応募しなかった。
そこで、Y社はXら10名を整理解雇したが、XらはY社に対して従業員としての地位確認等を求めて提訴した。第一審は、係争中に定年を迎えたX10を除き、Xらの請求をいずれも認め、定年を迎えたX10の請求についても一部認容した。これに対して、Y社が控訴したのが本件である。

2.変更解約告知の経緯

①変更解約告知の内容

Y社は、平成16年4月16日、本件変更解約告知の通知を行った。
この本件変更解約告知の内容は、勤続25年以上の全従業員(希望退職者を除く)を同年5月20日付けで解雇し、他方で、解雇対象者について新規の条件での採用を募集するというものであった。なお新規募集期間は、①第1期として同年5月1日から同月7日まで、②第2期として同月8日から14日までとし、採用日は同月21日とされていた。
しかし、Y社は、対象とされた従業員が本件変更解約告知に応じて新規採用に応募した場合であっても、採用されない場合があることを明示していた。
すなわち、Y社作成の本件変更解約告知の通知文書においては、「採用決定通知を発行されなかった(選考にもれた)者に対しては、Y社の就業規則62条4号に基づき、5月20日付け(この日は、本件変更解約告知により解雇される日と同一であり、新規採用された場合における採用日の前日である)で整理解雇を行う」旨が明記されていた。
本件変更解約告知による解雇については、募集期間内に応募して採用が決定された者には、本来の退職金(自己都合によるもの)に加えて、次のとおり、優遇措置として勤続年数に応じた特別退職金を支払うこととするが、募集期間ごとに特別退職金の額は異なることとされた。

・第1期に本件変更解約告知に応じて新規採用に応募した者の特別退職金
 勤続25年から41年まで:30万円
 勤続42年以上:60万円

・第2期に本件変更解約告知に応じて新規採用に応募した者の特別退職金
 勤続25年から41年まで:25万円
 勤続42年以上:50万円

新規の採用条件の内容については、勤続25年以上41年以下の者については基本給等を第1期に応募した者については従前の70%、第2期に応募した者については従前の65%とすることとされていた。

②希望退職者追加募集

Y社は、平成16年5月12日、本件変更解約告知に応じない対象者が✕ら10名のみであったことから、同月14日を募集期限とする本件希望退職者追加募集を行った。
しかし、原告ら10名はいずれも、同日までに希望退職の応募をしなかった。

③解雇通知

Xら10名は、本件変更解約告知に応じなかったが、原告ら10名以外の本件変更解約告知の対象者は全てこれに応じ、その全員が新規採用された。
Y社は、平成16年5月17日、原告らに対し、同月20日付けで解雇する旨を通知した。

④本件計画を実施するに当たってのY社の説明

Y社は、本件組合や従業員に対し、本件計画の内容について、平成16年3月23日における第2次希望退職者募集の対象者に対する説明会や、同年4月5日開催の本件組合との団体交渉などの場で、次のとおり説明していた。
Y社は、第2次希望退職者募集における希望退職者が6名に達しなかったときには、6名に達するまでの人員を削減することを予定していること
6名分の人員削減の理由について、次の点

(ア)その当時、毎月1500万円から2000万円の営業損失が生じているという実情から、毎月の人件費を600万円削減させることにより、Y社の再建を図りたいこと
(イ)前記(ア)記載の600万円の人件費削減のうちの500万円分については本件計画における賃金の切下げ及び人員削減により実現させその余の100万円分については、役員報酬の切下げにより実現させる計画であること
(ウ)前記(イ)記載の500万円のうちの260万円分については、本件変更解約告知による賃金の切下げにより実現させ、240万円分については第2次希望退職者募集などによる人員削減により実現させる計画であること
(エ)前記(ウ)記載の240万円分に係る人員削減のためには、勤続25年以上の正社員の平均賃金が44万円であるために、6名分の人員削減が必要であること

3.判決の概要

本件解雇の有効性

(1) 本件変更解約告知とその後予定されていた整理解雇との関係
Y社は、本件変更解約告知の行使に当たって、その対象とされた従業員が本件変更解約告知に応じて新規採用に応募した場合であっても、採用されない場合があることを明示していたことが認められる。
しかし、本件変更解約告知と本件整理解雇とが、別個独立のものとして、主位的・予備的の関係にあるものとは考えられず、特に、Y社は、本件変更解約告知に当たって、その対象とされた従業員が変更解約告知に応じて新規採用に応募した場合であっても、変更解約告知により解雇される日(平成16年5月20日)と同一の日において整理解雇をすることを予定し、このような整理解雇が行われることによって新規採用の応募に対する採用決定がされないことがありうる旨を明記していることからすれば、変更解約告知の対象者の全員がこれに応じて新規採用に応募した場合であっても、Y社は、そのうちの6名については採用しないことを予定していたことが認められるから、6名について当初から整理解雇に至ることが予定されていたものと認められる。
変更解約告知とは、新たな労働条件での新雇用契約の締結(再雇用)の申込みを伴った従来の雇用契約の解約(解雇)であり、それを受け入れるか否かのイニシアティブは、労働者の側にあることから、解雇とは異なった扱いがされるものと解されるところ、本件変更解約告知は、その実態は、これに応じない者のうち6名に対しては、解雇することを予定しているものであるから、本件の変更解約告知を整理解雇と別個独立のものであるとするY社の主張は採用できない。

(2)人員整理の必要性
ところで、労働契約を解約(解雇)するとともに新たな労働条件での雇用契約の締結(再雇用)を募集すること(いわゆる変更解約告知)が、適法な使用者の措置として許される場合はあろうが、本件のように、それが労働条件の変更のみならず人員の削減を目的として行われ、一定の人員については再雇用しないことが予定されている場合には、整理解雇と同様の機能を有することとなるから、整理解雇の場合と同様に、その変更解約告知において再雇用されないことが予定された人員に見合った人員整理の必要性が存在することが必要となると考えられる。
すなわち、人員の削減を目的として本件のような変更解約告知が行われた場合に、変更解約告知に応じない者が多数生じたからといって、人員整理の必要性により本来許容されるべき限度を超えて解雇が行われることは許されないというべきである。この点について、Y社は、当審において、本件変更解約告知の計画当初から10名を削減する予定であったわけではなく、Xらが変更解約告知に応じなかった結果、10名の人員削減をせざるを得なかっただけであると主張し、Y社は、この6名分の人件費削減の必要性について十分な主張立証を行ってきたと主張している。  
確かに、本件解雇の当時には、Y社において人件費を削減する必要があったものと認められ、また、その人員数として、6名とすることも、あながちこれを不相当な規模の人員削減であるということはできないものと考えられる。
しかし、本件解雇では10名が解雇されているのであって、上記のとおり、本件解雇については、整理解雇と同様の要件を必要とするものと解される以上、10名を全員解雇する必要性があったことについて主張立証されることが必要であるというべきであり、たとえ6名の人員削減の必要性が認められたとしても、本件解雇は、同一の理由に基づいて同一の機会に行われており、特定の6名を選定する作業が実際に行われていない以上、結局のところ、本件解雇すべてについてその必要性が主張立証されなかったことに帰するというほかないのである。
そうすると、本件解雇においては、本件変更解約告知において削減された人員に見合った人員整理の必要性があったとは認めることができないこととなる。
  
(3) 解雇手続の相当性
Y社が摘示する証拠を精査するも、本件組合の「6名が10名になっても解雇するのか。」との質問に対し、Y社が「そうです、私はそう解釈しているが、次回にはっきりと回答します。」と答えているのみであって、10名の人員削減の必要性については何ら説明していないのであるから、上記事実をもってY社主張のように十分な協議・説明が尽くされたものなどとは到底いうことができない。ほかにY社主張の事実を認めるに足りる証拠はない。

以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、本件解雇は無効であると認められる。
なお、仮に6名までの人員整理の必要性が認められたとしても、Xらに対する本件解雇は同一の理由に基づいて同一の機会に行われており、特定の6名を選定する作業が実際に行われていない以上、本件解雇すべてを無効と認めるしかないというべきであり、特定の6名の解雇を有効とし、残りの4名の解雇だけを無効とすることはできない。  また、一定程度の人員整理の必要性が認められるものの、実際に何名までの人員整理の必要性があったかについては、前記の結論を左右するものではないので、それ以上の検討はしないこととする。

4.解説

本件のように、新契約締結の申込みをともなった従来の労働契約の解約(解雇)を変更解約告知といいますが、通常は労働条件の変更を目的としてなされるものです。
本件については、「変更解約告知の対象者の全員がこれに応じて新規採用に応募した場合であっても、Y社は、そのうちの6名については採用しないことを予定していたことが認められる」ことから、労働条件の変更と人員削減の両方を目的とした変更解約告知であると判断されています。
そして、このような場合は、整理解雇と同様の機能を有するため、整理解雇の4要件(①解雇の必要性、②人選の合理性、③解雇回避義務の履行、④解雇手続の相当性)の1つである、解雇の必要性(人員整理の必要性)が検討され、6名までしか必要性が認められませんでした。さらに、解雇手続の相当性についても、10名の解雇が必要であることの説明が十分にされておらず、相当な手続(十分な協議・説明を尽くすこと)がされていないと判断されました。
そして、特定の6名を選定する作業(人選の合理性も満たされていない)が、実際に行われていないことから10名全員の解雇を無効とされました。
なお、本裁判例では判断されていませんが、変更解約告知により、一種の解雇回避義務の履行が満たされたと考えることはできるかも知れません。

【解雇】メディカル・ケア・サービス事件(東京地判令2.3.27労経速2425号31頁)

メディカル・ケア・サービス事件(東京地判令2.3.27労経速2425号31頁)

1.事件の概要

✕は、平成30年7月1日に、認知症対応型共同生活介護事業等を営むY社に採用され、本件グループホームにおいて入居者の介護・生活援助等の業務を行っていた者である。✕とY社との間の雇用契約は、雇用期間を同年7月1日から同年12月31日までとされており、「原則3か月」とする試用期間を設けられていた。
同年9月3日、Y社は✕に対し、自宅待機を命じ、その後、同月7日に、普通解雇(以下「本件解雇」という。)をした。
これに対し、✕は、①本件解雇が無効であるとして、民法536条2項に基づき、雇用期間満了日までの賃金合計68万4000円の支払、②Y社使用人らによるパワーハラスメントがあったとして、不法行為に基づき、慰謝料300万円の支払等を求めて提訴したのが本件である。

2.裁判所の判断

認定事実

(1) ✕は、本件雇用契約に基づき、平成30年7月1日、就労を開始した。
(2) 本件グループホームでは、✕を含む従業員らに対し、就労を開始した日に、礼節や言葉遣い、認知症に関する知識、虐待や不適切な対応に関する心構え等を説明していた。
その中で、①高齢者に対する威圧的であったり、侮辱的な発言・態度、②高齢者や家族の存在や行為を否定したり、無視するような発言・態度、③高齢者の意欲や自立心を低下させる行為、④羞恥心を喚起する行為等の不適切な行為に及ばないような指導が行われていた。
(3) 施設長は、同日から1週間経たないうちに、エリアマネージャーに対し、✕が、入居者に対し、小学生のような言葉遣いをしたり、執拗に戦争の話をしたりしたほか、大きな声で「オムツだよ。」と言うなどして、配慮に欠ける言動に及んだ旨訴えた。また、✕は上記のような言動を注意した他の従業員らに対し、反省の態度を示すどころか、「あの女」「あの眼鏡のおばさん」などと言った上、反抗的な態度を示し、また、個々の業務についても、何度も同じ誤りを繰り返した。
(4)このため、入居者は、✕に対する嫌悪感を口にし、Y社の従業員は、✕と同じシフトで仕事をする際にはストレスが大きく、不眠や胃痛等の体調不良を生じる旨訴えていた。
(5) このような中で、エリアマネージャーは、施設長に対し、✕について、問題のある勤務態度を記録に残すように指示をし、これに従い、複数の従業員らが、✕の問題行動を記録し続けた。
(6) ✕は、同月13日、失禁の処理等を適切にしなかったため、他の従業員らから注意を受けた際、「いい加減にしろ、てめい。」「おぼえていろよ。」などと言い、不適切な言動を繰り返していた。
(7) エリアマネージャーは、その頃、本件グループホームを訪れて、✕に対し、入居者や他の従業員らに対する態度や言葉遣いを改めるように注意をしたところ、✕は、分かりました、すみませんなどと述べた。
(8) ✕は、同月18日、昔のことを思い出すことができない入居者に対して「なぜ忘れちゃうんだよー。そんな大事なこと。」「電話つながったのか。家族だって仕事してて忙しいんだよ。いつまで息子のこと心配しているんだよー。ほっとけよー。」と大声で言うなどして、入居者の心情に対する配慮に欠ける言動を改めなかった。
(9) このような中、同月中旬頃、施設長は、エリアマネージャーの了承を得て、✕の担当業務を、入居者と直接接する介護から、記録作業を中心とするものに変更した。
(10) しかし、その後も、✕が、睡眠中の入居者に対し、大声で呼びかける、他の従業員に対し、業務上の注意を受けた際に、手で顎を持ち上げて文句を言う、壁を手で叩く、拳を振り上げるなどして、粗暴な言動を改めなかった。
(11) ✕の担当業務は、同月後半から、早番業務や買い物、見守りを中心とするものに変更されたが、✕は、その後も、粗暴かつ威圧的な態度を改めず、不必要に長い時間をかけて買い物に行くなどしていた。
(12) 上記のように、✕の勤務態度が極めて不良である上に、その改善がみられなかったことから、エリアマネージャーは、同月20日頃、施設長を交えて✕を三者面談をしたところ、✕は、粗暴な言動に及んだかもしれないと述べるとともに、反省の言葉も述べた。この三者面談の際、エリアマネージャーは、✕に対し、今後粗暴な言動を改めない場合には、指導記録を作成する旨を伝えた。
(13) ✕は、同年8月11日、掃除を終えたか問われた際、入居者の前で、Z4氏に対し、「うるせえんだよ。いやみなんだよ。昨日MGとの話でおやつの時にやることになってるんだよ。」と言った。
(14) これに対し、✕は、廊下の壁を激しく叩き、去った。
(15) ✕が粗暴な言動を改めなかったため、エリアマネージャーは、同月16日、再び、✕と施設長と三者面談をした。
この際、✕は、施設長や他の従業員らが嘘をついているなどと述べ、指導記録の作成に同意しなかった。
(16) エリアマネージャーは、同月18日、Y社の担当者に対し、顧客や従業員らに対して威圧的な言動を繰り返すため、✕の解雇を検討するよう依頼した。
(17) ✕は、同月21日、ホースの上に座ったまま、他の従業員がホースを使用することを阻んだほか、その従業員に対し、「てめえ。」などと大声で怒鳴った。
このほかにも、✕は、注意を受けると、Y社の従業員に対し、「うるさい。」と言うなどしていた。
(18) ✕は、同月31日、勤務時間中に電話をかけたことを咎められた際、施設長の左手首の上部を乱暴に掴んだ。エリアマネージャーは、✕のこの行為を警察に通報した。
その後、エリアマネージャーと施設長は、2回にわたり、葛飾警察署に赴いて上記被害を訴えたが、不起訴になる可能性が高い一方で、逆恨みされる可能性があると言われて、被害届を出さなかった。
(19) Y社は、上記事件を受けて、✕に対し、自宅待機命令を発した。
(20) Y社は、同年9月7日、本件解雇をした。

本件解雇の有効性について

上記に認定した事実によれば、✕は、繰り返し、注意や指導を受けたにもかかわらず、入居者の心情に対する配慮に欠け、その意欲や自立心を低下させたり、羞恥心を喚起したりする言動に及んだり、従業員に対する粗暴な言動に及び続けていたということができる。
そうすると、Y社において、✕に対し、当初は、入居者の介護を行うことが予定されていたにもかかわらず、入居者と直接接する介護の業務を依頼することが困難な状況になっていたと言わざるを得ない。さらに、従業員に対し、身勝手な言動や、他の従業員らに対する威圧的な言動に及び続けるため、✕に対し、入居者とは直接接することがない業務を依頼することも困難な状況になっていた。
さらに、本件解雇が試用期間中のものであったことからすれば、本件雇用契約が有期であったことを考慮しても、本件解雇にはやむを得ない事由があり、有効というべきである。
したがって、これが無効であることを前提とする賃金請求には理由がない。

不法行為についても争点となっていましたが割愛します。

3.解説

①有期雇用労働者の期間途中の解雇

有期雇用労働者の期間途中の解雇については、民法628条及び労働契約法17条に定められています。

(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

(契約期間中の解雇等)
民法第17条1項 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

民法628条の趣旨は、有期労働契約では、当事者双方が期間の定めに拘束される結果、いずれの当事者も期間中は原則として解除できないことを前提とし、やむを得ない事由があれば即時解除ができること、ただしその事由を過失により発生させた当事者は損害賠償の責任を負うことを明らかにしたものです。その後、制定された労働契約法17条1項は、民法628条の定める契約期間途中の解除のうち、使用者が労働者に対して行う解除(解雇)について、やむを得ない事由がなければ解除できないとの規定は強行法規であること、そしてやむを得ない事由の立証責任は使用者にあることを明らかにした規定です。
「やむを得ない事由」は、期間の定めが雇用継続を保証していることと民法628条の文言から、期間の定めのない労働契約における解雇に必要とされる「客観的に合理的」で、「社会通念上相当である」と認められる事由(労契法16条)よりも厳格に解されるべきです。
一般的にいえば、当該契約期間は雇用するという約束であるにもかかわらず、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるをえないような特別の重大な事由ということになります。

②試用期間の途中での解雇

試用期間というのは、従業員の適正を評価・判断するための期間で、試用期間満了時に本採用をせずに解雇する場合は、通常の解雇よりは認められやすいですが、逆に試用期間の途中で解雇する場合は、適正を評価・判断する期間が短すぎるとして解雇が認められないことがあります。

③本件の状況

本件は、有期雇用契約の途中で、かつ試用期間の途中であり、解雇が認められにくい事案でしたが、認められました。この理由は、認定事実を時系列で見ていくとわかるように、入社時に指導を行い(2)、さらに合計3回の注意指導を行っていた((7)(12)(15))にも関わらず、勤務態度を改める様子が全く見られなかったこと、さらに、担当業務を変更し解雇回避努力も行っており((9)(11))、そこまでしても改善しないのは、「期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるをえないような特別の重大な事由」であると判断されたのだと考えます。
また、認定事実は、適切な証拠や証言に基づいて裁判所が真実であると判断した事象なので、問題行動を周到に記録していたことも(5)、解雇が認められた大きな要因でした。
本件は、勤務態度に改善が見られない従業員を解雇する場合のモデルケースになる裁判例であると思います。

年末調整手続の電子化及び年調ソフト等にFAQ(令和3年6月版)

年末調整手続の電子化及び年調ソフト等にFAQ(令和3年6月版)

先日、国税庁より「変更を予定している年末調整関係書類」(事前の情報提供)が公表されてましたが、年末調整手続の電子化及び年調ソフト等にFAQも更新されました。
まだ、夏も終わっていないのに気が早いとは思いましたが、リンクより更新されたFAQを抜粋いたします。
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/pdf/nencho_faq.pdf


こちらもご参考にしてください。
年末調整手続の電子化に関するパンフレットについて|国税庁

〔問1-2〕年末調整手続の電子化についてもう少し詳しく教えてください。【令和3年6月更新】

〔答〕
これまでの年末調整手続は、
①従業員が、保険会社、金融機関、税務署等(以下「保険会社等」といいます。から控除証明書等を書面(ハガキ等)で受領
②従業員が、保険料控除申告書又は住宅ローン控除申告書に、①で受領した書面(ハガキ等)に記載された内容を転記の上、控除額を計算し記入
③従業員が保険料控除申告書及び住宅ローン控除申告書を含む年末調整申告書を作成し、控除証明書等とともに勤務先に提出
④勤務先が提出された年末調整申告書に記載された控除額の検算、控除証明書等の確認を行った上で、年税額を計算
という流れで進められていました。

年末調整手続が電子化された場合は、次のような手順となります。
①従業員が、保険会社等から控除証明書等を電子データで受領
②従業員が、国税庁ホームページ等からダウンロードした年調ソフトに、住所・氏名等の基礎項目を入力し、①で受領した電子データをインポート(自動入力、控除額の自動計算して年末調整申告書の電子データを作成。
※年調ソフト以外の給与システム等を利用することも可能です。
③従業員が、②の年末調整申告書データ及び①の控除証明書等データを勤務先に提供
④勤務先が、③で提供された電子データを給与システム等にインポートして年税額を計算
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〔問1-3〕年末調整手続の電子化のメリットは何でしょうか。【令和3年6月更新】

〔答〕年末調整手続を電子化することにより、以下のようなメリットがあります。

≪従業員のメリット≫
従業員は、これまでの手書きによる手続(年末調整申告書の記入、控除額の計算など)を省略でき、年末調整申告書の作成を簡素化できます。また、年末調整申告書を電子的に作成し、データで提供(メール等で送信)するため、テレワークなどの際に書類を郵送で提出する必要もありません。
また、書面で提供を受けた控除証明書等を紛失した場合は、保険会社等に対し、再発行を依頼しなければなりませんでしたが、その手間も不要となります。
※従業員が、「マイナポータル連携」(第4章参照)を利用する場合には、複数の控除証明書等を一度の処理で取得することができますので、従業員の利便性がより高まります。
≪勤務先のメリット≫
勤務先は、従業員が年調ソフトで作成した年末調整申告書データを利用することにより、控除額の検算が不要となります。
また、控除証明書等データを利用した場合、添付書類等の確認に要する事務が削減されます。
さらに、従業員が年末調整申告書作成用のソフトウェアを利用して控除申告書を作成するため、記載誤り等が減少し、従業員への問合せ事務も減少することが期待されます。
加えて、書面による年末調整の場合の書類保管コストも削減することができます。
※年末調整申告書データを利用して年税額の計算等を行うためには、勤務先の給与システム等が年末調整申告書データの取込みに対応する必要があります。
詳しくはご利用の給与システム等の開発業者等にお問合せください。

〔問1-5〕年末調整手続において電子化できるようになる書類にはどのようなものがありますか。【令和3年6月更新】

〔答〕年末調整関係書類の電子データによる提供の対象となる書類は以下のとおりです。
〔年末調整申告書関係〕
①扶養控除等申告書
配偶者控除等申告書
③保険料控除申告書
④住宅ローン控除申告書
基礎控除申告書
⑥所得金額調整控除申告書

〔控除証明書等関係〕
⑦保険料控除証明書(生命保険料(新・旧)、個人年金保険料(新・旧)、介護医療保険料及び地震保険料に限ります。)
⑧住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書
⑨年末残高等証明書

〔問1-6〕当社においては既に従業員から扶養控除等申告書などを電子データで提供してもらっているのですが、具体的には何か変わるのでしょうか。【令和3年6月更新】

〔答〕扶養控除等申告書、給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書(平成30年分からは保険料控除申告書及び配偶者控除等申告書)は、平成19年7月1日以降提出するものについては、電子データで提供できるよう手当てされています。このため、既に従業員に扶養控除等申告書などを電子データで提供させている勤務先もあるかと思います。
しかし、令和2年10月までは、扶養控除等申告書などを電子データで提供する場合でも、住宅ローン控除申告書や控除証明書等は書面で提出又は提示する必要がありました。
平成30年度の税制改正では、税務署から送付されていた「住宅ローン控除申告書」に加え、令和2年分から新設される「基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」も令和2年10月以降は電子データで提供できるよう手当てされたほか、これらの年末調整申告書を電子データで勤務先へ提供する場合には、控除証明書等についても電子データで提供できるよう手当てされました。
この結果、年末調整申告書を全て電子データで提供できるよう手当てされ、勤務先における控除証明書等の確認事務の効率化が図られることとなりました。
これらを整理すると以下の表のとおりとなります。
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〔問1-7〕これまで年末調整の際には、年末調整申告書を紙で提出してきたのですが、これからは勤務先に電子データで送ればよい、ということですか。【令和3年6月更新】

〔答〕平成30年度税制改正により、保険料控除証明書及び住宅ローン控除申告書については令和2年10月1日以降に勤務先に提出するものから、年末残高等証明書については令和2年10月1日以降に交付を受けるものからそれぞれ電子データで提供できるよう手当てされました。
一方で、従業員から提供される年末調整関係書類の電子データを利用するためには、勤務先において、現在利用している給与システムの改修等が必要となります(第2章参照)。
そのため、従業員が勤務先に年末調整関係書類を電子データにより提供しようとする場合は、電子データでの提供がいつから可能となるか、勤務先に確認する必要があります

〔問1-12〕年末調整手続を電子化したいのですが、具体的に何をすればよいですか。【令和3年6月更新】

〔答〕年末調整手続を電子化するためには、おおむね以下の手順を踏むこととなります。
なお、勤務先の準備の詳細については第2章、従業員の準備の詳細については第3章、マイナポータル連携利用の準備の詳細については第4章をご確認ください。

【勤務先の準備】
①電子化の実施方法の検討
②従業員への周知
③給与システムの改修等

【従業員の準備】
①年末調整申告書作成用のソフトウェア等の取得(勤務先からの指示に従ってください)
②控除証明書等データの取得(マイナポータル連携を利用しない場合のみ)
※マイナポータル連携を利用して全ての控除証明書等データを取得する場合は、事前にマイナポータルからの取得のための設定をしておくことで、年末調整申告書データの作成中に、民間送達サービスに送達された複数の控除証明書等データについてマイナポータルを通じて一括取得することが可能となるため、②の手続は不要となります。

〔問2-1〕年末調整手続を電子化するためには、勤務先はどのような準備をすればよいですか。【令和3年6月更新】

〔答〕年末調整手続を電子化するために勤務先が行うべき具体的な対応は以下のとおりです。

①電子化の実施方法の検討
年末調整手続の電子化に当たり、従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェア(「年調ソフト」や民間のソフトウェア会社が提供するソフトウェア等)の選定、電子化後の年末調整手続の事務手順をどうするかなどを検討します。

②従業員への周知
従業員から年末調整申告書及び控除証明書等について電子データにより提供を受けるに当たり、法令上は事前に従業員から同意を得る必要はありません。
しかし、電子化に当たっては、従業員においても、保険会社等から控除証明書等データの交付を受けるための手続など、事前準備が必要であることから、電子化する際には従業員への早期の周知が必要となります(第3章参照)。
また、①で決定した、従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェアや事務手順について周知する必要があります。
なお、従業員から控除証明書等データの取得方法について問合せがあった場合には、マイナポータル連携を利用するか、その従業員が契約している保険会社等のホームページ等で確認するよう周知願います。
③給与システムの改修等
従業員が提供する年末調整申告書データや控除証明書等データをご利用の給与システム等にインポートし、年税額等の計算を行うため、給与システムの改修等を行います(詳細については現在ご利用の給与システム等のソフトウェア会社へお問合せください。)。
なお、従業員から年末調整申告書及び控除証明書等を電子データにより提供を受けるためには、電磁的方法による提供を受けるために必要な措置及び電磁的方法により提供する者の氏名を明らかにするために必要な措置が必要となります。

〔問2-2〕従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェアにはどのようなものがありますか。また、利用料はかかりますか。【令和3年6月更新】

〔答〕従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェアとして、国税庁から「年調ソフト」をパソコン、スマートフォンの公式アプリストア等(〔問5-6〕参照)にて無償で提供しています。
また、民間のソフトウェア会社が提供する年末調整申告書作成用のソフトウェアを利用いただくことも可能ですが、その場合の利用料金等については各ソフトウェア会社にお問合せください。

〔問2-5〕税務署への申請は必要ですか。【令和3年6月更新】

〔答〕年末調整手続を電子化する場合、従業員から提供された年末調整申告書を電子データで受領することとなりますが、電子データを受領するに当たっては、従来は事前に税務署へ「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、承認を受ける必要がありましたが、令和3年4月1日以降に従業員からデータで年末調整申告書を受領する場合は、申請が不要となりました。
ただし、従業員から年末調整申告書及び控除証明書等を電子データにより提供を受けるためには、電磁的方法による提供を受けるために必要な措置及び電磁的方法により提供する者の氏名を明らかにするために必要な措置が必要となります。

〔問2-9〕年末調整申告書をデータで提供を受けるための「一定の要件」として、「電磁的方法による提供を受けるために必要な措置」及び「電磁的方法により提供する者の氏名を明らかにするために必要な措置」が必要だとのことですが、具体的にはどのようなものですか。【令和3年6月更新】

〔答〕年末調整申告書をデータで提供を受けるための一定の要件とは、以下の二つの措置をそれぞれ講ずることです。

①電磁的方法による提供を受けるために必要な措置
「電磁的方法による提供を受けるために必要な措置」とは、従業員から電子データの提供を受けるための方法を定めておくことであり、具体的には以下のいずれかの方法を定めておく必要があります。

イ勤務先にインターネット経由のメール等で送信する
ロUSBメモリ等に保存して勤務先に提供する
ハ(社内LANなどで)勤務先と作成者である従業員のみアクセスが可能な領域に年末調整申告書データを保存する
ニ社内LANにログインし、メール等で送信する
なお、イまたはロにより提出する場合は、提出データに電子署名を付す又はパスワードを設定する必要があります。

②電磁的方法により提供する者の氏名を明らかにするために必要な措置
「電磁的方法により提供する者の氏名を明らかにするために必要な措置」とは、提出された電子データが従業員本人から提出されたことが確認できるよう担保しておくことであり、以下のいずれかの措置をいいます。
イ従業員が申告書情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書を申告書情報と併せて勤務先に送信する措置。
マイナンバーカードに記録された電子署名及び電子証明書を利用することができます。
ロ従業員が、勤務先から通知を受けた識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)を用いて、勤務先に申告書情報を送信する措置。
具体的には年末調整申告書データそのものにパスワードを付す場合のほか、社内LAN等に従業員個別のID、パスワードでログインし、その従業員のみに割り当てられた電子メールアドレスから送信する場合等も含まれます。
また、上記のほか以下の対応が必要となります。
・従業員が電磁的方法による提供を適正に行うことができるための措置
・従業員が電磁的方法による提供を行う際に、勤務先がその者を特定することができるための措置
・申告書に記載すべき事項について電子計算機の映像面への表示及び書面への出力をするための措置

〔問2-13〕年末調整関係書類をデータで提供させるに当たり、従業員から事前に承諾等を受けておく必要はありますか。【令和3年6月更新】

〔答〕年末調整関係書類をデータで提供させるに当たって、従業員から事前に承諾等を受けておく必要はありません。

(参考)
源泉徴収票や給与明細について電子データにより交付する場合は、事前に従業員の承諾を受ける必要があります。

〔問2-17〕従業員の控除証明書を電子化するとのことですが、当社で契約している団体扱い保険についても電子化できるのですか。【令和3年6月追加】

〔答〕団体扱い保険については、以下の手続きを経ることで、従業員が年調ソフトに取り込むことが可能となります(令和3年分の年調ソフトからの追加機能です。)。

①団体扱い保険支払情報のデータ取得
ご契約の保険会社に対して、団体扱い保険支払情報をデータで発行してもらうよう依頼します。
②年調ソフト管理者機能へ取り込み、エクスポート
「年調ソフト」を入手し、「管理者メニュー」の「団体扱い保険支払情報のインポート」を選択し、保険会社から受領したデータをインポートします。
③で使用するデータが作成されますので、適宜の場所に保存します。
※「団体扱い保険支払情報のインポート」機能は令和3年版の年調ソフト以降の機能となります。
③「控除証明書等作成用ソフト」へのインポート、電子署名の付与
「控除証明書等作成用ソフト」をe-Taxホームページから入手し、②のデータをインポートします。次に、支払情報の確認として給与担当者等の電子署名を付与して、控除証明書等データを作成します。
電子署名の種類としては給与担当者のマイナンバーカードなどが利用できます。
「控除証明書等作成用ソフト」は以下のURLからダウンロードできます。
https://www.e-tax.nta.go.jp/download/kojosoft-download.htm

④従業員への配付
③で作成した控除証明書等データを各従業員に配付します

〔問2-18〕年調ソフトから印刷した年末調整申告書について、国税庁ホームページに掲載している様式と大きく異なるのですが、紙を原本とした場合に、この印刷した申告書を保存すればよいのでしょうか。【令和3年6月追加】

〔答〕ご質問のとおり、年調ソフトで作成した年末調整申告書をPDFで出力すると、国税庁が公表している様式とは異なる形式で印刷されます。
しかし、年調ソフトから出力された年末調整申告書についても、法律で定められた記載事項につきましては網羅されておりますので、これを保管していれば問題は生じません。

〔問3-2〕勤務先における年末調整手続が電子化されるため、年末調整申告書及び控除証明書等について電子データで提供するよう指示がありました。従業員にとってどんなメリットがありますか。【令和3年6月更新】

〔答〕年末調整申告書及び控除証明書等について電子データで提供するためには、保険会社等から交付を受けた控除証明書等データを年末調整申告書作成用のソフトウェア等に取り込み、年末調整申告書データを作成することになります。
電子化した場合、以下のようなメリットがあります。
○控除証明書等データの情報に基づいて自動的に年末調整申告書を作成するため、記載の手間を省略することができます。
○控除額が自動計算されることとなり、計算誤りのない年末調整申告書データを作成できます。
○作成した年末調整申告書データはメール等で送信できるため、テレワークなどの場合でも年末調整申告書の郵送等が必要ありません。
○翌年以降の年末調整手続において、前年の年末調整申告書データを利用することにより、従業員やその扶養親族の住所、氏名、生年月日等の入力を省略することができます。
なお、マイナポータル連携(第4章参照)を利用することにより、控除証明書等データを自動で取得することが可能となります。

〔問3-5〕年末調整申告書の電子データによる提供は、いつから利用できるようになったのですか。【令和3年6月更新】

〔答〕平成30年度税制改正により、令和2年10月以降、控除証明書等データを年末調整申告書データに添付して勤務先に提供できるよう手当てされています。
なお、実際にいつから勤務先に提供するようになるかについては、勤務先にお問い合わせください。

〔問3-7〕勤務先から、年末調整手続を電子化するため、年末調整申告書及び控除証明書を電子データで提供するよう言われました。年末調整申告書データはどのように作成すればよいですか。【令和3年6月更新】

〔答〕年末調整申告書データは年末調整申告書作成用のソフトウェアを利用して作成しますが、どのソフトウェアを利用するか及びその入手方法等については勤務先にお問合せください。
なお、国税庁では、勤務先に提出するための年末調整申告書データを作成することができる年調ソフトを提供しています(第5章参照。)。年調ソフトを利用して作成するよう勤務先から指示があった場合は、公式アプリストア等から年調ソフトをダウンロードし、画面の案内に従って年末調整申告書データを作成してください。

〔問3-8〕保険会社等が交付する控除証明書等の電子データはどのようにして受け取るのですか。【令和3年6月更新】

〔答〕保険会社等から控除証明書等を電子データにより受け取る方法は、以下の①又は②が考えられます。どちらの方法でも取得できる控除証明書等データの内容は同じです。

①マイナポータル連携により取得する方法
年末調整申告書データを作成している途中に、マイナポータル連携(第4章参照。)を利用して、控除証明書等データを一括で取得する方法です。マイナンバーカードが必要となりますが、必要な控除証明書等データをまとめて取得し、年末調整申告書データに控除証明書等データの内容を自動反映できるので、年末調整申告書の作成がより簡便になります。
なお、保険会社等によってはマイナポータル連携に対応していない場合もありますので、国税庁ホームページでご確認願います。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/list.htm

②保険会社等のいわゆる「お客様ページ」等から取得する方法
ご契約の保険会社等のホームページ等における、いわゆる「お客様ページ」から控除証明書等データをダウンロードすることが可能な保険会社もあります。
この方法の場合、マイナンバーカードは必要ありませんが、ご契約の保険会社等が複数ある場合、各保険会社等の「お客様ページ」から控除証明書等データをダウンロードして保存し、年末調整申告書データ作成の際に作成用のソフトウェアにインポートする必要があります。

〔問3-12〕税務署から発行される住宅ローン控除証明書を電子データで取得する場合に必要な手続きはありますか。【令和3年6月更新】

〔答〕年末調整において住宅ローン控除を受ける場合には、居住開始年分の確定申告において住宅ローン控除の適用を受ける必要があります。
住宅ローン控除証明書を電子データで取得するためには、居住開始年分の確定申告書について、e-Taxにより提出すること、及び提出の際に翌年分以降の住宅ローン控除証明書については、e-Taxによる電子データでの交付を希望することが必要となります。※
上記の手続を行っていただいた方については、翌年以降、住宅ローン控除証明書データをe-Taxのメッセージボックスを通じて取得することができるようになります。また、住宅ローン控除証明書データについては、マイナポータル連携により取得することもできます。
なお、居住年が平成30年以前の場合には、勤務先に電子データにより提供することはできませんのでご留意ください。
※当初の確定申告の際にe-Taxによる電子データでの交付を希望していなかった場合でも、所轄の税務署長あて「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請書」を提出することにより、電子交付を受けることが可能となる場合があります。

〔問3-14〕保険会社等から保険料控除証明書等が書面で送られてきたのですが、これをスキャナーで読み込む等によりデータ化したものを勤務先に原本として提供することはできますか。【令和3年6月更新】

〔答〕書面の控除証明書等をスキャンする等によりデータ化したものは勤務先に電子データ(原本)として提供することはできません。
控除証明書等データの勤務先への提供とは、法令上、①証明書に記載すべき事項が記録された情報で、②発行者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書が付されたものを電子データにより提供することです。
ご質問のケースは、このうち②の要件を満たさないため、勤務先に電子データとして提供することはできません。従来どおり、保険会社等から交付を受けた書面の控除証明書等を提出又は提示する必要があります。

〔問3-18〕団体扱い保険に係る控除証明書についても、電子データにより交付されますか。【令和3年6月更新】

〔答〕団体扱い保険の保険料についてマイナポータル連携で利用できる控除証明書等データが発行できるかについては、ご契約の保険会社等によりますので、ご確認願います。
また、年調ソフトの管理者機能を利用することにより、勤務先が保険会社から受領したデータを利用して控除証明書等データを作成して配付する場合もあります〔問2-17参照〕その場合は当該控除証明書等データを年調ソフトに取り込むことができるようになります。
(参考1)団体扱い保険については、書面の保険料控除証明書は発行されないのが通常ですので、これまでは支払保険料の額を保険料控除申告書に記載(入力)し、勤務先の確認を受ける方法で保険料控除を適用することができました。
(参考2)勤務先によっては、既に団体扱い保険料の支払金額について保険会社から電子データで連絡を受けており、年末調整の際にあらかじめ保険料控除申告書等に反映させている場合もあります。

〔問4-9〕年調ソフトを利用してマイナポータル連携する際の手順を教えてください。【令和3年6月更新】

〔答〕年調ソフトにおけるマイナポータル連携の手順は以下のとおりです。
①年調ソフトを起動し、従業員が本人の氏名、住所等を入力
②「証明書電子データのインポート」画面から、「証明書の電子データをインポートする」を選択し、「マイナポータルから取得」を選択
③マイナポータルへの認証画面が表示されるため、4桁の暗証番号(マイナンバーカード受領の際に設定したもの)を入力の上、マイナンバーカードをセット④画面の案内に従い、表示された一覧から必要な電子データを選択して取得指示
⑤取得結果画面に4桁の「取得用コード」が表示されるため、年調ソフトに「取得用コード」を入力
⑥取得用コード入力後、「証明書電子データのインポート」画面に取得した証明書データが表示されていることを確認
⑦画面下部の「実行」を押下
これらの手順で、取得した控除証明書等データが年調ソフトに自動入力されます。
※市販の年末調整申告書作成用のソフトウェアの場合、手順が異なることがありますので、ご利用の年末調整申告書作成用のソフトウェアのマニュアル等をご確認ください。

〔問5-5〕年調ソフトをパソコンやスマートフォンにダウンロードして利用する際の利用環境について教えてください。【令和3年6月更新】

〔答〕令和2年版の年調ソフトが対応しているOSは以下のとおりです。
Windows10(Enterprise、Pro、Home)64bit版
ただし、ARM社製CPU、Windows10EnterpriseLTSC2016版、LTSB版には対応しておりません。
macOS 10.13以降
Android7.0以降
iOS 12.0以降

〔問5-7〕年調ソフトのインストールには管理者権限が必要ですか。【令和3年6月更新】

〔答〕パソコン版の年調ソフトは、インストール権限のあるユーザーによってインストールしていただく必要があります。
ただしMicrosoft Storeから取得する場合は、管理者による制限がない限り一般ユーザー権限でもインストール可能です。
なお、スマートフォン版の年調ソフトについても管理者による制限がない限り、ダウンロード後に自動でインストールされます。

〔問5-7-2〕Windows版の年調ソフトについて、国税庁ホームページからダウンロードした場合のインストール方法を教えてください。【令和3年6月追加】

〔答〕Windows版の年調ソフトについて、国税庁ホームページからダウンロードした場合は、以下の方法でインストールしていただく必要があります。詳細については国税庁ホームページに掲載しているマニュアルをご確認ください。
①スタートメニューの「設定」から「開発者モード」を有効にする。
国税庁ホームページからダウンロードした年調ソフトの圧縮ファイルを解凍する。
③解凍後のファイルから「Add-AppDevPackage.ps1」を選択し、右クリックして[PowerShellで実行]を選択する。
④以下のような画面が表示されたら、「Y」キーを押してEnterキーを押す。
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なお、Windows版をMicrosoft Storeから取得する場合は、年調ソフトの説明ページにある「入手」ボタンをクリックすることでインストールできます。

〔問5-9〕当社では一台のパソコンを複数の従業員で共用しているのですが、その場合でも年調ソフトは複数人での使用は可能ですか。他人に自分の年末調整申告書の内容が見られてしまうことはありませんか。【令和3年6月更新】

〔答〕パソコン版の年調ソフトは一台のパソコンで複数人での使用が可能です。
複数人で年調ソフトを共用する場合は、インストール後最初の起動の際に複数人で利用することを選択し、利用者情報を登録の上、パスワードを設定するようになっています。
次回以降、その従業員の控除申告書データはそのパスワードがないと開けないようになっていますので、複数人で一台のパソコンを共用していたとしても、他人にご自身の年末調整申告書の内容を見られてしまうことはありません。

〔問5-18〕年調ソフトを利用して従業員から年末調整申告書データ及び控除証明書等データの提供を受けるために何か準備することはありますか。【令和3年6月更新】

〔答〕年調ソフトを利用する際に、「管理者メニュー」から、「給与の支払者の名称」「給与の支払者の法人番号」「給与の支払者の所在地」を設定したファイルを作成し、各従業員に配付することができます。そうすることにより、上記項目についての各従業員の入力事務を省略することができます。

〔問5-19〕従業員から年調ソフトにより作成した年末調整申告書データを書面で出力の上、提出を受ける場合でも何か便利になることはありますか。【令和3年6月更新】

〔答〕従業員から年調ソフトで作成した年末調整関係書類について書面で提出を受ける場合でも、年調ソフトから出力された年末調整申告書については、控除額の計算が自動で行われていますので、手書きの年末調整申告書に比べ、検算等の手間を省くことができます。