社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



2022(令和4)年3月までの雇用調整助成金の特例措置等について(予定)

2022(令和4)年3月までの雇用調整助成金の特例措置等について(予定)

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、令和3年12月31までを期限に雇用調整助成金の特例措置を講じてきた来ましたが、 この特例措置が2022(令和4)年3月31日(※)まで延長されるようです。

なお、2021(令和3)年12月末までに業況特例を利用している(=業況の確認を既に行った)事業主が、判定基礎期間の初日が2022(令和4)年1月1日以降の休業等について申請を行う場合は、売上等の書類を再提出し、業況の 再確認が行われますようです。
売上がある程度回復していて、雇用調整を続けている場合は業況特例の対象から外れる可能性があります。
また、2022(令和4)年3月31日までの助成率はこれまでと同様となるようです。


※令和4年1月以降は施行にあたって厚生労働省令の改正等が必要であり、現時点での予定とのことです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000782480.pdf

業況の再確認

2020(令和3)年12月末までに業況特例を利用している(=業況の確認を既に行った)事業主が、判定基礎期間の初日が令和4年1月1日以降の休業等について申請を行う場合は、最初の申請において、業況特例の対象となることについて、業況の 再確認を行いますので、売上等の書類の再提出が必要になります。

特例措置の内容について

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2022年(令和4年)以降の雇用調整助成金の助成率

解雇の有無について

【2021(令和3)年12月まで】
原則的な措置では、2020(令和2)年1月24日以降の解雇等の有無及び「判定基礎期間末日の労働者数が各月末の労働者数平均の4/5以上」
地域・業況特例では、令和3年1月8日以降の解雇等の有無

【2022(令和4)年1月から】
原則的な措置では、2021(令和3)年1月8日以降の解雇等の有無及び「判定基礎期間末日の労働者数が各月末の労働者数平均の4/5以上」
地域・業況特例では、2020(令和2)年1月24日以降の解雇等の有無

※原則的な措置で、2021(令和3)年1月8日以降に解雇等を行ったことにより助成率が下がっていた場合は、2021(令和3)年1月8日以降に解雇が無ければ助成率が上がることになります。



「業況特例」又は「地域特例」に該当する事業主の方へ

業況特例 (特に業況が厳しい全国の事業主)

【対象となる事業主】

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2022(令和4)年3月までの業況特例

地域特例 (営業時間の短縮等に協力する事業主)

【対象となる事業主】
以下を満たす飲食店や催物(イベント等)を開催する事業主等
⑴緊急事態措置の対象区域またはまん延防止等重点措置の対象区域(職業安定局長が定める区域)の 都道府県知事による要請等を受けて、
⑵緊急事態措置を実施すべき期間またはまん延防止等重点措置を実施すべき期間を通じ、 ⑶要請等の対象となる施設(要請等対象施設)の全てにおいて、
⑷休業、営業時間の変更、収容率・人数上限の制限、入場者の整理等、飲食物提供(利用者による酒 類の店内持ち込みを含む)又はカラオケ設備利用の自粛に協力する

【対象となる休業等】
要請等対象施設における以下の期間を含む判定基礎期間の休業等(短期間休業を含む)
厚生労働省ホームページに掲載する区域及び期間
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/cochomoney_00002.html

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業による標準報酬月額の特例改定は令和4年3月までに延長

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業による標準報酬月額の特例改定は令和4年3月までに延長

標準報酬月額の特例改定について

令和2年4月から令和3年12月までの間に新型コロナウイルス感染症の影響による休業により著しく報酬が下がった方について、事業主からの届出により、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、通常の随時改定(4か月目に改定)によらず、特例により翌月から改定を可能とする措置が講じられています。
今般、令和3年8月から令和4年3月までの間新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した方についても、特例措置が講じられることとなりました。
なお、本特例措置は、今般の新型コロナウイルス感染症による特別の状況等を踏まえ、通常の随時改定及び定時決定とは別途の手続として、臨時特例的な取扱いを整理したものであることから、本特例措置の内容は、通常の随時改定及び定時決定には適用されません。

(1)令和3年8月から令和4年3月までの間に新たに休業により著しく報酬が下がった方の特例

次のアからウのすべてに該当する方が対象となります。
ア.新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、令和3年8月から令和4年3月までの間に、著しく報酬が下がった月が生じた方
イ.著しく報酬が下がった月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方(固定的賃金の変動がない場合も対象となります)
ウ.本特例措置による改定内容に本人が書面により同意している

(2)令和2年6月から令和3年5月までの間に休業により著しく報酬が下がり特例改定を受けている方の特例

次のアからエのすべてに該当する方が対象となります。
ア.新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、次のいずれかに該当する方
(ア)令和2年6月から令和3年5月までの間に著しく報酬が下がり、令和2年7月から令和3年6月までの間に特例改定を受けた方
(イ)令和3年8月に支払われた報酬にて令和3年度定時決定の保険者算定の特例を受けた方
イ.令和3年7月までに休業が回復したことによる、随時改定に該当していない
ウ.令和3年8月に支払われた報酬の総額(1か月分)に該当する標準報酬月額が、令和3年9月の定時決定で決定された標準報酬月額に比べて2等級以上下がった
エ.本特例改定による改定内容に本人が書面により同意している


※上記(1),(2)により特例改定を受けた方は、休業が回復した月に受けた報酬の総額を基にした標準報酬月額が、特例改定により決定した標準報酬月額と比較して2等級以上上がった場合、その翌月から標準報酬月額を改定することになりますので、月額変更届の提出が必要です。

詳細はこちらをご確認ください。

<令和4年1月以降に新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した者についての健康保険の標準報酬月額の保険者算定の特例について(令和3年12月24日保保発1224第1号)>
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220104S0030.pdf
標準報酬月額の特例改定の延長等に係るQ&A(保険者向け)について(令和3年12月24日事務連絡)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220104S0040.pdf

傷病手当金及び任意継続被保険者制度の見直しに関するQ&A

傷病手当金及び任意継続被保険者制度の見直しに関するQ&A

全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律による健康保険法及び船員保険法改正内容の一部に関するQ&Aの内容の追加等について

医療保険制度の円滑な実施について、平素より格段の御協力、御尽力を賜り厚く御礼申し上げます。全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)による健康保険法及び船員保険法の改正内容については、「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律による健康保険法及び船員保険法改正内容の一部に関するQ&Aの送付について」(令和3年11月10日付け厚生労働省保険局保険課事務連絡。以下「令和3年11月事務連絡」という。)においてお示ししたところです。今般、令和3年11月事務連絡について、保険者からの照会等を踏まえ、改めて事務の内容や法令上の解釈等について整理を行い、別紙1のとおりQ&Aの内容を追加するとともに、当該整理に伴い、「傷病手当金及び出産手当金の改正に関するQ&Aの追加について」(平成28年3月29日付け厚生労働省保険局保険課事務連絡。以下「平成28年3月事務連絡」という。)について、別紙2のとおりQ&Aの内容を追加しましたので、関係者に周知いただくとともに、その円滑な実施に特段の御配慮をお願い致します。
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220104S0060.pdf


「令和3年 11 月事務連絡」及び「平成28年3月事務連絡」について、内容追加後の全文を抜粋しました。

【令和3年 11 月事務連絡におけるQ&Aについて】

1.傷病手当金関係

(支給期間の計算方法)

問1 今回の法改正により、傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関して、「その支給を始めた日から通算して1年6月間」となるが、1年6月間とは何日間であるのか。

(回答)
○初回の申請から3日間の待期期間を経て、支給を始める4日目より、暦に従って1年6月間の計算を行い、傷病手当金の支給期間を確定する。
○当該支給期間は、傷病手当金の支給単位で減少し、途中に傷病手当金が支給されない期間(以下「無支給期間」という。)がある場合には、当該無支給期間の日数分について支給期間は減少しない。

問2 以下のケースにおいて傷病手当金の申請がなされた場合、傷病手当金の支給期間及び支給満了日はどうなるのか。

【例】
①令和4年3月1日~4月10日労務不能(支給期間:38日間)
②令和4年4月11日~4月20日労務不能(支給期間:10日間)
③令和4年5月11日~6月10日労務不能(支給期間:31日間)

(回答)
○上記のケースにおいては、令和4年3月1日から3日までの3日間の待期期間を経て、令和4年3月4日が傷病手当金の支給開始日となり、支給期間は令和5年9月3日までの549日間となる。
①の支給期間(38日間)後、残りの支給日数は511日、
②の支給期間(10日間)後、残りの支給日数は501日、
③の支給期間(31日間)後、残りの支給日数は470日、となる。
○なお、今回の法改正により、残りの支給日数が0日となる日が支給満了日となる。例えば③の期間が終了した翌日(令和4年6月11日)より、
・連続して470日間労務不能であった場合は令和5年9月23日、
・支給期間の合間に合計して40日間就労した場合は令和5年11月2日、
がそれぞれ支給満了日となる。

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傷病手当金の支給日と満了日

問3 傷病手当金の支給開始日(起算日)以降、

・ある期間(期間A・B・C)において傷病手当金の支給を行った後、
・支給開始日(起算点)より後の期間(期間D)について、事後的に遡って傷病手当金の支給申請があった場合、
ある期間(期間A・B・C)と過去の期間(期間D)を通算すると1年6月間を超える場合、期間Cに対する支給決定を取り消し、返還請求を行った上で、期間Dに対して支給決定することとなるのか。

(回答)
○健康保険法(大正11年法律第70号。以下「健保法」という。)第99条第4項では、傷病手当金の支給期間は「その支給を始めた日から通算して1年6月間」とされているため、支給開始日以降の支給期間が通算対象となるとともに、当該支給開始日において支給期間及び支給額(日額)が決定する。
○支給開始日より後の期間について支給申請があった場合には、当該支給開始日が変更されず、支給期間及び支給額も変更しないため、当該支給開始日を基準として支給した傷病手当金に対する支給決定を取り消す必要はない。一方、支給開始日より前の期間について支給申請があった場合には、当該支給開始日が変更され、支給期間及び支給額も変更されるため、「変更前」の支給開始日を基準として支給した傷病手当金に対する支給決定を取り消し、「変更後」の支給開始日を基準として支給決定することとなる。
○問の例では、期間Cに係る傷病手当金の支給決定を取り消す必要はなく、
・期間Aの先頭から起算し、期間B・Cの順に通算した上で、
・1年6月間を超えない期間について期間Dに対して支給決定を行い、
期間Dのうち通算して1年6月間を超える期間は、不支給決定を行うこととなる。
なお、健保法第99条第4項に規定する「その支給を始めた日」について、ここでは期間Aの支給を始めた日であり、期間Dの請求があったことにより支給期間及び支給額(日額)を再計算する必要はない。
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問4傷病手当金の支給開始日(起算日)以降、

・ある期間(期間A・B・C)において傷病手当金の支給を行った後、
・支給開始日(起算日)より前の期間(期間D)について、事後的に遡って傷病手当金の支給申請があった場合、支給開始日(起算日)の変更により、傷病手当金の支給額の基準となる標準報酬月額の算定期間が変更となることから、期間A・B・Cに係る支給決定を取り消し、返還請求を行った上で、期間Dを起算日として支給決定することとなるのか。

(回答)
○問3の回答のとおり、支給開始日より前の期間について支給申請があった場合には、当該支給開始日が変更され、支給期間及び支給額も変更されるため、「変更前」の支給開始日を基準として支給した傷病手当金に対する支給決定を取り消し、「変更後」の支給開始日を基準として支給決定することとなる。
○問の例では、期間A・B・Cに係る傷病手当金の支給決定を取り消す必要があり、
・期間A・B・Cに係る傷病手当金の支給決定を取り消した上で、・期間Dの先頭を支給開始日として支給決定し直すこととなる。○また、この場合において、
・期間Dの先頭を支給開始日として支給期間及び支給額(日額)について再計算するとともに、
・期間Dの先頭から起算し、期間A・B・Cの順に通算した上で、通算して1年6月間を超える期間については、不支給決定を行う。
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問5 労務不能のため傷病手当金の申請を行ったが、報酬や障害年金等との併給調整により、傷病手当金が不支給とされた場合、支給期間は減少するのか。

(回答)
○報酬、障害年金又は出産手当金等との併給調整により、傷病手当金が不支給とされた期間については、傷病手当金の支給期間は減少しない。
○一方、報酬、障害年金又は出産手当金等の額が傷病手当金の支給額を下回るために傷病手当金の一部が支給される場合には、支給期間は減少する。○なお、出産手当金を支給すべき場合において傷病手当金が支払われたことにより、出産手当金の内払とみなされた場合には、支給期間は減少する。

問6 複数の疾病等について、同じ期間に傷病手当金の支給が行われる場合、支給期間については、どのような取扱いとなるのか。

(回答)
傷病手当金については、疾病等ごとに支給期間が決定し、複数の疾病について、同じ期間に傷病手当金の支給が行われる場合、各々の疾病等について、それぞれ傷病手当金が支給されると解する。
○このため、傷病手当金が支給された日数分だけ、各々の疾病等に係る支給期間は減少することとなる。

問7 A疾病による傷病手当金がA疾病による障害年金との併給調整により支給停止されている者が、別のB疾病による傷病手当金を新たに受給できることになった場合、支給期間については、どのような取扱いとなるのか。

(回答)
○それぞれの傷病に係る傷病手当金と報酬等との併給調整については、健保法第99条及び第108条並びに健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号。以下「健保則」という。)第84条の2第7項の規定に基づき、
・それぞれの傷病に係る傷病手当金と報酬等との併給調整を行った上で、
・報酬等との関係でなお支給可能な傷病手当金がある場合には、当該傷病手当金の併給調整前の額について、報酬等との併給調整を行い支給する。
なお、報酬等との関係でなお支給可能な傷病手当金が2以上ある場合には、当該傷病手当金の併給調整前の額のうちいずれか多い額を傷病手当金の額として、報酬等との併給調整を行い支給する。
○上記のケースにおいては、
・A疾病による傷病手当金については、A疾病による障害年金との併給調整により支給されないため、支給期間は減少しないが、
・B疾病による傷病手当金については、A疾病による障害年金とは疾病が異なることから併給調整の対象とならず、支給されることとなるため、支給期間は減少することとなる。

問8 報酬や障害年金等との併給調整により、傷病手当金が不支給となった期間について、健康保険組合の規約により、傷病手当金付加金のみ支給される場合に傷病手当金の支給期間については、どのような取扱いとなるのか。

(回答)
傷病手当金が不支給となった期間に傷病手当金付加金のみ支給されても、傷病手当金の支給期間は減少しない。

問9 傷病手当金の請求権の消滅時効の取扱いはどうなるか。

(回答)
傷病手当金労務不能であった日ごとに請求権が発生し、当該請求権に基づき支給されるものであることから、当該請求権の消滅時効については、労務不能であった日ごとにその翌日から起算して2年間となる。
【例】待期期間が完成した令和4年9月1日から9月30日までの労務不能期間について、令和6年9月15日に傷病手当金の請求があった場合
○令和4年9月1日から9月14日までの期間については、請求権の消滅時効が完成しているため、傷病手当金の支給は行わない。
○上記のケースにおいては、令和4年9月1日(支給を始める日)を基準として傷病手当金の支給額を算定するとともに、同月15日(支給を始めた日)を基準として総支給日数を算定し、同月15日から30日まで支給することとなる。

問10 消滅時効により傷病手当金が支払われなかった場合、支給期間の通算はどのような取扱いになるか。

(回答)
消滅時効により傷病手当金が支給されない場合には、支給期間は減少しない。
○なお、消滅時効により傷病手当金が一度も支給されていない場合については、実際に傷病手当金の支給が開始された日を「支給を始めた日」とし、当該日において支給期間を決定することとなる。

問11 傷病手当金について、障害厚生年金の支給を受けているため支給停止となっている者が資格喪失し、その後、被用者保険に加入することなく障害厚生年金が減額(停止)され、傷病手当金の額を下回った場合、資格喪失後の継続給付として傷病手当金は支給されるのか。また、その場合の支給期間については、どのような取扱いとなるか。

(回答)
障害厚生年金の支給を受けているために傷病手当金が支給停止となっている場合であっても、資格喪失日前日までに引き続き1年以上被保険者であって、資格喪失時点において、被保険者として傷病手当金を受給できるはずであった期間が残存している者は、資格喪失後の継続給付を受けることができる。
○上記のケースのように障害厚生年金との併給調整が発生する場合は、障害厚生年金が減額(停止)され、傷病手当金の額を下回った時点から当該継続給付が支給される。また、支給期間については、障害厚生年金の減額(停止)により、当該傷病手当金の継続給付が開始された時点から減少することとなる。

(施行日)

問12 支給期間の通算化は、いつから施行されるのか。

(回答)
〇令和4年1月1日から施行される。

問13 改正法の施行日前に支給を開始した傷病手当金について、改正前の規定による支給満了日が施行日後に到来する場合の取扱いはどうなるのか。

(回答)
○改正法附則第3条第2項では、改正後の規定は、施行日の前日において支給を始めた日から起算して1年6月を経過していない傷病手当金について適用し、施行日前に改正前の規定による支給期間が満了した傷病手当金については、なお従前の例によることとされている。
○したがって、令和2年7月2日以後に支給を始めた傷病手当金については、施行日の前日(令和3年12月31日)において支給を始めた日から起算して1年6月を経過していないため、改正後の規定が適用され、支給期間が通算される。

【例1】支給を始めた日が令和2年7月1日である場合
○令和3年12月31日で支給期間が満了するため、改正前の規定が適用される。

【例2】支給を始めた日が令和2年7月2日で、令和2年7月2日~31日(30日間)の傷病手当金が支給されている場合
○令和3年12月31日において、支給を始めた日から起算して1年6月を経過していないため、改正後の規定が適用される。
○なお、例2の場合、支給日数は、令和2年7月2日から令和4年1月1日までの549日であり、令和4年1月1日時点で、既に30日分の傷病手当金が支給されているため、令和4年1月1日時点の残りの支給日数は519日となる。

問14 資格喪失後の継続給付の取扱いはどうなるのか。

(回答)
○資格喪失後の傷病手当金の継続給付については、健保法第104条において、「継続して」受けるものとされているため、従来どおり、被保険者として受けることができるはずであった期間において、継続して同一の保険者から給付を受けることができる。
○ただし、一時的に労務可能となった場合には、治癒しているか否かを問わず、同一の疾病等により再び労務不能となっても傷病手当金の支給は行わない。

(その他)

問15 傷病手当金の支給額の算定方法について変更はあるか。

(回答)
○今回の改正では、傷病手当金の支給額の算定方法について変更は生じない。従来どおり傷病手当金の支給開始時に算定した支給額を支給する。

問16 傷病手当金の支給決定に当たり、支給決定通知書に残りの支給期間を記載する必要があるか。

(回答)
○支給決定通知書の記載内容については、従来から各保険者の判断とされており、引き続き各保険者において適切に判断いただきたい。

問17 傷病手当金の支給申請書について、改正法の施行に伴い変更する必要はあるのか。

(回答)
○健保則第84条第10項において、新たに同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に対する労働者災害補償保険法等に基づく休業補償給付等の支給状況について記載することを求める予定であり、様式に確認欄を設ける必要がある。
○なお、改正法の施行前に使用していた様式に確認欄がない場合は、施行後の内容に即した形で、当分の間、取り繕って使用していただきたい。

問18 船員保険傷病手当金や健康保険の日雇特例被保険者に係る傷病手当金についても、改正法による取扱いの変更が生じるのか。

(回答)
船員保険傷病手当金については、改正法の施行に伴い通算することとなる。
○一方で、健康保険の日雇特例被保険者に係る傷病手当金については、本改正の対象とならないため通算されず従前の取扱いとなる。

問19 被保険者が過去に加入していた保険者で支給した傷病手当金について、マイナンバーを活用した情報連携により「疾病名」や「支給期間」を確認することは可能か。

(回答)
○現状、マイナンバーを活用した情報連携では、「支給期間」は確認できる一方、「疾病名」等に係る情報は取得できないため、当該情報連携による情報のみでは、同一・関連の傷病による傷病手当金であるかの確認ができない。このため、原則として、被保険者が過去に加入していた保険者に直接照会する必要がある。


2.任意継続被保険者関係

(任意の資格喪失)

問20 任意継続被保険者の任意の資格喪失について、今回の法改正の内容はどのようなものか。

(回答)
○任意継続被保険者が、任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を保険者に申し出た場合には、その申出が受理された日の属する月の翌月1日に任意継続被保険者の資格を喪失することとなる。

問21 任意継続被保険者が任意の資格喪失を申し出た場合の取扱いについて、留意すべき事項はあるか。

(回答)
○任意継続被保険者に係る任意の資格喪失の申出に当たっては、
・資格喪失日は保険者が申出書を受理した日の属する月の翌月1日であること
・申出書を受理した日の属する月も被保険者であるため、被保険者証について
は原則として申出書に添付しないこと(翌月1日以降に保険者が指定する方法(郵送等)で回収すること)
・原則として、申出後に取り消しはできないこと
等について、任意継続被保険者に十分認識いただくよう、周知等に留意されたい。
○また、申出書の記載事項については、健保則第42条の2において、新たに被保険者等記号・番号又は個人番号、氏名及び生年月日を記載することを求める予定であり、各保険者において適宜対応されたい。
○なお、改正法等の施行前に使用していた任意継続被保険者が適用事業所に使用されるに至ったとき等の申出に係る申出書について、施行後の内容に即した形で、当分の間、取り繕って使用することも可能である。

問22 「受理した日」とは、各保険者における資格喪失の申出の受付印の日か。

(回答)
○「受理した日」とは、保険者における受付日ではなく、保険者に到達した日(保険者の郵便受に投函された日等)を指す。

問23 任意の資格喪失はいわゆる「処分」に該当するのか。

(回答)
○任意の資格喪失は、本人の申出を契機とし、その申出が受理された日の属する月の末日の到来をもって生じるものであり、特に保険者の行為を要するものではないため、いわゆる「処分」には該当しない。
○このため、審査請求等の対象外であり、審査請求等に係る教示文も不要である。

問24 任意継続被保険者が任意の資格喪失をする場合、その申出が受理された日の属する月の保険料は返納することとなるか。

(回答)
○健保法第38条の規定により、任意継続被保険者の資格喪失日は保険者が申出書を受理した日の属する月の翌月1日となる。そのため、申出が受理された日の属する月は、任意継続被保険者となり保険料は、返納する必要はない。
○例えば、3月5日に資格喪失の申出が受理された場合は、4月1日が資格喪失日となるため、3月分の保険料納付は必要となる。

問25 任意継続被保険者が任意の資格喪失の申出をしたが、申出のあった日が保険料納付期日の10日より前であり、当該月の保険料をまだ納付していなかった場合、資格喪失の取扱いはどうなるのか。

(回答)
○当該月の保険料を納付期日までに納付しなかった場合、健保法第38条第3号の規定に基づき、当該月の保険料の納付期日の翌日から資格を喪失することとなる。

問26 保険料の前納を行った任意継続被保険者についても、任意の資格喪失が可能か。可能である場合、前納した保険料の扱いはどうなるのか。

(回答)
○保険料の前納を行った任意継続被保険者についても、任意の資格喪失が可能である。
○また、健康保険法施行令(大正15年勅令第243号)第51条では、前納に係る期間の経過前において任意継続被保険者がその資格を喪失した場合、前納した保険料のうち未経過期間に係るものを還付することとしており、任意の資格喪失をした場合にも、同様の取扱いとなる。

問27 任意の資格喪失の申出の取り消しは認められるか。

(回答)
○原則として、認められない。
○ただし、本人の錯誤により申請が行われたなど手続き自体に瑕疵があり、保険者がやむを得ないと認める等の場合には、取り消すことも可能である。

問28 健康保険の特例退職被保険者や船員保険の疾病任意継続被保険者の取扱いについて、改正法による取扱いの変更は生じるのか。

(回答)
○健康保険の特例退職被保険者や船員保険の疾病任意継続被保険者についても、改正法の施行に伴い、任意の資格喪失の申出が可能となる。

健康保険組合における任意継続被保険者の保険料の算定基礎)

問29 健康保険組合における任意継続被保険者の保険料の算定基礎について、今回の法改正の内容はどのようなものか。

(回答)
○任意継続被保険者の保険料の算定基礎は、「資格喪失時の標準報酬月額」又は「任意継続被保険者が属する保険者の管掌する全被保険者の平均の標準報酬月額」のいずれか少ない額とされている。
○今回の法改正により、これらに加え、当該健康保険組合が規約で定めることにより、「資格喪失時の標準報酬月額」又は「当該健康保険組合における全被保険者の平均標準報酬月額を超え、資格喪失時の標準報酬月額未満の範囲内において規約で定める額」を当該健康保険組合の任意継続被保険者の保険料算定基礎とすることが可能となる。
○なお、上記の範囲内であれば、例えば、標準報酬月額を多段階で設定するなど、組合の裁量により設定することが可能である。

問30 健康保険組合の規約において定める任意継続被保険者の標準報酬月額については、限度額適用認定証等の自己負担額にも反映されるのか。

(回答)
○反映される。

問31 退職時の標準報酬月額が、当該健康保険組合における全被保険者の平均標準報酬月額を下回る任意継続被保険者について、規約により保険料算定基礎を当該平均標準報酬月額に変更することはできるか。

(回答)
○変更することはできない。

問32 全国健康保険協会管掌健康保険における任意継続被保険者、健康保険の特例退職被保険者及び船員保険の疾病任意継続被保険者の保険料の算定基礎について、改正法による取扱いの変更は生じるのか。

(回答)
○改正法による取扱いの変更は生じない(従来どおりの取扱いとなる)

(施行日等)

問33 任意継続被保険者の任意の資格喪失、健康保険組合の任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直しは、いつから施行されるのか。

(回答)
○令和4年1月1日から施行される。
○任意継続被保険者の任意の資格喪失の申出については、施行日以降に任意継続被保険者である場合に行うことが可能である。
健康保険組合の任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直しについては、施行日以降に健保法第36条の規定により被保険者資格を喪失した者について適用される。
なお、当該見直しの適用に当たっては、健保法第16条第1項第6号に規定する規約変更となるため、同条第2項及び健保則第159条第1項第1号の2に規定する地方厚生(支)局の認可を受ける必要があることに留意されたい。

平成28年3月事務連絡におけるQ&Aについて】

問1 同一の傷病に係る傷病手当金の支給申請が、例えば1か月ごとにある場合、初回の支給申請内容に基づき「支給を始める日」が定まり、傷病手当金の額も固定されるため、2回目以降の支給申請については、傷病手当金の額を再度算定する必要はないという考えでよいか。

(回答)
貴見のとおり。

問2 被保険者に、その属する全国健康保険協会都道府県支部、又は支部を有する健康保険組合の本部及び支部の変更があった場合、当該変更がある前に定められた標準報酬月額も平均の算定対象となるか。

(回答)
被保険者が現に属する保険者等により定められた標準報酬月額であるため、貴見のとおり、平均の算定対象となる。

問3 1つの傷病について傷病手当金の支給を受けている期間中に、別の傷病についても傷病手当金の支給要件を満たしている場合であって、さらに報酬等を受けることができる場合については、どのように併給調整を行うのか。

(回答)
それぞれの傷病に係る傷病手当金と報酬等との併給調整については、健康保険法(大正11年法律第70号)第99条及び第108条並びに健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号)第84条の2第7項の規定に基づき、
・それぞれの傷病に係る傷病手当金と報酬等との併給調整を行った上で、・報酬等との関係でなお支給可能な傷病手当金がある場合には、当該傷病手当金の併給調整前の額について、報酬等との併給調整を行い支給する。なお、報酬等との関係でなお支給可能な傷病手当金が2以上ある場合には、当該傷病手当金の併給調整前の額のうちいずれか多い額を傷病手当金の額として、報酬等との併給調整を行い支給する。

問4 過去、労務不能であった期間につき傷病手当金の支給申請があったが、当該期間の一部については、2年を経過していることにより時効が完成している。この場合において、傷病手当金の支給を始める日はいつになるか。

例えば、平成28年4月1日から平成28年9月30日までの期間について傷病手当金の支給申請があり、そのうち平成28年4月1日から平成28年5月31日までの期間は時効が完成している場合、傷病手当金の支給を始める日は「平成28年4月1日」、「平成28年6月1日」のどちらか。(なお、労務不能期間中に報酬は受けていないものとする。)
(回答)
傷病手当金の支給を始める日の判定に当たっては、時効の完成については考慮せず、労務不能から3日間の待期期間を経て4日目以降の支給申請日を基準日とするため、事例における傷病手当金の「支給を始める日」は「平成28年4月1日」であり、当該日を基準として傷病手当金の支給額を算定する。
なお、平成28年4月1日から平成28年5月31日までの期間における傷病手当金の請求権については時効が完成しているため、実際に傷病手当金の支給が開始された日である「支給を始めた日」は「平成28年6月1日」となり、当該日より1年6月間支給することとなる。

問5 改正省令により、健康保険法施行規則第84条第7項が新設され、傷病手当金の支給申請時の申請書類が追加されたが、この趣旨は何か。

(回答)
傷病手当金の額の算定に当たっては、その支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額を用いることとなるが、被保険者に同一の保険者内における適用事業所の変更があった場合(適用事業所の所在地の変更により、当該適用事業所が属する保険者の支部に変更があった場合を含む。)、
又は健康保険組合に合併・分割・解散があった場合についても、これらの事象が発生する前の標準報酬月額も平均の算定対象となる。このため、各保険者において、いずれの標準報酬月額を平均の算定に用いるかの特定を容易にするため、支給申請時の添付書類を追加することとした。当該添付書類の様式例を別添にてお示しするので、参考にされたい。
なお、同一の傷病に係る傷病手当金の支給申請が一定の期間ごとになされる場合、2回目以降の支給申請については、既に傷病手当金の額が定まっているため、当該添付書類の提出は不要である。
また、上記の添付書類の追加は、出産手当金の支給申請についても同様である。

【懲戒処分】テトラ・コミュニケーションズ事件(東京地判令3.9.17労経速2467号31頁)

テトラ・コミュニケーションズ事件(東京地判令3.9.17労経速2467号31頁)

1.事件の概要

Y社は、情報通信技術に関するコンサルティング業務等を目的とする株式会社である。
✕は、平成30年5月14日、Y社との間で労働契約(賃金月額57万円、期間の定めなし、業務内容・システムエンジニア業務及びその他関連業務)を締結し、Y社の従業員であった者である。
✕は、令和元年5月29日、Y社から、同月24日にY社のグループウェアに職務と関係ないY社又はY社代表者を批判する内容の書き込みをしたことを処分理由とするけん責処分を受け、同年6月4日、始末書を提出した。また✕は、同年7月2日にも、Y社からけん責処分を受けた(ただし、7月2日付けけん責処分は後に取り消し)。
しかし、✕は、令和2年4月20日、Y社のアドミニストレーショングループの担当者であるPから、Y社の企業年金確定拠出年金への移行(以下「DC移行」という。)に係る必要書類の提出を求められ、Pに対し、関連資料の送付を求めた上、「この件で、私が不利益を被ることがありましたら、訴訟しますことをお伝えします。」とのメッセージを送信した。これに対し、Y社代表者は翌21日、✕に対し、弁明の機会を付与することなく、メールで、「2020/4/20 アドミニストレーショングループPさんに対する「訴訟」という単語による脅迫および非協力的な態度」が懲戒事由に該当するとして、けん責処分をして同月24日午後6時までに始末書を提出するよう命じた。
✕は、令和2年6月15日、Y社に対し、同月30日付けで退職する旨の退職届を提出した。そして、✕が、Y社から違法無効な懲戒処分を受けたことによって被害を被ったと主張して、Y社に対し、民法709条又は会社法350条に基づく損害賠償として150万円等の支払を求め本件訴訟提起に至った。

なお、Y社の就業規則には、次の規定がある。

第73条(制裁の種類、程度)
(1) けん責 始末書を徴して将来を戒める

第74条(懲戒事由)
社員が次の各号のいずれかに該当する場合は、懲戒処分を行う。ただし、違反行為が軽微であるか、情状酌量の余地があるかまたは改悛の情が明らかである場合は、懲戒を免除し訓戒にとどめることがある。
(8) 業務に非協力的で協調性を欠く場合
(10) 自らの権利ばかりを主張して、まともに義務を果たしていない場合
(19) 勤務に関する手続きその他の届け出を怠りまたは偽った場合
(24) 職場内またはこれに順ずる(原文ママ)場所で、暴行、脅迫、傷害、又は業務妨害その他これに類する行為があった場合

2.判決の概要

争点1 懲戒権の濫用の有無について

(1)懲戒処分に当たっては、就業規則等に手続的な規定がなくても格別の支障がない限り当該労働者に弁明の機会を与えるべきであり、重要な手続違反があるなど手続的相当性を欠く懲戒処分は、社会通念上相当なものといえず、懲戒権を濫用したものとして無効になるものと解するのが相当である。
(2)これを本件についてみるに、本件けん責処分は、✕に弁明の機会を付与することなくなされたものである。✕がPに対して本件メッセージを送信したこと自体は動かし難い事実であるし、証拠によれば、✕が度々抗議に際して訴訟提起の可能性に言及するなどしてY社、その代表者及び従業員に対する敵対的な態度を示していたことが認められ、これが抗議の方法として相当といえるか疑問の余地もある。しかしながら、それが脅迫に当たるか、DC移行に係る必要書類の提出を拒むなどした✕の態度が、懲戒処分を相当とする程度に業務に非協力的で協調性を欠くものといえるかについては、経緯や背景を含め、本件メッセージの送信についての✕の言い分と聴いた上で判断すべきものといえる。そうすると、✕に弁明の機会を付与しなかったことは些細な手続的瑕疵にとどまるものともいい難いから、本件けん責処分は手続的相当性を欠くものというべきである。
(3)したがって、本件けん責処分は、懲戒権を濫用したものとして無効と認められる。

争点2 本件けん責処分による損害について

(1)懲戒処分は、労働者に経済的な不利益を与え、その名誉・信用を害して精神的苦痛を与え得る措置であるため、これが懲戒権の濫用と評価されるときは、使用者の不法行為民法709条)が成立し得るが、必ずしも懲戒権の濫用が不法行為の成立に直結するわけでないから、使用者の故意・過失、労働者の不利益や損害の有無等を検討する必要があるところ、Y社には✕に弁明の機会を付与せずに本件けん責処分をしたことについて、少なくとも過失が認められる。
(2)✕は、本件けん責処分によって多大な精神的苦痛を被ったとし、損害として慰謝料100万円及び弁護士費用50万円を主張する。
けん責処分は、それ自体で労働者に実質的不利益を課すものではないものの、昇給・一時金・昇格などの考課査定上不利に考慮されることがあり得ること、始末書を提出することについては心理的な負担感を伴うことからすると、違法なけん責処分によって精神的苦痛を被るることは否定し難い。
もっとも、本件けん責処分は、Y社代表者からメールで告知されたものであり、これがY社の他の従業員等の知れるところとなったなどの事情もうかがわれない。また、✕が度々訴訟提起の可能性に言及するなどしてY社に対する敵対的な態度を示していたことが認められ、本件けん責処分及びその原因となった本件メッセージの送信もその延長という側面が少なからずある。そうすると、✕が本件けん責処分によって多大な精神的苦痛を慰謝するに足りる相当な額は、10万円と認めるのが相当である。
また、✕が本件訴訟の追行を弁護士に委託したことは当裁判所に顕著であるところ、本件けん責処分と因果関係のある弁護士費用は1万円と認めるのが相当である。

3.解説

けん責処分無効確認の利益

けん責」とは、一般的に「始末書を提出させて将来を戒めること」を言います。類似する懲戒処分として、「戒告」がありますが、こちらは将来を戒めるのみで始末書の提出を伴いのが一般的です。
いずれも、それ自体では実質的不利益を課さない処分ではありますが、昇給・賞与・昇格等の人事考課上不利に考慮されることがあります。この点は、無効確認に際して訴えの利益の有無に関係します。
けん責が「単に叱られて、始末書を出すよう勧奨された。」という事実上の行為であれば、訴えの利益のないものとして審理されずに却下され、何らかの不利益を伴う法律行為であれば訴えが受理されます。

無効確認の訴えの利益について、 理事会、評議員会の決議無効確認等請求の事例ですが、最高裁は「確認の訴におけるいわゆる確認の利益は、判決をもつて法律関係の存否を確定することが、その法律関係に関する法律上の紛争を解決し、当事者の法律上の地位の不安、危険を除去するために必要かつ適切である場合に認められる。このような法律関係の存否の確定は、右の目的のために最も直接的かつ効果的になされることを要し、通常は、紛争の直接の対象である現在の法律関係について個別にその確認を求めるのが適当であるとともに、それをもつて足り、その前提となる法律関係、とくに過去の法律関係に遡つてその存否の確認を求めることは、その利益を欠くものと解される。しかし、ある基本的な法律関係から生じた法律効果につき現在法律上の紛争が存在し、現在の権利または法律関係の個別的な確定が必ずしも紛争の抜本的解決をもたらさず、かえつて、これらの権利または法律関係の基本となる法律関係を確定することが、紛争の直接かつ抜本的な解決のため最も適切かつ必要と認められる場合においては、右の基本的な法律関係の存否の確認を求める訴も、それが現在の法律関係であるか過去のそれであるかを問わず、確認の利益があるものと認めて、これを許容すべきものと解するのが相当である。」(最判第一小判昭47.11.9民集26巻9号1513頁)としています。

本件のリーディングケースとなる高裁判決(立川バス事件東京高判平2.7.19労判580号29頁)では、この最高裁判例を引用した上で「退職をしていることから始末書提出義務は問題にならず、また、昇給延伸等の不利益が生じることの主張立証もないとして、訴えの利益なしとし、けん責処分無効確認の訴えは訴えの利益を欠く不適法なものである」として無確認請求を却下したうえで、違法性のみを判断し慰謝料の請求を認めています。

結論は変わらないものの、本件では無効確認について却下せずに審査している点が異なっています。
(審査すべきであったのか疑問です。)

②弁明の機会の付与

懲戒解雇は、客観的合理性及び社会的相当を欠く場合は権利の濫用として無効となります。

労働契約法
(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

本件においては、「就業規則等に手続的な規定がなくても格別の支障がない限り当該労働者に弁明の機会を与えるべきであり、重要な手続違反があるなど手続的相当性を欠く懲戒処分は、社会通念上相当なものといえず」として、就業規則等に弁明の機会についての定めが無くても、弁明の機会を与えずになされた懲戒処分は社会的相当性を欠くため、無効としています。
就業規則等に規定が無い場合にまで、弁明の機会を付与しなければならないのか裁判例はどちらとも言えませんが、特段の支障がないかぎり、本人に弁明の機会を与えることが要請され、これらの手続的正義に反する懲戒処分は、ささいな手続上の瑕疵にすぎない場合でないかぎり、懲戒権の濫用となるという見解があります(菅野和夫「労働法第12版」717頁)。
無効とされるリスクを避けるためにも、実務上は弁明の機会を付与すべきです。

Twitterによる男性の育児休業についての意識調査の結果

Twitterによる男性の育児休業についての意識調査の結果

男性の育児休業について、Twitterで簡単なアンケートを取ってみました。

対象者
こちらのアカウントのフォロワーの皆様:@masarin1126
※多くは浜崎あゆみさんのファンですが、幅広い層がいると思われます。

設問
男性:自分の妻が出産したとして育休をしたいかしたくないか①or②
女性:自分が出産したとして夫に育休して欲しいかして欲しくないか③or④
※育休の日数は問いません

結果
男性:育児休業をしたい93.8% 育児休業をしたくない6.2%
女性:育児休業をして欲しい70.0% 育児休業をして欲しくない30.0%

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男性の育児休業の意識調査


私は、育児休業したくない男性が多いのだと思い込んでいましたが、意外なことにほとんどの男性はしたいようです。
逆に、30%の女性は夫に育児休業して欲しくないと考えているようです。
今年(2021年)7月に厚生労働省が公表した「雇用均等基本調査」によると、2020年度に育児休業を取得した男性は12.65%で初めて1割を超え、過去最高を記録しました(国策としては2025年には25%を目標)。

Twitterによる調査を素直に読めば、男性が育児休業を取得することを、男性のほぼ全員、女性の7割が望んでいるということです。1年以上雇用されている等の一定の条件を満たしていれば、会社や職場の意向に関係なく、男性であっても申出により育児休業を取得できます。また、女性の育児休業は産後休業終了後から始まりますが、男性は妻の出産日から取得することが可能なので、例えば、第二子出産の際、産後の動けない期間に夫に育児休業を取得させ、子供の面倒を見させるという利用が可能です(私が申請した男性の育休のほとんどは、出産日から2週間ないし1か月程度というものです)。
それにも関わらず、取得率が12.65%に留まっているのは、制度を知らない又は取得しにく職場の雰囲気といった事情によるものと考えます。なお、育児休業は1日や1週間という単位でも取得可能です。

2022年には4月及び10月の2回に渡って、段階的に改正育児介護休業法が施行されますが、4月からは「妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置」が企業に義務付けられます。これにより、企業は、本人又は配偶者が妊娠又は出産した旨等の申出があった場合に、① 育児休業・出生時育児休業に関する制度、② 育児休業・出生時育児休業の申し出先、③ 育児休業給付に関すること。④ 労働者が育児休業・出生時育児休業期間について負担すべき社会保険料の取り扱いについて、個別に従業員に周知するとともに、育児休業を取得等についての意向確認することが求められます(取得を控えさせるような形で実施することは認められていません)。
この個別の周知・意向確認措置の義務化は、制度の周知及び取得しやすい職場づくりにかなり有効だと思われます。

また、2022年10月からは「出生時育休制度」が施行されます。これは、「男性産休」とも呼ばれ、子どもの誕生直後8週間以内に夫が最大4週間の育休を2回に分けて取得することができる制度です。
これにより、出生直後の育児休業取得が柔軟化されます。

2021年は、男性の育児休業に携わることが大幅に増えました。
来年以降もこの傾向が継続し、男女問わず、取得したい人が気軽に利用できる制度になっていって欲しいものです。

その他の育児介護休業法の改正及び詳細については、次のリンクをご参照ください。
https://sr-memorandum.hatenablog.com/entry/2021/12/25/231727

中小企業の賃金(令和3年版)公表されました

中小企業の賃金(令和3年版)公表されました。

賃金制度を検討するとき、自社の賃金水準等を他社と遜色のないものとしたい場合には、同一業種や同一規模の企業の賃金水準等を参考にする必要があります。
しかし、大企業については、行政機関や民間研究機関等で各種の調査が実施され、調査結果が公表されていますが、企業数の大半を占める中小企業については、あまり参考となる資料がありません。

そんな中で参考となるのが、東京都が毎年行い公表している「中小企業の賃金事情」という調査です。従業員が10人~299人の都内中小企業を対象とし、「賃金」、「賞与」、「諸手当」、「初任給」、「モデル賃金」等については毎年、「退職金」と「労働時間」については交互に1年おきに調査されており、令和3年は「労働時間」についての調査が行われました。


記載例を抜粋します。このような調査結果が記載されていますので、詳細は次のリンクをご確認ください。
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/koyou/chingin/r3/index.html

平均賃金

令和3年7月の全常用労働者(役付者を含む。)の平均賃金は、所定時間内賃金が349,759円、所定時間外賃金が30,467円となり、合計で380,226円(平均年齢42.3歳、平均勤続年数10.6年)であった。
労働組合の有無別にみると、労働組合が「あり」と回答した企業は「なし」と回答した企業に比べ、所定時間内賃金で31,443円(9.1%)高くなっている。
また、企業規模別では所定時間内賃金、所定時間外賃金ともに規模が大きくなるにつれて高くなっている。令和2年の全常用労働者の年間給与支払額(所定時間外賃金、賞与等を含む。)の平均額は5,178,563円であった。

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全常用労働者の平均賃金

実在者賃金

年齢別に全常用労働者(役付者を含む。)の令和3年7月1か月の所定時間内賃金をみると、男女ともに55~59歳(男性430,289円、女性337,510円)でピークに達する。所定時間内賃金の上昇率について22~24歳を100としてみると、男性はピーク時で194となっている。これに対し、女性はピーク時で155となっており、男性に比べて緩やかな上昇となっている。
また、令和2年の年間給与支払額は、男性が55~59歳、女性は50~54歳がピークとなっている。

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年齢別賃金
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賃金上昇の傾向

所定労働時間

1日の所定労働時間の平均は、7時間45分となった。分布をみると、「8時間」が55.9%を占め、次いで「7時間超7時間30分」が23.0%となっている。産業別にみると、「生活関連サービス業,娯楽業」が7時間33分で最も短くなっている。一方、最も長いのは、「運輸業,郵便業」で8時間00分であり、次いで「医療,福祉」の7時間56分となっている。

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1日の所定労働時間

テレワーク制度

テレワーク制度の導入状況についてみると、「制度あり」が44.2%、「制度なし」が54.8%であった。導入した制度の内容については、「労働時間制度は変更しない」が74.0%と最も多く、次いで「みなし労働時間制(事業場外)の導入」が16.7%となっている。

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テレワーク制度の整備状況

2022(令和4)年1月1日施行健康保険法等の一部改正に伴う各種制度の見直しについて(傷病手当金、任意継続、出産育児一時金)

健康保険法等の一部改正に伴う各種制度の見直しについて(傷病手当金、任意継続、出産育児一時金

令和4年1月1日から施行される「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」により、傷病手当金の支給期間及び任意継続被保険者の資格喪失事由の見直しが行われます。
また、産科医療補償制度の掛金の引き下げに伴い、出産育児一時金の金額も一部変更となります。
改正法等の主要内容は次のとおりです。
なお、本内容は協会けんぽのHPより抜粋しています。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb3160/sb3190/sbb3193/202201/

傷病手当金の支給期間が通算化

傷病手当金が支給される期間は、令和4年1月1日より、支給を始めた日から通算して1年6ヵ月に変わります。
ただし、支給を始めた日が令和2年7月1日以前の場合には、これまでどおり支給を始めた日から最長1年6ヵ月です。
逆に言えば、支給を始めた日が令和2年7月2日以後の場合には、通算化の対象となります。

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2022年1月からの傷病手当金の通算化

任意継続被保険者の資格喪失事由が追加

任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を加入する協会けんぽ都道府県支部に申し出た場合には、その申出が受理された日の属する月の翌月1日にその資格を喪失します。
令和4年1月1日より資格喪失を希望する旨の申出が可能となるため、申出による資格喪失日は最も早くて令和4年2月1日となります。
申出方法:加入する協会けんぽ都道府県支部へ「資格喪失申出書」をご提出ください。
これまでは、任意継続被保険者の資格を喪失するためには、保険料を滞納して強制的に資格喪失するという、裏技のような方法しかありませんでしたが、これにより任意に資格喪失することが可能になります。

出産育児一時金の支給額の内訳が変更

産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合や妊娠週数22週未満で出産された場合の出産育児一時金は40.8万円に引き上げられました。
なお、令和3年12月31日以前の出産の場合はこれまでどおり40.4万円となります。

支給額

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出産育児一時金の支給額の内訳変更

改正育児・介護休業法の対応について

改正育児・介護休業法の対応について


https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000869228.pdf

■令和4年4月1日から義務化される事項

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が必要です!

何を実施するのか?

➀~④のいずれかを実施してください(複数が望ましい)
※産後パパ育休は、令和4年10月1日から施行
育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口や相談対応者の設置)
③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
④自社の労働者への育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

具体的には何を

「研修」
対象は、全労働者が望ましいですが、少なくとも管理職は、研修を受けたことがある状態にしてください。
「相談体制の整備」
窓口を設ける場合、形式的に設けるだけでなく、実質的な対応が可能な窓口を設けてください。また、窓口の周知等をして、労働者が利用しやすい体制を整備してください。
「自社の育休取得事例の提供」
自社の育休取得事例を収集し、事例を掲載した書類の配付やイントラネットへの掲載等を行い、労働者が閲覧できるようにしてください。提供する事例を特定の性別や職種、雇用形態に偏らせず、可能な限り様々な労働者の事例を収集・提供し、特定の者の育児休業の申し出を控えさせることに繋がらないように配慮してください。
「制度と育休取得促進に関する方針の周知」
育児休業に関する制度と育児休業の取得の促進に関する事業主の方針を記載したもの(ポスターなど)を事業所内やイントラネットへ掲載してください。

2 個別の周知・意向確認が必要です!

※令和4年4月1日以降の申し出が対象です。取得を控えさせるような形での周知・意向確認は、この措置の実施とは認められません。
個別周知・意向確認、雇用環境整備の様式例はこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html

誰に?

(本人または配偶者の)妊娠・出産の申し出をした労働者

何を?

➀~④全てを行ってください。
※産後パパ育休は、令和4年10月1日以降の申し出が対象
育児休業・産後パパ育休に関する制度(制度の内容など)
育児休業・産後パパ育休の申出先(例:「人事課」、「総務課」など)
育児休業給付に関すること(例:制度の内容など)
④労働者が育児休業・産後パパ育休期間において負担すべき社会保険料の取扱い

いつ?

妊娠・出産の申し出が出産予定日の1か月半以上前に行われた場合▶出産予定日の1か月前までに
それ以降に申出があった場合でも、
出産予定日の1か月前までに申出が行われた場合▶2週間以内、
出産予定日の1か月前から2週間前の間 に申出が行われた場合▶1週間以内
など、できる限り早い時期に措置を行うことが必要です。
また、出産予定日の2週間前以降に申出があった場合や、子の出生後に申出があった場合は、できる限り速やかに措置を行うことが必要となります。

どうやって?

①面談(オンライン可) ②書面交付 ③FAX ④電子メール等のいずれか(③④は労働者が希望した場合に限る)

就業規則の変更

・変更した就業規則は労働者への周知が必要です。
・常時10人以上の労働者を使用する事業場は、労働基準監督署への届け出も必要です。
・記載例はこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html

第1弾「令和4年4月1日」までに就業規則の変更が必要です!

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就業規則の変更

※引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外可能です。現在ある会社も、新たに労使協定を締結してください!!
労使協定の例はこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html

第2弾「令和4年10月1日」までに就業規則の変更が必要です!

※規定例はこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html

産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

対象期間/取得可能日数

子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能

申し出期限

原則、休業の2週間前まで
雇用環境の整備などについて、法を上回る取組を労使協定で定めている場合は、1か月前
までとすることができる。
職場環境の整備等の措置は、次の①~③です。

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職場環境の整備等の措置
分割取得

2回まで分割して取得可能(2回分まとめて申し出する必要あり)

休業中の就業

労使協定を締結している場合に限り、労働者が個別に合意した範囲で休業中に就業することができる。
就業可能日数等には上限がある
● 休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
● 休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満

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休業中の就業の上限


育児休業制度の変更(改正後の内容)

1歳までの育児休業

2回まで分割して取得可能(取得の際にそれぞれ申し出)

特に必要と認められる場合の1歳以降の育児休業

休業開始日の柔軟化
期間の途中で配偶者と交代して育児休業を開始できるようにする観点から、配偶者の休業の終了予定日の翌日以前の日を、本人の育児休業開始予定日とすることができる。
特別な事情がある場合に限り再取得可能

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改正後のイメージ

最低賃金を引き上げた中小企業における 雇用調整助成金等の要件緩和について

最低賃金を引き上げた中小企業における 雇用調整助成金等の要件緩和について

概要

業況特例等の対象となる中小企業が事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げる場合、令和3年10月から令和4年3月までの6ヶ月間の休業については、休業規模要件(1/40以上)を問わず支給されるものです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000814592.pdf

対象となる条件

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緩和の対象となる条件

① 令和3年10月から6ヶ月間の休業について、業況特例又は地域特例の対象となる中小企業(令和3年1月8日以降解雇等を行っていない場合に限る。)であること。
② 事業場内最低賃金(当該事業場における雇入れ3月を経過した労働者の事業場内で最も低い時間あたりの賃金額。地域別最低賃金との差が30円未満である場合に限る。)を、令和3年7月16日以降、令和4年3月までの間に、30円以上引き上げること。

※令和3年度地域別最低賃金の発効日以降に賃金を引き上げる場合は、発効後の地域別最低賃金から30円以上引き上げる必要があります。
※同一都道府県内に地域別最低賃金との差が30円未満である事業場が複数ある事業主は、最も低い事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、他の事業場もこの水準以上に引き上げる必要があります。
就業規則その他これに準ずるものにより、当該引上げ後の賃金額を事業場で使用する労働者の下限の賃金額とすることを定める必要があります。※当該引上げの実施日以降の休業について要件緩和が利用できます。

申請手続等

雇用保険被保険者、被保険者以外ともに、緊急雇用安定助成金として申請を行っていただきます。
○緊急雇用安定助成金は、休業に対する助成となります。(教育訓練や出向は対象になりません。)
○助成率や上限額は業況特例や地域特例と同じになります。


(要件緩和の対象となるケースのイメージ)
引上げ前の地域別最低賃金が800円。地域別最低賃金の引上げ額が28円。地域別最低賃金の引上げ日が10月1日の場合。

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(ケース1)10月1日より前に事業場内最低賃金額を引き上げる場合
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(ケース2)10月1日以降に事業場内最低賃金額を引き上げる場合
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(ケース3)10月1日以降に事業場内最低賃金額を引き上げる場合

【定年後再雇用の雇止め】Y社事件(広島高判令2.12.25労経速2462号3頁)

Y社事件(広島高判令2.12.25労経速2462号3頁)

1.事件の概要

✕は、昭和60年8月にY社に入社し、平成16年4月に、Y社において労働組合を結成して書記長に就任し、同28年4月から執行委員長に就任した。
✕は、平成28年2月末日をもってY社就業規則に定める定年の満60歳に達したことから、Y社を定年退職した。✕の退職時の賃金は、月額31万1554えん(基本給及び各種手当)、賞与年間36万円7208円であった。
Y社の嘱託規程においては、定年に達した後、本人が継続勤務を希望する場合には、61歳までは希望者全員を嘱託従業員として再雇用すること、その後は本人が更新を希望し、かつ、一定の基準を満たす場合は、さらに1年以内の再雇用契約を更新すること、再雇用の上限は満65歳の誕生日の属する賃金締切日とすること、再雇用者の給与は、定年退職時の賃金をもとに、健康で文化的な生活を営めるよう個別の再雇用契約で定める旨が規定されていた。
✕は、平成28年2月29日、定年に達した。それに先立ち、Y社との間で、期間を同年3月1日から翌29年2月28日までの1年間、賃金は暫定的に、月額基本給19万円、家族手当5000円、通勤手当、ただし基本給と賞与については、今後団体交渉によって取り決める旨の継続雇用契約を締結した(以下「本件継続雇用契約」という。)。
✕は、Y社に対し、平成29年2月末日までに、同年3月1日以降も本件継続雇用契約を更新するとの申込みを行った(上記更新基準を全て満たしていた)。両者はその後交渉したものの、同年2月28日までに契約更新における労働条件について合意に達しなかった。
Y社は、✕に対し、当面現在の労働条件で1か月の猶予期間を持つこと等について通知し、さらに、平成29年3月27日、3種類の労働条件(給与総額ないし就労場所の変更を伴うもの)を提案し(以下「本件提案」という。)、本件提案にかかる労働条件以外では本件継続雇用契約の更新には応じられない旨通知した。
その後、Y社は、✕が本件提案をいずれも拒否し、雇用契約書を作成しなかったことを理由に、平成29年4月4日、同月7日をもって、暫定猶予期間による雇用関係終了し、退職手続をするとの通知(以下「本件通知」という。)をした。
これに対し、✕はY社に、平成29年6月、✕が労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めて提訴した。
原審は、✕の請求を一部認容し、✕がY社との間で労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する等の判決をしたところ、これを不服としたY社が控訴したのが本件である。

2.判決の概要

※争点がいくつかありますが、平成29年3月1日以降の✕とY社との間の契約関係のみ取り上げます。

原審(山口地判宇部支部R2.4.3判決)

(1)平成29年3月1日から同年4月7日までの期間
平成28年3月1日から1年が経過し、✕とY社との本件継続雇用契約の期間が経過した後となるが、Y社が、契約条件について交渉を行っており、✕もこれに応じた対応をしていること、契約条件について協議するための期間を延長し、延長期間について、それ以前の契約内容で契約を延長することに関し、Y社就業規則等にそのような期間を持つことを許すような規定はないものの、そのような扱いをしても、当事者間で穏当に契約関係を締結できる可能性が生じるだけで、✕にもY社にも不利益はないことからすると、当事者間に異存がなければそのような契約条件について検討するための期間を設けることは許されると解され、上記期間は、✕をY社とで、本件継続雇用契約の更新について条件を交渉するための期間を設定したものと解するのが相当であり、当該期間については、未だ本件継続雇用契約が延長されたものではないと解するのが相当である。
そして、✕とY社との間で、上記期間内に本件継続雇用契約を更新するための条件は調わなかったため、本件継続雇用契約の効力がどのようになったかについて検討する。

(2)平成29年3月1日以降の本件継続雇用契約の効力
定年退職後の再雇用について会社が設ける就業規則上の定めに基づく期間の定めのある労働契約も有期労働契約であることは明らかであり、労働契約法19条が準用されると解するのが相当であり、Y社嘱託規定2条は、定年退職後の就労希望者を全員嘱託従業員として61歳まで再雇用することを定め、Y社嘱託規定3条は、第2条に定める期間を過ぎた後も定期健康診断の結果が良好であることなどの6つの条件を備えた者については例外なく満65歳の誕生日の属する賃金締切日(属する月の賃金締切日という趣旨であると解される。)まで再雇用することが定められており、本件において、✕がY社嘱託規定3条に定める6つの条件を満たしていることについて争いはないから、✕は、平成29年3月1日以降もY社において再雇用されると期待することについて合理的理由があるといえ、Y社が、✕の再雇用の申し込みを拒絶するには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要であって、そのように言えない場合、本件継続雇用契約は、従前どおりの条件で自動的に更新される。

この合理的な理由について、Y社は、✕が本件提案を受け入れなかったことを理由として主張しているものと解される。本件提案のうち、第1案及び第2案については、いずれも、1時間あたりの給与は下がらないとしても、就労時間が減少する結果、給与総額は3万円ないし4万5000円減少するものであり、明らかに条件が悪くなっており、しかも、そのように変更することについて具体的な理由が明らかになっているとはいえない。また、本件提案のうちの第3案については、給与額に変動はないものの、職務条件が、就労場所がQ1市内からQ2市内に変わるなどの従来の事情からの変更があり、Q1市内在住の✕にとって通勤等の条件が悪くなっていると解され、これについても特に具体的な変更の理由が明らかでないことからすると、✕がこれを拒絶するのは当然といえ、本件提案を✕が受け入れなかったことが、Y社による再雇用を拒絶することの客観的に合理的な理由にも社会通念上相当な理由となるともいえない。この点、Y社は、定年後の再雇用については、高年齢者保護の社会的要請により行っている側面が強く、雇用契約の条件が低くなることは裁量に任されることを前提に、その裁量で下げた条件を受け入れないことは、契約を更新しないことの客観的に合理的理由や社会通念上相当な理由となることをいうものと解される。確かに年齢を重ねることで、一定の年齢からは能力が落ちるにも関わらず、長期間勤務することで、給与は上昇するのみである場合もまま見られ、定年退職後の再雇用においては、定年退職時の給与を基礎として、減額した給与での契約とするというのは一定の合理性があるといえるが、そもそも、本件継続雇用契約の時点での✕の定年退職時の給与の6割程度の給与としているもので、本件提案はその給与をさらに減額するというもので、許されるべきではない、上記の事情による勤務条件の変更と勤務場所の変更はなんら関連性はなく、定年退職後の再雇用ということで、変更できる条件とはいえないとするのが相当である。
Y社は、Y社就業規則9条により、Y社都合による業務内容の変更が可能であるから、これを理由として、本件継続雇用契約の更新の際、業務内容を変更した条件の契約の締結を求めることが可能である旨の主張もするが、就業規則は、労働契約の内容が確定して成立した後の、労働契約上の労務指揮権である配転命令権を定めたものであって、契約締結の段階とは次元を異にするといわざるを得ない。同規定を理由に、勤務場所の変更等が許され、これを拒絶することが、契約更新を拒絶する客観的な正当な理由とも社会通念上相当な理由ともならないといえる。

本件(第二審)

当裁判所も、✕及びY社は、平成29年3月1日以降、本件継続雇用契約と同一の内容で契約を更新し、本件口頭弁論終結時(令和2年11月5日)においても、本件継続雇用と同一の内容で契約が更新されているものと認める。
Y社は、定年退職後の再雇用については、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律が適用され、労働契約法19条は準用されない旨を主張するが、本件は、✕の定年後再雇用自体ではなく、✕の定年退職に伴って締結された有期労働契約である本件継続雇用契約の更新の有無及びその内容が問題となっている事案であることは明らかである。
Y社は、本件継続雇用契約の更新については、Y社嘱託規定によって更新することが定められており、当該労働条件について合意が整わないまま決裂した本件においては、上記の個別の雇用契約が不成立となり、上記の更新がされないのは当然である旨主張するが、本件においては、労働契約法19条の適用ないし準用により、本件継続雇用は、従前の労働条件と同一の労働条件で締結されたものとみなされるのであり、このことは、Y社における上記の定めがあっても変わるものではない。

3.解説

①65歳までの定年後再雇用制度は、「更新されるものと期待することについて合理的な理由」となるか?
労働契約法第19条は、労働者が「有期労働契約の契約期間の満了時に、更新されるものと期待することについて合理的な理由がある」と認められる場合には、「契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合」又は「当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合」は、「使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」ときは、「使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」と定め、労働者が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある場合は、解雇権濫用法理を類推適用し、雇止めが適否を判断することとしています。

(有期労働契約の更新等)
労働契約法第19条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 (省略)
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

本件においては、「Y社嘱託規定3条は、(中略)6つの条件を備えた者については例外なく満65歳の誕生日(中略)まで再雇用することが定められており、本件において、✕がY社嘱託規定3条に定める6つの条件を満たしていることについて争いはないから、✕は、平成29年3月1日以降もY社において再雇用されると期待することについて合理的理由がある」とし、会社に定年後再雇用制度があることをもって、更新されるものと期待することについて合理的な理由があるとされています。
この点については、判例津田電気計器事件(最一小判平24.11.29労判1064号13頁))があり、それと同じ考えに依ったものです。
厚労省の「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)|厚生労働省」には、就業規則に解雇事由又は退職事由の規定とは別に更新をしない事由を定めることを認めないというものがありますが、解雇に相当する場合にしか雇止めを認めない趣旨と捉えることもでき、本件や上記の最高裁判例と同じ見解に立つものと思われます。

②第19条よる更新は常に同一の労働条件となる
第19条は、「使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」と定めており、本条が適用されて雇止めが認められなかった場合は、常に同一の労働条件で更新されることになります。
一方、高齢法は、事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示することを認めており、厚労省の「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」によると、労働者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、高年齢者雇用安定法違反となるものでないとされています。
労働者が継続雇用を拒否し、退職してくれれば問題はありませんが、第19条によるみなし更新を求めて提訴した場合、本判決に従うのであれば、常に従前の労働条件で更新されることになります。
これが認められるのであれば、労働者側は常に会社が提示する条件を拒否して、みなし更新を求めて提訴すれば、1年毎に労働条件を見直していくこと可能にしている定年後再雇用制度を、理論上は無効化することが可能になります。
津田電気計器事件と異なり、本件のような単なる更新拒否でない場合にまで、第19条によるみなし更新を単純に認めることは問題がありそうです。