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『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』(パートタイム有期雇用労働法)の逐条解説①-第1章

同一労働同一賃金について定めた『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』(パートタイム有期雇用労働法)についてわかりやすく解説します

第2章
『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の逐条解説②-第2章
第3章
『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の逐条解説③-第3章

偉そうに断定的な表現で記載していますが「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について(H31.1.30基発0130第1号・H31.1.30職発0130第6号・H31.1.30雇均発0130第1号・H31.1.30開発0130第1号)」という通達を読みやすくアレンジしただけです。


第1章 総 則
第1章は、本法の目的、短時間・有期雇用労働者の定義、事業主等の責務、国及び地方公共団体の責務等、第2章の短時間・有期雇用労働者対策基本方針や第3章及び第4章に規定する具体的措置に共通する基本的考え方を明らかにするものです。

1.1 目 的(第1条)

(目的)
第一条 この法律は、我が国における少子高齢化の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、短時間・有期雇用労働者の果たす役割の重要性が増大していることに鑑み、短時間・有期雇用労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。

(1)趣旨
「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パート有期法」という)の目的は、我が国における少子高齢化の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、短時間・有期雇用労働者の果たす役割の重要性が増大していることに鑑み、短時間・有期雇用労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に寄与することにあります。

(2)パート有期法の対象
どのような雇用形態を選択しても納得が得られる待遇が受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにする観点から、行政指導、紛争の解決等も含めて一体的に対応するため、いわゆる非正規雇用労働者のうち、直接雇用である短時間労働者と有期雇用労働者がパート有期法の対象となります。

(3)主な用語の意味
① 「職業能力の開発及び向上等」の「等」には職業紹介の充実等(第21条)が含まれています。

② 「措置等を講ずる」の「等」には、事業主等に対する援助(第19条)、紛争の解決(第4章)及び雇用管理の改善等の研究等(第28条)が含まれています。

③ 「待遇の確保等」の「等」には、次のような内容が含まれています。
○ 短時間・有期雇用労働者であることに起因して、待遇に係る透明性・納得性が欠如していることを解消すること(適正な労働条件の確保に関する措置及び事業主の説明責任により達成される)。
○ 通常の労働者として就業することを希望する者について、その就業の可能性を全ての短時間・有期雇用労働者に与えること(通常の労働者への転換の推進に関する措置により達成される)。

④ 「あわせて経済及び社会の発展に寄与する」とは、少子高齢化労働力人口減少社会に入った我が国においては、短時間・有期雇用労働者について、通常の労働者と均衡のとれた待遇の確保や通常の労働者への転換の推進等を図ることは、短時間・有期雇用労働者の福祉の増進を図ることとなるだけでなく、短時間・有期雇用労働者の意欲、能力の向上やその有効な発揮等による労働生産性の向上等を通じて、経済及び社会の発展に寄与することともなることを明らかにしたものです。

1.2 定 義(第2条)

(定義)
第二条 この法律において「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(当該事業主に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業主に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。
2 この法律において「有期雇用労働者」とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいう。
3 この法律において「短時間・有期雇用労働者」とは、短時間労働者及び有期雇用労働者をいう。

(1)趣旨
パート有期法の対象となる短時間労働者及び有期雇用労働者の定義を定めています。

(2)雇用形態の該当性
短時間労働者や有期雇用者の該当性は、パートタイマー、アルバイト、契約社員など名称には左右されません。したがって、例えば名称が「パートタイマー」であっても、当該事業主に雇用される通常の労働者と同一の所定労働時間である場合には、パート有期法の対象となる短時間労働者には該当しません。ただし、このような場合でも、有期雇用労働者に該当する場合には、有期雇用労働者として対象となります。
なお、派遣労働者については、派遣先においてこの法律が適用されることはありませんが、別途、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(。以下「労働者派遣法」という。)により、就業に関する条件の整備が図られています。

(3)通常の労働者
第2条の「通常の労働者」とは、社会通念に従い、比較の時点で当該事業主において「通常」と判断される労働者のことをいいます。そして、当該「通常」の概念については、就業形態が多様化している中で、いわゆる「正規型」の労働者が事業所や特定の業務には存在しない場合も出てきているため、ケースに応じて個別に判断をすべきものとされています。具体的には、「通常の労働者」とは、いわゆる正規型の労働者及び事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者(以下「無期雇用フルタイム労働者」という。)のことをいいます。また、パート有期法が業務の種類ごとに短時間労働者を定義していることから、「通常」の判断についても業務の種類ごと行われます。なお、業務の種類については、『厚生労働省編職業分類』の細分類の区分等を参考にし、個々の実態に即して判断されます。
この場合において、いわゆる正規型の労働者とは、労働契約の期間の定めがないことを前提として、社会通念に従い、当該労働者の雇用形態、賃金体系等(例えば、長期雇用を前提とした待遇を受けるものであるか、賃金の主たる部分の支給形態、賞与、退職金、定期的な昇給又は昇格の有無)を総合的に勘案して判断されることになります。また、無期雇用フルタイム労働者とは、その業務に従事する無期雇用労働者(事業主と期間の定めのない労働契約を締結している労働者をいう。以下同じ。)のうち、1週間の所定労働時間が最長の労働者をいいます。したがって、いわゆる正規型の労働者の全部又は一部が、無期雇用フルタイム労働者にも該当する場合があります。

(4)「予定労働時間が短い」の意味
「所定労働時間が短い」とは、わずかでも短ければ該当するもので、例えば通常の労働者の所定労働時間と比べて1割以上短くなければならないといった基準はありません。

(5)短時間労働者である否かの判定
短時間労働者であるか否かの判定は、具体的には以下の基準に従って判断されます。
① 同一の事業主における業務の種類が1つの場合
当該事業主における1週間の所定労働時間が最長である通常の労働者と比較し、1週間の所定労働時間が短い通常の労働者以外の者が短時間労働者となります。(第2条第1項括弧書以外の部分。図の1-(1)から1-(3)まで)。
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② 同一の事業主における業務の種類が2以上あり、同種の業務に従事する通常の労働者がいる場合
原則として、同種の業務に従事する1週間の所定労働時間が最長の通常の労働者と比較して1週間の所定労働時間が短い通常の労働者以外の者が短時間労働者となります。(第2条第1項括弧書。図の2-(1))。
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③ 同一の事業主における業務の種類が2以上あり、同種の業務に従事する通常の労働者がいない場合
当該事業主における1週間の所定労働時間が最長である通常の労働者と比較し、1週間の所定労働時間が短い通常の労働者以外の者が短時間労働者となります。(第2条第1項括弧書以外の部分。図2-(2)のC業務)。
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④ 同一の事業主における業務の種類が2以上あり、同種の業務に従事する通常の労働者がいる場合であって、同種の業務に従事する通常の労働者以外の者が当該業務に従事する通常の労働者に比べて著しく多い場合(当該業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間が他の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間のいずれよりも長い場合を除く。)
当該事業主における1週間の所定労働時間が最長の通常の労働者と比較して1週間の所定労働時間が短い当該業務に従事する者が短時間労働者となります。(第2条第1項括弧書中厚生労働省令で定める場合(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則第1条)。図の2-(3)のB業務)。
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(法第二条の厚生労働省令で定める場合)
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則第一条 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「法」という。)第二条の厚生労働省令で定める場合は、同一の事業所に雇用される通常の労働者の従事する業務が二以上あり、かつ、当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する労働者の数が当該通常の労働者の数に比し著しく多い業務(当該業務に従事する通常の労働者の一週間の所定労働時間が他の業務に従事する通常の労働者の一週間の所定労働時間のいずれよりも長い場合に係る業務を除く。)に当該事業所に雇用される労働者が従事する場合とする。

これは、たまたま同種の業務に従事する通常の労働者がごく少数いるために、そのような事情がなければ一般には短時間労働者に該当するような者までもが短時間労働者とならないことを避ける趣旨ですので、適用に当たって同種の業務に従事する通常の労働者と、当該事業主における1週間の所定労働時間が最長の通常の労働者の数を比較する際には、同種の業務において少数の通常の労働者を配置する必然性等から、事業主に短時間労働者としての法の適用を逃れる意図がないかどうかを考慮すべきものとされています。

この判断基準は、労働者の管理については、その従事する業務によって異なっていることが通常と考えられることから、短時間労働者であるか否かを判断しようとする者が従事する業務と同種の業務に従事する通常の労働者がいる場合は、その労働者と比較して判断することとしたものです。なお、同種の業務の範囲を判断するに当たっては、『厚生労働省編職業分類』の細分類の区分等を参考にし、個々の実態に即して判断されます。

(6)短時間労働者の定義に係る用語の意義はそれぞれ次のとおりとされています。
① 「1週間の所定労働時間」を用いるのは、短時間労働者の定義が、雇用保険法等労働関係法令の用例を見ると1週間を単位としていることにならったものです。この場合の1週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り原則として日曜日から土曜日までの暦週をいいます。ただし、変形労働時間制が適用されている場合や所定労働時間が1月、数箇月又は1年単位で定められている場合などには、次の式によって当該期間における1週間の所定労働時間として算出します。

     (当該期間における総労働時間)÷((当該期間の暦日数)/7)

なお、日雇労働者のように1週間の所定労働時間が算出できないような者は、短時間労働者としてはパート有期法の対象となりませんが、有期雇用労働者として対象となります。ただし、日雇契約の形式をとっていても、明示又は黙示に同一人を引き続き使用し少なくとも1週間以上にわたる定形化した就業パターンが確立し、上記の方法により1週間の所定労働時間を算出することができる場合には、短時間労働者として対象となります。

② 「事業主」を単位として比較することとしていることの趣旨は、第8条に統合された整備法による改正前の労働契約法第20条において、事業主を単位として、期間の定めのある労働契約を締結している労働者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者との間の不合理と認められる労働条件の相違を禁止していたこと、及び同一の事業所には待遇を比較すべき通常の労働者が存在しない場合があるなど、事業所を単位とすると、十分に労働者の保護を図ることができない場合が生じていると考えられているためです。

(7)有期雇用者
「有期雇用労働者」とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいいます。(第2条第2項)

(8)短時間・有期雇用労働者
「短時間・有期雇用労働者」とは、短時間労働者及び有期雇用労働者をいいます。(第2条第3項)。

1.3 基本的理念(第2条の2)

(基本的理念)
第二条の二 短時間・有期雇用労働者及び短時間・有期雇用労働者になろうとする者は、生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就業することができる機会が確保され、職業生活の充実が図られるように配慮されるものとする。

短時間・有期雇用労働者としての就業は、労働者の多様な事情を踏まえた柔軟な就業のあり方として重要な意義を有していますが、短時間・有期雇用労働者の職務の内容が意欲や能力に見合ったものでない場合、待遇に対する納得感や、意欲及び能力の有効な発揮が阻害されるほか、短時間・有期雇用労働者としての就業を実質的に選択することができないこととなりかねません。
そこで、本条は、短時間・有期雇用労働者としての就業が、柔軟な就業のあり方という特長を保ちつつ、労働者の意欲及び能力が有効に発揮できるものとなるべきであるとの考えのもと、短時間・有期雇用労働者及び短時間・有期雇用労働者になろうとする者が、生活との調和を保ちつつその意欲や能力に応じて就業することができる機会が確保されるべきことを基本的理念として明らかにしています。また、あわせて、短時間・有期雇用労働者が充実した職業生活を送れるようにすることが、社会の活力を維持し発展させていくための基礎となるとともに、短時間・有期雇用労働者の福祉の増進を図る上でも不可欠であることに鑑み、その職業生活の充実が図られるような社会を目指すべきであることから、その旨についても基本的理念としています。
 本条の基本的理念は、次条の事業主等の責務やこれらを踏まえた第3章第1節の各種措置等とあいまって、短時間・有期雇用労働者という就業のあり方を選択しても納得が得られる待遇が受けられ、多様な働き方を自由に選択できる社会の実現を図るものです。

1.4 事業主等の責務(第3条)

(事業主等の責務)
第三条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者について、その就業の実態等を考慮して、適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善及び通常の労働者への転換(短時間・有期雇用労働者が雇用される事業所において通常の労働者として雇い入れられることをいう。以下同じ。)の推進(以下「雇用管理の改善等」という。)に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、当該短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めるものとする。
2 事業主の団体は、その構成員である事業主の雇用する短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関し、必要な助言、協力その他の援助を行うように努めるものとする。

1.4.1 基本的考え方

労働者の待遇をどのように設定するかについては、基本的には契約自由の原則にのっとり、個々の契約関係において当事者の合意により決すべきものですが、現状では、短時間・有期雇用労働者の待遇は必ずしもその働きや貢献に見合ったものとなっていないほか、他の雇用形態への変更が困難であるといった状況も見られます。
このような中では、短時間・有期雇用労働者の待遇の決定を当事者間の合意のみに委ねていたのでは短時間・有期雇用労働者は「低廉な労働力」という位置付けから脱することができないと考えられており、それでは、少子高齢化労働力人口減少社会において期待されている短時間・有期雇用労働者の意欲や能力の有効な発揮がもたらされるような公正な就業環境を実現することは難しくなります。
 そこで、パート有期法は、第1条に定める法の目的である「通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができる」ことを実現するために、短時間・有期雇用労働者の適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善及び通常の労働者への転換の推進(以下「雇用管理の改善等」という。)について、事業主が適切に措置を講じていく必要があることを明らかにするため、第3条において、短時間・有期雇用労働者について、その就業の実態等を考慮して雇用管理の改善等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、当該短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めるものとすることを事業主の責務としています。
 第3章以下の事業主の講ずべき措置等に関する規定は、この第3条の事業主の責務の内容として、目的を達成するために特に重要なものを明確化したものです。また、第15条に基づき定める短時間・有期雇用労働指針及びガイドラインについては、当該責務に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要なものを具体的に記述しています。
なお、本条で用いられている各用語の意義は次のとおりです。

① 短時間・有期雇用労働者の就業の実態等
第3条において考慮することとされている「その就業の実態等」の具体的な内容としては、短時間・有期雇用労働者の「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」、経験、能力、成果、意欲等をいいます。

② 雇用管理の改善等に関する措置等
「雇用管理の改善等に関する措置等」とは、第3章第1節に規定する「雇用管理の改善等に関する措置」と、法第22条に規定する苦情の自主的解決に努める措置をいいます。

③ 通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等
パート有期法は、短時間・有期雇用労働者について、就業の実態等を考慮して雇用管理の改善等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇を確保することを目指していますが、これは、一般に短時間・有期雇用労働者の待遇が通常の労働者と比較して働きや貢献に見合ったものとなっておらず低くなりがちであるという状況を前提として、通常の労働者との均衡(バランス)をとることを目指した雇用管理の改善を進めていくという考え方をとっています。
通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の「均衡のとれた待遇」は、就業の実態に応じたものとなりますが、その就業の実態が同じ場合には、「均等な待遇」を意味します。一方、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で、就業の実態が異なる場合、その「均衡のとれた待遇」とはどのようなものであるかについては、一義的に決まりにくい上、待遇と言ってもその種類(賃金、教育訓練、福利厚生施設等)や性質・目的(職務の内容との関連性等)は一様ではありません。
そのような中で、事業主が雇用管理の改善等に関する措置等を講ずることにより通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図っていくため、第3章第1節においては、講ずべき措置を定めたものです。具体的には、第8条において、全ての短時間・有期雇用労働者の全ての待遇(労働時間及び労働契約の期間を除く。)を対象に、その待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間で、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」及び「その他の事情」のうち、待遇のそれぞれの性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないとするいわゆる均衡待遇規定を設けています。
また、第9条において、通常の労働者と職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲が同一である短時間・有期雇用労働者について、その全ての待遇(労働時間及び労働契約の期間を除く。)を対象に、短時間・有期雇用労働者であることを理由として差別的取扱いをしてはならないとするいわゆる均等待遇規定を設けています。
その上で、第10条から第12条までにおいては、短時間・有期雇用労働者の就業の実態を踏まえつつ、賃金、教育訓練及び福利厚生施設の3つについて、それぞれ講ずべき措置を明らかにしています。法第11条第1項は、職務の内容が通常の労働者と同一であるという就業の実態や、職務との関連性が高い待遇であるといった事情を踏まえて具体的な措置の内容を明らかにしたもので、法第12条は、全ての通常の労働者との関係で普遍的に講ずべき措置の内容について明らかにしたものです。
一方、第10条及び第11条第2項については、就業の実態が多様な短時間・有期雇用労働者全体にかかる措置として、具体的に勘案すべき就業の実態の内容(職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験等)を明記しています。これらの勘案すべき就業の実態の内容を明記しているのは、これらの要素が通常の労働者の待遇の決定に当たって考慮される傾向にあるのとは対照的に、短時間・有期雇用労働者について十分に考慮されている現状にあるとは言い難く、短時間・有期雇用労働者についても、これらに基づく待遇の決定を進めていくことが公正であると考えられるためです。
また、「通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等」の「等」としては、次のものが含まれます。
○ 短時間・有期雇用労働者であることに起因して、待遇に係る透明性・納得性が欠如していることを解消すること(適正な労働条件の確保に関する措置及び事業主の説明責任により達成される)
○ 通常の労働者として就業することを希望する者について、その就業の可能性を全ての短時間・有期雇用労働者に与えること(通常の労働者への転換の推進に関する措置により達成される)

1.4.2 基本的考え方均衡のとれた待遇の確保の図り方について

(1)基本的考え方
短時間・有期雇用労働者についての、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保に当たっては、短時間・有期雇用労働者の就業の実態等を考慮して措置を講じていくことになりますが、「就業の実態」を表す要素のうちから「職務の内容」及び「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」の2つを、第8条において通常の労働者との待遇の相違の不合理性を判断する際の考慮要素として例示するとともに、 第9条等において適用要件としています。これは、現在の我が国の雇用システムにおいては、一般に、通常の労働者の賃金をはじめとする待遇の多くがこれらの要素に基づいて決定されることが合理的であると考えられている一方で、短時間・有期雇用労働者については、これらが通常の労働者と全く同じ、又は一部同じであっても、所定労働時間が短い労働者であるということ、あるいは期間の定めがある労働契約を締結している労働者であるということのみを理由として待遇が低く抑えられている場合があることから、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保を図る際に、短時間・有期雇用労働者の就業の実態をとらえるメルクマールとして、これらの要素を特に取り上げています。
なお、第8条においては、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者の待遇の相違の不合理性を判断する際の考慮要素として、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」のほかに、「その他の事情」を規定いますが、「その他の事情」については、職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に関連する事情に限定されるものではなく、考慮すべきその他の事情があるときには考慮すべきとの意味です。

(2)職務の内容
「職務の内容」とは、「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」をいい、労働者の就業の実態を表す要素のうちの最も重要なものです。

(3)業 務
「業務」とは、職業上継続して行う仕事のことをいいます。

(4)責任の程度
「責任の程度」とは、業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいいます。具体的には、授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)、業務の成果について求められる役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度、ノルマ等の成果への期待の程度等を指しています。責任は、外形的にはとらえにくい概念ですが、実際に判断する際には、責任の違いを表象的に表す業務を特定して比較することが有効です。
また、責任の程度を比較する際には、所定外労働も考慮すべき要素の一つですが、これについては、例えば、通常の労働者には所定外労働を命ずる可能性があり、短時間・有期雇用労働者にはない、といった形式的な判断ではなく、実態として業務に伴う所定外労働が必要となっているかどうか等を見て、判断することとになります。例えば、トラブル発生時、臨時・緊急時の対応として、また、納期までに製品を完成させるなど成果を達成するために所定外労働が求められるのかどうかが実態として判断されます。
なお、ワークライフバランスの観点からは、基本的に所定外労働のない働き方が望ましく、働き方の見直しにより通常の労働者も含めてそのような働き方が広まれば、待遇の決定要因として所定外労働の実態が考慮されること自体が少なくなっていくものと考えられます。

(5)職務の内容が同一であることの判断手順
「職務の内容」については、第8条において考慮され得るとともに、第9条等の適用に当たって、通常の労働者と短時間労働者との間で比較して同一性を検証しなければならないため、その判断のための手順が必要です。職務の内容の同一性については、具体的には以下の手順で比較していくこととなりますが、  「職務の内容が同一である」とは、個々の作業まで完全に一致していることを求めるものではなく、それぞれの労働者の職務の内容が「実質的に同一」であることを意味します。したがって、具体的には、「業務の内容」が「実質的に同一」であるかどうかを判断し、その後に「責任の程度」が「著しく異なって」いないかを判断することになります。
まず、第一に、業務の内容が「実質的に同一」であることの判断に先立って、「業務の種類」が同一であるかどうかをチェックします。これは、『厚生労働省編職業分類』の細分類を目安として比較し、この時点で異なっていれば、「職務内容が同一でない」と判断することとなります。
一方、業務の種類が同一であると判断された場合には、次に、比較対象となる通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の職務を業務分担表、職務記述書等により個々の業務に分割し、その中から「中核的業務」と言えるものをそれぞれ抽出します。
「中核的業務」とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、当該職務を代表する中核的なものを指し、以下の基準に従って総合的に判断します。
 ○ 与えられた職務に本質的又は不可欠な要素である業務
 ○ その成果が事業に対して大きな影響を与える業務
 ○ 労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務

通常の労働者と短時間・有期雇用労働者について、抽出した「中核的業務」を比較し、同じであれば、業務の内容は「実質的に同一」と判断し、明らかに異なっていれば、業務の内容は「異なる」と判断します。なお、抽出した「中核的業務」が一見すると異なっている場合には、当該業務に必要とされる知識や技能の水準等も含めて比較した上で、「実質的に同一」と言えるかどうかを判断します。
 ここまで比較した上で業務の内容が「実質的に同一である」と判断された場合には、最後に、両者の職務に伴う責任の程度が「著しく異なって」いないかどうかをチェックします。そのチェックに当たっては、「責任の程度」の内容に当たる以下のような事項について比較します。
○ 授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範 囲等)
○ 業務の成果について求められる役割
 ・トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度
 ・ノルマ等の成果への期待の程度
 ・上記の事項の補助的指標として所定外労働の有無及び頻度
この比較においては、例えば管理する部下の数が一人でも違えば、責任の程度が異なる、といった判断をするのではなく、責任の程度の差異が「著しい」といえるものであるかどうかを判断します。
なお、いずれも役職名等外見的なものだけで判断せず、実態を見て比較します。
以上の判断手順を経て、「業務の内容」及び「責任の程度」の双方について、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者とが同一であると判断された場合が、「職務の内容が同一である」ことになります。

(6)「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれる」ことについて
① 「職務の内容及び配置の変更の範囲」
現在の我が国の雇用システムにおいては、長期的な人材育成を前提として待遇に係る制度が構築されていることが多く、このような人材活用の仕組み、運用等に応じて待遇の違いが生じることも合理的であると考えられています。この法律は、このような実態を前提として、人材活用の仕組み、運用等を、均衡待遇を推進する上での考慮要素又は適用要件の一つとして位置付けています。人材活用の仕組み、運用等については、ある労働者が、ある事業主に雇用されている間にどのような職務経験を積むこととなっているかを見るものであり、転勤、昇進を含むいわゆる人事異動や本人の役割の変化等(以下「人事異動等」という。)の有無や範囲を総合判断するものですが、これを法律上の考慮要素又は適用要件としては「職務の内容及び配置の変更の範囲」と規定したものです。
「職務の内容の変更」と「配置の変更」は、現実にそれらが生じる際には重複が生じ得るものです。つまり、「職務の内容の変更」とは、配置の変更によるものであるか、そうでなく業務命令によるものであるかを問わず、職務の内容が変更される場合を指しています。
一方、「配置の変更」とは、人事異動等によるポスト間の移動を指し、結果として職務の内容の変更を伴う場合もあれば、伴わない場合もあります。また、それらの変更の「範囲」とは、変更により経験する職務の内容又は配置の広がりを指すものです。
② 「同一の範囲」
職務の内容及び配置の変更が「同一の範囲」であるとの判断に当たっては、一つ一つの職務の内容及び配置の変更の態様が同様であることを求めるものではなく、それらの変更が及び得ると予定されている範囲を画した上で、その同一性を判断するものです。
例えば、ある事業所において、一部の部門に限っての人事異動等の可能性がある者と、全部門にわたっての人事異動等の可能性がある者とでは、「配置の変更の範囲」が異なることとなり、職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)が同一であるとは言えません。ただし、この同一性の判断は、「範囲」が完全に一致することまでを求めるものではなく、「実質的に同一」と考えられるかどうかという観点から判断します。

③ 「変更されることが見込まれる」
職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)の同一性を判断することについては、将来にわたる可能性についても見るものであるため、変更が「見込まれる」と規定されたものです。ただし、この見込みについては、事業主の主観によるものではなく、文書や慣行によって確立されているものなど客観的な事情によって判断されます。
また、例えば、通常の労働者の集団は定期的に転勤等があることが予定されているが、ある職務に従事している特定の短時間・有期雇用労働者についてはこれまで転勤等がなかったという場合にも、そのような形式的な判断だけでなく、例えば、同じ職務に従事している他の短時間・有期雇用労働者の集団には転勤等があるといった「可能性」についての実態を考慮して、具体的な見込みがあるかどうかで判断するものです。
なお、育児又は家族介護などの家族的責任を有する労働者については、その事情を配慮した結果として、その労働者の人事異動等の有無や範囲が他と異なることがあるが、「職務の内容及び配置の変更の範囲」を比較するに当たって、そのような事情が考慮されます。考慮の仕方としては、例えば、通常の労働者や短時間・有期雇用労働者のうち、人事異動等があり得る人材活用の仕組み、運用等である者が、育児又は家族介護に関する一定の事由(短時間・有期雇用労働者についても通常の労働者と同じ範囲)で配慮がなされ、その配慮によって異なる取扱いを受けた場合、「職務の内容及び配置の変更の範囲」を比較するに際しては、その取扱いについては除いて比較されることが考えられます。

(7)「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれる」ことの判断手順
「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれる」ことについては、第9条の適用に当たって、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で比較して同一性を検証しなければならないため、その判断のための手順が必要となります。第9条に関しては、この検証は、1.4.2(5)において示した手順により、職務の内容が同一であると判断された通常の労働者と短時間・有期雇用労働者について行います。
まず、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者について、配置の変更に関して、転勤の有無が同じかどうかを比較します。この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することとなります。
次に、転勤が双方ともあると判断された場合には、全国転勤の可能性があるのか、エリア限定なのかといった転勤により移動が予定されている範囲を比較します。この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することとなります。
転勤が双方ともない場合、及び双方ともあってその範囲が「実質的に」同一であると判断された場合には、事業所内における職務の内容の変更の態様について比較します。
まずは、職務の内容の変更(事業所内における配置の変更の有無を問わない。)の有無を比較し、この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することとなります。同じであれば、職務の内容の変更により経験する可能性のある範囲も比較し、異同を判断します。また、第8条における「職務の内容及び配置の変更の範囲」の異同についても、上記の観点から判断します。

1.4.3 事業主の団体の責務(第3条第2項)

短時間・有期雇用労働者の労働条件等については、事業主間の横並び意識が強い場合が多く、事業主の団体を構成している事業にあっては、事業主の団体の援助を得ながら構成員である複数の事業主が同一歩調で短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等を進めることが効果的です。そこで、事業主の団体の責務として、その構成員である事業主の雇用する短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関し必要な助言、協力その他の援助を行うように努めることを明らかにしたものです。
 なお、これら事業主及び事業主の団体の責務を前提に、国は必要な指導援助を行うこととされ(第4条)、短時間・有期雇用労働者を雇用する事業主、事業主の団体その他の関係者に対して、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項についての相談及び助言その他の必要な援助を行うことができることとされています。(第19条)

1.5 国及び地方公共団体の責務(第4条)

(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等について事業主その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつその実情に応じてこれらの者に対し必要な指導、援助等を行うとともに、短時間・有期雇用労働者の能力の有効な発揮を妨げている諸要因の解消を図るために必要な広報その他の啓発活動を行うほか、その職業能力の開発及び向上等を図る等、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等の促進その他その福祉の増進を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めるものとする。
2 地方公共団体は、前項の国の施策と相まって、短時間・有期雇用労働者の福祉の増進を図るために必要な施策を推進するように努めるものとする。

(1)国の責務(第4条第1項)
国は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等について、事業主その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつその実情に応じて必要な指導、援助等を行うとともに、短時間・有期雇用労働者の能力の有効な発揮を妨げている諸要因の解消を図るために必要な広報その他の啓発活動を行うほか、その職業能力の開発及び向上等を図る等、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等の促進その他その福祉の増進を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めるものとされています。
具体的内容は、短時間・有期雇用労働指針及びガイドラインの策定、事業主に対する報告徴収、助言、指導、勧告及び公表、調停の実施を含む紛争の解決の援助、啓発活動の実施、事業主等に対する援助の実施、職業訓練の実施、職業紹介の充実等です。

(2)地方公共団体の責務(第4条第2項)
地方公共団体は、国の施策と相まって短時間・有期雇用労働者の福祉の増進を図るために必要な施策を推進するように努めるものとされています。
 具体的内容は、広報啓発活動、職業能力開発校等における職業訓練の実施、労政事務所等における講習等の開催等です。

続き

第2章
『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の逐条解説②-第2章
第3章
『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』の逐条解説③-第3章

令和2年1月から「雇用保険適用窓口」来所の受付時間が16時までとなります。

令和2年1月から「雇用保険適用窓口」来所の受付時間が16時までとなります。

令和2年4月から大企業では電子申請が義務付けられることもあり、夕方は電子申請の処理業務に集中するためだそうです。
直接窓口に行く機会はほとんどありませんが、16時以降の電話応対はどうなるんでしょうね。
年金機構みたいに、電話しても誰も出ない状態にならないかちょっと心配です。

・「雇用保険適用窓口」来所の受付時間変更のお知らせ<令和2年1月から、8時30分~16時00分になります>

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年齢別の心理的な時給格差は最大約5倍!?

年齢別の心理的な時給格差は最大約5倍!?

1.心理的な時間

朝の出勤前の30分はすぐ過ぎてしまうけど、通勤ラッシュで電車に押し込められている30分は長く感じます。また、休憩時間の1時間はすぐに過ぎてしまうけど、仕事が忙しくない日の午後の1時間はやたら長く感じます。このように、時計が刻む客観的な時間は同じでも、状況によって心理的な時間の長さが異なることは誰でも経験したことがあるでしょう。
また、子供の頃は時間が長く感じられ、年齢が経つにつれて時間が短く感じられるようになるということもあります。これは誰しも経験することですが、心理学では「ジャネーの法則」と呼ばれおり、簡単に言うと「生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例する(年齢に反比例する)」といものです。
これを数学的に扱うと、心理的な時間の長さをT、年齢をtとし、kを比例定数とすれば、

    dT= (k/t) dt      (1)

と表すことができます。 従って、t_{0}歳からY年間の間の心理的な時間の長さF(t_{0},Y)は、

    F(t_0,Y) = \int_{t_0}^{t_0+Y} (k/t)\,dt = k({ln(t_0+Y) - ln(t_0)})     (2)

となります。

各年齢年齢をtにおける1時間(Y=1/365/24)の心理的な時間の長さをプロットすると、図1のようになります。
なお、比例定数kは20歳におけるF(t_0,1/365/24)を1としています。
20歳の人にとっての1時間が、年齢に応じて異なる時間の長さに感じることがわかります。

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図1

2.心理的時給

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の結果を見ると年齢と賃金の関係がわかりますが、これは各年齢層における年収をベースにしています。
例えば、図2は平成30年の「賃金構造基本統計調査」の結果ですが、20歳~24歳、25歳~29歳、・・・というように20歳から69歳までを5歳毎の年齢階級に分けて、それぞれの平均賃金の格差(20歳~24歳を100とする)を正社員と非正規社員についてプロットしたものです。
当たり前のことですが、年収とは「客観的な1年間」に得られる給料なので、図2には心理的な時間の長さは考慮されていません。同じ1年間を働いて同じ賃金をもらったとしても、心理的な時間は図1のように年齢が若いほど長いため、心理的な時間当たりの給料(心理的時給)は若いほど低くなります。
これを考慮して、心理的時給と年齢階級の格差を図2のグラフに加えると、図3のようになります。

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図2

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図3

通常の意味での賃金格差は大きくても2倍程度であるのに対して、心理的時給を見てみると5倍近くも格差があることがわかります。
「こんなに大きな差があるのはとんでもない」と言う人もいるかも知れませんが、現在における別の世代の時間感覚を感じることができないため、この格差を現実に感じることはできません。(だったら、なんでこんなグラフ作ったんだ・・・)
また、心理的な時間が長いのは、仕事以外の時間にもいえることで(つまり、年齢が若いと仕事の間だけでなく、休日や帰宅後の時間も長く感じる)、また年齢が高くなるにつれて体力や集中力が衰えて仕事がきつくなるということもあるため、図3がそのまま賃金に対する年齢ごとの満足度や不満足度を表してるともいえません。
しかし、年齢が若ければ、同じ労働時間でも長く感じ、同じ時給でも少なく感じる傾向にあることは理解しておくべきでしょう。


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パートタイム労働者の厚生年金・健康保険の資格得喪についての重要な裁決2(遡及取得)

パートタイム労働者の厚生年金・健康保険の資格得喪についての重要な裁決2(遡及取得)

平成12年8月31日裁決<被保険者資格>裁決集5頁

請求人X(パートタイマー)の所定労働時間は一般従業員のそれの4分の3を明確に下回っているが、残業時間や休日勤務時間が恒常的に一定量あり、その勤務の実態からいうと、国がこれに健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格を取得させるよう事業主を指導することは適切であったと認めることができる。しかしながら、短時間労働者の取扱いに関する当局指針が、形式上も、内容においてあいまいなものであること、及び、長年にわたり国が、Xらに係る適用除外を事実上承認してきた経緯に鑑みれば、被保険者資格取得の確認は将来に向かって行われるべきで、原処分が、会計検査院による指摘を受けた結果であるにしても、Xについて前記両保険の被保険者資格を2年も遡って取得させたことは妥当を欠く。(2年遡及して資格取得させることを否定)

平成15年6月30日裁決<被保険者資格等>裁決集29頁

請求人X社(適用事業所の事業主)に使用される利害関係人ら5名が健康保険及び厚生年金の適用を除外される者に該当しない者であることは争いがない。しかし、利害関係人のうち4名は時給ベースのパートタイム労働者であるところ、その就労日数、就労時間が一般の従業員のそれの4分の3以内に制限されていた事実はないが、これらの者の就労日数、就労時間、賃金に関する資料は毎年の標準報酬月額の定時決定に際して所轄社会保険事務所に提出されていたにもかかわらず、一度も適用漏れの指摘がされなかったのであり、このことがX社に非適用が是認されているとの認識を与えたと考えられる。そうすると、会計検査院の指摘があったからといって、突然に2年間遡及して被保険者資格取得を強制することは妥当とはいえず、将来に向かってのみ被保険者資格を取得させるのが相当である。(パートタイム労働者について2年遡及して資格取得させることを否定)

平成14年9月30日裁決<被保険者資格>裁決集30頁

請求人X(事業主)がパートタイマーについて作成した就業規則上は1日の労働時間は4時間とされ、Xの事業所にはフルタイムの労働者はいない。しかし、実際には4時間の勤務を連続して行う労働者が多く、その実態は、労働基準法32条の規定する労働時間によるフルタイム労働者と異なるところがない。
ところで、行政手続法12条は、不利益処分をする場合の処分基準を予め定め、これを公示しておくことを要求しているところ、短時間労働者の被保険者資格の取扱いが内翰*1によって定められていることはこの規定との関係で問題なしとせず、また、前記のような雇用の実態が営業(飲食店)の実態からいって当然予想されるXに対して、国が従前の定期的な実態調査に際してどのような態度で臨んできたかについても疑問がある。しかし、前記規定は訓示規定の性格を有するにとどまるもので、その違背は不利益処分の効力に影響を及ぼすものではないうえ、もともと内翰は、実績上の労働時間が通常の労働者とほとんど同じであるようなパートタイム労働者(擬似パート)までも念頭に置いたものではない。そうして、このような労働者については、事業主は「通常の労働者としてふさわしい処遇をするよう」努力しなければならないとされている(平成5年12月1日労働省告示118号第3)にもかかわらず、所管の社会保険事務所社会保険加入の要否を確かめる等の行動もとることなく、利害関係人(パートタイマー)の意向のままに勤務させてきたXの対応には事業主としての配慮に欠けるものがあったといわざるを得ない。以上からすると、社会保険事務所長が利害関係人らに対し健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格を遡及して取得させたことは妥当である。(遡及して資格取得させることを肯定)

平成17年7月29日裁決<被保険者資格>裁決集31頁

請求人Xは和菓子等の製造販売を営む事業所の事業主であるところ、その雇用するパートタイム労働者については、国は内翰に示された被保険者資格認定基準*2を満たすものであるとして、遡及して被保険者資格の取得を確認する旨の処分(原処分)をした。Xは、適用事業所の届出をした時から現在まで同一の社会保険労務士社会保険関係の事務を依頼してきたことが認められるところ、所轄社会保険事務所は、内翰に示された前記基準により被保険者資格取得の届出をする必要があることについて、かねてから各事業主及び管内の各社会保険労務士に注意を促してきた。
このような事情及びパートタイム従業員の被保険者資格の問題は近時社会的にも注目されていることに照らせば、本件において被保険者資格の取得時期の遡及を認めない理由はないというべできであるし、また、かかる場合に資格取得時期の遡及を否定するならば、摘発されるまではパートタイム従業員について資格取得の届出をしないで保険料の負担を回避しようとする傾向を助長し、社会保険制度の空洞化を招来するおそれもあるといわなければならない。Xの雇用するパートタイム従業員について遡及して資格取得を確認した原処分は妥当である。(遡及して資格取得させることを肯定)


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*1:内翰(ないかん)とは、行政機関において、必要な事項を伝達するために、国から地方自治体に対して送付される文書のこと。法令や通達として規定するに馴染まない事項を伝達するために用いられる。例として、法令で抽象的に示された規定について、規定を具体的に認定する際の一定の基準や、内容が仔細にわたるため法令で規定するには馴染まない事項などを参考として示すために用いられる例がある。 通達と異なり、内翰は下級行政庁を拘束しない。その具体的な違いは通達に反する行政行為を下級行政庁がおこなえば通達違反で職務命令違反となるが、内翰違反の行政行為をおこなっても職務命令違反にならない。実質的に内翰は行政庁内の規定と考えてよい。

*2:こちらを参照 パートタイム労働者の厚生年金・健康保険の資格得喪についての重要な裁決1

高年齢者雇用継続基本給付金のポイント

高年齢者雇用継続基本給付金のポイント

1.高年齢者雇用継続基本給付金とは

60歳以降も働き続けて賃金が75%未満に下がった場合に、下がった率に応じて雇用保険からお金が支給される制度です。60歳から65歳になる直前までの5年間受給することができ、それぞれの月ごとの低下率に応じて計算された額が支給されます。
61%以下に下がったときが最大で、下がった賃金の15%を受け取ることができます。下がった賃金に15%を乗じて計算するので、下がれば下がるほどたくさん受け取れるわけではありません。
なお、60歳以降に受け取った賃金が支給限度額(令和1年8月からは、363,359円。毎年8月に改定されます。)を超えると、その月は支給されません。

① 高年齢者雇用継続基本給付金の受給資格

雇用保険の基本手当(再就職手当など基本手当を支給したとみなされる給付を含みます。以下同じ。)を受給していない人を対象とする給付金で、原則として60歳時点の賃金と比較して、60歳以後の賃金(みなし賃金を含む)が60歳時点の75%未満となっている方で、以下の2つの要件を満たした人が対象となります。

  • (1) 60歳以上65歳未満で雇用保険の一般被保険者であること。
  • (2) 雇用保険の被保険者であった期間(※)が5年以上あること。

(※)「被保険者であった期間」とは、雇用保険の被保険者として雇用されていた期間の全てを指します。なお、離職等による被保険者資格の喪失から新たな被保険者資格の取得までの間が1年以内であること及びその間に求職者給付及び就業促進手当を受給していない場合、過去の「被保険者であった期間」として通算されます。

② 高年齢雇用継続基本給付金を受給できる期間

被保険者が60歳に到達した月から65歳に達する月までです。ただし、各暦月の初日から末日まで被保険者であることが必要です。

③ 高年齢者雇用継続基本給付金の支給要件

支給対象期間において、一般被保険者として雇用されている各月(暦月のことで、その月の初日から末日まで継続して被保険者であった月に限ります。)(これを「支給対象月」といいます。)において、次の要件を満たしている場合に支給の対象となります。

  • (1) 支給対象月の初日から末日まで被保険者であること
  • (2) 支給対象月中に支払われた賃金が、60 歳到達時等の賃金月額の75%未満に低下していること。
  • (3) 支給対象月中に支払われた賃金額が、支給限度額(※令和1年8月からは、363,359円。)未満であること。
  • (4) 申請後、算出された基本給付金の額が、最低限度額(※令和1年8月からは、1,984円)を超えていること。
  • (5) 支給対象月の全期間にわたって、育児休業給付または介護休業給付の支給対象となっていないこと。

(※)この金額は、「毎月勤労統計」の平均定期給与額により毎年8月1日に改定されます。

2.高年齢者雇用継続基本給付金の支給額の計算

高年齢者雇用継続基本給付金の支給額の支給額は、「60歳到達時の賃金月額」と支給対象月に支払われた賃金額の低下率から計算されます。
ここで「60歳到達時賃金月額」とは、60歳に到達する直前6か月の賃金を平均したもので、残業代や通勤手当なども含まれます。
なお、60歳になった時点で勤続5年に満たない場合は、5年に達したときに直前6か月の平均を計算して「60歳到達時の賃金月額」とし、それ以降に賃金が下がれば受給することができます。

① 高年齢者雇用継続基本給付金の支給額の計算方法

60歳到達時の賃金月額(※1)と比較した支給対象月に支払われた賃金額(みなし賃金を含む)の低下率(※2)に応じた支給率を、支給対象月に支払われた賃金額に乗ずることにより高年齢雇用継続給付の支給額(※3)を計算します。
なお、支給率の早見表は以下のとおりです。

(※1)60歳到達時の賃金月額は、原則として、60歳に到達する前6か月間の総支給額(保険料等が控除される前の額。賞与は除きます。)を180で除した賃金日額の30日分の額です。60歳到達時の賃金月額は、上限額、下限額があります。
(※2)低下率は以下により計算します。
    「低下率」(%)=支給対象月に支払われた賃金額/60歳到達時の賃金月額×100
(※3)計算した支給額が最低限度額を超えない場合は、高年齢雇用継続給付は支給されません。なお、この金額は、「毎月勤労統計」の平均定期給与額により毎年8月1日に改定されます。
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厳密な計算式はこちらを参照ください。
sr-memorandum.hatenablog.com

② 高年齢者雇用継続基本給付金の支給金額例

60歳到達時の賃金月額が30万円である場合の支給額の例です。

・支給対象月に支払われた賃金が26万円のとき
 賃金が75%未満に低下していませんので、支給されません。
・支給対象月に支払われた賃金が20万円のとき
 低下率が66.67%で61%を超えていますので、支給額は16340円です。
・支給対象月に支払われた賃金が18万円のとき
 低下率が60%ですので、支給額は27000円です。

なお、こちらのサイトで試算することができます。
keisan.casio.jp

3.転職した場合の扱い

高年齢者雇用継続基本給付金は、60歳の前と後で働く会社が異なっても要件を満たせば受給できます。例えば、60歳で退職し、その後別の会社に再就職した場合等です。
前職を退職後1年以内に再就職していて、失業保険や再就職手当などをもらっていなかったことが要件となります。

4.在職老齢年金の支給調整

高年齢雇用継続基本給付金を受給すると、その受給額に応じて特別支給の老齢厚生年金は一部の額が支給停止となります。退職して就労収入がなくなれば、高年齢雇用継続給付にかかる一部停止された年金額は本来の額に戻ります。なお、老齢基礎年金は繰り上げても影響を受けません。

在職老齢年金の支給調整額

高年齢雇用継続基本給付金を受給すると、在職老齢年金が一部支給停止となります。
支給停止となるのは、在職老齢年金の次の調整額です。


  調整額=標準報酬月額 × 高年齢者雇用継続給付金の支給率 × 40%

ただし、例外として、標準報酬月額+高年齢雇用継続基本給付金が支給限度額を超過する場合は次のようになります。

  調整額=(支給限度額 - 標準報酬月額) × 40%

高年齢者雇用継続給付金の支給率は最大で15%なので、最大でも標準報酬月額の6%(0.15×0.4)が在宅老齢厚生年金の調整額となります。
なお、早見表は次のとおりです。
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(引用元:一般財団法人年金住宅福祉協会https://kurassist.jp/nenkin_atoz/koumoku/taishoku/taishoku07.html

実際の金額の例などはこちらのサイトに掲載されています。
kurassist.jp

高年齢者雇用継続給付金の計算式の意味

高年齢者雇用継続給付金の計算式の意味

低下率をθ、支給率をαとし、次のように定義します。

   θ=\frac{賃金額}{60歳到達時の賃金月額}        (1)

  支給額=賃金額×α       (2)


支給率αが低下率θに反比例し、低下率θ=0.75で支給率α=0となるような条件で1次方程式と立てると、Kを比例定数として、

   α=K(\frac{0.75}{θ}-1)         (3)

となります。
この式(3)に、低下率θ=0.61で支給率α=0.15という条件を追加して、比例定数Kを求めると、

  K=\frac{0.15×0.61}{0.75-0.61}=\frac{0.15×0.61}{0.14}

 小数点以下が整数となるように、分母と分子に2000を乗じると、

  K=\frac{30×61}{280}=\frac{0.15×0.61}{0.14}=\frac{183}{280}      (4)

式(4)を式(3)に代入すると、

    α=\frac{137.25-183×θ}{280×θ}       (5)

となり、これが低下率と支給率の関係となります。

厳密に計算式を記載すると、次のようにまとまります。

  α=0            (θが75%以上)

  α=\frac{137.25-183×θ}{280×θ}  (θが61%以上75%未満)

  α=0.15          (θが61%未満)

短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に係る事務の取扱いについて(H28.5.13保発0513第1号 年管管発0513第1号)

短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に係る事務の取扱いについて(H28.5.13保発0513第1号 年管管発0513第1号)


 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成24年法律第62号。以下「年金機能強化法」という。)の一部が平成28年10月1日に施行されることに伴い、健康保険法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の一部を改正する省令(平成28年厚生労働省令第75号。以下「適用拡大省令」という。)が同年3月31日付けで公布されたところである。
 これらの法令の内容については、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の公布について」(平成24年8月22日付け年発0822第1号)及び「健康保険法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の一部を改正する省令の公布について」(平成28年3月31日付け保発0331第7号・年発0331第5号)により日本年金機構理事長あて通知されたところであるが、これらの事務のうち、短時間労働者(事業所に使用される者であって、その1週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)第2条に規定する通常の労働者(以下「通常の労働者」という。)の1週間の所定労働時間の4分の3未満である短時間労働者(同条に規定する短時間労働者をいう。以下同じ。)又はその1月間の所定労働日数が同一の事業所に使用される通常の労働者の1月間の所定労働日数の4分の3未満である短時間労働者をいう。以下同じ。)に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大に係る事務の取扱いについては、下記のとおりであるので、遺漏のないよう取り扱われたい。

                                       記

第1 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準等の概要

1 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準

 これまで、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準については、昭和55年6月6日付け厚生省保険局保険課長・社会保険庁医療保険部健康保険課長・社会保険庁金保険部厚生年金保険課長内かん(以下「昭和55年内かん」という。)により、1日又は1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が、同一の事業所において同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3以上である者を、原則として健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱い、所定労働時間及び所定労働日数が通常の労働者のおおむね4分の3以上を満たさない者であっても、労働日数、労働時間、就労形態、職務内容等を総合的に勘案して被保険者として取り扱うことが適当なものは、健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱うこととしてきた。

 平成28年10月1日(以下「施行日」という。)以降、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準については、年金機能強化法第25条の規定による改正後の健康保険法(大正11年法律第70号)第3条第1項及び年金機能強化法第3条の規定による改正後の厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第12条の規定により、1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数の4分の3以上(以下「4分の3基準」という。)である者を、健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱うこととする。

2 昭和55年内かんの廃止

 施行日以降、被保険者資格の取得基準が法律上明確化されることから、施行日をもって昭和55年内かんを廃止することとする。

3 年金機能強化法附則第16条及び第45条の規定により施行日以降引き続き被保険者資格を有する者の取扱い

 年金機能強化法附則第16条及び第45条の規定により、4分の3基準及び5要件を満たさない者で、施行日前に健康保険・厚生年金保険の被保険者資格を取得して、施行日まで引き続き被保険者資格を有するものは、施行日以降引き続き健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱うこととなるが、その者が健康保険・厚生年金保険の被保険者資格を喪失する際の判断基準は、なお従前の例によることとする。

4 短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準

 施行日以降、4分の3基準を満たさない者で、次の①から⑤までの5つの要件(以下「5要件」という。)を満たすものは、健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱うこととする。


① 1週間の所定労働時間が20時間以上であること

② 同一の事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること

③ 報酬(最低賃金法で賃金に算入しないものに相当するものを除く。)の月額が8万8千円以上であること

④ 学生でないこと

⑤ 年金機能強化法附則第17条第1項及び第46条第1項に規定する特定適用事業所(以下「特定適用事業所」という。)に使用されていること

5 70歳以上の使用される者の該当基準

 厚生年金保険法第27条に規定する70歳以上の使用される者(以下「70歳以上の使用される者」という。)は、厚生年金保険の被保険者であった70歳以上の者であって、適用事業所に使用され、かつ、同法第12条各号に定める者に該当するものでないものとされていることから、70歳以上の使用される者の該当基準については、上記1から4までの取扱いを準用することとする。

第2 健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の取得基準等に関する具体的事務の取扱い

1 4分の3基準について

(1) 1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数の取扱い

 1週間の所定労働時間及び1月間の所定労働日数とは、就業規則雇用契約書等により、その者が通常の週及び月に勤務すべきこととされている時間及び日数をいう。

(2) 所定労働時間又は所定労働日数と実際の労働時間又は労働日数が乖離していることが常態化している場合の取扱い

 所定労働時間又は所定労働日数は4分の3基準を満たさないものの、事業主等に対する事情の聴取やタイムカード等の書類の確認を行った結果、残業等を除いた基本となる実際の労働時間又は労働日数が直近2月において4分の3基準を満たしている場合で、今後も同様の状態が続くことが見込まれるときは、当該所定労働時間又は当該所定労働日数は4分の3基準を満たしているものとして取り扱うこととする。

(3) 所定労働時間又は所定労働日数を明示的に確認できない場合の取扱い

 所定労働時間又は所定労働日数が、就業規則雇用契約書等から明示的に確認できない場合は、残業等を除いた基本となる実際の労働時間又は労働日数を事業主等から事情を聴取した上で、個別に判断することとする。

2 5要件について

(1) 1週間の所定労働時間が20時間以上であること


① 1週間の所定労働時間とは、就業規則雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべきこととされている時間をいう。この場合の「通常の週」とは、祝祭日及びその振替休日、年末年始の休日、夏季休暇等の特別休日(週休日その他概ね1か月以内の期間を周期として規則的に与えられる休日以外の休日)を含まない週をいう。

② 1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動し、通常の週の所定労働時間が一通りでない場合は、当該周期における1週間の所定労働時間の平均により算定された時間を1週間の所定労働時間とする。

③ 所定労働時間が1か月の単位で定められている場合は、当該所定労働時間を12分の52で除して得た時間を1週間の所定労働時間とする。

④ 所定労働時間が1か月の単位で定められている場合で、特定の月の所定労働時間が例外的に長く又は短く定められているときは、当該特定の月以外の通常の月の所定労働時間を12分の52で除して得た時間を1週間の所定労働時間とする。

⑤ 所定労働時間が1年の単位で定められている場合は、当該所定労働時間を52で除して得た時間を1週間の所定労働時間とする。

⑥ 所定労働時間は週20時間未満であるものの、事業主等に対する事情の聴取やタイムカード等の書類の確認を行った結果、残業等を除いた基本となる実際の労働時間が直近2月において週20時間以上である場合で、今後も同様の状態が続くことが見込まれるときは、当該所定労働時間は週20時間以上であることとして取り扱うこととする。

⑦ 所定労働時間が、就業規則雇用契約書等から明示的に確認できない場合は、残業等を除いた基本となる実際の労働時間を事業主等から事情を聴取した上で、個別に判断することとする。

(2) 同一の事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれること


① 期間の定めがなく使用される場合及び使用期間が1年以上である場合は、継続して1年以上使用されることが見込まれることとして取り扱うこととする。

② 使用期間が1年未満である場合であっても、次の(ⅰ)及び(ⅱ)のいずれかに該当するときは、継続して1年以上使用されることが見込まれることとして取り扱うこととする。


(ⅰ) 就業規則雇用契約書等その他書面においてその契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されていること

(ⅱ) 同一の事業所において同様の雇用契約に基づき使用されている者が更新等により1年以上使用された実績があること

③ 上記②(ⅰ)及び(ⅱ)のいずれかに該当する場合であっても、労使双方により1年以上使用しないことについて合意されていることが確認されたときは、継続して1年以上使用されることが見込まれないこととして取り扱うこととする。

④ 当初は継続して1年以上使用されることが見込まれなかった場合であっても、その後において、継続して1年以上使用されることが見込まれることとなったときは、その時点から継続して1年以上使用されることが見込まれることとして取り扱うこととする。

(3) 報酬(最低賃金法で賃金に算入しないものに相当するものを除く。)の月額が8万8千円以上であること


① 「最低賃金法で賃金に算入しないものに相当するもの」とは、次の(ⅰ)から(ⅵ)までに掲げるものとする。


(ⅰ) 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)

(ⅱ) 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)

(ⅲ) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)

(ⅳ) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金

(ⅴ) 深夜労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分

(ⅵ) 最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)

② 報酬が、月給、週給等一定の期間で定められる場合は、被保険者の資格を取得した日現在の報酬の額をその期間の総日数で除して得た額の30倍に相当する額を報酬月額とする。

③ 報酬が、日給、時間給、出来高給又は請負給の場合は、被保険者の資格を取得した月前1月間に同一の事業所において、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額を報酬月額とする。

④ 上記②又は③の方法で報酬月額を算定することが困難である場合は、被保険者の資格を取得した月前1月間に、その地方で、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額を報酬月額とする。

⑤ 上記②から④までのうち、2つ以上に該当する報酬を受ける場合は、それぞれについて上記②から④までの方法によって算定した額の合算額を報酬月額とする。

⑥ 上記③又は④の方法で報酬月額を算定する場合で、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が当該事業所又は当該地方に存在しないときは、就業規則雇用契約書等に基づき、個別に報酬月額を算定することとする。

(4) 学生でないこと

 適用拡大省令第1条の規定による改正後の健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号)第23条の6第1項及び適用拡大省令第2条の規定による改正後の厚生年金保険法施行規則(昭和29年厚生省令第37号)第9条の5第1項の規定により、卒業を予定している者であって適用事業所に使用されることとなっているもの、休学中の者及び定時制の課程等に在学する者その他これらに準ずる者は、学生でないこととして取り扱うこととするが、この場合の「その他これらに準ずる者」とは、事業主との雇用関係を存続した上で、事業主の命により又は事業主の承認を受け、大学院等に在学する者(いわゆる社会人大学院生等)とする。

(5) 特定適用事業所に使用されていること

 年金機能強化法附則第17条第1項及び第46条第1項に規定する特定適用事業所とは、事業主が同一である1又は2以上の適用事業所であって、当該1又は2以上の適用事業所に使用される通常の労働者及びこれに準ずる者の総数が常時500人を超えるものの各適用事業所とされているが、この場合の「事業主が同一である1又は2以上の適用事業所」、「通常の労働者及びこれに準ずる者」及び「常時500人を超える」とは、次の①から③までのとおりとする。


① 「事業主が同一である1又は2以上の適用事業所」


(ⅰ) 適用事業所が法人事業所の場合、法人そのものを事業主として取り扱い、同一法人格に属する全ての適用事業所を「事業主が同一である1又は2以上の適用事業所」として取り扱うこととする。

(ⅱ) 適用事業所が個人事業所の場合、個人事業主を事業主として取り扱い、事業主が同一である適用事業所は現在の適用事業所の単位のほかに無いものとして取り扱うこととする。

(ⅲ) 適用事業所が国の事業所の場合、国に属する全ての適用事業所を「事業主が同一である1又は2以上の適用事業所」として取り扱うこととする。

(ⅳ) 適用事業所が地方公共団体の事業所の場合、各地方公共団体を事業主として取り扱い、同一の地方公共団体に属する全ての適用事業所を「事業主が同一である1又は2以上の適用事業所」として取り扱うこととする。

② 「通常の労働者及びこれに準ずる者」

 厚生年金保険の被保険者資格を有する者を「通常の労働者及びこれに準ずる者」として取り扱うこととする。

③ 「常時500人を超える」

 事業主が同一である1又は2以上の適用事業所に使用される厚生年金保険の被保険者の総数が、1年間のうち6月間以上500人を超えることが見込まれる場合を「常時500人を超える」として取り扱うこととする。

第3 事業主による届出等に関する具体的事務の取扱い

1 特定適用事業所に該当したときの届出

 事業主は、適用事業所が特定適用事業所となったときは、当該事実が発生した日から5日以内に、「健康保険・厚生年金保険特定適用事業所該当/不該当届(別紙1)」を日本年金機構又は健康保険組合(以下「機構等」という。)に届け出るものであること。
 なお、事業主が国、地方公共団体又は法人であるときは、本店又は主たる事業所の事業主のみが届け出るものであること。

2 特定適用事業所に該当しなくなったときの申出

 特定適用事業所の不該当の申出は、「健康保険・厚生年金保険特定適用事業所該当/不該当届(別紙1)」に、使用する健康保険・厚生年金保険の被保険者の4分の3以上の同意を得たことを証する書類を添えて事業主が日本年金機構に提出することにより行うものであること。
 なお、事業主が国、地方公共団体又は法人であるときは、本店又は主たる事業所の事業主のみが提出するものであること。

3 被保険者等に係る短時間労働者であるかないかの区別の変更があったときの届出

(1) 事業主は、被保険者に係る短時間労働者であるかないかの区別に変更があったときは、当該事実が発生した日から5日以内に、「健康保険・厚生年金保険被保険者区分変更届/厚生年金保険70歳以上被用者区分変更届(別紙2)」を機構等に届け出るものであること。

(2) 事業主は、70歳以上の使用される者に係る短時間労働者であるかないかの区別に変更があったときは、当該事実が発生した日から5日以内に、「健康保険・厚生年金保険被保険者区分変更届/厚生年金保険70歳以上被用者区分変更届(別紙2)」を日本年金機構に届け出るものであること。

4 その他

 事業主は、次の(1)から(9)までに掲げる届書を機構等に提出するときは、これらの届書に、被保険者等に係る短時間労働者であるかないかの区別を附記するものであること。


(1) 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

(2) 厚生年金保険70歳以上被用者該当・不該当届

(3) 健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届

(4) 厚生年金保険70歳以上被用者算定基礎・月額変更・賞与支払届

(5) 健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届

(6) 健康保険・厚生年金保育児休業等終了時報月額変更届

(7) 厚生年金保険70歳以上被用者育児休業等終了時報月額変更届

(8) 健康保険・厚生年金保険産前産後休業終了時報月額変更届

(9) 厚生年金保険70歳以上被用者産前産後休業終了時報月額変更届