社会保険労務士川口正倫のブログ

横浜市の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ

【2019年4月施行】年次有給休暇の取得義務化が始まります!!

働き方改革の一環として、2019年4月から年次有給休暇を5日以上の取得させることが企業に義務付けられることになり、企業は対象となる労働者に対し時季を指定して有給休暇を付与する必要があります。
ここでは、有給取得義務化の詳細と企業の対応について解説していきます。
なお、本内容は厚生労働省の通達を参考に記載しています。
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律について(H30.7.6基発0706第1号・職発0706第2号・雇均発0706第1号)
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(H30.09.07基発0907第1号)
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について(H30.12.28基発1228第15号)

1.有給休暇取得義務化とは

有給休暇取得義務化の概要

労働基準法が改正され、2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇を付与した日から1年以内に5日、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられます。
ただし、労働者が自ら申請して取得した日数や、労使協定で取得時季を定めて与えた日数(計画的付与)に関しては、取得させる義務のある5日から控除することができます。例えば、年次有給休暇を5日以上取得済みの労働者に対しては、使用者による時季指定は行わなくてよいことになりますし、年次有給休暇を2日取得済みの労働者に対しては、使用者は3日だけ時季指定を行えばよいこととなり、また計画的付与により3日の有給休暇を一斉に取得させた場合は、使用者は2日だけ時季指定を行えばよいことになります。

有給休暇取得義務化の背景

労働基準法では、「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資する」*1という趣旨から、一定の要件を満たす労働者に対して毎年一定日数の年次有給休暇を与えることが定められています。この年次有給休暇は、原則として労働者自身が請求する時季に与えるものとされています*2が、職場への配慮やためらいといった理由から取得する人が少ないというのが現状です。こうした状況を改善するために定められたのが、今回の有給休暇の取得義務化です。有給休暇の取得を企業側から働きかけることで、労働者が有給休暇を取得しやすいように促すというのがねらいです。

2.企業の対応

有給取得義務化により使用者に求められる対応

有給休暇の取得する際に、労働者から申し出て有給休暇を取得するという現状の方法に加えて、使用者から時季指定による取得という新たな方法が取れるようになります。使用者が取得時季の指定を行う際は、まず使用者が労働者に取得時季の意見を聴きます。その後、労働者の意見を尊重し、使用者が取得時季を指定します。*3
また、今回の改正に伴い、使用者には、年次有給休暇の時季指定義務について就業規則に定めること*4、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し3年間保存すること。*5が義務付けられました。

就業規則の規定方法はこちらを参照
年次有給休暇時季指定義務の就業規則への規定方法の解説

対象となる労働者

年10日以上の年次有給休暇が付与される可能性のある労働者は、以下の通りです。
なお、「年10日以上」には前年付与されて取得しなかった有給休暇は含まれず、1度に10日以上付与されることをいいます。*6

  • 入社後6か月が経過している正社員または次のいずれかに該当するパート社員・契約社員派遣社員・アルバイト*7

 ・週所定労働時間30時間以上
 ・週所定労働日数5日以上
 ・年間所定労働日数217日以上

  • 入社後3年半以上経過している週所定労働日数4日もしくは年間所定労働日数169~216日のパート社員・契約社員派遣社員・アルバイト
  • 入社後5年半以上経過している週所定労働日数3日もしくは年間所定労働日数121~168日のパート社員・契約社員派遣社員・アルバイト

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具体的な有給取得義務の方法

有給休暇取得義務化に対応するには、主に個別指定方式と、計画年休制度の導入という2つの方法があげられます。
なお、例えば計画年休制度を3日・個別指定を2日というように複合した方法も考えられますし、有給休暇を労働者の請求により取得する習慣が根付いている企業であれば、基本的に何もせず、取得が少ない人だけをターゲットにして個別指定をするという方法も考えられます。

・個別指定方式
労働者ごとに、個別に希望を聴取して会社がそれぞれの有給休暇取得日を指定する方法です。
メリットは会社による指定の柔軟性が高いことです。労働者の希望を聴取して指定日が決められますので、労働者にとっては取得したい希望の日に取得できる可能性が高くなり、満足度を上げることに繋がります。
また、この方式は有給休暇が付与されてから一定期間経過した後(例えば6か月後)に個別指定することもできます。その際には、付与されてからそれまでの間に労働者が自ら請求して取得した日数を5日から控除することができますし、また5日以上取得していれば、会社は時季指定する必要がありません。
デメリットは労働者から一人一人希望を聴取するのに手間がかかることです。
また、一定期間経過した後に個別指定する場合は、使用者がすべての労働者の有給休暇取得日数を把握しなければいけないため、管理の手間が増えることになります。
現状でも、有給休暇取得日数が年5日以上の労働者が多数を占める企業では、個別指定方式が向いています。

・計画年休制度の導入
会社が労働者代表との労使協定により、各労働者の有給休暇のうち5日を超える部分についてあらかじめ日にちを決めるという「計画年休制度」を用います。この計画年休制度を導入し、年5日以上の有給休暇を付与することで、有給休暇取得日の指定義務の対象外となります。
計画年休制度は様々なパターンが可能で、全社で一斉に特定の日を有給休暇としたり、部署ごとに有給休暇をとる日を分けたり、あるいは有給休暇を取る日を1人ずつ決めていくこともできます。
メリットとしては、労働者を個別に管理する手間が省けることが挙げられます。労使協定により定めるため、個別の労働者ごとに有給取得日数の把握や取得促進を行わなくてもよくなります。
なお、現状ある特別休暇を廃止して、計画年休制度に切り替えることは就業規則の不利益変更に該当しますので*8、注意が必要です。(就業規則の不利益変更については確実に問題ないという条件はありませんが、少なくとも時季指定儀義務を果たすことだけを目的として不利益変更をするのはNGと思ってください)

デメリットとしては、労働者代表との話し合いによって労使協定が締結されるので、会社側の都合で有給取得の日程を変更できないことです。そのため、緊急の事態が発生しても労働者が有給休暇でほとんどいないということも起こりえます。また、現状でも、ある程度の有給休暇を取得している労働者にとっては自由に取得できる日数が少なくなるため、満足度が下がることに繋がります。
現状で有給休暇取得日数が年5日以上の労働者が少ない会社には、計画年休制度の導入が向いています。
なお、計画年休制度については、就業規則にも導入できる旨が定められている必要があるため、現行で定められていない場合は就業規則の変更も必要となります。

有給休暇の時季義務違反の罰則

対象となる労働者に有給休暇の時季指定を行わなかった場合、30万円以下の罰金が課されます。
なお、あくまで私の予想ですが、この30万円以下の罰金は労働者1人当たりになるものと思われ、複数の労働者が時季指定を行われていない場合には、刑法48条第2項の規定により、併合罪となり、「その人数×30万円以下の罰金」が課せられることになります。

*1:時間単位年休の趣旨(平成21.5.29基発0529001号)より

*2:年次有給休暇に関する最高裁判決(昭和48.3.6基発110号)

*3:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(H30.09.07基発0907第1号)第3・3

*4:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について(平成30.12.28基発1228第15号)問14

*5:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(H30.09.07基発0907第1号)第3・4

*6:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について(平成30.12.28基発1228第15号)問2

*7:ただし、入社後6か月より前に10日以上の有給休暇を付与された場合は6か月経過していなくても対象となる。また、入社時に3日、3か月経過後に7日付与するような場合は10日以上となった時点で対象となります。働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について(H30.09.07基発0907第1号)第3・2(2)を参照

*8:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について(平成30.12.28基発1228第15号)問12

都市銀行等における管理監督者(昭52.2.28基発104号の2)

都市銀行等における管理監督者】(昭52.2.28基発104号の2)

都市銀行等における管理監督者労働基準法第41条第2号の「監督又は管理の地位にある者」をいう。)の範囲については、昨年4月に実態調査を行った結果、別紙により都市銀行等を指導することとしたので、了知されたい。

労基法上の管理監督者の範囲

一 取締役等役員を兼務する者
二 支店長、事務所長等事業場の長
三 本部の部長等で経営者に直属する組織の長
四 本部の課又はこれに準ずる組織の長
五 大規模の支店又は事務所の部、課等の組織の長で一~四の者と銀行内において同格以上に位置づけられている者
六 一~四と銀行内において同格以上に位置づけられている者であって、一~三の者及び五のうち一~三の者と同格以上の位置づけをされている者を補佐し、かつその職務の全部もしくは相当部分を代行もしくは代決する権限を有するもの(次長、副部長等)
七 一~四と銀行内において同格以上に位置づけられる者であって、経営上の重要事項に関する企画立案等の業務を担当するもの(スタッフ)

(注)
(1) 四の本部の課は、部長―次長―課長という一般的な組織における課をいい、課という名称が用いられていてもこの基準の適用にあたって適切でない場合には、実態に即して判定するものとする。
(2) 課制をとっていない場合等、この基準の適用する職位がないときは、各職位の権限、責任、資格等により判定するものとする。

欠勤や遅刻等で賃金が減額された場合の減給制裁の制限(昭和25.9.8基収1338号)

【欠勤や遅刻等で賃金が減額された場合の減給制裁の制限】(昭和25.9.8基収1338号)

 

労働基準法第91条は、一賃金支払期における賃金総額が欠勤、遅刻等により減額されたため僅少となった場合であっても、減給の総額がその支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならない趣旨か。

 

当該減給額が当該賃金支払期に対し現実に支払われる賃金の総額の10分の1を超えてはならない趣旨である。

賞与からの減給による制裁(昭和63.3.14基発150号)

【賞与からの減給による制裁】(昭和63.3.14基発150号)

 

賞与からの減給による制裁は可能か。

 


制裁として賞与から減額することが明らかな場合は、賞与も賃金であり、労働基準法第91条の減給の制裁に該当する。したがって賞与から減額する場合も一回の事由については平均賃金の2分の1を超え、また、総額については、一賃金支払期における賃金、すなわち賞与額の10分の1を超えてはならないことになる。

遅刻・早退の場合の賃金カット(昭和63.3.14基発150号)

【遅刻・早退の場合の賃金カット】(昭和63.3.14基発150号)

 

労働者が、遅刻・早退をした場合、その時間については賃金債権が生じないものであるから、その分の減給は、労働基準法第91条の制限を受けないものと解してよいか。

 

貴見のとおり。
なお、遅刻・早退の時間に対する賃金額を超える減給は制裁とみなされ、労働基準法第91条に定める減給の制裁に関する規定の適用を受ける。

減給制裁の一回の額・総額の制限(昭23.9.20基収1789号)

【減給制裁の一回の額・総額の制限】(昭23.9.20基収1789号)

 

労働基準法第91条の減給制裁について

(1)一事犯について1日の最高減給処分は1日分の半額を超えてはならない。これを日々に課して行く際には、1か月分の10分の1以上を超えてはならない。(従って数事犯がある場合には各事犯の個々が制限を受けてその総額には制限はないことになる。)

(2)従来通りの解釈をとれば、一事犯についてはその日限りで減給処分は日を替えて、もしくは月を替えては行えないが、前号の如く考えた場合、月を替えては無制限に行い得る。

と解釈し得るのではないかとも思われるがどうか。

 

労働基準法第91条は、1回の事案に対しては減給の総額が平均賃金の1日分の半分以内、又一賃金支払期に発生した数事案に対する減給の総額が、当該賃金支払期における賃金の総額の10分の1以内でなければならないとする趣旨である。

制裁としての降給(昭37.9.6基発917号)

【制裁としての降給】(昭37.9.6基発917号)


T株式会社では、就業規則において「将来にわたって本給の10分の1以内を減ずる」旨の降給の制裁を定めているが、この降給の範囲は、労働基準法第91条の減給の制裁を超える場合が多い。
この就業規則の降給は、労働基準法第91条の制限を超える部分は無効であり、また超える降給の部分は労働基準法91条違反か考えるがどうか。


設問の降給が、従前の職務に従事せしめつつ、賃金額のみを減ずる趣旨であれば、減給の制裁として労働基準法第91条の適用がある。

制裁として月給者を日給者に格下げすることによる賃金の低下(昭34.5.4基収2664号)

【制裁として月給者を日給者に格下げすることによる賃金の低下】(昭34.5.4基収2664号)


○○電鉄株式会社は先般就業規則を変更し、制裁の種類として新たに「月給者を日給者に格下げ」を附加規定した。
このような「格下げ」を受けた者の日給者としての基本給は、月給者の基本給の25分の1とされるため、ある月において、所定労働日が25日に満たないか、あるいは欠勤したことにより、その労働者が現実に労働した日数が25日に満たないときには、その労働者がもし制裁を受けなかったならば受け取るはずであった賃金よりも少額の賃金を受け取る結果を生ずる。その場合に、このような制裁が労働基準法第91条にいう「減給の制裁」に該当し、同法同条の制限を受けるものであるか否かについてご回答をお願いする。


設問の場合は、賃金支払の方法を変更するものであり、この変更によりある月において労働者が現実に労働した日数が25日に満たない場合に賃金額が減少するのであるから、労働基準法第91条にいう「減給」には該当しない。