社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



令和7年4月より高年齢雇用継続給付が縮減!!

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令和7年4月より高年齢雇用継続給付が縮減!!

1.改正の趣旨

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号)による高年齢者雇用確保措置の進展等を踏まえ、高年齢雇用継続給付の給付率が見直されます。

2.改正の内容

○ 令和7年度から新たに60歳となる労働者への同給付の給付率を15%から10%に縮小(令和7年4月1日施行)
※ 賃金と給付の合計額が60歳時点の賃金の70.4%を超え75%未満の場合は逓減した率
※ 令和7年3月31日までに60歳になっている方(誕生日が昭和40年4月2日以前の方)は、従前どおりの給付率
※ 見直しに当たり、高年齢労働者の処遇の改善に向けて先行して取り組む事業主に対する支援策とともに、同給付の給付率の縮小後の激変緩和措置についても併せて講ずる。

【改正前の内容】
被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者であって、60歳以後の各月に支払われる賃金が原則として60歳時点の賃金額の75%未満となった状態で雇用を継続する高年齢者に対し、65歳に達するまでの期間について、60歳以後の各月の賃金の15%を支給。
※賃金と給付の合計額が60歳時点の賃金の70.15%を超え75%未満の場合は逓減した率

改正前(現行)についての詳細はこちらをご確認ください。
sr-memorandum.hatenablog.com

3.支給額の見込み

昨年こちらで予想したとおりの計算式になるものと思われます。
sr-memorandum.hatenablog.com

θ=\frac{賃金額}{60歳到達時の賃金}    (1)
支給額=賃金額×α    (2)

θ≧75% ⇒ α=0
75%>θ≧64% ⇒ α=\frac{24-32×θ}{55×θ}
64% >θ ⇒ α=0.1

式(1)と式(2)より、
\frac{賃金+支給額}{60歳到達時の賃金}  =θ(1+α)

θ=64%とすると、α=0.1なので、

\frac{賃金+支給額 }{60歳到達時の賃金}   =64%×(1+0.1)=70.4%

となり、賃金と給付の合計額が60歳時点の賃金の70.4%を超え75%未満の場合は逓減した率となることがいえ、パンフレットの内容と矛盾しないためです。

実際に式を当てはめてグラフにしてみました。
f:id:sr-memorandum:20210303203940p:plain:w300
(注) %は60歳時点の賃金に対する割合です。

なお、60歳到達時の賃金には上限があり、賃金にも最低額の定めがあります。

4.高年齢労働者処遇改善促進助成金(仮称)について

※創設される予定のものです。

①概要

○雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を推進する等の観点から、60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇の改善に向けて取り組む事業主に対し支援を行う。

②支給対象事業主

雇用保険適用事業所であって、以下の要件をいずれも満たす事業主
・60歳から64歳までの高年齢労働者の賃金規定等を改定し、6か月以上適用していること。
・当該事業所に雇用される労働者に係る高年齢雇用継続基本給付金の受給額が一定割合(賃金規定等改定前後を比較して95%)以上減少していること。

高年齢雇用継続基本給付金の受給額が一定割合減少していることの意義
事業主が賃金を増やす(θを増加させる)ことによって、支給額増やすこと意味しています。例えば、高年齢雇用継続基本給付金を受給している従業員の賃金を、60歳到達時の賃金の75%以上にすれば給付金の額は0円に減少します。

③助成内容等

○当該事業所に雇用される労働者(申請対象期間の初日において雇用されている者に限る。)に係る、賃金規定等改定前後を比較した高年齢雇用継続基本給付金の減少額に、以下の助成率を乗じた額を助成
       ・大企業:2/3 中小企業:4/5

※ 助成率は令和4年度までの率。令和5・6年度は、大企業:1/2、中小企業:2/3となる予定。
※ 1回の申請の対象期間は6か月とし、最大4回(2年間)まで申請可能。2回目以降も、初回の申請時に適用された助成率を適用。

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