社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【懲戒解雇】西日本鉄道事件(最二小判昭和43.8.2民集22巻8号1603頁)

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西日本鉄道事件(最二小判昭和43.8.2民集22巻8号1603頁)

参照法条 : 労働基準法89条1項9号
裁判年月日 : 1968年8月2日
裁判所名 : 最高二小
裁判形式 : 判決
事件番号 : 昭和42年 (オ) 740 

1.事件の概要

Y社は、電車、バス等の運輸業の会社であり、乗務員による乗車賃の不正秘匿を摘発、防止する目的で、就業規則に「社員が業務の正常な秩序維持のためその所持品の検査を求められたときは、これを拒んではならない。」との規定を設け、所持品検査を実施していた。組合との話し合いでも、所持品検査の際には脱靴すべきものとの方針が確認されたが、検査に当たっては乗務員の人権を尊重するなどの事項も周知されていた。Xは、Y社の電車運転士であったが、勤務する営業所では、検査場のコンクリート床上に踏板を敷き並べ、同室を板張りのようにして、検査員から指示がなくても自然に脱靴せざるをえないような仕組みにして検査が実施された。しかし、Xは指示があったにもかかわらず脱靴に応じなかったため、Y社は、Xの脱靴拒否が上記規定に違反し、さらに懲戒規定の「職務上の指示に不当に反抗し・・・職場の秩序を乱したとき」に該当するとして、Xを懲戒解雇処分に付した。

2.判決の概要

いわゆる所持品検査は、被検査者の基本的人権に関する問題であって、その性質上つねに人権侵害のおそれを伴うものであるから、たとえ、それが企業の経営・維持にとって必要かつ効果的な措置であり、他の同種の企業において多く行われるところであるとしても、また、それが労働基準法所定の手続を経て作成・変更された就業規則の条項に基づいて行なわれ、これについて従業員組合または当該職場従業員の過半数の同意があるとしても、そのことの故をもって、当然に適法視されうるものではない。問題は、その検査の方法ないし程度であって、所持品検査は、これを必要とする合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で、しかも制度として、職場従業員に対して画一的に実施されるものでなければならない。そして、このようなものとしての所持品検査が、就業規則その他、明示の根拠に基づいて行なわれるときは、他にそれに代わるべき措置をとりうる余地が絶無でないとしても、従業員は、個別的な場合にその方法や程度が妥当を欠く等、特段の事情がないかぎり、検査を受忍すべき義務があり、かく解しても所論憲法の条項に反するものではない。


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