日本鋼管川崎製鉄所事件(最二小判昭和49.3.15民集28巻2号265頁)
参照法条 : 労働基準法89条1項9号
裁判年月日 : 1974年3月15日
裁判所名 : 最高二小
裁判形式 : 判決
事件番号 : 昭和45年 (オ) 982
1.事件の概要
Y社K製鉄所の従業員であったX1~X3は、いわゆる砂川事件に加担したため、日米安全保障条約に基づく行政協定に伴う刑事特別法違反の罪により逮捕、起訴された。この事件は、在日アメリカ空軍の使用する立川基地の拡張のための測量を阻止するため、Xらが労働者ら約250名とともに、飛行場内に不法に立入り、集団の最前列付近で率先して行動したというもので、反米的な集団的暴力事犯として広く報道された。Y社は、K製鉄所の労働協約および就業規則所定の懲戒解雇事由である「不名誉な行為をして会社の体面を著しく汚したとき」に該当するとして、X1、X2を懲戒解雇、X3を諭旨解雇にした。このため、Xらは、雇用契約に基づく権利を有することの確認を求めて提訴したところ、一審・二審ともに、Xらの請求を認容したため、Y社が上告したのが本件である。
2.判決の概要
従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない。(上告棄却)
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