社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



CBC管弦楽団事件(最一小判昭和51.5.6判時813号3頁)

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CBC管弦楽団事件(最一小判昭和51.5.6判時813号3頁)

1.事件の概要

労働組合は、放送会社であるA社と出演契約を結んで音楽演奏に従事していた楽団員らが組織したものである。X労働組合は、A社に団体交渉を申し入れたが、A社が拒否したことを理由にY労働委員会に不当労働行為の救済申立てをした。しかし、Yは楽団員の労組法上の労働者性を否定した。そこで、X組合は取消訴訟を提起した。第一審は、X組合の請求を認容し、原審もYからの控訴を棄却したのでYが上告した。

2.判決の概要

楽団員は、演奏という特殊な労務を提供する者であるため、必ずしもA社から日々一定の時間的拘束を受けるものではなく、出演に要する時間以外の時間は事実上その自由に委ねられているが、右のように、A社において必要とするときは随時その一方的に指定することによって楽団員に出演を求めることができ、楽団員が原則としてこれに従うべき基本的な関係がある以上、たとえばA社の都合によって現実の出演時間がいかに減少したとしても、楽団員の演奏労働力の処分につきA社が指揮命令の機能を有しないものということはできない。また、自由出演契約に基づき楽団員に支払われる出演報酬のうち契約金が不出演によって減額されないことは前期のとおりであるが、楽団員は、いわゆる有名芸術家とは異なり、演出についてなんら裁量を与えられていないのであるから、その出演報酬は、演奏によってもたらされる芸術的価値を評価したものというよりも、むしろ、演奏という労務の提供それ自体の対価であるとみるのが相当であって、その一部たる契約金は、楽団員に生活の資として一応の安定した収入を与えるための最低保障給たる性質を有するものと認めるべきである。

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