社会保険労務士川口正倫のブログ

横浜市の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ

国・中労委(新国立劇場運営財団)事件(東京高判平成21.3.25労判981号13頁)

国・中労委(新国立劇場運営財団)事件(東京高判平成21.3.25労判981号13頁)

1.事実の概要

新国立劇場運営財団では、オペラ公演に出演する合唱団員について、原則として年間シーズンの全公演に出演可能な「契約メンバー」と、財団がその都度指定する公演に出演が可能な「登録メンバー」とを試聴会により選抜していた。
基本契約には、当該メンバーの出演の有無等が記載された「出演公演一覧」等が添付され、基本契約または個別出演契約に関する債務不履行があった場合の解除および損害賠償に関する規定があったが、個別公演出演契約締結の義務づけや財団以外が主催する音楽活動の禁止・制限を明記する規定はなかった。日本音楽家ユニオンは、財団が、①組合員であるAを契約メンバーに合格させなかったこと、②組合からAの次期シーズンの契約に関する団体交渉を申し入れたにもかかわらずこれに応じなかったこと、がいずれも不当労働行為であるとして救済申立てをした。東京都労働委員会は、①は、その申立てを棄却し、②は団体交渉に応じることおよびこれに関する文書の交付等を財団に対して命じた。ユニオンは、申立棄却部分につき、財団は救済を命じた部分につき、それぞれ再審査を申し立てたが、中央労働委員会は双方の再審査申立てを棄却した。本件は、財団とユニオンが、それぞれ中央労働委員会の再審査申立棄却命令の取消しを求めた事案である。

2.判決の概要

契約メンバーの歌唱技能という債務の提供はオペラ公演における各メンバーの持ち場(合唱におけるパート等)が自ずと決まっており、財団が契約メンバーの労働力を事業目的の下に配置利用する裁量の余地があったとは考えられないところである。そして、既に説示のとおり、契約メンバーが個別公演出演契約を締結してひとたび当該オペラ出演に参加することとした場合においては、オペラ出演のもつ集団的舞台芸術性に由来する諸制約が課せられるということ以外には、法的な指揮命令ないし支配監督関係の成立を差し挟む余地はない上、契約メンバーには個別公演出演契約を締結するかどうかの自由すなわち公演ごとの労務提供の諾否の自由がある。
個別公演出演契約を締結した結果契約メンバーが受けることとなる種々の拘束はいずれも前述したオペラ公演の本質に由来する性質のものであること、契約メンバーの財団からの報酬等に対する収入の依存度といった経済的な側面についてみても、上述のとおり各契約メンバーがその自由な意思で個別公演出演契約の締結を判断んする過程で考慮される一要素に過ぎない。


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