1.事件の概要
Xは、Y社の従業員であり、A組合の組合員である。昭和44年1月1日未明、Xは、従業員の社宅において、Y社を非難攻撃し、中傷誹謗する内容のビラを、350枚配布した。そこでY社は、この行為が就業規則所定の懲戒事由「その他特に不都合な行為があったとき」に当たるものとして譴責処分に処した。
2.判決の概要
労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労務提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守すべき義務を負い、使用者は、広く企業秩序を維持し、もって企業の円滑な運営を図るため、その雇用する労働者の企業秩序違反行為を理由として、当該労働者に対し、一種制裁罰である懲戒を課することができるものであるところ、右企業秩序は、通常、労働者の職場内又は職務遂行に関係のある行為を規制することにより維持しうるものであるが、職場外でされた職務遂行に関係のない労働者の行為であっても、企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなど企業秩序に関係を有するものもあるのであるから、使用者は、企業秩序の維持確保のために、そのような行為を規制の対象とし、これを理由として労働者に懲戒を課することも許されるのであり、・・・(中略)、右にような場合を除き、労働者は、その職場外における職務遂行に関係のない行為について、使用者による規制を受けるべきいわれはないものと解するのが相当である。
【送料無料】 労働判例百選 第9版 別冊ジュリスト / 村中孝史 【ムック】 価格:2,592円 |