社会保険労務士川口正倫のブログ

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日本航空(客室乗務員整理解雇)事件(東京高判平26.6.3労経速2223号3頁)

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日本航空(運行乗務員整理解雇)事件(東京高判平26.6.3労経速2223号3頁)

参照法条  : 労働契約法16条、会社更生法1条、会社更生法2条、会社更生法22条、会社更生法46条、労働組合法7条
裁判年月日 : 2014年6月3日
裁判所名  : 東京高
裁判形式  : 判決
事件番号  : 平成24年(ネ)3458

1.事件の概要

Xらは、航空運送業を業とするY社の前身であるA社と期間の定めのない労働契約を締結した客室乗務員であり、B労働組合の組合員であったが、A社は平成22年1月19日に会社更生手続が開始されて、平成23年3月28日に同手続が終結した。その間に、Xらは平成22年12月9日、同月31日付けで整理解雇される旨の解雇予告通知を受けた。同様の解雇は、運航乗務員の機長ないし副操縦士に対してもなされた。
Xらは、Y社に対して、この解雇が無効である旨を主張して、従業員としての地位確認等を求めて提訴した。第一審が、Xらの請求を棄却したため、Xらが控訴したのが本件である。

2.判決の概要

会社更生手続は、事業の継続を前提としており、更生管財人が継続する事業において労働契約上の使用者としての地位を有するものであること、更生管財人が、労働契約などの規定の定める要件によらずに労働契約を解除することができる旨を定める法の規定がないことからすれば、更生手続の下で更生管財人がした整理解雇についても、労働契約法16条が適用されるものと解され、いわゆる整理解雇法理も適用されるものと解するのが相当である。
いわゆる整理解雇法理における人員削減の必要性という要素は、解雇の時点において破綻に至っていない企業の場合、債務超過や赤字の累積など高度の経営上の困難から人員の削減が必要であり、企業の合理的な運営上やむを得ないものとされるときには、これが存在すると解されるのである。これに対し、更生会社であるY社の場合においては、本件解雇前、いったんは破綻状態にあって、その債権者及び取引先に対する取引上の信頼が失われた状態に陥っており、更生会社の事業の維持更生を目的とする会社更生法(第1条)に基づく本件会社更生手続開始決定がなされ、同法に基づく手続によって、本件更生計画が債権者らの同意を得て可決されて裁判所に認可され、本件更生計画が遂行されて事業の維持更生が図られることがなければ、破綻が避けられなかったのであって、同法に基づく更生計画案は、更生会社の当面の破綻を回避するにとどまらず、破綻原因を除去して更生計画を確実に遂行することができる業務体制の確立を図るものとして、そのために必要な諸施策を盛り込んで作成することが同法の目的に適うものであることに十分配慮した上で、上記人員削減の必要性の要素を判断するのが相当である。
Xらに対する解雇は、更生会社であるY社を存続させ、これを合理的に運営する上でやむを得ないものとして、その人員削減の必要性が認められること、一連の希望退職措置を講ずるなど十分な解雇回避努力を行ったこと、その対象者の人選が合理的に認められる本件人選基準に基づいて客観的、合理的に行われたことが認められること、また、解雇の手続においても、Y社からXらの所属するB組合を含む従業員の所属労働組合に対する多数回の協議と説明をしており、C組合からの指摘に応じて本件人選基準案の内容の一部を変更して本件人選案を策定するなど、整理解雇が許されないものと評価するに足りるような事情は認められないというべきである。

なお、本判決の後、Xらは最高裁に上告したが、棄却・不受理となった。