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【同一労働同一賃金】リクルートスタッフィング事件(労経速2451号第5頁)

同一労働同一賃金リクルートスタッフィング事件(労経速2451号第5頁)

1.事件の概要

人材派遣事業を業とするY社において、派遣スタッフ、アウトソーシング事業の受託業務スタッフ(OSスタッフ)等として平成15年6月に登録を行った✕は、派遣業務又はアウトソーシングの受託業務に従事する都度、Y社との間で同16年6月から同29年6月までの間、断続的に、期間の定めのある契約を締結し、派遣先又は委託先事業所等において業務に従事していた。
Y社では、雇用形態等の相違によって有期・無期それぞれ8つの職種区分があり、職種ごとに異なる就業規則、給与規程等が定められていた。
無期は全職種に通勤手当が支給され、有期のうち配転命令の対象となる6職種にも通勤手当が支給されていたが、✕が締結していた契約形態である派遣・OSスタッフ職には一部を除き、原則として通勤手当が支給されていなかった。
✕は、無期労働契約を締結している従業員と有期労働契約を締結している従業員の間※には、通勤手当支給の有無という労働条件の相違が存在し、同相違は、労働契約法20条に反し違反であり、同相違に基づく通勤手当の不支が不法行為に該当するとして、上記相違に係る通勤手当相当額等の支払いと求めて、✕がY社を提訴したのが本件である。

※本件、派遣先の従業員と派遣社員との間ではなく、派遣元の通常の従業員と派遣社員との間の労働条件の相違が問題となっています。この関係においても、労働契約法20条(現パート有期雇用労働法8条)の適用はあるのでしょうか?そもそも、派遣労働者も同法の適用はあるのでしょうか?

2.判決の概要

争点1 本件相違に関し労働契約法20条が適用されるか否か

ア 労働契約法20条の意義及び趣旨
労働契約法20条は、有期労働契約を締結している労働者(以下「有期契約労働者」という。)の労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と無期労働契約を締結している労働者(以下「無期契約労働者」という。)の労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない旨定めている。同条は、有期契約労働者については、無期契約労働者と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく、両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものである。そして、同条は、有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があり得ることを前提に、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される(最高裁平成28年(受)第2099号、第2100号同30年6月1日判決・民集72巻2号88頁参照)。

イ 派遣労働者の保護に関する規定
派遣労働者は、派遣元事業主と締結した労働契約に基づき、派遣先において指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事する者であり、労働契約を締結した使用者の指揮命令の下、同使用者のために労務提供を行う雇用形態とは異なる特徴がある。
しかるところ、派遣労働者の保護等を図り派遣労働者の雇用の安定その他の福祉の増進に資することを目的とする労働者派遣法は、派遣先労働者との均衡待遇を図る諸規定(例えば、派遣元に対して、派遣先労働者との均衡を考慮しつつ賃金を決定する配慮義務を定める改正前の同法30条の3第1項や派遣先に対して、派遣元の求めに応じ、派遣労働者が従事する業務と同種業務に従事する直接雇用の労働者の賃金水準に関する情報提供等の措置を講じるべき配慮義務を定める同法40条5項)を置く一方、派遣元の直接雇用労働者との待遇の均衡については、改正後においても、派遣元の労働組合等との労使協定について定める同法30条の4第1項4号を置くにとどまる(なお、改正後の同法30条の4第1項は、派遣労働者通勤手当を含む待遇について、派遣元の従業員で構成する労働組合等との書面による協定により規律する場合の規定であるが、同項2号イに関する同法施行規則25条の9は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地を含む地域において派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者を比較対象としている。)。
また、労働者待遇確保法は、派遣労働者について、派遣先に雇用される労働者との間においてその業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度その他の事情に応じた均等な待遇及び均衡のとれた待遇の実現を図るための措置を講ずることを規定しており、派遣元の直接雇用労働者との均衡待遇についての規定を置いていない。
さらに、労働者待遇確保法に関する附帯決議において、派遣労働者の待遇については、派遣先に雇用される労働者との均等ないし均衡待遇を図ることとしており、労働者派遣法の一部を改正する法律案に関する附帯決議においても派遣先との派遣料金の交渉が派遣労働者の待遇改善にとって極めて重要とされていること などを踏まえると、派遣労働者の労働条件ないし待遇に関する格差の是正ないし規制は、派遣先の労働者との均衡等を考慮した待遇について規律する労働者派遣法による不合理な待遇ないし格差の是正が中心となると解される。

ウ 労働契約法20条が適用されること
しかしながら、労働契約法20条は、不合理な労働条件の相違を規律しようとする対象につき、「有期労働契約を締結している労働者」と定めるのみで、それ以外に文言上なんら限定していない。
上記アで述べたとおり、同条の趣旨は、有期契約労働者については、無期契約労働者と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく、両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものであるところ、その趣旨は、有期の派遣労働契約についても当てはまると解される。このことは、①有期労働契約の在り方について検討した労働政策審議会労働条件分科会の報告や労働契約法の改正議案の国会審議における担当大臣の発言あるいは労働者待遇確保法案の審議における修正案提出者の回答において、検討すべき有期労働契約の類型ないし是正されるべき「通常の労働者以外の労働者」に派遣労働が含まれているとしていること、②労働者待遇確保法において、雇用形態が多様化する中で、雇用形態により労働者の待遇や雇用の安定性について格差が存在する等の状況を是正するため、施策に関して基本理念を定めるなどとされており、派遣労働にも妥当すると解されること、③労働者待遇確保法案の審議において政府参考人厚生労働省の担当者)が、派遣元事業主の通常の労働者と有期雇用の派遣労働者との通勤手当の支給に関する労働条件の相違について労働契約法20条による規律を想定している回答をしていることやその後の厚生労働省から発出された通知からもうかがえる。
加えて、派遣労働者について同法21条(船員関係)や22条(公務員・同居親族関係)のような特例や適用除外を定める規定も存在しない。
そうすると、派遣労働者について、不合理な待遇ないし格差の是正は、労働者派遣法に定める規律が中心となるとしても、そのことにより、派遣労働者の待遇格差の是正がおよそ労働契約法20条のらち外となるものではなく、派遣労働者と派遣元との関係についても労働契約法20条の規律を及ぼし、派遣労働の特殊性を含めて労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、当該事案における労働条件等の相違について、不合理と認められるものか否を判断することが相当と解される。

エ 小括
よって、有期派遣労働契約は、労働契約法20条の定める有期労働契約に含まれると解され、本件相違に関し労働契約法20条が適用される。

争点 2(本件通勤手当の性質及び趣旨・目的)について

ア Y社においては、派遣スタッフ及びOSスタッフについては、個別の契約で定めた場合を除き、通勤手当が支給されないが、その他の有期労働契約者及び全ての無期労働契約者に通勤手当が支給されている。
そして、上記通勤手当は、Y社の就業規則(ただし、部門別契約社員については個別の労働契約)において、「通勤手当」との名称で定められており、職種により上限額の設定があるものの、原則として実費を全額支給されていることに照らすと、直接的には、通勤に要する費用を補填する性質の手当として設けられたものであることは明らかというべきである。
イ この点につき、Y社は、本件通勤手当を含む通勤手当は、配転命令の対象となることによる想定外の負担やライフスタイルへの影響のリスクに配慮するとともに、派遣スタッフやOSスタッフが気に入らない仕事は断っている状況を目の当たりにする内勤社員が、就業場所の変更を伴う配転命令に対して不満を抱くことなく機動的経営を可能にするという趣旨・目的の下で支給しているものであり、配転命令権の対象であることが支給要件である旨主張する。
他方、Xは、本件通勤手当の名称、支給要件、支給範囲及び労働者への説明からすれば、本件通勤手当の趣旨は、「通勤に要する交通費を補填する趣旨で支給されるもの」に過ぎない旨主張するので更に検討する。
Y社においては、派遣スタッフ及びOSスタッフについては、個別の契約で定めた場合を除き、通勤手当が支給されないが、その他の有期労働契約者及び全ての無期労働契約者に通勤手当が支給されているところ、かかる事実に徴すると、Y社では実際に配転命令が行われる可能性のある職種区分の社員に通勤手当を支給している実情があると認められる。
他方、Y社は、平成元年頃までは、登録型派遣労働者(派遣スタッフ)に対して基本給(時給)とは別に通勤手当を支給しており、その後、新時給制度を運用するようになってからは、時給テーブル表等を作成して基本給(時給)に組み込むようになり、さらには、より高額の時給額を設定しなければスタッフが集まらなくなったため、時給テーブル表等の資料は徐々に活用されなくなくなった経緯があるところ、その後も求人に困難を来すもの等について派遣スタッフ及びOSスタッフについても個別の派遣労働契約により通勤交通費が時給とは別に支給されることがある。
しかるところ、Y社内部の検討資料によれば、Y社は、有期労働契約を期間の定めのない労働契約に転換することを定める労働契約法18条が平成25年4月1日に施行されることに伴い、派遣スタッフ等の有期派遣労働契約者が無期労働契約者(無期転換スタッフ)となった場合の労働条件を設定する際、無期転換後は通勤交通費を通勤手当として実費支給することとし、有期労働契約における時間給から平均的な通勤交通費程度の額を控除した額を基本給(基本時間給+職務手当)として設定していることが認められる。
以上によれば、Y社では、平成元年当時、通勤手当と配転命令は必ずしも直接関連づけられたものではなかったものの、その後、新時給制度が採用されて以降、通勤手当について、実際に配転命令が行われる可能性のある職種区分の社員に通勤手当を支給するとの整理がY社においてされるようになっていったこと並びに派遣スタッフ及びOSスタッフについては、配転命令とは別に募集の観点等から時給とは別に通勤交通費が支給されることがあるものと認められる。
ウ そうすると、Y社における通勤手当ないし交通費の支給は、①配転命令の対象となる職員については、想定外の負担やライフスタイルへの影響のリスクに配慮するとともに、社員が就業場所の変更を伴う配転命令に対して不満を抱くことなく機動的経営を可能にするという趣旨②配転命令を受けない職員に対しては、魅力的な労働条件として求人を可能とする等の趣旨を有するものと解される。
※本件の通勤手当の支給の趣旨が、
①配転命令の対象となる職員については、想定外の負担やライフスタイルへの影響のリスクに配慮するとともに、社員が就業場所の変更を伴う配転命令に対して不満を抱くことなく機動的経営を可能にする
②配転命令を受けない職員に対しては、魅力的な労働条件として求人を可能とする等
とされ、ハマキョウレックス事件のように、単に「通勤に要する交通費を補填する趣旨」とは異なる趣旨と認定されています。

争点3 本件相違が期間の定めがあることによるものか否か

ア 労働契約法20条「期間の定めがあることにより」の判断枠組み労働契約法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより相違していることを前提とするものであるところ、両者の労働条件が相違しているというだけで同条を適用することはできないが、期間の定めがあることと労働条件が相違していることとの関連性の程度は、労働条件の相違が不合理と認められるものに当たるか否かの判断に当たって考慮すれば足りるものということができることに徴すると、同条にいう「期間の定めがあることにより」とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当である(前掲最高裁平成30年6月1日判決参照)。

イ 本件相違についての検討
前記認定のとおり、Y社においては、無期労働契約社員のみならず派遣スタッフ等を除く有期労働契約社員(KS職社員、KA職社員、SV職社員、PM職社員、部門契約社員(B)、EV職社員)について、いずれも配転命令の対象となることから、通勤手当が支給されている。
他方、派遣スタッフ等については、Y社との労働契約関係上、個別の労働契約により就業場所等が特定されているため、Y社において配転を命ずることができないことから、原則として、交通費ないし通勤手当の支給はされないこととされており、例外的に販売促進業務や通勤先が遠方となる業務等、就業するJOBの業態や就業場所によって派遣労働者の求人に困難を来すJOBについて、他のJOBに比べて魅力的な労働条件に映るようにする等の理由から、時給とは別に通勤交通費の支給がされることがある。
しかるところ、派遣スタッフ等は、Y社の従業員の94%を占めており、いずれも就業規則通勤手当の定めがなく、個別の契約でも基本的に通勤交通費の支給はなく、例外的に求人に困難を来すJOBについて、魅力的な労働条件に映るようにする等の理由から、時給とは別に通勤交通費の支給がされることがあるに過ぎない一方、無期労働契約社員については、いずれも就業規則において通勤手当を支給する旨が定められ、全員に通勤手当が支給されている。以上の事情を総合勘案すると、本件相違は、
主として、①配転命令の対象となる職員については、想定外の負担やライフスタイルへの影響のリスクに配慮するとともに、社員が就業場所の変更を伴う配転命令に対して不満を抱くことなく機動的経営を可能にするという趣旨及び②配転命令を受けない職員に対しては、魅力的な労働条件として求人を可能とする等の趣旨に由来する相違により生じているものと解されるものの、依然、期間の定めによる相違の要素があることも否定できないところである。
そして、労働契約法20条の趣旨が有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止することにあること及び労働条件が相違していることと期間の定めの有無の関連性の程度は、労働条件の相違が不合理と認められるものに当たるか否かの判断に当たって考慮すれば足りることを踏まえると、本件相違について、期間の定めの有無に関連して生じたものとして検討することが相当と解される。

ウ 小括
そうすると、本件相違は、労働契約法20条にいう期間の定めがあることにより相違している場合に当たるいうべきである。
通勤手当の支給の有無が、労働契約法20条にいう期間の定めがあることにより相違している場合に該当するとされたことにより、以下でその差異が不合理なものでないかが検討されます。

争点4 本件相違が不合理と認められるものか否かについて

ア 労働契約法20条所定の不合理性について
労働契約法20条は、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が、職務の内容等を考慮して不合理と認められるものであってはならないとし、有期契約労働者について無期契約労働者との職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解されるところ、両者の労働条件が均衡のとれたものであるか否かの判断に当たっては、労使間の交渉や使用者の経営判断を尊重すべき面があることも否定し難いところである。
したがって、同条にいう「不合理と認められるもの」とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することができるものであることをいうと解するのが相当である。 (以上、前掲最高裁平成30年6月1日判決参照

イ 本件通勤手当の趣旨ないし目的について
争点2において認定説示したとおり、Y社における通勤手当ないし通勤交通費の支給は、①配転命令の対象となる職員については、想定外の負担やライフスタイルへの影響のリスクに配慮するとともに、社員が就業場所の変更を伴う配転命令に対して不満を抱くことなく機動的経営を可能にする(インセンティブ施策すなわち経営判断)という趣旨と②配転命令を受けない派遣スタッフ等については、魅力的な労働条件として求人を可能とする等の趣旨を有するものと解される。

ウ 職務の内容について
(ア)派遣スタッフ等は、自らが選択したJOBを前提としたY社との派遣労働契約に基づき、派遣先の特定の就労場所において、その指揮命令に従って、特定の業務にのみ従事するものであり、指揮命令をする派遣先や雇い主である派遣元(Y社)の意向により左右されものではない。
また、OSスタッフも、自らが選択した受託業務を前提に、Y社との雇用契約に基づき、Y社が受託した委託元の特定の就労場所において、特定の業務にのみ従事するものであり、雇い主である派遣元(Y社)の意向により左右されものではない。
しかるところ、✕は、①平成27年8月17日から同年9月30日まで、派遣先である一般財団法人Hにおいて、製品素材の検査業務に、②同年12月25日から平成28年1月5日まで、派遣先である株式会社Nにおいて、家電の販売・接客、家電の陳列、家電の搬出等の販売関連業務(関係し付随する業務を含む。)に、③同年2月1日から同年4月10日まで、派遣先である株式会社Rにおいて、電話により顧客に対してサービスの契約申込やサービスの相談、商品の説明等を行うテレマーケティング関係業務(関 係し付随する業務を含む。)に、④同年4月11日から平成29年6月30日まで、派遣先であるU株式会社において、設備の保守・メンテナンス、在庫の管理業務等のサービス関係業務(関係し付随する業務を含む。)に、各従事した。
また、✕は、平成26年9月1日から平成27年5月31日までOSスタッフとして、委託事業者である株式会社Dにおいて、eo光サービスの加入促進活動・契約獲得業務(チラシのポスティング)の業務に従事していたものである。
(イ)他方、✕が比較対象として例示するR職社員は、職種・勤務地限定なしの無期労働契約を締結した社員であり、その業務内容は、営業業務(具体的な営業計画を立て、顧客獲得活動、派遣契約の締結、就業開始から就業終了にかけての派遣労働者の支援)、JC業務、スタッフ職業務(内勤事務職、各部署において、企画立案・経営判断に必要な情報の取りまとめを行う。)であり、労働者派遣事業者たるY社の根幹業務というべきものであった。
そして、R職社員は、「許可なく会社以外の業務に従事しないこと、または、その他の労務に服しないこと」として、兼業は許可制とされている。
(ウ)以上によれば、派遣スタッフ等としての✕とR職社員の職務の内容は大きく異なるものであり、特に、業務内容について共通するところはなかったということができる。なお、別の無期労働契約社員であるCWスタッフは、派遣就業をするものであるが、事務派遣スタッフとしてのキャリア形成を目的とし、Y社においてビジネススキル等の教育研修を施した上で、一般企業に事務派遣スタッフとして派遣して就業経験を積み、事務キャリアを形成していく職種であり、派遣スタッフ等としての✕とは職務の内容が異なるものである。また、その他の無期労働契約社員(EO職社員、SR職社員、RJ職社員、EX職社員、P-EX職社員)も、その職種区分の内容・性質に照らし、派遣スタッフ等としての✕とは職務の内容が大きく異なるものといえる。

エ 職務の内容及び配置の変更の範囲について
(ア)派遣スタッフ及びOSスタッフは、派遣労働契約又は雇用契約に基づき、各契約で定められた期間、特定されたJOB又は受託業務にのみ従事するものであり、Y社による配転命令の対象となることも予定されていない。
(イ)他方、✕が比較対象として例示するR職社員は、業務には限定がないため、配転の範囲も全国に及び、将来の幹部候補生として、定期的に職種変更があり、Y社の基幹業務に幅広く従事し、これに伴い、Y社から全国範囲で配転を命じられるものである。
また、具体的な業務を遂行するに際しては、Y社の広範な裁量の下、所属する部署の業務のみならず、必要に応じ、臨機応変に多種多様な業務を遂行することになるほか、派遣労働者のように労務提供に際して指揮命令をする者が限定されていないため、権限を有する者からの指示があれば、それに従って広く労務を提供することになる。
(ウ)以上によれば、派遣スタッフ等としての✕とR職社員の職務の内容及び配置の変更の範囲は、大きく異なるものであったというべきである。
なお、その他の無期労働契約社員についても、異動対象地域の広狭はあるものの、配転命令の対象となるため、突然、その意に反して異動を命ぜられ、異動先の指揮命令を受けて就労することになり得ることから、派遣スタッフ等としての✕とは職務の内容及び配置の変更の範囲が大きく異なるものといい得る。

オ その他の事情について
(ア)派遣労働は、雇用関係にある派遣元事業主と指揮命令関係にある派遣先が存するという特殊性があり、派遣労働者の労働条件は派遣元と派遣先との間で締結される派遣契約や労働市場の影響を受けるものである。
また、OSスタッフの賃金についても、Y社が委託者と締結する業務委託契約で定められる委託料を踏まえて決定される構造にあり、派遣スタッフと同様の状況にある。加えて、派遣スタッフ等の労働条件は、JOBごとに提示された個別的かつ詳細な労働条件を内容として規定されていくものであるのに対し、R職社員の労働条件は、就業規則所定のものに定められており、その余の職員についても配転命令の対象となるなど労働条件は広範な変化を予定しているものである点で、派遣スタッフ等と異なっている。そして、派遣労働者の労働条件ないし待遇に関する格差の是正ないし規制は、派遣先の労働者との均衡等を考慮した待遇について規律する労働者派遣法による不合理な待遇ないし格差の是正が中心となると解されるところ、本件において派遣先に雇用される労働者の労働条件ないし待遇についての相違は何ら問題とされていない。
(イ)労働者待遇確保法2条は、労働者がその雇用形態にかかわらずその従事する職務に応じた待遇を受けることができるようにすること(2条1号)、労働者がその意欲及び能力に応じて自らの希望する雇用形態により就労する機会が与えられるようにすること(2条2号)、労働者が主体的に職業生活設計を行い、自らの選択に応じ充実した職業生活を営むことができるようにすること(2条3号)を旨として施策が行われるべき旨を定めている。
しかるところ、Y社において、派遣スタッフ等になろうとする登録者は、自己の希望する条件(職種、就業可能日数、勤務時間、交通費、希望する職場環境[規模、喫煙又は完全分煙等、オフィススタイル]等の働き方)を特定して登録した後、Y社により提案ないし提示されるJOBの中から、自らの希望に従い、通勤交通費の支給はないが高額の時給単価のJOBを選ぶことも、多少時給単価が低めでも通勤交通費の支給があるJOBを選ぶことも可能であるところ、✕についてもJOB等を選択する際、自身の経験・能力を生かせる仕事であるか、安定した仕事であるかに加え、待遇面に関して、1日の時給合計額から往復の交通費を差し引いた金額を勤務時間数で除した時間給がいくらであるかという点を重視して、当該JOB等に従事して就労するか否かを決めていたのであるから、当該JOBごとの労働条件を吟味した上で就労するか否かを決定していたといい得る(なお、本件当時、Y社から派遣スタッフ等に対し、通勤交通費の支給はなく、自己負担であることが明確に説明されていたことも踏まえると、✕は、選択した各JOB及び受託業務には通勤交通費の支給がなく、通勤に要した費用は、支給される時給の中からの自己負担となることについて、就労する前提として承知した上で就労する業務を選択していたということができる。)。
また、Y社では、派遣スタッフ等以外の従業員の多くは、許可なく兼業することを禁じられているのに対し、派遣スタッフ等について、兼業に関する制約はなく、派遣スタッフ及びOSスタッフとして登録し、更には派遣労働契約や受託業務に就く旨の契約を締結した場合であっても、当該労働者は、並行して他の派遣会社に登録したり、その紹介等を受けて就労すること、あるいは全く関係なく別の会社で同時並行的に就労することは禁じられていない。
しかるところ、✕は、Y社においてOSスタッフとして就労中、Dにおいて、個人客を対象としたインターネット回線のプランに関するチラシのポスティング業務に従事したり、Dでの就労期間中、限りなく無期に近い労働契約に基づき他社のスーパーマーケットで就労して、兼業していた(他方、R職社員は、Y社の許可なく兼業することはできず、また、Y社の配転命令に応じて多種多様な業務を遂行することになる。)。
そうすると、✕について、労働者待遇確保法の定める自らの希望する雇用形態により就労する機会が与えられており、主体的に職業生活設計を行い、自らの選択に応じて就労していたと評価することが可能である(なお、同法は、派遣先に雇用される労働者との間において職務の内容等に応じた均等な待遇及び均衡のとれた待遇の実現を図るべく、所要の措置を講ずる旨を定めているところ、上述したとおり、本件においては、派遣先の労働者の待遇との関係では何らの不合理性も問題にされていない。)。
(ウ)✕が派遣スタッフないしOSスタッフとして従事した各JOB及び受託業務における時給額、✕が要した通勤交通費及びアルバイト・パートの平均時給額は、別紙6の表1及び2とおりであったと認められるところ、これらの比較によれば、✕が得ていた時給額はアルバイト・パートの平均時給額よりも相当程度高額であり、その差額は、各JOBにおいては✕が通勤に要した交通費を支弁するのに不足はないものであり、また、受託業務においても100円程度上回っており、✕が通勤に要した交通費の相当部分を補うのに足りるものであったと認められる。また、派遣スタッフ等の時給は、無期転換スタッフの時給・通勤手当、調整手当と同程度である。
そうすると、✕が得ていた時給額は、一般的にみて、その中から通勤に要した交通費を自己負担することが不合理とまではいえない金額であったということができる。
(エ)また、派遣労働者の賃金について、通勤手当を含めて総額制にし、別途通勤手当を支給しないこと自体を禁ずる法律は存しない。
そして、平成24年頃の派遣労働者通勤手当支給率は、45.5%であったところ、労働者待遇確保法(なお、同法はいわゆる理念法である。)の法案審議においてかかる状況を問題とする趣旨ではあるものの、「派遣において交通費を支給しないことは違法ではないかもしれないんですが、」として、派遣労働者に交通費を支給されるべき旨の質問がされ、政府参考人が労働契約法20条で規律される旨回答したこと等を総合勘案すると、当時、派遣労働者通勤手当を支給しないことが一般的に違法であるとの取扱いがされていたとはいえない。

カ 小括
以上の認定ないし説示にかかるY社の無期労働契約社員と有期労働契約社員である✕についての業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を踏まえると、本件相違は、労働契約法20条の「不合理と認められるもの」と評価することはできない。
以上のほか、本件相違について、本件当時、✕に通勤手当が支払われないことにつき、当否は別として、民法709条の損害賠償請求を基礎づける程の違法性があったことを基礎づけるような事情もない。

キ ✕の主張について
(ア)✕は、自ら労働契約を締結したことを理由に労働契約法20条が適用されないこととなるのであれば、およそ同条が適用される場面は生じないこととなる旨主張するが、労働契約を締結するか否かを決することと労働契約を締結する際に通勤交通費込みの契約と込みでない契約を選択することは別であって、✕の上記主張は両者を混同するものであり、採用できない。
そして、労働契約を締結する際に通勤交通費込みの契約と込みでない契約を選択した(選択の機会が与えられていた場合を含む。)か否かをその他の事情として不合理性を判断し、あるいは民法709条の違法性の判断をする際に考慮要素とすることは相当と解される。
よって、✕の上記主張は、本件当時、✕に通勤手当が支払われないことにつき、損害賠償請求を基礎づける程の違法性があったと解することはできない旨の判断を左右するものではない。
(イ)✕は、ほとんどY社からの紹介により就労していたのであり、✕が自ら選択したという事実もないと主張するが、✕は、Y社において派遣スタッフ等として登録し、更には派遣労働契約を締結しつつ、並行して他の派遣会社に登録し、あるいは別の会社で就労していたことがあるほか、Y社との関係においてもメールやマイページで示されるJOBやY社が提案するJOBの中から、自らの希望に従い、通勤交通費の支給はないが高額の時給単価のJOBを選ぶことも、多少時給単価が低めでも通勤交通費の支給があるJOBを選ぶことも可能であったのであり、主として、Y社のコーディネーターから電話でJOB等の提案を受けたり、Y社からのメールでJOB等の提案を受けて、就労するJOB等を選択していたとしても、その際には、自身の経験・能力を生かせる仕事であるか、安定した仕事であるかに加え、待遇面に関して、1日の時給合計額から往復の交通費を差し引いた金額を勤務時間数で除した時間給がいくらであるかという点を重視して、当該JOB等に従事して就労するか否かを決めていたのであるから、✕が自ら選択したという事実がないといえないことは明らかである。
よって、✕の上記主張も採用できない。
(ウ)✕は、前掲最高裁平成30年6月1日判決が、「労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に要する費用が異なるものではない。また、職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることは、通勤に要する費用の多寡とは直接関連するものではない。加えて、通勤手当に差異を設けることが不合理であるとの評価を妨げるその他の事情もうかがわれない」
と判断していることを挙げた上、この点は、有期派遣労働者であっても何ら変わるところはないと主張する。
しかし、上記最高裁判決は、直接雇用労働者の労働条件の相違に関するものであり、間接雇用とされる派遣労働者に関する本件とは事案を異にするものである。上述したとおり、派遣労働に関して労働契約法20条の適用があると解されるものの、有期雇用労働者の労働条件について不合理性の判断については、上述した派遣労働の特殊性等を踏まえて、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を検討すべきであり、本件相違は、労働契約法20条の「不合理と認められるもの」と評価することはできない。よって、✕の上記主張も採用できない。

3.解説

本件、派遣先の従業員と派遣社員との間ではなく、派遣元の通常の従業員と派遣社員との間の労働条件の相違が問題となっており、非常に珍しい事例です。
旧労働契約法20条が、そもそも有期の派遣社員にも適用があるのか、また派遣元の通常の従業員と有期の派遣社員との間の労働条件の相違有期の派遣社員にも適用があるのか、判断が難しいところですが、本判例は、同条が「有期労働契約を締結している労働者」と定めるのみで、それ以外に文言上なんら限定してことや立法時の経緯等により、認めています。
そして、問題となっている通勤手当の相違が、労働契約期間の定めに基づく差異であることが否定できないとして、その不合理性が検討されました。
しかし、本件においては、通勤手当の趣旨が、①配転命令の対象となる職員については、想定外の負担やライフスタイルへの影響のリスクに配慮するとともに、社員が就業場所の変更を伴う配転命令に対して不満を抱くことなく機動的経営を可能にするもの、②配転命令を受けない職員に対しては、魅力的な労働条件として求人を可能とする等の趣旨に由来する相違により生じているもの、と解されたこと、✕が例示していた無期のR職社員と職務内容に共通するところがなかったこと、✕は業務が限定され(派遣社員なら当たり前)、配転命令を予定していなかったのに対して、無期のR職社員は業務の限定がなく、配転命令が予定されていたこと、✕は兼業に制約がなかったのに対して、無期のR職社員は許可性であったこと、✕が得ていた時給額がアルバイト・パートの平均時給額よりも相当高額であり、通勤に要した交通費を自己負担することが不合理とまでは言えない金額であったこと等により、不合理な差異とはされませんでした。

健康保険法施行規則及び船員保険法施行規則の一部を改正する省令の施行について(保発0813第1号 令和3年8月13日)

健康保険法施行規則及び船員保険法施行規則の一部を改正する省令の施行について(保発0813第1号 令和3年8月13日)

2021年(令和3年)より、健康保険証、高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証及び限度額適用・標準負担額減額認定証について、会社を経由せずに直接本人の自宅に郵送し受け取ることが可能になります。一方で、返納についてこれまでと同様に、事業主を経由しなければならないようです。
具体的にどのように申し出るか等は、今後、公表されると思われます。

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210816S0020.pdf


今般、健康保険法施行規則及び船員保険法施行規則の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第140号)が本日公布され、令和3年10月1日より施行することとされたため、通知する。
改正の趣旨及び内容等については下記のとおりであるので、その内容について御了知いただくとともに、その実施に遺漏なきようお願いする。

                記

第一 改正の趣旨

健康保険制度における被保険者証等については、保険者から事業主に送付し、事業主から被保険者に交付すること等が義務付けられているが、テレワークの普及等に対応した柔軟な事務手続を可能とするため、保険者が支障がないと認めるときは、保険者から被保険者に対して被保険者証等を直接交付すること等が可能となるよう、所要の改正を行うもの。

第二 改正の内容

1.健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号)の一部改正
①被保険者証の交付について、保険者が支障がないと認めるときは、保険者が被保険者に直接送付することができることとする。
②被保険者証の情報を訂正した場合における被保険者証の返付について、保険者が支障がないと認めるときは、事業主を経由することを要しないこととする。
③被保険者証の再交付について、保険者が支障がないと認めるときは、事業主を経由することを要しないこととする。
④被保険者証の検認又は更新等を行った場合における被保険者証の交付について、保険者が支障がないと認めるときは、保険者が被保険者に直接送付することができることとする。
⑤高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証及び限度額適用・標準負担額減額認定証の交付方法等について、①~④に準じた改正を行う。
⑥その他所要の改正を行う。

2.船員保険法施行規則(昭和15年厚生省令第5号)の一部改正
船員保険における被保険者証等の交付方法等について、1に準じた改正を行う。

第三 施行期日

 令和3年10月1日

健康保険法施行規則及び船員保険法施行規則の一部を改正する省令の施行に関する留意事項等について

今般、健康保険法施行規則及び船員保険法施行規則の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第140号。以下「改正省令」という。)が本日公布され、令和3年10月1日から施行することとされたところである。
今般の改正により、健康保険制度における被保険者証等の交付事務(返付及び再交付に係る事務を含む。以下同じ。)について、保険者が支障がないと認めるときは、被保険者に直接交付することが可能とされたところであるが、改正省令の施行に当たりた り、別紙「被保険者証等の直接交付に関するQ&A」により、その具体的な取扱いを整理したので、関係者に周知いただくとともに、適切に御対応いただきたい。

別紙

被保険者証等の直接交付に関するQ&A

Q1 「保険者が支障がないと認めるとき」とは、どのような状況を想定しているのか。

A 事務負担や費用、住所地情報の把握等を踏まえた円滑な直接交付事務の実現可能性や、関係者(保険者・事業主・被保険者)間での調整状況等を踏まえ、保険者が支障がないと認める状況を想定している。


Q2 全ての事業所又は一部の事業所等の被保険者について直送することとする場合、健康保険組合においては組合会の議決は必要か

A 原則として全ての事業所又は一部の事業所(一定の条件下又は特定の期間中のみ直送する場合も含む。)の被保険者について直送する場合、保険者財政への影響があること及び事務運用に大きな変更が生じることから、原則として、直送の具体的な取扱いを記載した規程を整備し、組合会の議決を得ることが必要となる。
当該規程については事務取扱に関するものであり、被保険者の権利義務を規定するものではないため、地方厚生(支)局への届出は不要である。なお、理事長において緊急を要すると認めるときは、理事長専決が可能であるが、次の組合会においてこれを報告し、その承認を求めなければならないことに留意されたい。


Q3 原則として事業主に被保険者証を送付する保険者が、特別な事情等により保険者がやむを得ないと認めた場合には直送することは想定されるが、その場合、組合会の議決は必要か。

A 個別対応については、財政(予算)及び事務運用に与える影響が極めて小さいと認められる場合は、原則として組合会の議決は不要である。


Q4 直送の具体的な運用について、留意すべき点はあるか。例えば、事業所ごとの状況に応じて、取扱いを変えることは可能か。

A 運用について特段の制限はないが、直送に要する費用は、被保険者・事業主全体が負担する保険料等を原資としていることから、公平性の確保に留意する必要がある。被保険者・事業所間における不公平が生じないよう留意した上で、具体的運用を各保検者の実情に応じて決めることが可能である。


Q5 テレワークの普及等に対応した事務の簡素化を図るため、被保険者証等の返納についても、事業主経由を省略してよいか。

A 省略できない。改正省令による改正後の健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号。以下「施行規則」という。)においても、被保険者が資格を喪失したとき、その保険者に変更があったとき、又はその被扶養者が異動したときは、事業主は遅滞なく被保険者証を回収して保険者に返納しなければならないこととされている。


Q6 被保険者証を直接交付する場合であっても、交付した旨を事業主に通知する必要があるか。

A 施行規則第46条において、厚生労働大臣又は健康保険組合は、被保険者の資格の取得の確認を行ったとき、又は事業所整理記号及び被保険者整理番号を変更したときは、遅滞なく、事業所整理記号及び被保険者整理番号を事業主に通知しなければならないとされているため、引き続き事業所整理記号及び被保険者整理番号を通知する必要はあるが、交付した旨の通知は必須ではない。また、事業主においても、通知された事業所整理記号及び被保険者整理番号を適切に管理することが必要である。


Q7 送付方法に制限等はあるか。

A 送付方法は、紛失リスク等を考慮した上で各保険者の実情に応じて適正に判断いただくこととなる。


Q8 直送に要する費用を事業主負担とすることが考えられるが、具体的な取扱いはどのようにすべきか。

A 直送に要する費用については、具体的な取扱いについて規程を定め、組合会の議決を得ること。なお、当該規程については、地方厚生(支)局への届出は不要である。

令和3年10月以降の雇用調整助成金の特例措置等について

令和3年10月以降の雇用調整助成金の特例措置等について

予想通り、雇用調整助成金の特例措置等は11月末まで延長されるようです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/r310cohotokurei_00001.html


(注)以下は、事業主の皆様に政府としての方針が表明されたものです。施行にあたっては厚生労働省令の改正等が必要であり、現時点での予定となります。

新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の特例措置については、今般、緊急事態措置区域として7府県が追加されるとともに、緊急事態措置を実施すべき期間が延長されたこと等を踏まえ、9月末までとしている現在の助成内容を11月末まで継続される予定です(別紙)。

12月以降の取扱いについては、「経済財政運営と改革の基本方針2021(令和3年6月18日閣議決定)」に基づき、感染が拡大している地域・特に業況が厳しい企業に配慮しつつ、雇用情勢を見極めながら段階的に縮減していくこととされており、具体的な助成内容を検討の上、10月中に改めて公表されるようです。

(なお、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金については、本年7月30日公表のとおり、年末までは、特に業況の厳しい企業への配慮を継続するとともに、助成率については原則的な措置を含めてリーマンショック時(中小企業:4/5[9/10]、大企業:2/3[3/4](※1))以上を確保される予定です。)(※1)[ ]内は、解雇等を行わない場合。

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「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」の公布について(通知)

「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」の公布について(通知)(保発0806第1号・年発0806第1号)

「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令」(令和3年政令第229号)が本日公布された。
政令による改正の趣旨及び内容は下記のとおりであるので、その内容につき御了知いただくとともに、実施に当たっては、関係者、関係団体等に対し、その周知徹底を図り遺漏のないよう取り扱われたい。

https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000817430.pdf


                         記

第一 政令の趣旨

年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和2年法律第40号。以下「令和2年改正法」という。)が令和4年4月1日から施行されること等に伴い、国民年金法施行令(昭和34年政令第184号。以下「国年令」という。)等の規定について所要の改正を行うとともに、令和2年改正法附則第97条の規定に基づき、所要の経過措置を定める。

第二 関係政令の整備

1.受給開始時期の選択肢の拡大

(1)令和2年改正法第2条及び第4条の規定により、老齢基礎年金及び老齢厚生年金の繰下げ受給の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられることに伴い、繰下げ増額率の計算の基礎となる繰下げ待機月数の上限について、現行の60月(5年分)から120月(10年分)に引き上げる。(国年令及び厚生年金保険法施行令(昭和29年政令第110号。以下「厚年令」という。)の一部改正)
(2)選択された受給開始時期にかかわらず、数理的に年金財政上中立となるよう、繰上げ受給を選択した場合の繰上げ減額率を現行の0.5%/月から0.4%/月に引き下げる。(国年令及び厚年令の一部改正)
(3)令和2年改正法第3条及び第5条の規定により、70歳以降に繰下げ待機していた者が65歳時点からの本来受給を選択した場合、請求の5年前に繰下げ申出があったものとみなして年金を支給することとする仕組みが導入されることに伴い、2以上の種別の被保険者期間に基づく老齢厚生年金の受給権者が繰下げを行う場合の所要の読替え規定を整備すること等、所要の規定の整備を行う。(国年令及び厚年令の一部改正)
(4)国民年金基金令(平成2年政令第304号)等について上記と同趣旨の改正等を行う。

2.適用業種に追加される士業の列挙

○令和2年改正法第4条及び第29条の規定により、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号。以下「厚年法」という。)及び健康保険法(大正11年法律第70号)の適用業種に「弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業」が追加されたことに伴い、「その他政令で定める者」として、公証人、司法書士土地家屋調査士行政書士海事代理士、税理士、社会保険労務士、沖縄弁護士、外国法事務弁護士及び弁理士を規定する。(厚年令及び健康保険法施行令(大正15年勅令第243号)の一部改正)

3.厚生年金保険の適用拡大に伴う経過措置

○厚年令第43条の2の規定に基づき再評価率の改定等を行う際に用いる賃金変動率は、厚生年金保険の被保険者全体の標準報酬の平均額を用いて算定することとなっている。令和2年改正法の施行による企業規模要件の見直しにより、標準報酬の比較的低い短時間労働者の数が被保険者総数に占める割合が増加することが見込まれるところ、これにより賃金変動率が押し下げられ、年金額にマイナスの影響が及んでしまうことがないよう、令和2年改正法により、その影響を除去するための経過措置が設けられた。(令和2年改正法第9条の規定による改正後の公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成24年法律第62号)附則第17条の2第2項等)
○この経過措置の施行に伴い、標準報酬の平均額の算定方法を定める厚年令第3条の4に係る所要の読替えを規定する。(公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置に関する政令平成28年政令第123号)の一部改正)

4.在職定時改定の導入

(1)令和2年改正法第4条の規定により、在職中の老齢厚生年金受給者(65歳以上)の年金額を毎年定時に改定することとされたこと(在職定時改定の導入)に伴い、老齢厚生年金の計算の基礎となる被保険者期間の月数が在職定時改定により240月以上となる場合にも、その時点の生計維持関係に応じて加給年金額が加算されることとすること等、所要の規定の整備を行う。※(厚年令の一部改正)
(2)国民年金法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令(昭和61年政令第54号。以下「昭和61年経過措置政令」という。)等について上記と同趣旨の改正等を行う。
※ 在職時改定により、本人の老齢厚生年金の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240月以上になった場合に、一定の条件を満たせば、加給年金が加算されるという意味です。

5.在職老齢年金制度の見直し

○令和2年改正法第4条の規定により、60歳台前半の在職老齢年金(低在老)について
・現行の支給停止調整開始額(令和3年度額28万円)の引上げ(厚年法第46条第3項に規定する支給停止調整額(令和3年度額47万円)とする。)
・現行の支給停止調整変更額の廃止が行われることに伴い、支給停止調整変更額の改定を定めた規定を削除すること等、所要の規定の整備を行う。(厚年令、国民年金法による改定率の改定等に関する政令(平成17年政令第92号)等の一部改正)

6.加給年金の支給停止ルールの改善

○加給年金額の加算の基礎となっている配偶者が、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240月以上であるものに限る。以下6において同じ。)等の老齢又は退職を支給事由とする給付の受給権を有している場合には、加給年金額に相当する部分の支給が停止されるが、当該配偶者に対する老齢厚生年金等の全額が支給停止となっている場合には、この支給停止が解除されることとなっている。 ※1
○配偶者の老齢厚生年金等が一部でも支給されている場合には加給年金が支給されない一方で、配偶者の賃金が高く、在職老齢年金制度によりその全額が支給停止となっている場合には加給年金が支給されるといった不合理が生じていることを踏まえ、配偶者が老齢厚生年金等の老齢又は退職を支給事由とする給付の受給権を有する場合には、その全額が支給停止されている場合であっても、加給年金額に相当する部分の支給を停止することとする。※2(厚年令、昭和61年経過措置政令等の一部改正)
※1 配偶者が給与が高く老齢厚生年金の比例報酬部分が在職老齢年金の支給調整で支給停止になっていることを意味します。
※2 「配偶者の老齢厚生年金等が一部でも支給されている場合には加給年金が支給されない一方で、配偶者の賃金が高く、在職老齢年金制度によりその全額が支給停止となっている場合には加給年金が支給されるといった不合理が生じている」という制度的な欠陥を改善するために、配偶者が給与が高く老齢厚生年金の比例報酬部分が在職老齢年金の支給調整で支給停止となっている場合には、本人の加給年金を支給停止にするものです。一方で、低在老の支給調整開始額の見直し及び在職時改定により、配偶者が20年以上の老齢厚生年金を受給することになった場合は、現行では加給年金は支給停止となりますが、経過措置が設けられるようです(第四施行期日等 2.経過措置(2)参照)。

7.国民年金手帳の廃止

○令和2年改正法第2条の規定により、国民年金手帳が廃止されることに伴い、「国民年金手帳」を引用している規定を削除すること等、所要の規定の整備を行う。(国年令、住民基本台帳法施行令(昭和42年政令第292号)等の一部改正)
※ これにより、「国民年金手帳」を紛失していたとしても再発行する意味はなくなります。

8.企業年金個人年金の見直し①

(1)令和2年改正法第22条の規定により、企業型確定拠出年金(以下「企業型DC」という。)及び個人型確定拠出年金(以下「個人型DC」という。)の加入可能年齢が引き上げられることに伴い、個人型DCについて
国民年金の任意加入被保険者に係る各月の拠出限度額を6.8万円とすること
政令で定める公的年金の給付を受給する者は加入者としないこととしたため、当該給付を繰上げ受給の老齢基礎年金及び老齢厚生年金とすること等の所要の改正を行う。(確定拠出年金法施行令(平成13年政令248号。以下「DC令」という。)の一部改正)
(2)令和2年改正法第20条等の規定により、企業型DCから通算企業年金への移換及び確定給付企業年金(以下「DB」という。)の残余財産を個人型DCに移換することを可能としたこと等に伴い、手続規定の整備等の所要の改正を行う。(DC令、確定給付企業年金法施行令(平成13年政令第424号)及び公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置に関する政令平成26年政令第74号)の一部改正)

9.企業年金個人年金の見直し②

〇令和2年改正法第23条の規定により、企業型DC加入者の個人型DC加入の要件緩和がなされることに伴い、
・企業型DCの加入者が個人型DCに加入する場合は、事業主掛金を各月拠出かつ各月の拠出限度額の範囲内に納めることとすること
・企業型DCに加入する個人型DCの加入者は、各月の拠出限度額を2万円(DBの加入者等は1.2万円)(当該月の事業主掛金額が3.5万円(DBの加入者等は1.55万円)を超えたときは超えた額を控除した額)とし、個人型年金加入者掛金を各月拠出かつ各月の拠出限度額の範囲内に納めることとすること等、所要の改正を行う。(DC令の一部改正)

10.年金担保貸付事業等の廃止

〇令和2年改正法第28条の規定により、年金担保貸付事業及び労災年金担保貸付事業等が廃止されたこと等に伴い、年金担保貸付事業及び労災年金担保貸付事業に関する規定の削除並びに同条の規定により新設された年金担保債権管理回収業務及び労災年金担保債権管理回収業務に関する規定の整備等所要の規定の整備を行う。(独立行政法人福祉医療機構法施行令(平成15年政令第393号)等の一部改正)

11.その他所要の改正

〇令和2年改正法の施行に伴い、条項の移動を踏まえた改正等の所要の改正を行う。

第四 施行期日等

1.施行期日

この政令は、令和4年4月1日から施行する。ただし、次に掲げる事項は、それぞれ次に定める日から施行する。
(1)第二の8令和4年5月1日
(2)第二の2・3の一部・9令和4年10月1日
(3)第二の1の(3)令和5年4月1日
(4)第二の3の一部令和6年10月1日

2.経過措置

(1)繰上げ減額率の引下げに関する経過措置
政令による改正後の繰上げ減額率は、本政令の施行の日(令和4年4月1日)の前日において、60歳に達していない者について適用することとする。(附則第2条第2項、第3条第2項及び第6条)

(2)加給年金の支給停止に関する経過措置
政令の施行の日(令和4年4月1日)の前日において加給年金額が加算されている老齢厚生年金又は障害厚生年金の受給権者であって、低在老の支給停止調整開始額の引上げ又は第二の6の改正により加給年金額が支給停止となるものについて、加給年金額の支給停止を行わないこととする経過措置を設ける。(附則第5条、第7条、第12条及び第20条)
※ 低在老の支給停止調整開始額の引上げまたは加給年金の支給停止ルールの改善により、配偶者の支給停止が解除されて、本人の加給年金が支給停止になる場合は、加給年金の支給停止を行わない経過措置が設けられるようです。(具体的には、後日詳細が公表されると思われます。)
 
(3)その他所要の経過措置
令和2年改正法による繰下げ上限年齢の引上げと同様の措置を講ずる中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律施行令(平成8年政令第18号。以下「中国残留邦人等支援法施行令」という。)について、改正後の規定は本政令の施行の日(令和4年4月1日)の前日において中国残留邦人等支援法施行令の規定による老齢基礎年金の受給権を取得した日から起算して5年を経過していない者について適用することとする等、令和2年改正法における経過措置と同様の経過措置等を設ける。(附則第9条等)

日本年金機構を装った不審なメール・SMSについて

日本年金機構を装った不審なメール・SMSについて

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/gochui/20200609.html

日本年金機構を装い、お客様の個人情報等を盗み出そうとするメール(ショートメッセージサービス(SMS)を含む。以下同じ)や不審なサイトへ誘導しようとするメールが確認されているようなのでご注意ください。

以下、日本年金機構HPより抜粋

例1

日本年金機構ロゴマークを使用し、日本年金機構年金払戻管理局、払戻返金部門等、日本年金機構に存在しない部署の名前を騙り、年金の残金を振り込む名目で、お客様のお名前、口座番号等の情報を返信させようとするメール
日本年金機構では、メールでお客様の口座番号等をお尋ねすることはありませんので、ご注意ください。

例2

日本年金機構とは全く関係のない不審なサイトに誘導しようとするメール
日本年金機構ではSMSによるお知らせ(携帯電話やスマートフォンの電話番号宛のメッセージの送信)を行っておりません。
・送信元のメールアドレスを確認してください。日本年金機構からのメールは、送信者アドレスが、『xxx@xxx.nenkin.go.jp』となっております。
日本年金機構から送るねんきんネットに関するメールには電子署名を添付しています(お客様からの利用申請等を契機に送信するメールや携帯電話向けの電子メールには、電子署名は添付されません)。
電子署名とは:電子署名付き電子メールを受信した際は、セキュリティ警告が出ていないか確認してください。

・メール内容等に不審な点を感じる場合は、メール記載のリンク先をクリックしないようにしてください。

2021年各都道府県の地域別最低賃金の答申状況

2021年各都道府県の地域別最低賃金の答申状況

都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した令和3年度の地域別最低賃金の改定額(以下「改定額」)が厚生労働省より公表されました。

東京都:1041円 神奈川県:1040円 大阪府:992円 愛知県:955円 さいたま県:956円 千葉県:953円 等となっています。


最低賃金の対象となる賃金】
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。

具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。ポイントは固定残業代は対象となりませんが、住宅手当は対象となります。
(1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2) 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5) 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

月給または日給月給の場合は、これらの除外される賃金を除いた賃金が、最低賃金×所定労働時間未満となる場合は、最低賃金法違反となります。
最低賃金法に違反した場合は、最低賃金額との差額の支払い義務が発生します。また、50万円以下の罰金という罰則定められています。

改定額及び発効予定年月日は別紙のとおりです。

これは、7月16日に厚生労働大臣の諮問機関である中央最低賃金審議会が示した「令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について」などを参考として、各地方最低賃金審議会で調査・審議した結果を取りまとめたものです。

答申された改定額は、都道府県労働局での関係労使からの異議申出に関する手続を経た上で、都道府県労働局長の決定により、10月1日から10月上旬までの間に順次発効される予定です。


令和3年度 地方最低賃金審議会の答申のポイント

・47都道府県で、28円~30円、32円の引上げ(引上げ額が28円は40都道府県、29円は4県、30円は2県、32円は1県)
・改定額の全国加重平均額は930円(昨年度902円)
・全国加重平均額28円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額
・最高額(1,041円)に対する最低額(820円)の比率は、78.8%(昨年度は78.2%。なお、この比率は7年連続の改善)

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新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業による標準報酬月額の特例改定は令和3年12月までの間が対象

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業による標準報酬月額の特例改定は令和3年12月までの間が対象

以下、年金機構のHPより抜粋
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2021/202108/0810.html

標準報酬月額の特例改定について

令和2年4月から令和3年7月までの間に新型コロナウイルス感染症の影響による休業により著しく報酬が下がった方について、事業主からの届出により、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、通常の随時改定(4か月目に改定)によらず、特例により翌月から改定を可能とする措置が講じられているところです。今般、令和3年8月から令和3年12月までの間新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した方や、令和2年6月から令和3年5月までの間に休業により著しく報酬が下がり特例改定を受けている方についても、特例措置が講じられることとなりました。

(1)令和3年8月から令和3年12月までの間に新たに休業により著しく報酬が下がった方の特例

次のアからウのすべてに該当する方が対象となります。
ア.新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、令和3年8月から令和3年12月までの間に、著しく報酬が下がった月が生じた方
イ.著しく報酬が下がった月に支払われた報酬の総額(1か月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方(固定的賃金の変動がない場合も対象となります)
ウ.本特例措置による改定内容に本人が書面により同意している
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(2)令和2年6月から令和3年5月までの間に休業により著しく報酬が下がり特例改定を受けている方の特例

次のアからエのすべてに該当する方が対象となります。
ア.新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、次のいずれかに該当する方
(ア)令和2年6月から令和3年5月までの間に著しく報酬が下がり、令和2年7月から令和3年6月までの間に特例改定を受けた方
(イ)令和2年8月に支払われた報酬にて令和2年度定時決定の保険者算定の特例を受けた方
イ.令和3年7月までに休業が回復したことによる、随時改定に該当していない
ウ.令和3年8月に支払われた報酬の総額(1か月分)に該当する標準報酬月額が、令和3年9月の定時決定で決定された標準報酬月額に比べて2等級以上下がった
エ.本特例改定による改定内容に本人が書面により同意している
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※上記(1),(2)により特例改定を受けた方は、休業が回復した月に受けた報酬の総額を基にした標準報酬月額が、特例改定により決定した標準報酬月額と比較して2等級以上上がった場合、その翌月から標準報酬月額を改定することになりますので、月額変更届の提出が必要です。

詳細はこちらをご確認ください。
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0810.html

厚生労働省より「わたしとみんなの年金ポータル」のLINE 公式アカウントが開設

厚生労働省より「わたしとみんなの年金ポータル」の LINE 公式アカウントが開設

厚⽣労働省では、年⾦について知りたいことがすぐに探せるポータルサイト「わたしとみんなの年⾦ポータル」(以下「年⾦ポータル」という。)を開設していますが、この度、若者を中⼼とした年⾦制度への理解を⼀層促進するため、既に8,800万⼈(令和3年3⽉時点)が利⽤するLINEアプリをプラットフォームとして、本⽇、年⾦ポータルのLINE公式アカウント「わたしとみんなの年⾦ポータル」が開設されました。
このLINE公式アカウントは、年⾦に関する疑問について会話形式で調べることができるほか、リッチメニューから、年⾦事務所や年⾦に関する相談先を検索することができるなど、年⾦について知りたいことを、より直感的に調べることができます。

https://www.mhlw.go.jp/content/12512000/000817833.pdf

<アカウント名>

「わたしとみんなの年⾦ポータル」LINE 公式アカウント
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<友だち追加⽅法>

※ 友だちに追加していただいた⽅、先着5万⼈に、 ⽔先案内⼈の LINE スタンプを無料でプレゼントされるようです。
●⼆次元コードを読み込む
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●友だち検索で LINE ID「@nenkin-portal」を検索して友だち追加

<主な機能>

詳細は別紙を参照ください。

わたしの年⾦

年⾦に関する⼿続きを、「20歳になったら︖」「結婚、離婚、出産、育児をするときは︖」などのライフイベントごとに検索することができます。

みんなの年⾦

年⾦の仕組みに関する説明や情報を、「年⾦のしくみは︖」「私的年⾦ってどんな年⾦︖」などのトピックスごとに検索することができます。

年⾦事務所検索

年⾦事務所を、位置情報及び都道府県から検索することができます。

年⾦について相談

相談内容に応じて、⽇本年⾦機構や年⾦事務所の窓⼝のほか、関連するホームページのリンク先が案内されます。

別紙

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最低賃金を引き上げた中小企業における 雇用調整助成金等の要件緩和について

最低賃金を引き上げた中小企業における 雇用調整助成金等の要件緩和について

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000814592.pdf

一定の条件を満たすと休業規模要件が緩和されるようです。

 

概要

業況特例等の対象となる中小企業が事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上 げる場合、令和3年10月から12月までの3ヶ月間の休業については、休業規模要 件(1/40以上)を問わず支給されます。


対象となる条件

以下の①及び②の条件を満たす場合は、小規模の休業(1/40未満)も対象。
例:10人規模の中小企業が20日の所定労働日数の月に、4人日分の休業を行った 4人日(休業)/200人日(10人×20日)=1/50場合も対象 < 休業企業規模(1/40)
① 令和3年10月から3ヶ月間の休業について、業況特例又は地域特例の対象と なる中小企業(令和3年1月8日以降解雇等を行っていない場合に限る。)で あること。
② 事業場内最低賃金(当該事業場における雇入れ3月を経過した労働者の事業場 内で最も低い時間あたりの賃金額。地域別最低賃金との差が30円未満である場合に限る。)を、令和3年7月16日以降、同年12月までの間に、30円以上 引き上げること。
*令和3年度地域別最低賃金の発効日以降に賃金を引き上げる場合は、発効後の地域別最低賃 金から30円以上引き上げる必要があります。
*同一都道府県内に地域別最低賃金との差が30円未満である事業場が複数ある事業主は、最も低い事業場内最低賃金を30円以上引き上げ、他の事業場もこの水準以上に引き上げる必要があります。
就業規則その他これに準ずるものにより、当該引上げ後の賃金額を事業場で使用する労働者 の下限の賃金額とすることを定める必要があります。
*当該引上げの実施日以降の休業について要件緩和が利用できます。

 

要件緩和の対象となるケースのイメージ

引上げ前の地域別最低賃金が800円。地域別最低賃金の引上げ額が28円。 地域別最低賃金の引上げ日が10月1日の場合。 

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「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A公表

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A公表

厚生労働省より「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&Aが公表されています。

目次と、基本的な考え方が示された1-1及びフレックスタイム制と個人的に興味があった「フレックスタイム制に関する 労働時間の通算の考え方」を抜粋いたしますので、詳細は次のリンクをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000473062.pdf


【目次】

1.労働時間管理等

<原則的な労働時間の通算方法の考え方>

1-1 自社で雇用されており、かつ、副業・兼業先においても雇用される場合には、労働基準法における労働時間等の規定の適用はどうなるのか。
(設例1~4)

1-2 労働者が自社で従事する業務に適用される労働時間制度と、副業・兼業先で従事する業務に適用される労働時間制度が異なる場合において、労働時間の通算はどのように行うのか(変形労働時間制、裁量労働制フレックスタイム制等)。

1-3 変形労働時間制の採用や労働基準法第40条の特例対象事業場への該当により、法定労働時間が1日8時間、週40時間とならない場合は、どのように労働時間の通算を行うのか。また、フレックスタイム制の場合はどうか。

1-4 法定休日における労働時間はどのように通算するのか。

1-5 起算日が異なる1週間の労働時間はどのように通算するのか。

<簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)の考え方>

1-6 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で示している簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)を導入する場合、労働時間の管理や時間外労働の上限規制の遵守、割増賃金の支払はどのように行うのか。
(設例5・6)

1-7 1-2から1-5までの論点について、管理モデルを用いる場合にはどのように考えるのか。

1-8 自社と副業・兼業先のいずれにおいても清算期間3か月のフレックスタイム制を導入しており、両社で清算期間の起算月が異なる場合、管理モデルによる労働時間の通算はどのように行うのか。

1-9 管理モデルの導入に伴う労働時間の上限設定に当たっては、使用者A・使用者B間で書面を交わすことが必要か。

1-10 業務の繁閑により労働時間が月ごとに大きく変動するような場合、管理モデルにおける労働時間の上限の設定はどのように行えばよいのか。

1-11 労働者が既に副業・兼業を開始している場合でも、管理モデルを導入することは可能か。

1-12 副業・兼業を行う労働者と時間的に後から労働契約を締結した使用者の立場から管理モデルを導入することは可能か。

1-13 A事業場において、所定労働時間と所定外労働時間を合計しても法定外労働時間が発生しないような場合において、管理モデルを導入して労働時間の通算を行うことは可能か。

1-14 管理モデル導入時の各事業場における労働時間の上限については、合計した時間数が単月100時間未満・複数月平均80時間以内となる範囲内(時間外労働の上限規制の範囲内)において設定することとされているが、過重労働の観点から問題ないか。

<原則的な労働時間の通算方法と管理モデルに共通する考え方>

1-15 副業・兼業を行う労働者について、自社で法定外労働が発生する場合に、「時間外労働・休日労働に関する協定」の締結に当たって、「時間外労働をさせる必要のある具体的事由」としては、「副業・兼業」と記載すればよいのか。

1-16 自社の法定休日に他社において副業・兼業が行われた場合、法定休日を確保したことになるのか。

1-17 有害業務の労働時間の上限規制、年少者の労働時間、妊産婦の労働時間について、労働時間は通算されるのか。

1-18 時間的に先に締結された労働契約が有期労働契約であって、時間的に後から締結する労働契約が期間の定めのない契約(無期労働契約)である場合には、有期労働契約が更新される際に労働時間通算の順序は変更されるのか。

1-19 副業・兼業を行う労働者との労働契約の締結の先後にかかわらず、労働時間通算の順序を変更することは可能なのか。

<副業・兼業の禁止又は制限の考え方>

1-20 副業・兼業の形態(雇用型、非雇用型など)や副業・兼業を行う対象者の自社における働き方の属性(管理監督者裁量労働制適用者など)によって、副業・兼業を禁止又は制限をすることは可能か。

1-21 企業が労働者の副業・兼業を認めるに当たって、管理モデルによる副業・兼業を要件とすることは可能か。

2.健康管理

2-1 短時間労働者が副業・兼業を行うことにより、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間を通算すると、自らの事業場の通常の労働者の1週間の所定労働時間の3/4以上となる場合には、当該短時間労働者に対する健康診断やストレスチェックの実施義務はかかるのか。

2-2 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、副業・兼業を行う者の健康確保に資する措置の一つとして、労働者に「健康保持のため自己管理を行うよう指示」することが挙げられているが、具体的にどのような形で指示を行えば良いか。また、自己管理として何を行えば良いのか。

2-3 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」において、副業・兼業を行う者の健康確保に資する措置の一つとして、「心身の不調があれば都度相談を受けることを伝える」ことが挙げられているが、どのような相談体制が想定されるか。また、相談することで自身の不利益になると思い労働者が相談しない、ということも考えられるが、どのように労働者に伝えるべきか。

2-4 自社での労務と副業・兼業先での労務との兼ね合いの中で、それぞれの事業場において適切な措置を講ずるために、使用者・労働者がどのようなことを行うことを想定しているか。

3.労災保険の給付

3-1 労働者が副業・兼業を行っている場合、労災保険給付額の算定はどうなるのか。

3-2 労働者が副業・兼業を行っている場合、労災認定する際の業務の過重性の評価に当たって労働時間は合算されるのか。

3-3 A会社での勤務終了後、B会社へ向かう途中に災害に遭った場合、通勤災害に該当するのか。

1-1 自社で雇用されており、かつ、副業・兼業先においても雇用される場合には、労働基準法における労働時間等の規定の適用はどうなるのか。

1 労働基準法第38条第1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定されており、「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含みます。(労働基準局長通達(昭和23年5月14日基発第769号))
このため、労働者がA事業場でもB事業場でも雇用される場合には、原則として、その労働者を使用する全ての使用者(A事業場の使用者Aと、B事業場の使用者Bの両使用者)が、A事業場における労働時間とB事業場における労働時間を通算して管理する必要があります。

2 労働時間を通算した結果、労働基準法32条又は第40条に定める法定労働時間を超えて労働させる場合には、使用者は、自社で発生する法定時間外労働について、同法第36条に定める「時間外労働・休日労働に関する協定」(いわゆる36(サブロク)協定)を労働者代表と締結し、あらかじめ労働基準監督署長に届け出る必要があります(※1)。
また、使用者は、労働時間を通算して法定労働時間を超えた時間数が、同法第36条第6項第2号及び第3号に定める時間外労働の上限規制(※2)の範囲内となるようにする必要があります。
加えて、使用者は、労働時間を通算して法定労働時間を超えた時間数のうち自ら労働させた時間について、同法第37条第1項に定める割増賃金を支払う必要があります。

※1なお、副業・兼業の開始時点で、有効な「時間外労働・休日労働に関する協定」が既に存在しており、その協定により、副業・兼業を行う労働者に時間外労働を行わせることができる場合には、副業・兼業の開始のみを理由として、新たに「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結する必要はありません「時間外労働・休日労働に関する協定」に関して以下同じ。)。
※2時間外労働と休日労働の合計について、1か月100時間未満、かつ、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」を全て1か月あたり80時間以内としなければならない要件(単月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件)

これらの労働基準法上の義務を負うのは、当該労働者を使用することにより、法定労働時間を超えて当該労働者を労働させるに至った(すなわち、それぞれの法定外労働時間を発生させた)使用者です。

3 副業・兼業の場合の労働基準法における労働時間等の規定の適用の考え方は以上のとおりであり、
・まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、
・次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって、
労働時間の通算を行い、労働基準法が適用されることとなります。(参照:設例1~4)
※ 所定外労働には、所定労働日における所定外労働と、所定休日における労働時間の両方が含まれます。
※ また、同法第36条第6項第2号及び第3号に定める時間外労働の上限規制については、通算するべき所定外労働として、所定労働日における所定外労働と、所定休日における労働時間に加えて、自らの事業場の法定休日における労働時間についても、これらの全てを発生順に所定外労働時間として通算することによって労働時間の通算を行い、労働時間の上限規制を遵守する必要があります。

4 具体的に整理すると、A事業場の使用者Aと先に労働契約を締結している労働者が、B事業場の使用者Bと新たに労働契約を締結して副業・兼業を行う場合の労働時間の通算の順序は、①、②、③の順となります。
①A事業場における所定労働時間
②B事業場における所定労働時間
※ 副業・兼業の開始前に、まずは①と②を通算します。
※ 上記の通算の結果、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間(通常の労働時間制度の場合は1週40時間、1日8時間)を超える部分がある場合、この法定労働時間を超える部分は法定時間外労働となります。
※ また、副業・兼業の開始後に、使用者Bは、この法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金を支払う必要があります。

③A事業場における所定外労働時間又はB事業場における所定外労働時間(実際に行われた順に通算)
※ 使用者A及び使用者Bは、それぞれ、①と②の通算(所定労働時間の通算)の後、副業・兼業の開始後に、A事業場における所定外労働時間とB事業場における所定外労働時間を、所定外労働が行われる順に通算します。
※ 上記の通算の結果、A事業場又はB事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合、それぞれの法定労働時間を超える部分はそれぞれ法定時間外労働となります。すなわち、A事業場では、「上記の通算の結果、A事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分」が法定時間外労働となり、B事業場では、「上記の通算の結果、B事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分」が法定時間外労働となります。このため、A事業場、B事業場のいずれも、法定時間外労働が生じることがあります。
※ 使用者A及び使用者Bは、それぞれ、この法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金を支払う必要があります。

【設例】

設例1~4においては、
・A事業場の使用者A・B事業場の使用者Bともに、自らの下での労働時間に加え、他の使用者の事業場での労働時間も、労働者からの申告等により把握しているものとします。
・A事業場・B事業場ともに、同一の労働時間制度(1週40時間、1日8時間)を採用しているものとします。
・A事業場・B事業場ともに、日曜日から土曜日までの暦週を採用しているものとします。
(注)原則的な法定労働時間を定める労働基準法32条では、1週間について40時間と、1日について8時間の法定労働時間が定められており、各使用者は、その双方について、通算した労働時間が法定労働時間を超えるかどうかを、確認する必要があります。

(設例1)
使用者Aと「所定労働時間8時間」を内容とする労働契約を締結している労働者が、A事業場における所定労働日と同一の日について、使用者Bと新たに※「所定労働時間2時間」を内容とする労働契約を締結し、それぞれの労働契約のとおりに労働した場合。

※使用者Bとの労働契約が後に締結されたことを意味します。

(答)
1 A事業場の所定労働時間は8時間であり、法定労働時間内の労働であるため、所定労働時間労働させた場合、使用者Aに割増賃金の支払義務はありません。
2 A事業場で労働契約のとおりに労働した場合、A事業場での労働時間がB事業場の労働時間制度における1日の法定労働時間に達しているため、それに加えてB事業場で労働する時間は、全て法定外労働時間となります。
3 よって、B事業場で当該労働者を労働させるためには、使用者BがB事業場の「時間外労働・休日労働に関する協定」で定めるところによって行わせる必要があります。また、B事業場で労働した2時間は法定時間外労働となり、法定労働時間を超えて労働させた使用者Bは、その2時間の労働について割増賃金の支払義務を負います。

(パターン1)
A事業場:時間的に先に労働契約を締結
・所定労働時間1日8時間・休憩1時間(7:00~16:00)
B事業場:時間的に後から労働契約を締結
・所定労働時間1日2時間(18:00~20:00)
→まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算するので、
①A事業場における所定労働時間(8時間)
②B事業場における所定労働時間(2時間)
の順に通算します。
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(パターン2)
※パターン1とは、1日の中でのA事業場・B事業場での労働の順を逆にしています。
A事業場:時間的に先に労働契約を締結
・所定労働時間1日8時間・休憩1時間(11:00~20:00)
B事業場:時間的に後から労働契約を締結
・所定労働時間1日2時間(7:00~9:00)
→まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算するので、
①A事業場における所定労働時間(8時間)
②B事業場における所定労働時間(2時間)
の順に通算します。
→①だけでB事業場の労働時間制度における1日の法定労働時間(8時間)に達するので、B事業場で行う2時間の労働は法定時間外労働となり、使用者Bはその2時間について割増賃金を支払う必要があります。
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(設例2)
使用者Aと「所定労働日は月曜日から金曜日、所定労働時間8時間」を内容とする労働契約を締結している労働者が、使用者Bと新たに「所定労働日は土曜日、所定労働時間5時間」を内容とする労働契約を締結し、それぞれの労働契約のとおりに労働した場合。

(答)
1 A事業場での1日の労働時間は8時間であり、月曜日から金曜日までの5日間労働した場合、労働時間は40時間となり、法定労働時間内の労働であるため、労働契約のとおり労働させた場合、使用者Aに割増賃金の支払義務はありません。
2 A事業場で労働契約のとおり労働した場合、A事業場での月曜日から金曜日までの労働時間がB事業場の労働時間制度における週の法定労働時間に達しているため、それに加えてB事業場で土曜日に労働する時間は、全て法定外労働時間となります。
3 よって、B事業場で当該労働者を労働させるためには、使用者BがB事業場の「時間外労働・休日労働に関する協定」で定めるところによって行わせる必要があります。また、B事業場で土曜日に労働した5時間は法定時間外労働となり、法定労働時間を超えて労働させた使用者Bは、その5時間の労働について割増賃金の支払義務を負います。
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(設例3)
使用者Aと「所定労働時間4時間」を内容とする労働契約を締結している労働者が、A事業場における所定労働日と同一の日について、使用者Bと新たに「所定労働時間4時間」を内容とする労働契約を締結し、A事業場で5時間労働して、その後B事業場で4時間労働した場合。

1 労働時間の通算は、問1-1に記載しているとおり、
・まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、
・次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって、
行います。
2 労働者がA事業場及びB事業場で労働契約のとおり労働した場合、1日の労働時間は8時間(A事業場での所定労働時間4時間+B事業場での所定労働時間4時間)となり、法定労働時間内の労働となります。
3 1日の所定労働時間が通算して8時間に達しているため、A事業場で労働時間を延長して労働した場合、A事業場で延長して労働する時間(A事業場での所定外労働時間)は、全て法定外労働時間となります。
4 よって、A事業場で労働時間を延長して当該労働者に1日4時間を超えて労働させるためには、使用者AがA事業場の「時間外労働・休日労働に関する協定」で定めるところによって行わせる必要があります。また、A事業場で所定労働時間を超えて労働した1時間は法定時間外労働となり、法定労働時間を超えて労働させた使用者Aは、その延長した1時間の労働について割増賃金の支払義務を負います。

(パターン1)
A事業場:時間的に先に労働契約を締結
・所定労働時間1日4時間(7:00~11:00)
・当日発生した所定外労働1時間(11:00~12:00)
B事業場:時間的に後から労働契約を締結
・所定労働時間1日4時間(15:00~19:00)
→まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算するので、
①A事業場における所定労働時間(4時間)
②B事業場における所定労働時間(4時間)
の順に通算します。
→次に、所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算するので、
③A事業場における所定外労働時間(1時間)
の順に通算します。
→①+②でA事業場の労働時間制度における1日の法定労働時間(8時間)に達するので、A事業場で行う1時間の所定外労働(11:00~12:00)は法定時間外労働となり、使用者Aはその1時間について割増賃金を支払う必要があります。
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(パターン2)
※設例・パターン1とは、1日の中でのA事業場・B事業場での労働の順を逆にしています。

A事業場:時間的に先に労働契約を締結
・所定労働時間1日4時間(14:00~18:00)
・当日発生した所定外労働1時間(18:00~19:00)
B事業場:時間的に後から労働契約を締結
・所定労働時間1日4時間(7:00~11:00)
→まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算するので、
①A事業場における所定労働時間(4時間)
②B事業場における所定労働時間(4時間)
の順に通算します。
→次に、所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算するので、
③A事業場における所定外労働時間(1時間)
の順に通算します。
→①+②でA事業場の労働時間制度における1日の法定労働時間(8時間)に達するので、A事業場で行う1時間の所定外労働(18:00~19:00)は法定時間外労働となり、使用者Aはその1時間について割増賃金を支払う必要があります。
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(設例4)
使用者Aと「所定労働時間3時間」を内容とする労働契約を締結している労働者が、A事業場における所定労働日と同一の日について、使用者Bと新たに「所定労働時間3時間」を内容とする労働契約を締結し、A事業場で5時間労働して、その後B事業場で4時間労働した場合。

(答)
1 労働時間の通算は、問1-1に記載しているとおり、
・まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、
・次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって、
行います。
2 労働者がA事業場及びB事業場で労働契約のとおり労働した場合、1日の労働時間は6時間(A事業場での所定労働時間3時間+B事業場での所定労働時間3時間)となり、法定労働時間内の労働となります。
3 ここで使用者Aが労働時間を2時間延長した場合、A事業場での労働が終了した時点では、B事業場での所定労働時間も含めた当該労働者の1日の労働時間は法定労働時間内であり、A事業場は割増賃金の支払等の義務を負いません。
4 ここまでで、A事業場の所定労働時間とB事業場の所定労働時間を通算し、次にA事業場の所定外労働時間を通算して、1日の労働時間が8時間に達しているため、B事業場で労働時間を延長して労働した場合、B事業場で延長して労働する時間(B事業場での所定外労働時間)は、全て法定外労働時間となります。
5 よって、B事業場で労働時間を延長して当該労働者に1日3時間を超えて労働させるためには、使用者BがB事業場の「時間外労働・休日労働に関する協定」で定めるところによって行わせる必要があります。また、B事業場で所定労働時間を超えて労働した1時間は法定時間外労働となり、法定労働時間を超えて労働させた使用者Bは、その延長した1時間の労働について割増賃金の支払義務を負います。


(パターン1)
A事業場:時間的に先に労働契約を締結
・所定労働時間1日3時間(7:00~10:00)
・当日発生した所定外労働2時間(10:00~12:00)
B事業場:時間的に後から労働契約を締結
・所定労働時間1日3時間(15:00~18:00)
・当日発生した所定外労働1時間(18:00~19:00)
→まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算するので、
①A事業場における所定労働時間(3時間)
②B事業場における所定労働時間(3時間)
の順に通算します。
→次に、所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算するので、
③A事業場における所定外労働時間(2時間)
④B事業場における所定外労働時間(1時間)
の順に通算します。
→①+②+③でB事業場の労働時間制度における1日の法定労働時間(8時間)に達するので、B事業場で行う1時間の所定外労働(18:00~19:00)は法定時間外労働となり、使用者Bはその1時間について割増賃金を支払う必要があります。
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(パターン2)
※設例・パターン1とは、1日の中でのA事業場・B事業場での労働の順を逆にしています。
A事業場:時間的に先に労働契約を締結
・所定労働時間1日3時間(14:00~17:00)
・当日発生した所定外労働2時間(17:00~19:00)
B事業場:時間的に後から労働契約を締結
・所定労働時間1日3時間(7:00~10:00)
・当日発生した所定外労働1時間(10:00~11:00)
→まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算するので、
①A事業場における所定労働時間(3時間)
②B事業場における所定労働時間(3時間)
の順に通算します。
→次に、所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算するので、
③B事業場における所定外労働時間(1時間)
④A事業場における所定外労働時間(2時間)
の順に通算します。
→①+②+③+(④のうち1時間)でA事業場の労働時間制度における1日の法定労働時間(8時間)に達するので、A事業場で行う1時間の所定外労働(18:00~19:00)は法定時間外労働となり、使用者Aはその1時間について割増賃金を支払う必要があります。
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フレックスタイム制に関する労働時間の通算の考え方

フレックスタイム制を導入している事業場(A事業場)においてフレックスタイム制で労働している労働者が、新たに別の事業場(B事業場)においてフレックスタイム制でない形で働く場合、当該別の事業場(B事業場)では、法定労働時間の関係で、日・週ごとに労働時間を通算して管理する必要がある一方で、フレックスタイム制の事業場(A事業場)における日々の労働時間は固定的なもの(固定的な労働時間)がなく予見可能性がないということが生じます(フレックスタイム制の事業場(A事業場)において、固定的な「コアタイム」を設けている場合でも、コアタイム以外の労働時間について予見可能性がないということが生じます。)。
こうした状況を踏まえた上で、フレックスタイム制の事業場においてもフレックスタイム制でない事業場においても副業・兼業に伴う労働時間の通算を適切に行うことができるよう、フレックスタイム制に関する労働時間の通算における「固定的なもの」「変動的なもの」は、以下のように考えられます。
フレックスタイム制の制度の詳細(労働時間の通算関係以外)については、パンフレット「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」を御覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000476042.pdf

(1)フレックスタイム制でない事業場における労働時間の通算の考え方

フレックスタイム制でない事業場(B事業場)においては、上記のとおり、フレックスタイム制の事業場(A事業場)における日々の労働時間は固定的なものがなく予見可能性がないことから、フレックスタイム制の事業場(A事業場)における労働時間と自らの事業場(B事業場)における労働時間の通算を行うに当たって、
フレックスタイム制の事業場(A事業場)における1日・1週間の所定労働時間を、清算期間における法定労働時間の総枠の1日・1週分(1日8時間・1週40時間)であると仮定して、フレックスタイム制の事業場(A事業場)における労働時間について1日8時間・1週40時間を「固定的な労働時間」とし、
・次に、自らの事業場(B事業場)における「固定的な労働時間」(所定労働時間など、各労働時間制度において固定的なものと捉える労働時間:表参照)を、法定外労働時間として通算し、
・次に、自らの事業場(B事業場)における「変動的な労働時間」(所定外労働時間など、各労働時間制度において変動的なものと捉える労働時間:表参照)を、法定外労働時間として通算し、
・最後に、フレックスタイム制の事業場(A事業場)における清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間を通算する
こととなります。

※「フレックスタイム制の事業場(A事業場)における1日・1週間の所定労働時間を、清算期間における法定労働時間の総枠の1日・1週分(1日8時間・1週40時間)であると仮定」した上で労働時間の通算を行うという考え方を採用する理由は、この仮定により、B事業場が労働時間の通算に用いる「A事業場における日々の労働時間」に予見可能性を持たせることで、B事業場が自らの事業場における労働時間のうち法定労働時間を超える部分について予見できるようにし、これによりB事業場において「時間外労働・休日労働に関する協定」の締結時に「法定労働時間を超える時間数」を適正な時間数として定められるようにすることにあります。
なお、上記の労働時間の通算の考え方は、B事業場が労働時間の通算に用いる「A事業場における日々の労働時間」を予見可能とするための便宜的なものですので、B事業場において、
・使用者Bが、副業・兼業を行う労働者のA事業場における日ごとの労働時間を把握しており、
・A事業場における日ごとの労働時間とB事業場における労働時間を通算しても法定労働時間の枠に収まる部分が明確となっている
場合にまで、使用者Bが、B事業場における時間外労働の上限規制の遵守や割増賃金の支払を行うに当たり、A事業場における労働時間を1日8時間・1週40時間の前提で行うことまでを求めるものではなく、副業・兼業を行う労働者のA事業場における日ごとの労働時間と自らの事業場における日ごとの労働時間を通算して法定労働時間内に収まる部分の労働時間について、自らの事業場における時間外労働とは扱わず割増賃金を支払わないこととすることは差し支えありません。
ただし、このように、使用者Bが、労働者のA事業場における実際の労働時間を用いて、労働時間の通算を行うこととした場合、フレックスタイム制清算期間の範囲内においては、全てその方法で行う必要があり、「労働者からの申告等によって把握したA事業場における実際の労働時間が8時間未満の場合には実際の労働時間を用いて通算し、8時間を超える場合には1日8時間と仮定して通算を行う」ということは認められません。
※使用者Bが、
・「フレックスタイム制の事業場(A事業場)における1日・1週間の所定労働時間を、清算期間における法定労働時間の総枠の1日・1週分(1日8時間・1週40時間)であると仮定」した上で労働時間の通算を行う場合
・労働者のA事業場における実際の労働時間(日ごとの労働時間)を、労働者からの申告等により把握し、当該時間を用いて労働時間の通算を行う場合
のいずれの場合においても、通算して時間外労働となる時間のうち、使用者Bが労働させた時間(1日・1か月等の時間外労働)について、B事業場における「時間外労働・休日労働に関する協定」の延長時間の範囲内となっている必要があることに留意が必要です。
また、使用者Bが労働時間の通算方法として上記のいずれの方法を採用する場合においても、どのような通算方法を採用するかについて、使用者Bと副業・兼業を行う労働者との間で、副業・兼業の開始前にあらかじめ確認しておくことが重要です。

(2)フレックスタイム制の事業場における労働時間の通算の考え方

ア フレックスタイム制清算期間が1か月以内の場合

フレックスタイム制の事業場(清算期間が1か月以内のもの)が、自らの事業場(A事業場)における労働時間とフレックスタイム制でない他の事業場(B事業場)における労働時間の通算を行うに当たっては、
・自らの事業場(A事業場)における清算期間における法定労働時間の総枠の範囲内までの労働時間について「固定的な労働時間」とし、
・次に、当該清算期間中の他の事業場(B事業場)における「固定的な労働時間」(所定労働時間など、各労働時間制度において固定的なものと捉える労働時間:表参照)を、「固定的な労働時間」として通算し、
・次に、当該清算期間中の他の事業場(B事業場)における「変動的な労働時間」(所定外労働時間など、各労働時間制度において変動的なものと捉える労働時間:表参照)を、「変動的な労働時間」として通算し、
清算期間の最後に、自らの事業場(A事業場)における清算期間における法定労働時間の総枠を超えた労働時間を、「変動的な労働時間」として通算する
こととなります。

イ フレックスタイム制清算期間が1か月を超える場合

フレックスタイム制の事業場(清算期間が1か月を超えるもの)においては、
①1か月ごとに、週平均50時間を超えた労働時間
清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(①でカウントした労働時間を除く)
の両方が法定時間外労働となり、「清算期間の最終月以外の月」と「清算期間の最終月」で法定時間外労働のカウントの方法が異なることから、自らの事業場(A事業場)における労働時間とフレックスタイム制でない他の事業場(B事業場)における労働時間の通算を行うに当たっては、「清算期間の最終月以外の月」と「清算期間の最終月」でそれぞれ以下のとおりとなります。

(ア)清算期間の最終月以外の月

・その月の自らの事業場(A事業場)における労働時間のうち、週平均50時間となる範囲内までの労働時間(週平均50時間となる月間の労働時間数の算出方法:週50時間×当該月の暦日数÷7日)について「固定的な労働時間」とし、
・次に、当該月の他の事業場(B事業場)における「固定的な労働時間」(所定労働時間など、各労働時間制度において固定的なものと捉える労働時間:表参照)を、「固定的な労働時間」として通算し、
・次に、当該月の他の事業場(B事業場)における「変動的な労働時間」(所定外労働時間など、各労働時間制度において変動的なものと捉える労働時間:表参照)を、「変動的な労働時間」として通算し、
・その月の最後に、自らの事業場(A事業場)における労働時間のうち、週平均50時間を超過した労働時間(①)を、「変動的な労働時間」として通算することとなります。

(イ)清算期間の最終月

・最終月の自らの事業場(A事業場)における労働時間のうち、週平均50時間となる範囲内までの労働時間(週平均50時間となる月間の労働時間数の算出方法:週50時間×当該月の暦日数÷7日)であって、かつ、清算期間における法定労働時間の総枠の範囲内の労働時間について「固定的な労働時間」とし、
・次に、最終月の他の事業場(B事業場)における「固定的な労働時間」(所定労働時間など、各労働時間制度において固定的なものと捉える労働時間:表参照)を、「固定的な労働時間」として通算し、
・次に、最終月の他の事業場(B事業場)における「変動的な労働時間」(所定外労働時間など、各労働時間制度において変動的なものと捉える労働時間:表参照)を、「変動的な労働時間」として通算し、
・最終月の最後に、
②最終月の自らの事業場(A事業場)における労働時間のうち、週平均50時間を超過した労働時間
③自らの事業場(A事業場)における清算期間における法定労働時間の総枠を超えた労働時間(算出方法:清算期間における総実労働時間-最終月以外の月において①でカウントした労働時間-最終月において②でカウントした労働時間-清算期間における法定労働時間の総枠)
を、「変動的な労働時間」として通算することとなります。


<具体的な考え方のイメージ>
注)使用者A・B双方の事業場における法定労働時間を1日8時間・週40時間、所定労働日を月~金曜日、法定休日を日曜日と仮定して作成。
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○ 上図はフレックスタイム制の事業場とフレックスタイム制でない事業場との間で、労働時間の通算を行う場合の、一例を図示したものです。
○ B事業場では、A事業場における労働時間について1日8時間・1週40時間を「固定的な労働時間」として通算していますが、[フレックスタイム制に関する労働時間の通算の考え方]の(1)の※に示したとおり、B事業場において、使用者Bが、副業・兼業を行う労働者のA事業場における日ごとの労働時間を把握しており、A事業場における日ごとの労働時間とB事業場における労働時間を通算しても法定労働時間の枠に収まる部分が明確となっている場合は、副業・兼業を行う労働者のA事業場における日ごとの労働時間と自らの事業場における日ごとの労働時間を通算して法定労働時間内に収まる部分の労働時間について、自らの事業場における時間外労働とは扱わず割増賃金を支払わないこととすることは差し支えありません。