社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【業務命令】国鉄鹿児島自動車営業所事件(最二小判平5.6.11労判632号10頁)

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国鉄鹿児島自動車営業所事件(最二小判平5.6.11労判632号10頁)

1.事件の概要

A社は、経営上の危機に瀕して再建を迫られる一方、職場規律の乱れの是正を求められており、経営能率の向上や職場規律の健全化等が企業としての将来を決する重要な課題となっていた。A社のB営業所も、職場規律の確立のために、職員の服装の乱れを是正することなどの指示を上級機関であるC自動車部から受けていた。
A社の職員であり、D組合の組合員であるXは、昭和60年7月23日、組合員バッジを着用したまま点呼業務を行おうとしたため、Y1はバッジの取り外し命令を発したが、Xはこの命令に従わなかった。そこで、Y1は、Xを点呼業務から外し、B営業所構内に積もった火山灰(鹿児島だけに桜島の火山灰ですね・・)を除去する作業(降灰除去作業)に従事すべき旨の業務命令を発した。その後も同様の業務命令を発した日が、同年8月末までの間に9日あった。
降灰除去作業は、かなりの不快感と肉体的苦痛を伴う作業であるが、B営業所の職場環境を整備して、労務の円滑化、効率化を図るために必要なものであり、従来、職員が必要に応じてこの作業を行うことがあった。
Xは、降灰除去作業に従事すべき旨の業務命令は違法であるとして、Y1およびB営業所主席助役Y2に対して慰謝料の請求を求めて訴えを提訴した。第一審及び第二審ともに、Xの請求を認容した。そこで、Yらが上告したのが本件である。

2.判決の概要

降灰除去作業は、B営業所の職場環境を整備して、労務の円滑化、効率化を図るために必要な作業であり、また、その作業内容、作業方法等からしても、社会通念上相当な程度を超える過酷な業務に当たるものともいえず、これがXの労働契約上の義務の範囲内に含まれるものであることは、原判決も判示とおりである。しかも、本件各業務命令は、Xが、Y1のバッジ取り外し命令を無視して、本件バッジを着用したまま点呼業務に就くという違反行為を行なおうとしたことから、Cからの指示に従ってXをその本来の業務から外すこととし、職場規律維持の上で支障が少ないものと考えられる屋外作業である降灰除去作業に従事させることとしたものであり、職場管理上やむを得ない措置ということができ、これが殊更にXに対して不利益を課するという違法、不当な目的でされたものであるとは認められない。
・・・(中略)そうすると、本件各業務命令を違法なものとすることは、到底困難なものといわなければならない。