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令和2年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」等について

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職発0708第2号令和元年7月8日

令和2年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」等について

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法律第71号)による改正後の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(昭和60年法律第88号。以下「法」という。)により、派遣元事業主は、派遣労働者の公正な待遇を確保するため、派遣先に雇用される通常の労働者との間の均等・均衡待遇(法第30条の3の規定に基づき、派遣先に雇用される通常の労働者との間で不合理な待遇の禁止等に係る措置を講ずることをいう。以下同じ。)の確保又は一定の要件を満たす労使協定による待遇の確保(以下「労使協定方式」という。)のいずれかの待遇決定方式により、派遣労働者の待遇を確保しなければならないこととされ、令和2年4月1日に施行される予定である。
労使協定方式においては、派遣労働者の賃金の決定の方法を労使協定に定めることとされ、当該方法については、「派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金(以下「一般賃金」という。)の額として厚生労働省令で定めるものと同等以上の賃金の額となるものであること」等の要件を満たすことが必要とされている。
一般賃金等の取扱いについては、下記のとおりであるので、法の施行に遺漏なきを期されたい。


第1基本的な考え方

1.労使協定に定める賃金の決定の方法

派遣元事業主は、派遣労働者の待遇について、法第30条の3の規定に基づき、派遣先に雇用される通常の労働者との間の均等・均衡待遇を確保しなければならないが、法第30条の4第1項の規定に基づき、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との間で同項の書面による協定(以下単に「労使協定」という。)を締結し、一定の事項を定めた場合には、労使協定に基づく待遇(法第40条第2項の教育訓練及び同条第3項の福利厚生施設を除く。)を確保することとされている。
労使協定に定める事項については、法第30条の4第1項各号に掲げられているが、同項第2号の規定に基づき、労使協定には、協定対象派遣労働者(同項の協定で定めるところによる待遇とされる派遣労働者をいう。以下同じ。)の賃金の決定の方法を定めなければならない。当該方法については、同項第2号イ及びロに基づき、2及び3に定める要件を満たすものでなければならない。
なお、労使協定に定めた協定対象派遣労働者の賃金の決定の方法に基づき、協定対象派遣労働者に対して賃金が支払われていない場合には、労使協定に定めた事項を遵守していないものとして、法第30条の3の規定に基づき、派遣先に雇用される通常の労働者との間の均等・均衡待遇を確保しなければならないことに留意すること。

2.法第30条の4第1項第2号イの要件

労使協定に定める協定対象派遣労働者の賃金の額については、一般賃金の額と同等以上となるものでなければならない。

(1)一般賃金
一般賃金の額については、法第30条の4第1項第2号イ及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則(昭和61年労働省令第20号。以下「則」という。)第25条の9の規定により、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地を含む地域において派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者であって、当該派遣労働者と同程度の能力及び経験を有する者の平均的な賃金の額」とされており、派遣労働者の業務、能力及び経験並びに派遣就業場所が勘案されるものである。また、一般賃金の範囲については、労働基準法(昭和22年法律第49号)の賃金に含まれるかどうかにより判断し、基本給のみならず諸手当も含まれるが、時間外、休日及び深夜の労働に係る手当等は含まれないこと。
この「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」については、平成11年11月17日付け女発第325号、職発第814号「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律、関係政省令等の施行について」の別添「労働者派遣事業関係業務取扱要領」第8の5と同様であり、協定対象派遣労働者が実際に就業する場所ではないこと。例えば、派遣先の事業所が東京都にあるが、協定対象派遣労働者が実際に就業する場所が埼玉県である場合、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」は東京都であること。
また、この「一般の労働者」とは、無期雇用かつフルタイムの労働者をいう。

(2)協定対象派遣労働者の賃金
法第30条の4第1項第2号の協定対象派遣労働者の賃金の範囲についても、一般賃金と同様、労働基準法の賃金に含まれるかどうかにより判断し、基本給のみならず諸手当も含まれるが、時間外、休日及び深夜の労働に係る手当等は含まれないこと。

(3)同等以上
「同等以上」とは、労使協定に定める協定対象派遣労働者の賃金の額が、一般賃金の額と同額以上であることをいうこと。
また、「基本給・賞与・手当等」(賃金から通勤手当及び退職金を除いたものをいう。以下同じ。)等の比較に当たっては、一般賃金と協定対象派遣労働者の賃金の比較を簡便にする観点から、時給換算した額を比較することとする。

3.法第30条の4第1項第2号ロの要件

通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当その他名称の如何を問わず支払われる賃金(職務の内容に密接に関連して支払われるものを除く。)を除く賃金については、派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項の向上があった場合に改善されるものでなければならない。
これらの事項のうちどの事項を勘案するか、その事項をどのように勘案するかは、基本的に労使に委ねられるものである。

4.適用期日等

本通知については、令和2年4月1日から令和3年3月31日まで適用することとする。
なお、本通知で示す一般賃金等の取扱いについては、直近の統計調査等の結果等を踏まえ、毎年更新する予定である。


第2一般賃金の取扱い

一般賃金については、「基本給・賞与・手当等」、「通勤手当」、「退職金」ごとに、以下の1から3までのとおりとする。

1.基本給・賞与・手当等

(1)一般賃金のうち基本給・賞与・手当等(以下「一般基本給・賞与等」という。)の考え方
一般賃金については、同種の業務、同程度の能力及び経験並びに同一の派遣就業場所における無期雇用かつフルタイムの労働者の賃金であるため、これらに対応するよう、一般基本給・賞与等については、以下の方法により算出することとする。
また、以下の方法により一般基本給・賞与等を算出した結果、1円未満の端数が生じた場合には、当該端数を切り上げることとする。

方法:職種別の基準値(①)×能力・経験調整指数(②)×地域指数(③)

① 職種別の基準値
職種別の基準値については、賃金構造基本統計調査の特別集計により算出した賃金、又は職業安定業務統計の特別集計による求人賃金(月額)の下限額の平均を基に一定の計算方法により賞与込みの時給に換算した額とする。
なお、第5の1のとおり、賃金構造基本統計調査で把握できる職種と派遣労働者が実際に行う業務との間に乖離がある場合、又は厚生労働省編職業分類の各小分類に含まれる職業に照らして、当該小分類に係る求人賃金の下限額の平均が派遣労働者の実際に行う業務に対する賃金の基準値とするのに適切でないと認められる場合等には、他の公的統計又は一定の要件を満たす民間統計を活用することも可能である。

② 能力・経験調整指数
「能力・経験調整指数」とは、能力及び経験の代理指標として、賃金構造基本統計調査の特別集計により算出した勤続年数別の所定内給与(産業計)に賞与を加味した額により算出した指数である。具体的には、「勤続0年」を100として算出したものであり、次の表のとおりとなる。

③ 地域指数
「地域指数」とは、派遣就業場所の地域の物価等を反映するため、職業安定業務統計の求人平均賃金をもとに、都道府県及び公共職業安定所の管轄地域別に、全国計を100として職業大分類の構成比の違いを除去して算出した指数である。

(2)一般基本給・賞与等の額
一般基本給・賞与等の額については、別添1又は別添2の数値((1)の①×②)に別添3の地域指数((1)の③)を乗じた額とする。
別添1及び別添2の数値については、次の点に留意すること。
また、(1)の方法による一般基本給・賞与等の額の算定の結果、一般基本給・賞与等の額が最低賃金法(昭和24年法律第137号)第9条第1項の地域別最低賃金(以下単に「地域別最低賃金」という。)又は同法第15条第1項の特定最低賃金(以下単に「特定最低賃金」という。)を下回る場合には、地域別最低賃金又は特定最低賃金の額を「基準値(0年)」の額とした上で、当該額に能力・経験調整指数を乗じることにより、一般基本給・賞与等の額を算出すること。

① 賃金構造基本統計調査の数値の留意点
イ「基準値(0年)」の数値は、(イ)から(ハ)までのとおり集計したものであること。
(イ) 賃金構造基本統計調査(集計対象:企業規模10人以上の企業)の無期雇用かつフルタイムの労働者の「所定内給与額」及び「特別給与額(12ヶ月で除したもの)」を合算した額を各労働者の所定内労働時間で時給換算したものの平均値を算出。
(ロ) (イ)で算出した数値から一般の労働者の通勤手当相当分「72円」(2の(2)参照)を控除。
(ハ) 賃金構造基本統計調査の「勤続0年」の数値には中途採用者が含まれていることを踏まえ、(ロ)で算出した数値から学歴計の初任給との差(12%)を控除。
ロ「参考値(0年)」の数値は、一般の労働者の通勤手当相当分「72円」の控除及び学歴計の初任給との差(12%)の調整を行う前のイの(イ)の数値であること。

② 職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした数値の留意点
イ「基準値(0年)」の数値は、(イ)及び(ロ)のとおり集計したものであ
ること。
(イ) ハローワークで受理した無期雇用かつフルタイムの労働者の求人賃金の下限額の平均を時給換算した額(月額×12÷52÷40)を算出。なお、求人賃金は、勤続年数別に整理することができないため、勤続0年目相当の額として、未経験者の賃金と考えられる下限額の平均を基準値としたものである。
(ロ) 求人賃金に特別給与が含まれていないことから、賞与相当分を勘案するため、(イ)で算出した数値に、賃金構造基本統計調査の「勤続0年」の特別給与により計算した賞与指数「1.02」を乗じたものを算出。
ロ基本給及び定期的に支払われる手当が含まれており、通勤手当は含まれていないこと。
ハ「参考値(0年)」は、ハローワークで受理した無期かつフルタイムの求人に係る求人賃金(月給)の上限額と下限額の中間値の平均を時給換算(月額×12÷52÷40)した額であること。

2.通勤手当

一般賃金のうち通勤手当(以下「一般通勤手当」という。)については、次の(1)又は(2)から労使で選択するものとする。なお、一つの労使協定において、(1)と(2)の双方を選択することも可能であること。

(1)実費支給により「同等以上」を確保する場合
協定対象派遣労働者に対し、通勤手当として、派遣就業の場所と居住地の通勤距離や通勤方法に応じた実費が支給される場合には、一般通勤手当と同等以上であるものとする。ただし、協定対象派遣労働者に対し、通勤手当として、派遣就業の場所と居住地の距離に係る費用の実費が支給されるが、当該通勤手当の額に上限がある場合、上限額を協定対象派遣労働者の平均的な所定内労働時間1時間当たりに換算した額が「72円」未満である場合には、(2)により取り扱うこととすること。

(2)一般の労働者の通勤手当に相当する額と「同等以上」を確保する場合
一般の労働者の1時間当たりの通勤手当に相当する額を一般通勤手当
とし、当該額を「72円」とする。
※「72円」は、「平成25年企業の諸手当等の人事処遇制度に関する調査(独立行政法人労働政策研修・研究機構)」の通勤手当の平均額を「賃金構造統計基本調査(平成25年)」の所定内給与及び特別給与の合計額を除して得た「給与に占める通勤手当の割合」に「賃金構造統計基本調査(平成30年)」の所定内給与及び特別給与の合計額を乗じて得た額に制度導入割合を乗じて得た額を時給換算した額である。

3.退職金

一般賃金のうち退職金(以下「一般退職金」という。)については、次の(1)、(2)又は(3)から労使で選択するものとする。なお、一つの労使協定において、労働者の区分ごとに(1)から(3)までを選択することも可能であること。

(1)退職手当制度で比較する場合
協定対象派遣労働者と一般の労働者の退職手当制度を比較する場合、一般退職金は、退職手当制度がある企業の割合、退職手当の受給に必要な所要年数、退職手当の支給月数、退職手当の支給金額及び退職給付等の費用を示した別添4により一般の労働者の退職手当制度として設定したものとする。

(2)一般の労働者の退職金に相当する額と「同等以上」を確保する場合
一般の労働者の現金給与額に占める退職給付等の費用の割合(以下この(2)及び(3)において単に「退職給付等の費用の割合」という。)を一般基本給・賞与等に乗じた額を一般退職金とし、当該割合を「6%」とする。当該一般退職金を算出した結果、1円未満の端数が生じた場合には、当該端数を切り上げることとする。

(3)中小企業退職金共済制度等に加入する場合
退職給付等の費用の割合を一般基本給・賞与等に乗じた額を一般退職金とし、当該割合を「6%」とする。当該一般退職金を算出した結果、1円未満の端数が生じた場合には、当該端数を切り上げることとする。

※「6%」とは、「平成28年就労条件総合調査」の「退職給付等の費用」の「現金給与額」(平成28年賃金構造基本統計調査により超過勤務手当分を除いた額)に占める割合である。
※一人の協定対象派遣労働者について、(2)及び(3)を併用するこ
とが可能であり、その場合にも、(2)又は(3)と同様、退職給付等の費用の割合を一般基本給・賞与等に乗じた額を一般退職金とし、当該割合を「6%」とする。


第3協定対象派遣労働者の賃金の取扱い

第2の一般賃金の額と同等以上の額を確保する必要がある協定対象派遣労働者の賃金については、「基本給・賞与・手当等」、「通勤手当」、「退職金」ごとに、以下の1から3までのとおりとし、これらの賃金の全部又は一部を合算して「同等以上」を確保する場合の取扱いは、4のとおりとする。

1.基本給・賞与・手当等

①及び②を合算した額を時給換算した額をいい、当該額が一般基本給・賞与等の額と同額以上でなければならない。

① 基本給
個々の協定対象派遣労働者に実際に支給される所定内給与をいう。

② 賞与・手当等
賞与・手当等に相当する賃金については、例えば、業績に連動した手当等のように、仮に個々の協定対象派遣労働者ごとに一定額の支払いを求めることとするとした場合に、賞与・手当等としての機能や賃金体系の柔軟性が失われるおそれがあるものもあることから、「個々の協定対象派遣労働者に実際に支給される額」のほか、「直近の事業年度において協定対象派遣労働者に支給された額の平均額」、「協定対象派遣労働者に支給される見込み額の平均額」又は「標準的な協定対象派遣労働者に支給される額」等を労使で選択することも可能であること。

2.通勤手当

(1)実費支給により「同等以上」を確保する場合
第2の2の(1)のとおりであること。

(2)一般の労働者の通勤手当に相当する額と「同等以上」を確保する場合
通勤手当として支給される賃金を時給換算した額をいい、当該額が第2の2の(2)の「72円」以上でなければならない。当該賃金の額については、個々の協定対象派遣労働者に実際に支給される額のほか、「直近の事業年度において協定対象派遣労働者に支給された額の平均額」、「協定対象派遣労働者に支給される見込み額の平均額」又は「標準的な協定対象派遣労働者に支給される額」等を労使で選択することも可能であること。

3.退職金

(1)退職手当制度で比較する場合
協定対象派遣労働者を対象とする退職手当制度をいい、第2の3の(1)のとおり設定した一般の労働者の退職手当制度と同等以上の水準となるものでなければならない。この「協定対象派遣労働者を対象とする退職手当制度」については、「全ての協定対象派遣労働者に適用されるものであること」、「退職手当の決定、計算及び支払の方法(例えば、勤続年数、退職事由等の退職手当額の決定のための要素、退職手当額の算定方法及び一時金で支払うのか年金で支払うのか等の支払の方法をいう。)」及び「退職手当の支払の時期」が明確なものでなければならない。
この「同等以上の水準」とは、第2の3の(1)のとおり設定した一般退職金の勤続年数別の支給月数又は支給金額と同水準以上であることをいう。

(2)一般の労働者の退職金に相当する額と「同等以上」を確保する場合
協定対象派遣労働者に支給される退職金相当の手当等に相当する賃金をいい、当該賃金の額が第2の3の(2)の一般退職金と同額以上でなければならない。当該賃金の額については、個々の協定対象派遣労働者に実際に支給される額のほか、「直近の事業年度において協定対象派遣労働者に支給された額の平均額」、「協定対象派遣労働者に支給される見込み額の平均額」又は「標準的な協定対象派遣労働者に支給される額」等を労使で選択することも可能であること。

(3)中小企業退職金共済制度等に加入する場合
第2の3の(3)の一般退職金の額以上の掛金(派遣元事業主負担分に限る。以下同じ。)により、中小企業退職金共済制度、確定給付企業年金確定拠出年金等(以下「中小企業退職金共済制度等」という。)に加入する場合には、協定対象派遣労働者の退職金が一般退職金と同等以上であるものとみなす。この「等」には、例えば、派遣元事業主が独自に設けている企業年金制度が含まれるものであること。
なお、派遣労働者の納得感により資するよう、協定対象派遣労働者の基本給・賞与・手当等の額に退職給付等の費用の割合を乗じた額以上の額を中小企業退職金共済制度、確定給付企業年金確定拠出年金等の掛金とすることが望ましいものであること。
※一人の協定対象派遣労働者について、(2)及び(3)を併用することが可能であり、その場合には、(2)の賃金と(3)の掛金の合計額が、第2の3の(2)又は(3)の一般退職金の額と同額以上でなければならない。

4.「基本給・賞与・手当等」、「通勤手当」、「退職金」の全部又は一部を合算する場合の取扱い

「基本給・賞与・手当等」、「通勤手当」、「退職金」の全部又は一部を合算した上で「同等以上」を確保する場合には、次の表の①から③までのいずれかの方法により、一般賃金及び協定対象派遣労働者の賃金を合算し、合算した協定対象派遣労働者の賃金の額が合算した一般賃金の額と同額以上でなければならない。なお、「通勤手当」を合算することができるのは、第2の2の(2)及び第3の2の(2)の場合に限られ、「退職金」を合算することができるのは、第2の3の(2)及び第3の3の(2)の場合に限られること。


第4労使協定の締結における留意点

次の1から3までについて、労使で十分な議論を行った上で合意した内容を労使協定に定めること。

1.基本給・賞与・手当等

(1)から(3)までを労使で選択し、選択した内容をもとに、第2の1のとおり一般基本給・賞与等を算定した上で、算定した一般基本給・賞与等及び協定対象派遣労働者の基本給・賞与・手当等を労使協定に定めること。

(1)職種別の基準値
一般基本給・賞与等の職種別の基準値について、労働者派遣契約、就業の実態等を勘案し、別添1又は別添2の職種の基準値のうち、協定対象派遣労働者が従事する業務と最も近いと考えられるものを選択すること。例えば、協定対象派遣労働者の「中核的業務」をもとに、これらの統計の職種別の賃金を選択することが考えられること。なお、「中核的業務」とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、当該職務を代表する中核的なものを指し、「与えられた職務に本質的又は不可欠な要素である業務」、「その成果が事業に対して大きな影響を与える業務」及び「労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務」の基準に従って総合的に判断されるものである。職種の選択に当たっては、職種について解説している「賃金構造基本統計調査の「役職及び職種解説」」又は「第4回改訂厚生労働省編職業分類職業分類表改訂の経緯とその内容」(独立行政法人労働政策研究・研修機構)を参照すること。
また、別添1又は別添2のうちどの職種を選択するかは、基本的には労使の選択に委ねられるものであるが、協定対象派遣労働者の賃金を引き下げるなど、恣意的に職種を使い分けることは労使協定制度の趣旨に照らして適切ではなく、認められないことに留意すること。
この他、一つの労使協定において、職種ごとに別添1及び別添2を使い分ける場合には、その理由を労使協定に記載すること。また、一つの労使協定において、別添2の職種を選択する場合であって職業分類を使い分けるとき、具体的には、「大分類」と「当該大分類内の中分類又は小分類」」又は「「中分類」と「当該中分類内の小分類」」を使い分ける場合には、その理由を労使協定に記載すること。

(2)能力・経験調整指数
一般基本給・賞与等の能力・経験調整指数は、第2の1の(1)の②のとおりであるが、協定対象派遣労働者の賃金の決定方法に応じて、協定対象派遣労働者の能力及び経験を踏まえつつ、一般の労働者の勤続何年目相当に該当するかを考慮して適切なものを選択すること。例えば、協定対象派遣労働者の賃金が職務給である場合には、派遣労働者の業務の内容、難易度等が一般の労働者の勤続何年目に相当するか、という観点から選択することが考えられること。

(3)地域指数
一般基本給・賞与等の地域指数は、第2の1の(1)の③のとおりであるが、協定対象派遣労働者の派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地を含む都道府県又は公共職業安定所管轄地域の指数を選択すること。
また、都道府県の指数又は公共職業安定所管轄地域の指数のいずれの地域指数を選択するかは、基本的には労使の選択に委ねられるものであるが、協定対象派遣労働者の賃金を引き下げるなど、恣意的に地域指数を使い分けることは、労使協定制度の趣旨に照らして適切ではなく認められないことに留意すること。
この他、一つの労使協定において、都道府県内の指数及び公共職業安定所管轄地域の指数を使い分ける場合には、その理由を労使協定に記載すること。
なお、地域指数として全国計「100.0」の数値を用いることについては、則第25条の9に定める「派遣先の事業所その他派遣就業の場所の所在地」を勘案していることにはならず、一般賃金の額の算定要件を満たすものではないため、認められないことに留意すること。

2.通勤手当

(1)実費支給により同等以上を確保する場合
協定対象派遣労働者に対して、通勤手当として、派遣就業の場所と居住地の距離に係る費用の実費に相当する額を支給する旨を労使協定に定めること。当該額に上限がある場合には、上限額を協定対象派遣労働者の平均的な所定内労働時間1時間当たりに換算した額をあわせて定めること。

(2)一般の労働者の通勤手当に相当する額と「同等以上」を確保する場合
第2の2の(2)の一般通勤手当「72円」及び第3の2の(2)又は4を満たすことが分かる内容を定めること。

3.退職金

(1)退職金手当制度で比較する場合
第2の3の(1)のとおり設定した一般退職金及び第3の3の(1)の協定対象派遣労働者を対象とする退職手当制度を定めること。

(2)一般の労働者の退職金に相当する額と「同等以上」を確保する場合第2の3の(2)の一般退職金及び第3の3の(2)又は4を満たすことが分かる内容を定めること。

(3)中小企業退職金共済制度等に加入する場合
協定対象派遣労働者中小企業退職金共済制度等に加入する旨を定めること。例えば、中小企業退職金共済制度の場合には、独立行政法人勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部との間で退職金共済契約を締結する旨を定めることが考えられる。


第5本通知に示す統計以外の統計の利用

一般基本給・賞与等、一般通勤手当及び一般退職金については、次の1から3までのとおり、本通知に示す統計以外の統計(以下「独自統計等」という。)を用いることを可能とする。なお、独自統計等を用いる場合には、その理由を労使協定に記載すること。

1.一般基本給・賞与等

(1)考え方
一般基本給・賞与等については、第2の1の(2)のとおり、本通知に示す別添1又は別添2の数値を労使で選択することとなるが、これらの調査等で把握可能な職種と協定対象派遣労働者が実際に行う業務との間に乖離があること等が考えられるため、一定の要件を満たすことを条件として、独自統計等を用いることを認める。

(2)使用可能な独自統計等
次の①から③までの統計を認める。
① 統計法(平成19年法律第53号)第2条第6項の基幹統計調査又は同条第7項に規定する一般統計調査に該当する調査
② ①以外の地方公共団体又は独立行政法人等(統計法第2条第2項の独立行政法人等をいう。第5において同じ。)による統計
③ ①及び②以外の統計であって、(3)の要件を満たすもの

(3)独自統計等の要件
(2)の③の統計については、次の①から⑦までの事項を満たすものでなければならならない。また、既存の統計ではなく、(2)の③の統計に該当する統計を作成するため、経済団体、労働組合、業界団体等が新たに調査を実施する場合には、当分の間、当該調査を実施する前に、厚生労働省職業安定局需給調整事業課に協議するものとする。
また、派遣元事業主は、(2)の③の統計を用いる場合には、当分の間、労使協定を締結する前に、厚生労働省職業安定局需給調整事業課に協議するものとする。ただし、経済団体、労働組合、業界団体等が実施した調査であって同課に協議したものによる統計を用いる場合には、労使協定を締結する前に、同課に報告するものとする。

① 調査対象とする業務等が明確であること
② 適切なサンプルサイズが確保されていること。具体的には、職種及び勤続年数ごとに標準誤差率5%以内又は250以上のサンプルサイズが確保されていること。
③ 標本が無作為に抽出されていること
④ 一般基本給・賞与等を調査するものとして、適切な母集団が設定されていること。具体的には、母集団が少数の企業のみで構成されている場合や派遣先の顧客企業のみで構成されている場合等は、認められないこと。また、当該母集団の特性を⑦の公表の際に示すこと。
⑤ 一般基本給・賞与等として用いる調査として、適切な復元処理を行っていること。
⑥ 調査時点が適切であること。原則として、適用しようとする基本給・賞与・手当等の直近1年以内の数値を調査することとするが、これより前の数値を調査する場合には、一般基本給・賞与等として用いる際に、適切な賃金上昇率を用いて補正すること。
⑦ 経済団体、労働組合、業界団体等が行う公表を前提とした統計調査であること。

(4)独自統計等を用いる場合の留意点
① 独自統計等の数値を一般基本給・賞与等とする場合には、独自統計等を労使協定に添付するとともに、独自統計等を用いる理由を労使協定に記載すること。
② 独自統計等の調査対象地域に協定対象派遣労働者の就業場所が含まれていること。また、調査対象地域が全国又は都道府県をまたぐ地域である場合には、協定対象派遣労働者の就業場所に応じて、地域指数により数値を補正すること。
③ 独自統計等の有効期間は原則1年とすること。ただし、労使で十分な議論を行うことを前提として、適切な賃金上昇率を用いて補正することも認められること。

2.一般通勤手当

(1)考え方
第2の2の(2)の「72円」については、無期雇用の労働者に支給された通勤手当の平均値をもとに算出した数値であり、地域における通勤手段を勘案したものとはいえないため、一定の要件を満たすことを条件として、独自統計等を用いることを認める。

(2)使用可能な独自統計等
次の①から③までの統計を認める。
① 統計法第2条第6項の基幹統計調査又は同条第7項に規定する一般統計調査に該当する調査
② ①以外の地方公共団体又は独立行政法人等による統計
③ ①及び②以外の統計であって、(3)の要件を満たすもの

(3)独自統計等の要件
(2)の③の統計については、次の①から⑦までの事項を満たすものでなければならならない。また、既存の統計ではなく、(2)の③の統計に該当する統計を作成するため、経済団体、労働組合、業界団体等が新たに調査を実施する場合には、当分の間、当該調査を実施する前に、厚生労働省職業安定局需給調整事業課に協議するものとする。
また、派遣元事業主は、(2)の③の統計を用いる場合には、当分の間、労使協定を締結する前に、厚生労働省職業安定局需給調整事業課に協議するものとする。ただし、経済団体、労働組合、業界団体等が実施した調査であって同課に協議したものによる統計を用いる場合には、労使協定を締結する前に、同課に報告するものとする。
① 調査対象とする地域又は交通手段等が明確であること
② 適切なサンプルサイズが確保されていること。具体的には、職種ごとに標準誤差率5%以内又は250以上のサンプルサイズが確保されていること。
③ 標本が無作為に抽出されていること
④ 一般通勤手当を調査するものとして、適切な母集団が設定されていること。具体的には、母集団が少数の企業のみで構成されている場合や派遣先の顧客企業のみで構成されている場合等は、認められないこと。また、当該母集団の特性を⑦の公表の際に示すこと。
⑤ 一般通勤手当として用いる調査として、適切な復元処理を行っていること。
⑥ 調査時点が適切であること。原則として、適用しようとする通勤手当の直近1年以内の数値を調査することとするが、これより前の数値を調査する場合には、一般通勤手当として用いる際に、適切な賃金上昇率を用いて補正すること。
⑦ 経済団体、労働組合、業界団体等が行う公表を前提とした統計調査であること。

(4)独自統計等を用いる場合の留意点
① 独自統計等の数値をもとに一般通勤手当を設定した場合には、独自統計等を労使協定に添付するとともに、独自統計等を用いる理由を労使協定に記載すること。
② 独自統計等の調査対象地域に協定対象派遣労働者の就業場所が含まれていること。
③ 独自統計等の有効期間は5年とすること。ただし、労使で十分な議論を行うことを前提として、適切な賃金上昇率を用いて補正することも認められること。

3.一般退職金

(1)考え方
第2の3の(1)の別添4については、例えば、調査対象が中小企業であることなど、一般の労働者の退職金として示す数値に限りがあるため、一定の要件を満たすことを条件として、独自統計等を用いることを認める。

(2)使用可能な独自統計等
次の①から③までの統計を認める。
① 統計法第2条第6項の基幹統計調査又は同条第7項に規定する一般統計調査に該当する調査
② ①以外の地方公共団体又は独立行政法人等による統計
③ ①及び②以外の統計であって、(3)の要件を満たすもの

(3)独自統計等の要件
(2)の③の統計については、次の①から⑦までの事項を満たすものでなければならならない。また、既存の統計ではなく、(2)の③の統計に該当する統計を作成するため、経済団体、労働組合、業界団体等が新たに調査を実施する場合には、当分の間、当該調査を実施する前に、厚生労働省職業安定局需給調整事業課に協議するものとする。
また、派遣元事業主は、(2)の③の統計を用いる場合には、当分の間、労使協定を締結する前に、厚生労働省職業安定局需給調整事業課に協議するものとする。ただし、経済団体、労働組合、業界団体等が実施した調査であって同課に協議したものによる統計を用いる場合には、労使協定を締結する前に、同課に報告するものとする。

① 調査対象とする受給者等が明確であること
② 適切なサンプルサイズが確保されていること。具体的には、職種ごとに標準誤差率5%以内又は250以上のサンプルサイズが確保されていること。
③ 標本が無作為に抽出されていること
④ 一般退職金を調査するものとして、適切な母集団が設定されていること。具体的には、母集団が少数の企業のみで構成されている場合や派遣先の顧客企業のみで構成されている場合等は、認められないこと。また、当該母集団の特性を⑦の公表の際に示すこと。
⑤ 一般退職金として用いる調査として、適切な復元処理を行っていること。
⑥ 調査時点が適切であること。原則として、適用しようとする退職金の直近1年以内の数値を調査することとする。
⑦ 経済団体、労働組合、業界団体等が行う公表を前提とした統計調査であること。

(4)独自統計等を用いる場合の留意点

① 独自統計等の数値をもとに一般退職金を設定した場合には、独自統計等を労使協定に添付するとともに、独自統計等を用いる理由を労使協定に記載すること。
② 独自統計等の有効期間は5年とすること。


(参考)
sr-memorandum.hatenablog.com

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