社会保険労務士川口正倫のブログ

横浜市の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【退職勧奨】神奈川信用農業協同組合(割増退職金請求)事件(最一小判平19.1.18労判931号5頁)

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神奈川信用農業協同組合(割増退職金請求)事件(最一小判平19.1.18労判931号5頁)

参照法条 : 労働基準法2章
裁判所名 : 最高一小
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成16受380
裁判結果 : 破棄自判(確定)

1.事件の概要

経営悪化したY組合において、従前から就業規則に制定され運用されていた選択定年制度が廃止されたが、その廃止前に同制度による退職の申出をしたX1らが、Y組合による同制度の適用拒否にもかかわらず、同制度に定める割増退職金請求権を有するとして、同請求権の確認を求めた。
Y組合の就業規則は、60歳定年退職制を定めるとともに、早期退職優遇制度として選択定年制(本件選択定年制)を設けていた。就業規則には「本人の希望により定年前の年齢で退職する者は、選択定年制実施要項の規定により定年扱いとし、特別措置を講ずる」と定められ、選択定年制実施要項には、「対象者は、退職時点において48歳以上の職員でかつ勤続年数が15年以上の職員のうち・・・この制度による退職を選択し、この組合が認めたものとする」と規定され、同制度による退職には割増退職金が支給された。Xらはいずれも上記の年齢勤続年数を満たすもので同制度が廃止される後記平成13年9月18日より前の同年7月18日、9月11日にそれぞれ同制度の適用による退職を申し出た。Y組合は平成13年7月、神奈川県から自己資本比率の低下等を指摘されて指導を受け、他の信用農協協同組合との合併の道を探ったが、同年8月、経営悪化から事業譲渡及び解散が不可避になったと判断して、事業を譲渡する前に退職者の増加により事業継続が困難になる事態を防ぐため、選択定年制を廃止するとの方針を立てた。そして同年9月4日から7日にかけて、選択定年制の平成13年度における対象者(有資格者)43名に対し、経営悪化により合併が避けられない事態であるため(事業譲渡についてはあえて説明せずに)、同制度を廃止し、同時点での申出の有無にかかわらず、同制度の適用はしないとの方針を説明し、さらに同年9月18日の理事会で選択定年制の廃止およびこれを即日実施する旨を決定した。その後Y組合は、Xらを含む7名に対し、上記の選択定年制度不適用方針を説明して退職願を返却したが、X1のみがこれに異議を留めたうえで受領した。
なお、平成14年3月31日、上記説明と異なり、Y組合は職員全員を解雇し、同年4月1日、事業全部を上部団体等に譲渡し、解散した。
1審判決(横浜地小田原支判平15.4.25労判931号24頁)は、Y組合の選択定年制度適用の諾否決定には制約があり、同制度の趣旨目的に沿った合理的な裁量を逸脱する場合には、承諾があったとして、同制度の適用による退職の効果が生じると判断し、控訴審(東京高判平15.11.27労判931号27頁)も若干の理由を追加してこれを支持したので、Y組合が上告したのが本件である。

2.判決の概要

本件選択定年制による退職は、従業員がする各個の申出に対し、Y組合がそれを承認することによって、所定の日限りの雇用契約の終了や割増退職金債権の発生という効果が生ずるものとされており、Y組合がその承認をするかどうかに関し、Y組合の就業規則及びこれを受けて定められた本件要項において特段の制約は設けられていないことが明らかである。もともと、本件選択定年制による退職に伴う割増退職金は、従業員の申出とY組合の承認とを前提に、早期の退職の代償として特別の利益を付与するものであるところ、本件選択定年制による退職の申出に対し承認がされなかったとしても、その申出をした従業員は、上記の特別の利益を付与されることこそないものの、本件選択定年制によらない退職を申し出るなどすることは何ら妨げられていないのであり、その退職の自由を制限されるものではない。したがって、従業員がした本件選択定年制による退職の申出に対してY組合が承認をしなければ、割増退職金債権の発生を伴う退職の効果が生ずる余地はない。なお、前記事実関係によれば、Y組合が、本件選択定年制による退職の申出に対し、Xらがしたものを含め、すべて承認をしないこととしたのは、経営悪化から事業譲渡及び解散が不可避となったとの判断の下に、事業を譲渡する前に退職者の増加によりその継続が困難になる事態を防ぐためであったというのであるから、その理由が不十分であるというべきものではない。

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