社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【雇止め】津田電気計器事件(最一小判平24.11.29労判1064号13頁)

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津田電気計器事件(最一小判平24.11.29労判1064号13頁)

1.事件の概要

Xは、電子制御機器・電子計測機器の製造・販売を主たる業務内容とするY社と期間の定めのない雇用契約を締結してた。Y社では、定年は60歳と定められ、従業員の過半数代表者との書面協定に基づき、高年齢者継続雇用規定(以下「本件規定」という。)を定め、従業員に周知していた。
本件規程の概要は次のとおりである。

  • ① 継続雇用を希望する高年齢者のうちから採用する。
  • ② 高年齢者の在職中の業務実態・業務能力についての査定帳票の内容等を点数化し、総点数が0点以上の者を採用し、これに満たない者は採用せず、また、採用した高年齢者の労働時間につき、総点数が10点以上の者は週40時間以内とし、これに満たない者は週30時間以内とする。
  • ③ 継続雇用の最長期限は満64歳までの雇用とし、満64歳に達した日をもって退職する。
  • ④ 賃金は、満61歳時の基本給の額・採用後の1週間の労働時間から所定の計算式で算出される金額を本給の最低基準とし、所定の手当等を支給する。

Xは、Y社に以前から継続雇用の希望を伝えていたところ、Y社は、Xに本件規程所定の継続雇用基準を満たさず、本件規程に基づく再雇用契約を締結しないことを通知した。Xの在職中の業務実態及び業務能力に係る査定等の内容を本件規程所定の方法で点数化すると、総点数は1点となり、また、本件規程に基づき労働時間を週30時間とする再雇用契約が成立した場合のXの月額賃金は、19万9293円となる。なお、Y社は、直近の査定帳票を用いず、賞罰実績につき表彰実績を加算しないなど評価を誤り、総点数を0点に満たないと評価していた。
原審は、労働者が本件規程所定の継続雇用基準を満たす場合、Y社には継続雇用を承諾する義務が課せられ、その不承諾は使用者の権利濫用に当たり、労働時間を週30時間以内とする雇用契約が際率したと判断したが、これに対して、Y社が上告したのが本件である。

2.判決の概要

期限の定めのない雇用契約及び定年後の嘱託雇用契約によりY社に雇用されていたXは、在職中の業務実態及び業務能力に係る査定等の内容を本件規程所定の方法で点数化すると総点数が1点となり、本件規程所定の継続雇用基準を満たすものであったから、Xにおいて嘱託雇用契約終了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があると認められる一方、Y社においてXにつき上記に継続雇用基準を満たしていないものとして本件規程に基づく再雇用をすることなく嘱託雇用契約の終期の到来によりXの雇用が終了したものとすることは、他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない以上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものといわざるを得ない。
したがって、・・・(中略)Y社とXとの間に、雇用契約の終了後も本件規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当であり、その期限や賃金、労働時間等の労働条件については本件規程の定めに従うことになるものと解される。
本件規程によれば、Xの再雇用後の労働時間は週30時間以内とされることになるところ、Xについて再雇用後の労働時間の週30時間未満となるとみるべき事情はうかがわれないから、・・・(中略)労働時間は週30時間となるものと解するのが相当である。