日本郵便事件(最二小判平30.9.14労経速2361号)
審判:最高裁判所
裁判所名:最高裁判所第二小法廷
事件番号:平成29年(受)347号
裁判年月日:平成30年9月14日
裁判区分:判決
1.事件の概要
X1~X9(以下「Xら」という)は、郵便事業を行っているY社で郵便関連事業に従事していた。Y社の就業規則には、上限条項(「会社の都合による特別な場合のほかは、満65歳に達した日以後における最初の雇用契約期間の満了の日が到来したときは、それ以後は、雇用契約を更新しない」との規定)が定められており、この上限条項に基づいて上告人らに雇止めを通知し、有期労働契約の更新を行わなかった。
これに対し、XらがY社に、労働契約上の地位確認及び雇止め後の賃金支払い等を求めて提訴した。第一審、第二審ともに、雇止めを有効としたため、Xらが上告したのが本件である。
2.判決の概要
屋外業務等に対する適性が加齢により逓減し得ることを前提に、その雇用管理の方法を定めることが不合理とはいえず、事業規模等に照らし、加齢による影響の有無や程度を労働者ごとに検討して個別に判断するのではなく、一定の年齢に達した場合に契約を更新しない旨定めることには相応の合理性がある。本件上限条項は、労働契約法7条にいう合理的な労働条件を定めるものということができる。
旧公社の非常勤職員であった者がY社との間で有期労働契約を締結することにより、旧公社当時の労働条件がY社に引き継がれるということはできず、本件上限条項を定めたことにより旧公社当時の労働条件を変更したものということはできない。
本件雇止めの時点において、実質的に無期労働契約と同視し得る状態にあったということはできない。また、本件上限条項はあらかじめ労働者に周知させる措置がとられていたほか、満65歳以降における契約の更新がされない旨を説明する書面が交付されていたこと、既に周囲の期間雇用社員が本件上限条項による雇止めを受けていたことからすれば、雇止めの時点において、期間満了後もその雇用関係が継続されるものと期待することに合理的な理由があったということはできない。
したがって、雇止めは適法であり、有期労働契約は期間満了によって終了したものというべきである。