社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【懲戒処分】目黒電報電話局事件(最三小判昭和52.12.13民集31巻7号974頁)

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1.事件の概要

Xは、Y社の職員である。昭和42年6月16日から同22日まで、「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と記載した小型プレートを、作業着左胸に着用して勤務した。上司らはプレートを取り外すよう注意したが、Xはこれに従わなかった。またXは、この取りはずし命令に抗議する目的で、休憩時間中に許可を受けることなく、抗議の意見等を記載した内容のビラ数十枚を休憩室および食堂で職員に手渡しまたは机上に置くという方法で、配布した。そこで、Y社は、これらの行為が、就業規則の各規定(「職員は、局所内において、選挙運動その他の政治運動をしてはならない。」、「職員は、局所内において、演説、集会、貼紙、掲示、ビラの配布その他これに類する行為をしようとするときは、事前に別に定めるその局所の管理責任者の許可を受けなければならない。」)に違反するとして、懲戒戒告処分に処した。

2.判決の概要

元来、職場は業務遂行のための場であって政治活動その他従業員の私的活動のための場所ではないから、従業員は職場内において当然には政治活動をする権利を有するというわけのものでないばかりでなく、職場内における従業員の政治活動は、従業員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせるおそれがあり、また、それが使用者の管理する企業施設を利用して行われるものである以上その管理を妨げるおそれがあり、しかも、それを就業時間中に行う従業員がある場合にはその労務提供義務に違反するにとどまらず他の従業員の業務遂行をも妨げるおそれがあり、また、就業時間外であっても休憩時間中に行われる場合には他の従業員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後における作業能率を低下させるおそれのあることがあるなど、企業秩序の維持に支障をきたすおそれが強いものといわなければならない。したがって、一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべきである。


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