社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【ハラスメント】誠昇会北本共済病院事件(さいたま地判平成16.9.24労判883号38頁)

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誠昇会北本共済病院事件(さいたま地判平成16.9.24労判883号38頁)

1.事件の概要

Aは、准看護師としてY2に勤務していた。Y2には5名の看護師がいたが、Aが最年少で、Y1は最年長であった。男性看護師間では先輩の言動が絶対的とされ、先輩であるY1が後輩を服従させる関係が継続していた。その被告Y1の継続的ないじめにより自殺したAの両親であるXらが、Y1およびその使用者であるY2に対して損害賠償を請求したのが本件である。

2.判決の概要

Y1は、自ら又は他の男性看護師を通じて、Aに対し、冷やかし・からかい・嘲笑・悪口、他人の前で恥辱・屈辱を与える、たたくなどの暴力等の違法な本件いじめを行ったものと認められるから、民法709条に基づき、本件いじめによってAが被った損害を賠償する不法行為責任がある。
被告Y2は、Aに対し、雇用契約に基づき、信義則上、労務を提供する過程において、Aの生命及び身体を危険から保護するように安全配慮義務を尽くす債務を負担していたと解される。具体的には、職場の上司及び同僚からのいじめ行為を防止して、Aの生命及び身体を危険から保護する安全配慮義務を負担していたと認められる。
これを本件についてみれば、被告Y1らの後輩に対する職場でのいじめは従前から続いていたこと、Aに対するいじめは3年近くに及んでいること、本件職員旅行の出来事や外来会議でのやり取りは雇い主である被告Y2も認識が可能でああったことなど上記認定の事実関係の下において、被告Y2は、被告Y1らのAに対する本件いじめを認識することが可能であったにもかかわらず、これを認識していじめを防止する措置を採らなかった安全配慮義務違反の債務不履行があったと認めることができる。
したがって、被告Y2は、民法415条に基づき、上記安全配慮義務違反の債務不履行によってAが被った損賠を賠償する責任がある。

債務不履行による損害賠償)
民法415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。


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