関西電力事件(最三小判平成7.9.5労判680号28頁)
参照法条 : 労働基準法3条
裁判年月日 : 1995年9月5日
裁判所名 : 最高三小
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成4年 (オ) 10
1.事件の概要
Xら4名(X1~X2)は、Y社の従業員である。Y社は、Xらを共産党員またはその同調者であるとして、職場の内外で監視し、尾行したり、他の従業員に交際しないように働きかけ、あるいはロッカーを無断で開けて「民育手帳」を撮影したりした。そこで、Xらが不法行為に基づく損害賠償、謝罪文の掲示掲載を請求した。第一審、原審とも、損害賠償を認め、謝罪文の掲示等は棄却した。Y社のみ上告したのが本件である。
2.判決の概要
Y社は、Xらにおいて現実には企業秩序を破壊し混乱させるなどのおそれがあると認められないにもかかわらず、Xらが共産党員又はその同調者であることのみを理由とし、その職制等を通じて、職場内外でXらを継続的に監視する態勢を採った上、Xらが極左分子であるとか、Y社の経営方針に非協力的な者であるなどとその思想を非難して、Xらとの接触、交際をしないよう他の従業員に働き掛け、種々の方法を用いてXらを職場で孤立させるなどしたというのであり、更にその過程の中で、X1及びX2については、退社後同人らを尾行したり、特にX2については、ロッカーを無断で開けて私物である「民育手帳」を写真に撮影したりしたというのである。そうであれば、これらの行為は、Xらの職場における自由な人間関係を形成する自由を不当に侵害するとともに、その名誉を毀損するものであり、また、X2らに対する行為はそのプライバシーを侵害するものであって、同人らの人格的利益を侵害するものというべく、これら一連の行為がY社の会社としての方針に基づいて行われたというのであるから、それらは、それぞれY社の各Xらに対する不法行為を構成するものといわざるを得ない。
3.解説
中央観光バス事件にみられた共同絶交が大企業でも見られた例。会社が特定の思想信条を有していた者を(被害妄想から??)危険人物として企業外に排除しようとして、職場の内外において監視するとともに他の従業員を近づけないような孤立化の労務方針があり、この違法性が争われた判例。
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