社会保険労務士川口正倫のブログ

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健康保険法についての重要な通達④

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健康保険法についての重要な通達④~社労士試験に出るかも

健康保険法についての重要な通達① こちら
健康保険法についての重要な通達② こちら
健康保険法についての重要な通達③ こちら
健康保険法についての重要な通達④ こちら
健康保険法についての重要な通達⑤ こちら

健康保険法第97条 被保険者が療養の給付(保険外併用療養費に係る療養を含む。)を受けるため、病院又は診療所に移送されたときは、移送費として、厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支給する。
2 前項の移送費は、厚生労働省令で定めるところにより、保険者が必要であると認める場合に限り、支給するものとする。

通院などの移送費(平成6年保険発119号・庁保険発9号)
通院などの一時的、緊急的と認められない場合については、移送費の支給の対象とはならない。医師・看護師等の付添人については、医学的管理が必要であったと医師が判断する場合に限り、原則として1人までの交通費を支給する。*1

傷病手当金
健康保険法第99条 被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

自費診療(昭和3年事発1811号・昭和2年保発345号)
「療養のため」とは、保険給付としての療養の給付を受けている場合に限らず、自費診療を受け、又は病後の自宅療養で、この間労務不能であることについて相当の証明があれば、傷病手当金が支給される。

資格取得前の疾病(昭和26年保文発1346号)
被保険者の資格取得前にかかった疾病又は負傷により資格取得後に療養のため休業するときも、傷病手当金は支給される。

労務不能の認定①(平成15年保保発0225007号・庁保険発4号)
被保険者がその本来の職場における労務に就くことが不可能な場合であっても、現に職場転換その他の措置により就労可能な程度の他の比較的軽微な労務に服し、これによって相当額の報酬を得ているような場合は、労務不能には該当しないものであるが、本来の職場における労務に対する代替的性格をもたない副業ないし内職等の労務に服することにより、賃金を得ているような場合等は、労務不能に該当する。したがって、被保険者が労務に対する報酬を得ていることを理由に直ちに労務不能でない旨を認定することなく、労務内容、労務内容との関連におけるその報酬額等を十分検討のうえ労務不能に該当するかどうかを判断しなければならない。

労務不能の認定②(昭和31年保文発340号)
労務不能か否かの判断に関しては必ずしも医学的基準によらず、その被保険者の従事する業務の種別などを考慮して、その本来の業務に耐え得るか否かを基準として社会的通念に基づき認定するものであること。

労務不能と認められる例
・傷病の状態が、工場での労務には服せないが、家事の副業に従事できる状態(昭和3年保理3176号)
・休業を要するほどではないが、遠方で、通院のため事実上働けないようなとき(昭和2年保理2211号)

労務不能と認められない例
・保険事故の範囲外の疾病等の手術により、労務不能となったとき(昭和4年保理1704号)
労働安全衛生法の規定により伝染病の恐れがある保菌者に対し、事業主が休業を命じたが、その症状から労務不能と認められないとき(昭和25年保文320号)
ただし、隔離収容のため労務不能になったときは、傷病手当金の対象となる(昭和29年保険発261号)
・医師の指示又は許可のもとに半日出勤し、従前の業務に服する場合、又は就業時間を短縮せず配置転換により従前の業務より軽い労働に服する場合(昭和29年保文発14236号)
・午前中のみ出勤し、従前の業務に服する場合(昭和32年保文発340号)

2日にまたがる勤務の待期期間(昭和4年保規488号)
工場又は事業場で昼夜交替して作業を行うため、夜勤の者が午後6時から翌日の午前6時まで勤務し、1日の作業ではあるが、2日にまたがる場合の待期は暦日による。

有給休暇で処理した場合の待期期間(昭和26年保文発419号)
待期期間の3日間を年次有給休暇として処理した場合でも待期は完成し、欠勤4日目から傷病手当金が支給される。

公休日の傷病手当金昭和2年保理659号)
工場の公休日であっても、療養のため労務に服することができない場合は、傷病手当金を支給する。

待機期間と報酬支払の有無(昭和26年保文発419号)
傷病手当金の待期期間は、原則として労務不能となった日から起算し、報酬の支払いのいかんにかかわらない。

待期の要否(昭和2年保理3222号)
最初に待期を満たせば、労務復帰後、再び同じ疾病等で労務不能になったときは、待期は不要である。

待期の起算日
・就業時間中に疾病等が発生したときは、その日は待期期間の3日間に含まれる(昭和28年保発69号)。
・業務終了後は、翌日から起算する(昭和5年保発52号)。
・就業時間中に疾病等が発生したときは、その日の賃金の全部又は一部を受けているか否か、その後有給休暇による給与を受けているか否かは、待期期間の算定には無関係である(昭和26年保文発419号)

未支給の傷病手当金
・被保険者が死亡したとき、傷病手当金又は療養費の請求権等は、その相続権者が当然請求権を有する(死亡した日も支給される)(昭和32年保文発690号・昭和2年保理719号)。
・被保険者資格取得前の疾病等について、資格取得後に療養する場合、傷病手当金、療養の給付は支給される(昭和26年保文発1346号)。

欠勤中の報酬の減額(昭和26年保文発1821号)
・病気で欠勤中の報酬の減額により傷病手当金の額を減額することは適切でない。

出産育児一時金
健康保険法101条 被保険者が出産したときは、出産育児一時金として、政令で定める金額*2を支給する。

出産(昭和27年保文発2427号)
出産育児一時金が支給されるのは、妊娠4か月以上の出産に限られる。この場合、妊娠1か月は28日とし、妊娠4か月以上とは、妊娠85日以上の出産のことをいう。

死産の場合(昭和27年保文発2427号)
妊娠4か月以上の出産であれば、生産、死産、流産(人工流産を含む。)又は早産を問わず、出産育児一時金が支給される。

正常出産(昭和17年社発82号)
正常出産で医師の手当を受けたときは、療養の給付の対象にならないが、出産育児一時金は全額支給される。

双生児(昭和16年社発991号)
双生児は、胎盤数にかかわらず、1産児排出を1出産と認め、胎児数に応じて出産育児一時金を支給する。

労災法による療養の給付との併給(昭和24年保文発523号)
妊娠6か月の被保険者が作業中に転んで強打して早産し、医師の治療を受けたときは、業務上の疾病となり、労災法による療養の給付を受けても、出産一児金は支給される。

(埋葬料)
第100条 被保険者が死亡したときは、その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うものに対し、埋葬料として、政令で定める金額*3を支給する。
2 前項の規定により埋葬料の支給を受けるべき者がない場合においては、埋葬を行った者に対し、同項の金額の範囲内においてその埋葬に要した費用に相当する金額を支給する。*4

埋葬を行うもの(昭和2年保理2778号)
現実に埋葬を行う者又は行った者ではなく、埋葬を行うべき義務のある者をいう。

自殺(昭和26年保文発721号)
自殺による死亡は絶対的事故であり、埋葬料の支給を行う。

生計を維持していた者(昭和26年保文2162号・昭和6年保規133号)
民法上の親族、遺族である必要はない。
・被保険者が世帯主でなくてもよい。
・被保険者により生計を維持する者が、被保険者と同一世帯でなくてもよい。
・被保険者により全く生計を維持されていなかったときは、埋葬費を支給する。

行方不明(昭和4年保理1705号)
被保険者が社員旅行中に、船から落ちて行方不明となり、死体が見つからなかったときは、死んだことは確実だが、死体が見つからない場合と同じで、同行者の証明書等により死んだものとなり、埋葬許可証の添付なしに埋葬料又は埋葬費を求めることができる。

埋葬を行った者(昭和26年年保文発2162号)
現実に埋葬を行った者をいう。

自宅までの移送費用(昭和2年保発925号)
埋葬費に含まれるものは、埋葬に直接要した実費として、霊柩代又は借料、霊柩運搬人夫代、葬式の際における支社霊前供物代、僧侶の謝礼等であるが、入院患者が死亡し、自宅まで移送する費用は含まれない。

傷病手当金又は出産手当金の継続給付)
健康保険法第104条 被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き一年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第百六条において「一年以上被保険者であった者」という。)であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。*5

待期期間が完成しないまま退職した場合(昭和32年保発2号の2)
被保険者が療養のため労働不能となってから3日目に退職し、資格喪失後もその状態が継続している場合であっても、継続給付としての傷病手当金を受給するには、資格喪失時において原則として傷病手当金の支給を受けていることが必要であるため、傷病手当金の支給は受けられない。

被保険者の資格喪失(昭和27年保文発5381号)
被保険者の資格喪失には任意適用事業所の取消も含まれる。*6

継続の条件(昭和27年保文発3532号)
「引き続き」とは、必ずしも同一保険者でなくとも構わない。なお、資格の得喪があっても、法律上の被保険者としての資格の連続、すなわち、同日得喪によって継続していればよいことになる。

資格喪失のときの傷病手当金昭和2年保理1423号・昭和3年保理2792号)
資格喪失のときに療養の給付だけを受けていた者は、資格喪失後に労務不能となっても、傷病手当金は支給されない。

継続給付(昭和3年保理2792号)
資格喪失の際に自費で療養を受けていたが、そのために労務不能となり、傷病手当金を支給されていた者は、傷病手当金の継続給付は支給される。

退職により報酬を受けなくなった場合(昭和27年保文発3367号)
報酬を受けることができるため傷病手当金を支給されない者が退職したとき、事業主より報酬を受けなくなれば当然にその日から傷病手当金が支給される。

(資格喪失後の出産育児一時金の給付)
健康保険法第106条 一年以上被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後六月以内に出産したときは、被保険者として受けることができるはずであった出産育児一時金の支給を最後の保険者から受けることができる。*7

出産に関する給付の調整(昭和48年保険発99号)
被保険者本人として出産育児一時金を受給するか、被扶養者としての家族出産育児一時金を受給するか、請求者の選択により、いずれか1つの給付を支給する。




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感想(1件)

*1:移送費には、一部負担金はない。また、医学的管理等に要する費用を支払った場合、移送費ではなく療養費が支給される。

*2:出産育児一時金は、一児につき定額の40万4,000円が支給される。ただし、一定の場合(産科医療保障制度加入医療機関における制度対象分娩)には、40万4,000円に、3万円を超えない範囲で保険者が定める額を加算した額(1万6,000円)とされている。なお、流産及び人工妊娠中絶は制度対象分娩に該当しないため、出産育児一時金は、40万4,000円となる。

*3:埋葬料は、5万円が支給される。支給の申請に際して証拠書類の添付を必要としないが、これは埋葬に要した費用と埋葬料の支給額が無関係なため。

*4:埋葬費は、5万円の範囲内で、埋葬に要した実費額となる。したがって埋葬費は、現実に埋葬を行った後でなければ請求できない。また、請求の際には埋葬に要した費用の金額に関する証拠書類の添付が必要となる。

*5:傷病手当金、出産手当金ともに、資格喪失の際に受給していない場合は、資格喪失後に要件を満たしたとしても、継続給付は支給されない。

*6:任意適用事業所の取消による資格喪失であっても傷病手当金、出産手当金の継続給付は支給されるが、任意継続被保険者となることはできない。

*7:資格喪失後に出産について受けられる保険給付は、出産育児一時金のみ。