社会保険労務士川口正倫のブログ

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健康保険法についての重要な通達③

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健康保険法についての重要な通達③~社労士試験に出るかも

健康保険法についての重要な通達① こちら
健康保険法についての重要な通達② こちら
健康保険法についての重要な通達③ こちら
健康保険法についての重要な通達④ こちら
健康保険法についての重要な通達⑤ こちら

(療養の給付)
健康保険法第63条 被保険者の疾病又は負傷に関しては、次に掲げる療養の給付を行う。
一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

身体の違和感による受診(昭和10年保規338号)
身体に違和感を覚えて診察を受けたが、結果的になんらの異常が認められなかった場合でも、その診察については療養の給付の対象となる。

出産
正常出産において、医師の手当を受けても療養の給付の対象とはならない。ただし、出産育児一時金は支給される。

異常分娩(昭和29年保文発8752号)
医師の手当を必要とする異常分娩で、保険医療機関で手当を受けた場合は、療養の給付の対象となる。

人工妊娠中絶(昭和27年保発56号)
単なる経済的理由によるものでなければ、人工妊娠中絶は療養の給付の対象となる。

資格取得前に発生した疾病(昭和26年保文発4111号・昭和31年保文発10148号・昭和23年保文発781号)
・被保険者の資格取得が適正であれば、その資格取得前に発生した疾病又は負傷に対しても被保険者である期間、療養の給付が行われる。
・事業主が資格取得の届出を行う前に生じた事故であっても、遡って資格取得の確認が行われれば、保険事故として給付を行うことができる。
・保険事故発生後に被扶養者となった者でも、給付される。
・実質上の使用関係がない者が、偽って資格を取得して保険給付を受けた場合は、その資格を取り消し保険給付に要した費用は返還される。

温泉療養(昭和28年保文3999号)
温泉療養は、温泉のある病院又は診療所において、直接医師の指導の下に行われる理学的療法によるものに限って療養の給付の対象となる。

(一部負担金の額の特例)
健康保険法第75条の2 保険者は、災害その他の厚生労働省令で定める特別の事情*1がある被保険者であって、保険医療機関又は保険薬局に第七十四条第一項の規定による一部負担金を支払うことが困難であると認められるものに対し、次の措置を採ることができる。
一 一部負担金を減額すること。
二 一部負担金の支払を免除すること。
三 保険医療機関又は保険薬局に対する支払に代えて、一部負担金を直接に徴収することとし、その徴収を猶予すること。

一部負担金等の徴収猶予及び減免の取扱い(平成18年庁保発1115001号)
保険者から一部負担金等の徴収猶予または減免の措置を受けた被保険者が、その証明書を提出して保険医療機関で療養の給付を受けた場合、保険医療機関は徴収猶予又は減額もしくは免除された一部負担金等相当額については、審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会)に請求することとされている。

一部負担金等の徴収猶予の期間(平成18年保保発0914001号)
一部金負担等の徴収猶予は、6か月以内の期間に限って行われる。

健康保険法第85条第2項 入院時食事療養費*2の額は、当該食事療養につき食事療養に要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額(その額が現に当該食事療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に食事療養に要した費用の額)から、平均的な家計における食費の状況及び特定介護保険施設等(介護保険法第五十一条の三第一項に規定する特定介護保険施設等をいう。)における食事の提供に要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定める額(所得の状況その他の事情をしん酌して厚生労働省令で定める者については、別に定める額。以下「食事療養標準負担額」という。*3)を控除した額とする。

点滴栄養のみによる患者に対する入院時食事療養費の支給(平成18年厚労告92号)
点滴栄養は食事療養に該当しないため、入院時食事療養費は支給されない。

(保険外併用療養費)
健康保険法第86条 被保険者が、厚生労働省令で定めるところにより、第六十三条第三項各号に掲げる病院若しくは診療所又は薬局(以下「保険医療機関等」と総称する。)のうち自己の選定するものから、評価療養、患者申出療養又は選定療養を受けたときは、その療養に要した費用について、保険外併用療養費*4を支給する。

患者の同意(平成15年保発0701004号)
評価療養として掲げられている先進医療を行うにあたっては、患者に事前にその医療内容及び費用に関して説明し、文書により同意を得なければならない。

評価療養の例(平成20年厚労告98号・平成26年厚労告422号)
・別に厚生労働大臣が定める先進医療(先進医療ごとに別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合する病院又は診療所において行われるものに限る。)
医薬品医療機器等法に規定する治療(人体に直接使用される薬物に係るものに限る。)

選定療養の例(平成20年厚労告98号・平成24年厚労告156号)
・特別の療養環境の提供
・予約に基づく診察
・保健医療機関が表示する診療時間以外の時間における診察
・病床数が200以上の病院について受けた初診(他の病院又は診療所からの文書による紹介がある場合及び緊急その他やむを得ない事情がある場合に受けたものを除く。)
・病床数が200以上の病院について受けた再診(当該病院が他の病院又は診療所に対して文書による紹介を行う旨の申出を行っていない場合及び緊急その他やむを得ない事情がある場合に受けたものを除く。)
・診療報酬の算定方法に規定する回数を超えて受けた診療であって別に厚生労働大臣が定めるもの。
・別に厚生労働大臣が定める方法により計算した入院期間が180日を超えた日以後の入院及びその療養に伴う世話その他の看護(別に厚生労働大臣が定める状態等にある者の入院及びその療養に伴う世話その他の看護を除く。)

2以上の傷病について同時に初診又は再診を行った場合(平成22年保医発0305第1号)
同一の保険医療機関において、2以上の傷病に罹っている患者について、それぞれの傷病につき同時に初診又は再診を行った場合においても、初診料又は再診料(外来診療料を含む。)は1回に限り算定するものであること。

(療養費)
健康保険法第87条 保険者は、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給(以下この項において「療養の給付等」という。)を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。

療養の給付を行うことが困難であると保険者が認めた場合の特例(昭和3年保理1089号)
被保険者資格を取得したが、事業主が資格取得届の提出を怠り、被保険者証が交付されない間に自費で療養を受けたとき。

国外で診療を受けた場合(昭和56年保険発10号・庁保発2号)
海外出張等で海外にいる被保険者及び被扶養者について保険給付を行うときは、国内の保険医療機関以外の病院等で療養等を受けた場合に準じて療養費もしくは家族療養費が支払われる。
・申請
現に海外にある被保険者からの支給申請は、原則として事業主を経由して行う。療養費は事業主が代理受領し、保険者からの海外への療養費送金は行われない。
・支払額の算定
支払額の算定に用いる邦貨換算率は、その支給決定日における外国為替換算率(売レート)を用いる。

支給対象の具体例
・補聴器、眼鏡は療養費の支給対象となる治療材料の範囲に含まれない。
・輸血のための血液料金は療養費の支給対象となるが、保存血は療養の給付として現物給付される(昭和14年社医発336号)。
・医師の指示により柔道整復師の手当を受ける必要があるときは、療養費もしくは家族療養費を支給する(昭和18年保発796号)。
・脱臼又は骨折に対する施術については、医師の同意を得たものでなければならない。また、応急手当をする場合はこの限りではないが、応急手当後の施術は医師の同意が必要である(平成9年保険発57号)。
・現に医師が診療中の骨折又は脱臼については、当該医師の同意が得られている場合のほかは、施術してはならない。ただし、応急手当をする場合はこの限りではない(平成9年保険発57号)。
・義手義足は、療養の過程においてその傷病の治療のために必要と認められた場合に療養費として支給するが、病状が固定した後に装着した義手義足に要する費用及びその修理に要する費用を療養費としては支給しない(昭和18年保発796号)
・緊急のときでも他に適当な保険医がいるのに、好んで保険医以外の医師の手当等を受けたときは、療養費は支給しない(昭和26年保文1017号)。
・あんま、鍼灸術については、緊急その他やむを得ないときを除いては、療養費の支給に関してはすべて医師の同意が必要である(昭和25年保4号)。

健康保険法第88条第4項 訪問看護療養費の額は、当該指定訪問看護につき指定訪問看護に要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定めるところにより算定した費用の額から、その額に第七十四条第一項各号に掲げる場合の区分に応じ、同項各号に定める割合を乗じて得た額(療養の給付に係る同項の一部負担金について第七十五条の二第一項各号の措置が採られるべきときは、当該措置が採られたものとした場合の額)を控除した額とする。

被保険者の負担内容(平成20年保発0305003号)
被保険者が訪問看護を受けたときは、基本利用料として、厚生労働大臣が定める基準により算定した指定訪問看護の費用から訪問看護療養費支給額を差し引いた額と、指定訪問看護ステーションの定める超過時間・時間外等のその他の料金がある場合はその費用を負担しなければならない。

指定訪問看護の算定(平成20年保発0305003号)
指定訪問看護は、末期の悪性腫瘍など厚生労働大臣が定める疾病等を除き、利用者1人につき週3日を限度としている。


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感想(1件)

*1:「被保険者が、震災、風水害、火災その他これらに類する災害により、住宅、家財又はその他の財産について著しい損害を受けたこと。」とされている。したがって、「所得が低い」という事情は、厚生労働省令で定める特別の事情としては認められない。また、一部負担金の減免措置は「保険者」が行うものであり、保険医療機関が行うことはできない。

*2:現物給付として支給される。

*3:食事療養標準負担額は高額療養費の対象とはならない。

*4:保険外併用療養費は現物給付として支給される。