社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



算定基礎届等に係る総括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設について(令2.12.18年管管発1 2 1 8 第2号)

算定基礎届等に係る総括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設について(令2.12.18年管管発1 2 1 8 第2号)

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T201222T0020.pdf


算定基礎届等に係る総括表の廃止及び賞与不支給報告書の新設について健康保険法施行規則(大正15 年内務省令第36 号。以下「健保則」という。)第25条及び厚生年金保険法施行規則(昭和29 年厚生省令第37 号。以下「厚年則」という。)第18 条の規定に基づく「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届/70 歳以上被用者算定基礎届」並びに健保則第27 条及び厚年則第19 条の5の規定に基づく「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届/70 歳以上被用者賞与支払届」(以下「算定基礎届等」という。)を提出する際には、現状、「健康保険・厚生年金保険被保険者月額算定基礎届総括表」及び「健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届総括表」(以下「総括表」と総称する。)の添付を求めている。
デジタルガバメント実行計画(令和元年12 月20 日閣議決定)等において、国民の利便性の向上につながる行政手続については優先的に、オンライン化、添付書類の省略を進めることとされたところであり、厚生年金保険関係の手続においても、事業主による電子申請の利用を促進するとともに、添付書類の省略を図る必要がある。
今般、下記のとおり算定基礎届等の提出の際に添付する総括表を廃止する等の対応を行うため、その内容について御了知いただき、実施に当たっては、遺漏のないよう取り扱われたい。


                               記

1.総括表の取扱い

算定基礎届等の提出の際に添付する以下の総括表を廃止すること。
・健康保険・厚生年金保険 被保険者月額算定基礎届総括表
・健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届総括表
船員保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届総括表

2.賞与を支給しなかった場合の取扱い

適用事業所の事業主が、健保則第19 条及び厚年則第13 条の規定に基づく新規適用事業所の届出(以下「健康保険・厚生年金保険新規適用届」という。)等を日本年金機構に提出する際に登録した賞与支払予定月に、いずれの被保険者及び70 歳以上被用者に対しても賞与を支給しなかった場合は、当該適用事業所の事業主に対して、別添1の「健康保険・厚生年金保険 賞与不支給報告書」又は別添2の「船員保険・厚生年金保険 賞与不支給報告書」の提出を求めること。
また、登録されている賞与支払予定月に変更がある場合は、当該適用事業所の事業主に対して、変更後の賞与支払予定月の記載を求めること。

3.施行期日

本取扱いは、令和3年4月1日から施行すること。

別添1:
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T201222T0021.pdf

別添2:
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T201222T0022.pdf

2021年4月1日から36協定届が新しくなります

2021年4月1日から36協定届が新しくなります

特に区別していない会社も多いとは思いますが、36協定と36協定というのは別のものです。
36協定という、使用者と労働者の間の契約を締結し、締結した旨とその概要を労働基準監督署に届け出るのが36協定です。
今回、押印・署名が廃止されるのは、36協定についてです。
一方、36協定の方は労基署に提出しないとはいえ、契約の一種ですので、通常の契約書と同様に、締結したことを証することができるよう、記名押印もしくは署名をして会社で保管しておくことになります。
ですので、押印・署名をしなくても労働基準監督署に36協定を提出することはできますが、36協定届と36協定を区別していない会社では、これまでと同様に記名押印もしくは署名により提出すべきです。


1.主な変更点

①36協定届における押印・署名の廃止

労働基準監督署に届け出る36協定届について、使用者の押印及び署名が不要となります。
※記名はしていただく必要があります。

②36協定の協定当事者に関するチェックボックスの新設

36協定の適正な締結に向けて、労働者代表(※)についてのチェックボックスが新設されます。
※労働者代表:事業場における過半数労働組合又は過半数代表者

2.施行時期

2021年4月1日

3.新書式

こちらからダウンロードできます。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/index.html

記載例
https://www.mhlw.go.jp/content/000708408.pdf

労働基準法施行規則等の一部を改正する省令に関するQ&A~行政手続における押印原則の見直し~

労働基準法施行規則等の一部を改正する省令に関するQ&A~行政手続における押印原則の見直し~

https://www.mhlw.go.jp/content/000709033.pdf

1.押印及びチェックボックス関係

1-1

(Q)改正前の労基則等に定める様式(以下「旧様式」といいます。)と改正後の労基則等に定める様式(以下「新様式」といいます。)のどちらを用いて届出等を行うべきでしょうか。

(A)様式の新旧については、届出日が施行日(令和3年4月1日)の前後いずれかによって判断されます。届出日が令和3年3月31 日以前であれば、令和3年4月1日以降の期間を定める協定であっても、原則、旧様式を用いることとなります。
しかし、届出日が令和3年3月31 日以前であっても、新様式を用いることを妨げるものではありません。その場合は、協定当事者の適格性にかかるチェックボックスにチェックする必要はありませんが、使用者の記名押印又は署名は必要です。
なお、令和2年8月11 日付け基発0811 第1号「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた労働基準法等に基づく届出等の受付等に係る当面の対応について」で示しているとおり、新型コロナウイルス感染症の感染状況等を踏まえ、令和3年3月31 日以前であっても、使用者や労働者の押印又は署名がなくとも提出することができます。
また、令和3年4月1日以降に旧様式を用いる場合における留意事項については、Q1-4をご参照ください。

※ 新様式は以下のURLからダウンロードしていただけます。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/index.html

※ 36 協定届の新様式の記載例は以下のURLからご覧いただけます。
https://www.mhlw.go.jp/content/000708408.pdf

1-2

(Q)いつから使用者や労働者の押印又は署名がなくとも届出等が可能となりますか。

(A)施行日以降に届出等を行う場合は、使用者や労働者の押印又は署名をする必要はなく、記名のみで届出等が可能となります。
なお、Q1-1の「なお書き」のとおり、令和3年3月31 日以前であっても、使用者や労働者の押印又は署名がなくとも提出することができます。

1-3

(Q)就業規則の意見書や寄宿舎規則にかかる同意書における労働者の押印又は署名も不要になりますか。

(A)今般の改正により、就業規則の意見書や寄宿舎規則にかかる同意書における労働者の押印又は署名も不要となります。
なお、Q1-1の「なお書き」のとおり、令和3年3月31 日以前であっても、労働者の押印又は署名がなくとも提出することができます。

1-4

(Q)施行日以降に旧様式で届出等を行うことはできますか。その際の留意事項はありますか。

(A)施行日以降も、当分の間、旧様式を用いることができます。
旧様式を用いる場合は、以下の点に留意する必要があります。
具体的には、
① 旧様式の押印欄を取り消し線で削除する
② 協定届・決議届については、旧様式に、協定当事者の適格性にかかる
チェックボックスの記載を直接追記する、または同チェックボックスの記載を転記した紙を添付することが必要です。
また、施行日以降に協定届・決議届を届け出る場合は、同チェックボックスにチェックがないと、形式上の要件に適合している協定届・決議届とはなりません。
チェックボックスの記載を転記した紙は、以下のURLの通知の別添2をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000708982.pdf

1-5

(Q)協定書や決議書における労使双方の押印又は署名は今後も必要ですか。

(A) 協定書や決議書における労使双方の押印又は署名の取扱いについては、労使慣行や労使合意により行われるものであり、今般の「行政手続」における押印原則の見直しは、こうした労使間の手続に直接影響を及ぼすものではありません。
引き続き、記名押印又は署名など労使双方の合意がなされたことが明らかとなるような方法で締結していただくようお願いします。

1-6

(Q)協定届や決議届において、協定当事者が過半数労働組合である場合、新設されるチェックボックス両方にチェックがないと形式上の要件に適合していないことになりますか。

(A) 今般の改正により、以下2つのチェックボックスが新たに設けられました。
① 様式に記載のある労働組合が、事業場の全ての労働者の過半数で組織する労働組合であるか、又は労働者の過半数を代表する者が事業場の全ての労働者の過半数を代表する者であるか
過半数代表者と締結した場合に、当該過半数代表者が管理監督者ではなく、かつ選出方法が適正であるか
協定当事者が過半数労働組合である場合は、①のチェックボックスのみにチェックをすれば、形式上の要件に適合する協定届・決議届となります。
協定当事者が過半数代表者である場合は、①②両方のチェックボックスにチェックしないと、形式上の要件に適合する協定届・決議届にはなりません。

2.電子申請関係

2-1

(Q)施行日以降は、電子申請で提出する際の電子署名電子証明書の取扱いはどのようになりますか。

(A)施行日以降は、労基則等に規定する届出等及び賃金の支払の確保等に関する法律施行規則(昭和51 年労働省令第26 号)第9条第2項に規定する認定の申請及び第14 条第2項に規定する確認の申請をe-Gov で提出する場合には、電子署名電子証明書の添付は不要となり、入力フォーマットに提出する者の氏名を記載することで提出することができます。

労働基準法施行規則等の一部を改正する省令の公布等に当たり留意すべき事項について(令2.12.22基監発1222第1号・基賃発1222第1号)

労働基準法施行規則等の一部を改正する省令の公布等に当たり留意すべき事項について(令2.12.22基監発1222第1号・基賃発1222第1号)

https://www.mhlw.go.jp/content/000708982.pdf


標記については、令和2年12月22日付け基発1222 第4号「労働基準法施行規則等の一部を改正する省令の公布等について」(以下「局長通達」という。)により示されたところであるが、下記に留意の上、円滑な施行に遺憾なきを期されたい。


                記

労働基準法施行規則等に規定する申請等の取扱い

⑴ 新旧様式への対応

労働基準法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第203 号)による改正後の労働基準法施行規則等(以下「改正後の労基則等」という。)に規定する様式(以下「新様式」という。)及び改正前の様式の押印若しくは署名又はチェックボックスの取扱いについては別添1のとおりであるので、形式上の要件等に適合していないものは、補正等の必要な対応を行うよう窓口で説明すること。
なお、賃金の支払の確保等に関する法律施行規則(昭和51 年労働省令第26 号)における申請の押印又は署名の取扱いについては別途通知する。

⑵ 協定当事者の適格性のチェックに係る対応

局長通達記の第2の2⑶の協定当事者の適格性に係るチェックボックス(以下「適格性チェックボックス」という。)を新設する様式については、令和3年4月1日以降、当該適格性チェックボックスにチェックがなされていることが形式上の要件となるので、受理に当たって以下の点に留意すること。
なお、協定当事者が労働者の過半数で組織する労働組合である場合は、労働者の過半数を代表する者が管理監督者ではなく、かつ適正に選出されたかを確認するチェックボックスにチェックがなされていなくても、形式上の要件に適合するものであること。

ア 令和3年3月31 日までの間
適格性チェックボックスは形式上の要件とはならないため、新様式で届出が行われた場合、当該適格性チェックボックスのチェックの有無にかかわらず、当然に受理するものであること。

イ 令和3年4月1日以降
適格性チェックボックスの記載の補正等を行っていない旧様式による届出(以下「チェックボックス不備の旧様式による届出」という。)については、形式上の要件に適合していないため、届出を行った使用者等に対し、新様式により改めて届出を行うか、チェックボックス不備の旧様式による届出に、必要事項にチェックした別添2を添付した上で改めて届出を行うよう指導すること。
また、チェックボックス不備の旧様式による届出が郵送で届いた場合には、別添2を添付して返戻する等により改めて届出を行うよう指導すること。
適格性チェックボックスが届出の形式上の要件となる令和3年4月1日までの間、労働基準監督署(以下「署」という。)の窓口における届出の受理の際、参考1の周知用リーフレット「2021 年4月~36 協定届が新しくなります」を活用し、新様式について重点的に周知すること。
その際、電子申請について、今般の改正により、電子署名を行い、電子証明書を併せて送信すること等に代えて申請等を行う者の氏名を電磁的記録に記録することで申請等が可能となり、利用しやすいものとなったことから、参考2の周知用リーフレット労働基準法最低賃金法などに定められた届出や申請は電子申請を利用しましょう!」を活用し、電子申請による申請等についても促すこと。

⑶ 申請等の受理に係る留意事項

ア 労使協定・決議に係る労使間の手続における記名押印又は署名の取扱い
今般の改正は、行政手続における申請等について、押印又は署名を不要とするものであるところ、労使協定・決議に係る労使間の手続は、労使慣行や労使合意により行われるものであり、その手続に直接影響を及ぼすものではない。このため、例えば、従前から、労使協定を締結する際、記名押印又は署名により労使双方の合意があることが明らかになるような手続を取っているものについても見直しが必要であるか問われた場合、当該記名押印又は署名の手続を不要とすることが望ましいなどの教示を行わず、労使双方の合意によるべきである旨を適切に教示すること。

イ 協定当事者の適切な選出等に係る確認
記名のみでの申請等を行うことが可能となることにより、適切な労使合意がないまま届出が行われる等の懸念が示されていることから、令和3年4月1日以降、必要に応じ、労使協定の締結状況、協定当事者の適格性等について使用者等から聴取するなど必要な確認を行うこと。
また、監督指導時においても、必要に応じ、同様の確認を行うこと。

2 電子申請における取扱い

使用者等は、令和3年4月1日以降、e-Gov において新様式により電子申請を行うことが可能となる。
申請・届出等処理支援システムにおいて新様式による申請等を審査した結果、形式上の要件に適合しないものについては、使用者等に対して形式上の要件に適合していない旨の補正指示書を発出すること。

3 改正内容の周知

⑴ 本省において実施する事項

ア 令和3年1月を目途に、全ての労働保険適用事業場に対して、参考1及び参考2の周知用リーフレットを送付する予定としている。また、当該リーフレットについては、厚生労働省のホームページに掲載するとともに、都道府県労働局(以下「局」という。)にも送付予定である。
イ 令和3年1月から3月上旬を目途に、使用者団体等に対する周知要請を行う予定としている。

⑵ 局署において実施する事項

参考1及び参考2の周知用リーフレットを活用し、各種説明会等のあらゆる機会をとらえ、本改正内容について幅広く周知を行うこと。

労働基準法施行規則等の一部を改正する省令の公布等について(令2.12.22基発1222第4号)

労働基準法施行規則等の一部を改正する省令の公布等について(令2.12.22基発1222第4号)

https://www.mhlw.go.jp/content/000708981.pdf


令和2年7月17 日に閣議決定された「規制改革実施計画」において、法令等又は慣行により、国民や事業者等に対して書面の作成・提出等、押印又は対面を求めている手続については、原則として全て、恒久的な制度的対応として、年内に、規制改革推進会議が提示する基準に照らして順次、必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行うこととされたところである。
これを踏まえ、労働政策審議会で議論された結果、労働基準法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第203 号。別添1参照。)が本日公布されたところであり、令和3年4月1日より施行される予定である。
改正後の労働基準法施行規則等の内容等は下記のとおりであるので、円滑な施行に万全を期すため、所要の準備及び施行に遺漏なきを期されたい。

                 記

第1 改正の趣旨

従来、労働基準法(昭和22 年法律第49 号。以下「労基法」という。)及びこれに基づく命令の規定並びに最低賃金法(昭和34 年法律第137 号。以下「最賃法」という。)の規定に基づく許可、認可、認定若しくは指定の申請、届出又は報告(以下「届出等」という。)を行う際には、届出等の様式等に押印又は署名を求めてきたところであるが、これらの届出等の様式等について押印又は署名(以下「押印等」という。)を求めないこととし、また、併せて労働者の過半数を代表する者(以下「過半数代表者」という。)の適正な選出及び電子申請の利便性の向上に向けた恒久的な制度的対応の一環として、労使協定・決議の届出様式に協定当事者の適格性を確認するチェックボックスを設け、また、電子申請時に、電子署名及び電子証明書の添付等のほか、利用者の氏名を電磁的記録に記録することをもって代えることができることとするなど、所要の改正を行うものであること。

第2 改正の内容

1 概要

労働基準法施行規則(昭和22 年厚生省令第23 号。以下「労基則」という。)、事業附属寄宿舎規程(昭和22 年労働省令第7号。以下「寄宿程」という。)、年少者労働基準規則(昭和29 年労働省令第13 号。以下「年少則」という。)、最低賃金法施行規則(昭和34 年労働省令第16 号。以下「最賃則」という。)及び建設業附属寄宿舎規程(昭和42 年労働省令第27号。以下「建寄程」という。)(以下「労基則等」という。)に規定する届出等の様式(以下「様式」という。)において使用者が押印する欄、及び使用者又は過半数代表者による押印等を義務づける規定を改め、その氏名を記載することで足りることとしたこと。

② 上記①に併せて、様式のうち、過半数労働組合の名称又は過半数代表者の氏名を記載するものについて、チェックボックスを設けることにより、協定当事者の適格性を確認することとしたこと。

③ 令和3年4月1日以降に行われる届出等については、労基則等における改正後の様式(別添2参照)を用いる必要があるが、改正前の様式については、同日以降においても当分の間、これを取り繕って使用することができる経過措置を設けることとしたこと。

④ 電子申請により、労基則等に規定する届出等並びに賃金の支払の確保等に関する法律施行規則(昭和51 年労働省令第26 号。以下「賃確則」という。)第9条第2項に規定する認定の申請及び第14 条第2項に規定する確認の申請(以下「申請等」という。)を行う際には、厚生労働省の所管する法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則(平成15 年厚生労働省令第40 号。以下「主務省令」という。)第6条第1項各号に掲げる措置として、例えば電子署名を行い、電子証明書を併せて送信する措置のほか、申請等を行う者の氏名を電磁的記録に記録することをもって代えることができることとしたこと。

2 対象となる申請等

⑴ 使用者の記名のみで届出等を行うことが可能となるもの

労基法関係
改正前の労基則第59 条の2第2項に基づき、労基法及びこれに基づく命令の規定により届出等を行う場合においては、以下の様式のほか、使用者の押印等を必要とする書類についても、氏名を記載することで足りること。

(ア) 労基則
①様式第1号(貯蓄金管理に関する協定届)
②様式第2号(解雇制限・解雇予告除外認定申請書)
③様式第3号(解雇予告除外認定申請書)
④様式第3号の2(1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届)
⑤様式第3号の3(清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に関する協定届)
⑥様式第4号(1年単位の変形労働時間制に関する協定届)
⑦様式第5号(1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届)
⑧様式第6号(非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書・届)
⑨様式第9号(時間外労働・休日労働に関する協定届)
⑩様式第9号の2(時間外労働・休日労働に関する協定届(限度時間を超えて時間外労働・休日労働を行わせる場合(特別条項)))
⑪様式第9号の3(時間外労働・休日労働に関する協定届(新技術・新商品の研究開発業務に従事する労働者に時間外労働・休日労働を行わせる場合))
⑫様式第9号の4(時間外労働・休日労働に関する協定届(適用猶予事業・業務に従事する労働者に時間外労働・休日労働を行わせる場合))
⑬様式第9号の5(時間外労働・休日労働に関する協定届(事業場外労働に関する協定の内容を付記して届け出る場合))
⑭様式第9号の6(時間外労働・休日労働に関する労使委員会の決議届)
⑮様式第9号の7(時間外労働・休日労働に関する労働時間等設定改善委員会の決議届)
⑯様式第10 号(断続的な宿直又は日直勤務許可申請書)
⑰様式第11 号(集団入坑の場合の時間計算特例許可申請書)
⑱様式第12 号(事業場外労働に関する協定届)
⑲様式第13 号(専門業務型裁量労働制に関する協定届)
⑳様式第13 号の2(企画業務型裁量労働制に関する決議届)
㉑様式第13 号の4(企画業務型裁量労働制に関する報告)
㉒様式第13 号の5(休憩自由利用除外許可申請書)
㉓様式第14 号(監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可申請書)
㉔様式第14 号の2(高度プロフェッショナル制度に関する決議届)
㉕様式第14 号の3(高度プロフェッショナル制度に関する報告)
㉖様式第14 号の4(職業訓練に関する特例許可申請書)
㉗様式第15 号(業務傷病に関する重大過失認定申請書)
㉘様式第23 号の2(適用事業報告)
㉙様式第24 号(預金管理状況報告)

(イ) 寄宿程
①様式第1号(寄宿舎設置・移転・変更届)
②様式第3号(事業附属寄宿舎規程第三十六条による適用特例許可申請書)
③様式第4号(事業附属寄宿舎規程第二章適用除外許可申請書)

(ウ) 年少則
①様式第1号(使用許可申請書)
②様式第3号(交替制による深夜業時間延長許可申請書)
③様式第4号(帰郷旅費支給除外認定申請書)

(エ) 建寄程
別記様式(寄宿舎設置・移転・変更届)
イ 最賃法関係
最賃則
①様式第1号(精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者の最低賃金の減額の特例許可申請書)
②様式第2号(試の使用期間中の者の最低賃金の減額の特例許可申請書)
③様式第3号(基礎的な技能及び知識を習得させるための職業訓練を受ける者の最低賃金の減額の特例許可申請書)
④様式第4号(軽易な業務に従事する者の最低賃金の減額の特例許可申請書)
⑤様式第5号(断続的労働に従事する者の最低賃金の減額の特例許可申請書)

過半数代表者の記名のみを求めることとするもの

ア 労基則
  労基則第49 条第2項の就業規則の意見書
イ 寄宿程
  寄宿程第1条の2第2項の寄宿舎規則に係る同意書
ウ 建寄程
  建寄程第2条第3項の寄宿舎規則に係る同意書

⑶ 協定当事者の適格性に係るチェックボックスを新設するもの

労基則
①様式第1号(貯蓄金管理に関する協定届)
②様式第3号の2(1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届)
③様式第3号の3(清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に関する協定届)
④様式第4号(1年単位の変形労働時間制に関する協定届)
⑤様式第5号(1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定届)
⑥様式第9号(時間外労働・休日労働に関する協定届)
⑦様式第9号の2(時間外労働・休日労働に関する協定届(限度時間を超えて時間外労働・休日労働を行わせる場合(特別条項)))
⑧様式第9号の3(時間外労働・休日労働に関する協定届(新技術・新商品の研究開発業務に従事する労働者に時間外労働・休日労働を行わせる場合))
⑨様式第9号の4(時間外労働・休日労働に関する協定届(適用猶予事業・業務に従事する労働者に時間外労働・休日労働を行わせる場合))
⑩様式第9号の5(時間外労働・休日労働に関する協定届(事業場外労働に関する協定の内容を付記して届け出る場合))
⑪様式第9号の6(時間外労働・休日労働に関する労使委員会の決議届)
⑫様式第9号の7(時間外労働・休日労働に関する労働時間等設定改善委員会の決議届)
⑬様式第12 号(事業場外労働に関する協定届)
⑭様式第13 号(専門業務型裁量労働制に関する協定届)
⑮様式第13 号の2(企画業務型裁量労働制に関する決議届)
⑯様式第14 号の2(高度プロフェッショナル制度に関する決議届)

⑷ 主務省令第6条第1項各号に掲げる措置に代えて、申請等を行う者の氏名を電磁的記録に記録することのみで申請等を行うことが可能となるもの

労基法及びこれに基づく命令の規定並びに最賃法の規定に基づく全ての届出等、賃確則第9条第2項に規定する認定の申請並びに第14 条第2項に規定する確認の申請

【同一労働同一賃金】学校法人中央学院事件(東京高判令2.6.24労経速2429号17頁)

学校法人中央学院事件(東京地判令2.6.24労経速2429号17頁)

✕が上告しましたが、棄却され本判決で確定しました(最高裁第二小法廷令和3年1月22日判決)。

1.事件の概要

本件は、A大学(以下「本件大学」という。)等を設置し、運営する学校法人であるY社との間で期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結し、当該労働契約に基づいて本件大学の非常勤講師として現に就労しているXが、Y社との間で期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結している本件大学の専任教員との間に、本俸の額、賞与、年度末手当、家族手当及び住宅手当の支給に関して、労働契約法第20条の規定に違反する労働条件の相違がある旨を主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、本件大学の専任教員に適用される就業規則等により支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額相当等の支払いと、本件大学の法学部長であったY社補助参加人らがXを本件大学の専任教員として採用することを約束したことにより、XとY社がXを本件大学の専任教員として雇用することについての契約締結段階に入ったにもかかわらず、Y社が上記の約束を破棄した等と主張して、Y社に対し、主位的には債務不履行に基づく損害賠償請求として、予備的には不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料等の支払いを求め、原審(東京地判令元.5.30)がXの請求をいずれも認容しなかったため、Xが控訴したのが本件である。

2.判決の概要

(原審に説示するような労働契約条の義務と職責における相違)
Xの業務内容は、定められた契約期間内に、定められた担当科目及びコマ数の授業を行うものであり、当該業務に伴う責任の程度も、当該授業の実施に伴うものに限られる。他方、本件大学の専任教員の業務内容は、定められた担当科目及びコマ数の授業を含む専攻分野についての教育活動にとどまらず、専攻分野についての研究活動、教授会での審議の実施、任命された大学組織上の役職、各種委員会等の委嘱または任命された事項、学生の修学指導・課外活動の指導、その他学長が特に必要と認めた事項に及ぶものであり、その具体的な内容を見ても、Xの業務とは大きく異なる。

争点① Xを専任教員との間に労働契約法20条の規定に違反する労働条件の相違があるかどうかについて

ア 労働条件の相違の不合理性の判断方法について

(ア)Xは、原判決が、本件大学におけるY社の具体的労働態様と平均的な専任教員の具体的労働実態とを比較しておらず、専任教員と非常勤講師一般の形式的契約内容の相違を判断しているにすぎないから判断方法を誤ったものである旨主張する。
しかし、本件においては、有期労働契約者であるXの賃金に関する労働条件、すなわち本俸の額、賞与等の支給の有無を、無期労働契約者である本件大学の専任教員の賃金に関する労働条件と比較し、労働契約の期間の定めの有無に関連して相違が生じている場合には、その相違が不合理と認められるかどうかについて、Xの業務の内容及び配置の変更の範囲その他事情を考慮して判断することになる(労働契約法20条)。そして、Xと本件大学の専任教員とでは、賃金に関する労働条件の相違が労働契約の期間の定めの有無に関連して生じていると認められる。この場合に、相違が不合理と認められるかの判断に当たって考慮すべき職務の内容とは、労働契約に基づいて労働者が行うべき業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度であると解するのが相当であるところ、原審も、このような観点から、教育活動、研究活動並びに学生の修学指導及び課外活動の指導や、大学運営に関する業務等について具体的に検討しており、その判断過程に不当な点はなく、判断自体も相当である。したがって、Xの上記主張を採用することはできない。

(イ)なお、Xは、本件大学において、他の多くの本件大学の非常勤講師とは異なり、長期間にわたって複数の「主要授業科目」たる専門科目を含む授業を専任教員の義務コマ数以上に担当してきたことを挙げ、それにはY社からの要請にXが協力すれば専任教員化を約束する示唆や約束があったという経緯があるのに、原審は、このような経緯に対する評価を欠き、Xの具体的労働実態に対する評価誤っている旨主張する。
しかし、Xによるこのような授業の担当は、XがY社との間で、本件非常勤講師給与規則の定める条件の下において、担当科目及びコマ数について合意したところに基づくものであって、労働条件の相違を不合理ならしめるものということはできない。また、Xが主張する経緯については、原審が認定するとおり、Z1教授及び補助参加人がXに対してXを本件大学の専任教員として採用する旨の一定の言動をしたことが認められるのであるが、それは、せいぜい上記のような授業の担当を合意する動機になっていたにすぎず、これをもって労働条件の相違を不合理ならしめるものということはできない。
したがって、Xの上記主張は採用の限りではない。


イ Xと専任教員との間の労働条件の相違の不合理性について

(ア)本俸について
Xは、教育活動、研究活動、学生の修学指導等、大学運営に関する業務等について考慮すれば、Xを含む非常勤講師との賃金の大きな違いを不合理でないと説明することはできない旨主張する。
しかしながら、専任教員については、1週間に一定時間数(コマ数)以上の授業を担当すること及び学長が認めたときにはそれを超える担当時間数の授業をすることや、専攻分野について研究活動を行うことがY社との間の労働契約上の義務とされ、本件大学の規程により3年に1回以上は論文を発表することが義務付けられているのであるが、それとは異なり、Xが専任教員と遜色のないコマ数の授業を担当したことは、本件非常勤講師給与規則の定める条件の下において、自らの意思によりY社と合意したことに基づくものであり、法学論叢に複数の論文発表をしたのも、義務の履行としてではなく、自らの希望によるものである。また、Xは、専任教員と異なり、Y社との間の労働契約に基づき、教授会における審議、各種委員会等の委嘱等の大学運営に関する業務を行う義務を負うことはないなど、専任教員との間には、その労働契約上の義務とその履行としての活動において、原審の説示するような相違があることに照らせば、本俸の額における相違は不合理とはいえず、Xの上記主張を採用することはできない。

(イ)賞与及び年度末手当について
Xは、学習募集や入学試験に関する業務を担当することが大学財政に貢献していることになるわけではなく、Xが低い給与で多数のコマ数の授業を担当してきたから大学財政に貢献しているなどとして、賞与及び年度末手当がXに支給されないことは不合理であると主張し、賞与については、本件大学では賞与算定期間に就労してたこと自体に対する対価としての性質が強く、Xの就労実態をみれば、全額不支給というのは明らかに不合理である旨主張する。
しかし、賞与及び年度末手当は、教職員の勤務成績に応じて支給されるものであり、この勤務成績は、一定の期間において上記のような労働契約上の義務と職務を果たした程度として把握されると考えられるところ、上記(ア)のとおり、Xと専任教員とでは担当授業時間数や専攻分野における研究活動についての労働契約上の義務に相違があることに加え、専任教員においては、Xと異なり、大学の運営に関する各種の業務を行う義務を負い、これに伴う責任があることなど、原審に説示するような労働契約上の義務と職責における相違があることに照らせば、Xに賞与及び年度末手当を支給されないことが不合理とはいえない。
また、賞与及び年度末手当については、専任教員の教育業務や研究業務の成果の評価が賞与額の算定要素とされていないのではあるが、上記の点に鑑みれば、一定期間就労したことに対する対価としての性質が、これらがXに支給されないことを不合理であると評価するまでに強いものであるということもできない。
Xが多数のコマ数の授業を担当し、研究論文を発表してきたことについても、上記(ア)の本俸の額におけると同様であって、上記の判断を左右するものではない。

(ウ)家族手当及び住宅手当について
Xは、非常勤講師と専任教員とで生活費保障の必要性は変わらず、Xは事実上兼業が不可能な状態に置かれ、収入もY社から支給される給与のみに依存せざるを得ない状況が存在したものであるから、Xに家族手当及び住宅手当が支給されないことは不合理である旨主張する。
しかし、専任教員は、労働契約上、教育活動及び研究活動のみならず、大学運営に関する幅広い業務を行う義務を負い、また、職務専念義務を負うが、大学設置基準により一定数以上の専任教員を確保しなければならないこととされていることに鑑みれば、給与上の処遇を手厚くすることにより相応しい人材を安定的に確保する必要があるということができる。このような観点からみれば、家族手当及び住宅手当を専任教員のみに支給することは不合理とはいえないことは、原審の説示のとおりである。なお、Y社から支払われる賃金がXの収入の大半を占めていたものであるが、Xが、Y社との間の労働契約上、収入をY社の賃金に依存せざるを得ない専任教員とは異なる事情の下にあることも原審に説示のとおりである。
したがって、Xの上記主張は前記判断を左右するものではない。
※「不合理とはいえないことは、原審の説示のとおり」とは、原審に示された、「本件大学の専任教員が、その職務の内容故に、Y社との間の労働契約上、職務専念義務を負い、原則として兼業が禁止され、その収入をY社から受ける賃金に依存せざるを得ないことからすると、Y社において、本件大学の専任教員のみに対して家族手当及び住居手当を支給することが不合理であると評価することはできない。」ことです。
※「専任教員と異なる事情の下にあること」とは、原審に示された、「Xは、Y社以外のどの大学といかなるコマ数の授業を担当するかに制限がなかったこと。」、つまり兼業を認めていたことです。このように、非正規雇用者について兼業を認めることが、正規雇用者との差異を不合理なものとしない要素になることもあります。


(エ)その他、Xが種々主張するところを踏まえても、Xと専任教員との間の労働条件の相違が不合理であるとは認められない。


②労働契約に基づくY社の使用者としての労働条件均衡配慮義務について

Xは、Y社が、Xに専任教員化を示唆しながら専門科目を担当させ、非常勤講師としての労働契約を繰り返し更新してきたことなどから、労働契約法20条の趣旨に照らし、使用者としての労働条件均衡配慮義務を負う旨主張する。
そこで検討するに、Xの上記主張事実は、労働契約法20条の規定に違反する労働条件の相違があることを原因とする不法行為に基づく損害賠償請求に係る事実とほぼ同様であり、Y社がXとの間のXを非常勤講師とする有期労働契約を累次にわたって更新してきた経過を考慮すべきことを強調し、この経過を考慮すると労働条件の相違があることをが不合理であることをいうものにほかならないと解することができる。しかし、Xが、当審において不法行為に基づく損害賠償請求を別個の予備的請求を追加する趣旨であるかどうかを措いても、X主張の事実に基づいて、使用者であるY社と被用者であるXとの間において、X主張の義務(労働条件均衡配慮義務)を内容とする債権債務関係が成立すると解する法的根拠を見出すことは困難であるというほかない。また、Xの上記主張を、労働契約法20条違反による不法行為に基づく損害賠償請求に係る主張の補充と解するとしても、これについて前記判断を左右するものではない。
したがって、Xの上記主張は採用することができない。


③XとY社がXを本件大学の専任教員として雇用することについての契約締結段階に入ったということができるか等について

ア 一般に、契約当事者となるべき者が当該契約の締結に向けてその準備の段階に入った場合には、当該当事者となるべき者に相手方に対する信義則上の義務が生ずることがありうる。そして、本件においては、Z1教授及び補助参加人がそれぞれ本件大学の法学部長であった当時に、Xに対し、Xを専任教員として採用する旨の一定の言動をしたことは、原審の認定するとおりである。
しかしながら、Y社における本件大学法学部の専任教員の採用については、「中央学院大学人事規程」、「中央学院大学法学部専任教員の採用及び昇任に関する規程」により、採用はY社において行い、採用の申請を受けた学部長が教授会にその適否についての審査を求め、教授会が設置する審査委員会において審査し、教授会が審査委員会から報告書の提出を受けて採用の適否について審査し、その結果が学長に報告され、学長が、適格と報告された採用の申請者について、採用のための必要な措置を講ずるものとされている。これらの定めからすると、法学部長が専任教員の採用権限を有するものではなく、その採用の適否を審査する権限を有するものでもないことは明らかである。したがって、Z1教授及び補助参加人がそれぞれ法学部長であった当時にXに対して上記のような言動をしたとしても、直ちにY社がXとの間で専任教員としての採用を約束したことにならないことは当然であり、Xもこのことは十分に認識していたと認められる。そして、XとZ1教授又は補助参加人との間で、Y社の了解の下にその条件について交渉が行われるなどしていた形跡もない。そうすると、Y社とXとの関係が、Xの専任教員としての採用に関し、Y社にXに対する何らかの信義則上の義務を生じさせるような労働契約の締結に向けた段階にあったとみることはできない。
もっとも、法学部長は、法学部に属する校務をつかさどることとされており、このような立場にある者から専任教員への採用についての話を受けたXとしては、採用は一定の期待を抱くこともあり得るところである。しかし、上記のような採用手続が定められていることからすれば、仮に、Xにおいて、Z1教授や補助参加人が採用についての事実上の影響力を行使し得ると考えており、上記のような期待を抱いたとしても、それはあくまでも主観的なものにとどまるというべきであり、Xが信義則上の義務を負う根拠となるまでのものではない。
※明らかに法学部長が採用を適否する権限を有するものではないことがわかる採用手続が明文化されていて、Xがそれを認識していたことがポイントです。権限の無い人が一定の言動をしたとしても、客観的に、その言動を信じても仕方が無いといえなければ、信義則上の義務を生じさせるような契約締結に向けた準備段階に入ったとはいえないからです。もし、Xが他人を疑わない性質の人であれば、主観的には本当に信じていたかも知れませんが、Xが信じたことの責任をY社に負わせるためには、Xに限らず、平均的な人が信じ得る(誤解する)程度の準備でなければならないのです。

イ Xは、いわゆる契約締結上の過失の理論が適用されるためには、法学部長に専任教員の採用について交渉権限は必要であっても、決定権限までは必要でない旨主張する。そして、具体的事実関係の如何によっては、Xと対応した法学部長が専任教員の採用権限を有していなくても、Y社において信義則上の義務を負う事態がおよそ想定されないとまではいえないという。しかし、本件においては、法学部長に専任教員の採用権限がない以上、Y社がXに対して専任教員への採用を約束したことにはならず、Y社にXに対する信義則上の義務を生じさせるような労働契約の締結に向けた段階にあったということはできないことは上記のとおりであって、Xの上記主張はこの判断を左右するものではない。また、非常勤講師として多くの授業を担当するなどしていたXの業務遂行の実態等を勘案しても、この判断が左右されるものではない。

(仮称)産業雇用安定助成金の創設

(仮称)産業雇用安定助成金の創設

※制度の創設には、第三次補正予算の成立、厚生労働省令の改正等が必要であり、現時点ではあくまで予定となりますので、ご留意下さい。

上限が12,000円というのは、現在の雇用調整助成金より金額が少ないですが、同助成金の方は2月以降縮小されていくようですので、その後は在籍出向で雇用を維持を図るようになるかも知れませんね。
グループ会社内での在籍出向であれば受入先を探すのはそれほど苦労しないでしょうが、全く関係のない企業を探すとなると容易ではありません。受入先が見つからなければ、この助成金画餅となってしまいますが、出向元と出向先の間を連携させるのが、公益財団法人産業雇用安定センターという、厚生労働省の外郭団体のような機関です。

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000705785.pdf

概要

コロナ禍において事業活動の一時的な縮小を余儀なくされ、 労働者の雇用を在籍型出向により維持するため 、 労働者を送り出す事業主及び当該労働者を受け入れる事業主に対して 、 一定期間の助成を行う 。

助成内容等

対象労働者に係る次の経費について、出向元事業主と出向先事業主とが共同事業主として支給申請を行い、当該申請に基づきそれぞれの事業主へ支給する(申請手続きは出向元事業主が行う。)。

出向運営経費

労働者(雇用保険被保険者)を在籍型出向により送り出す事業主及び当該労働者を受け入れる事業主に対して、賃金、教育訓練及び労務管理に関する調整経費等、出向中に要する経費の一部を助成する。
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出向初期経費

労働者(雇用保険被保険者)を在籍型出向により送り出す事業主及び当該労働者を受け入れる事業主に対して 、就業規則や出向契約書の整備費用 、 出向に際して出向元であらかじめ行う教育訓練及び出向先が出向者を受け入れるために用意する機器や備品等、出向に要する初期経費を助成する。
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(※)出向元事業主雇用過剰業種の企業や生産性指標要件が一定程度悪化した企業からの送り出し
または出向先事業主(異業種からの受入れ)がそれぞれ一定の要件を満たす場合に助成額の加算を行う 。

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000705601.pdf
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中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)公表されました。

中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)公表されました。

賃金制度を検討するとき、自社の賃金水準等を他社と遜色のないものとしたい場合には、同一業種や同一規模の企業の賃金水準等を参考にする必要があります。
しかし、大企業については、行政機関や民間研究機関等で各種の調査が実施され、調査結果が公表されていますが、企業数の大半を占める中小企業については、あまり参考となる資料がありません。

そんな中で参考となるのが、東京都が毎年行い公表している「中小企業の賃金・退職金事情」という調査です。従業員が10人~299人の都内中小企業を対象とし、「賃金」、「賞与」、「諸手当」、「初任給」、「モデル賃金」等については毎年、「退職金」と「労働時間」については交互に1年おきに調査されており、令和2年は「退職金」についての調査が行われました。


記載例を抜粋します。このような調査結果が記載されていますので、詳細は次のリンクをご確認ください。
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/koyou/chingin/r2/index.html

実在者賃金

年齢別に全常用労働者(役付者を含む。)の令和2年7月1日の所定時間内賃金をみると、男性は55~59歳(448,211円)、女性は50~54歳(345,162円)でピークに達する。
所定労働時間内賃金の上昇率について22~24歳を100としてみると、男性はピーク時で201となっている。これに対し女性はピーク時で162となっており、男性に比べて緩やかな上昇となっている。
また、令和元年の年間給与支払額の上昇傾向において、男性は55~59歳、女性は50~54歳がピークとなっている。
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モデル賃金

モデル賃金(卒業後すぐに入社し、普通の能力と成績で勤務した場合の賃金水準)の年齢別の上昇傾向をみると、全ての学齢において60歳でピークを迎え、ピーク時の所定時間内賃金は、高校卒394,392円、高専・短大卒403,716円、専門学校卒403,680円、大卒は445,925円となっている。
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退職金制度の有無

集計企業のうち、退職金制度について「制度あり」と回答した企業が65.9%、「制度なし」と回答した企業が20.9%であった。また、「制度あり」と回答した企業の71.8%が「退職一時金のみ」と回答しており、23.3%が「退職一時金と退職年金の併用」と回答した。」
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退職一時金を受給するための最低勤続年数

退職一時金を受給するための最低勤続年数をみると、「3年」と回答した企業が、自己都合退職(47.4%)、会社都合退職(28.6%)ともに、最も多かった。
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テレワークを有効に活用しましょう~新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワーク実施~

テレワークを有効に活用しましょう~新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワーク実施~

https://www.mhlw.go.jp/content/000704347.pdf

テレワークの活用

テレワークとは、インターネットなどのICTを活用し自宅などで仕事をする、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方です。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点からも、有効な働き方です。

テレワークの効果

企業のメリット

■非常時に感染リスクを抑えつつ、事業の継続が可能
■従業員の通勤負担の軽減が図れる
■優秀な人材の確保や、雇用継続につながった
■資料の電子化や業務改善の機会となった

労働者のメリット

■通勤の負担がなくなった
■外出しなくて済むようになった
■家族と過ごす時間や趣味の時間が増えた
■集中力が増して、仕事の効率が良くなった

テレワーク実施までの流れ

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1.実施に向けての検討(業務の切り出し・対象者の選定・費用負担)

①業務の切り出し
■対象作業の選定は、「業務単位」で整理することがポイント
■テレワークでは難しいと思われる業務についても、緊急事態宣言を受けて、一旦やってみたら意外にできることがわかったというケースも多い
■仕事のやり方を工夫することで一気に進む場合も

②対象者の選定
■業務命令として在宅勤務を命じる場合には、業務内容だけでなく、本人の希望も勘案しつつ、決定しましょう。

③費用負担
■費用負担についてはトラブルになりやすいので、労使でよく話し合うことが必要です。

2.セキュリティのチェック

会社のパソコン(PC)を社外に持ち出す場合には、PCの盗難や紛失による情報漏洩のリスクがあることから、セキュリティ対策のなされたPCやシンクライアントパソコンを貸与するなどの工夫が必要です。
また、自宅のPCを使って業務を行う場合には、ウイルス対策ソフトや最新アップデートの適用などのセキュリティ対策が適切に行われているかを確認する必要があります。その他、総務省においてテワークセキュリティに関するガイドラインやチェックリストが公開されていますので、ご活用ください。

3.ルールの確認(労務管理

①労働法令
在宅勤務などのテレワーク時にも、労働基準法などの労働法令を遵守することが必要です。テレワーク時の労務管理について確認し、ルールを定めましょう。

②労働時間
•労働時間を適正に把握・管理し、長時間労働を防ぐためにも、従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録しましょう。
•通常の労働時間制、フレックスタイム制のほかに、一定の要件を満たせば事業場外みなし労働時間制なども活用できます。

【労働時間管理方法の一例】
■Eメール
・使い慣れている
・業務の報告を同時に行いやすい・担当部署も一括で記録を共有できる
■電話
・使い慣れている
・時間がかからない
・コミュニケーションの時間が取れる安全衛生
■勤怠管理ツール
・Eメール通知しなくてよい
・大人数を管理しやすい
・担当部署も記録を共有できる
■勤怠管理システム
(仮想オフィス、グループウェア等)・個別に報告する手間がかからない

③安全衛生
•テレワーク中に孤独や不安を感じることがあります。オンライン会議などを活用して、上司・部下や同僚とコミュニケーションをとるようにしましょう。
•なお、業務中の傷病は労災の対象になります。
•過度な長時間労働とならないようにしましょう。

④業績評価、人事管理、社内教育
•在宅勤務を行う労働者について特別の取り扱いを行う場合は、よく確認しましょう。
•新規で採用する場合には、就業場所などについて労働条件の明示が必要です。

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今さらですが・・・休業手当の計算方法

今さらですが・・・休業手当の計算方法


今年は特に問い合わせが多かった、休業計算方法を簡単にまとめておきます。
一般的な日割り計算よりも平均賃金は少なくなるのが一般的です。
ただし、残業代が異常に多い従業員は平均賃金の方が高くなるかも知れません・・・
長くなるので、『休業手当とは?』『休業手当が必要な場合』といった話は長くなるので省きます。

1.休業手当

休業手当の最低額は『平均賃金』の60/100(60%)と労働基準法で定められています。(労働基準法26条)
そして、『平均賃金』は、労働基準法12条に次のように定められています。
読んで理解できる方は、このとおり計算すれば『平均賃金』が求まります。

労働基準法第12条
1.この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
一  賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十
二  賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額

2.前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。

3.前二項に規定する期間中に、次の各号の一に該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前2項の期間及び賃金の総額から控除する。

一  業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間 ⇒ 労災により休業していた期間
二  産前産後の女性が第65条の規定によつて休業した期間 ⇒ 産前産後休業期間
三  使用者の責めに帰すべき事由によつて休業した期間 ⇒ 休業手当が支払われたいた期間
四  育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 (平成三年法律第七十六号)第2条第一号 に規定する育児休業又は同条第二号 に規定する介護休業(同法第61条第3項 (同条第6項 及び第7項 において準用する場合を含む。)に規定する介護をするための休業を含む。第39条第7項において同じ。)をした期間 ⇒ 育児介護休業等の期間
五  試みの使用期間 ⇒ 試用期間終了後に休業が発生した場合は、試用期間は除いて計算する。試用期間中の休業手当の場合は試用期間中の賃金でよい。
4.第1項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。 ⇒ 賞与を含まない
5.賃金が通貨以外のもので支払われる場合、第1項の賃金の総額に算入すべきものの範囲及び評価に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。 ⇒ 通勤定期の現物支給など
6.雇入後三箇月に満たない者については、第1項の期間は、雇入後の期間とする。 ⇒ 3か月に満たない場は、雇い入れ後の期間だけで計算する。
7.(超特殊な例なので省略)
8.(超特殊な例なので省略)

2.平均賃金の計算

①原則

「これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額」=既に支払われている直近3回の賃金総額(算定すべき事由の発生した日以前とあるので、その日が賃金支払日である場合はその賃金も含めて直近3回)であり、「その期間の総日数」=その直近3回の賃金総額の賃金計算期間の暦日数であるため、平均賃金は式(1)のようになります。
また、賃金は控除前支給額のことで、残業代や通勤手当等も含まれます。

     平均賃金=\frac{直近3回の賃金総額}{その直近3回の賃金総額の賃金計算期間の暦日数}     (1)

②例外

(1)賃金が月給制や日給月給制ではなく、日給制・時給制・出来高制など、労働日数に応じて変動する場合

式(1)で計算した平均賃金が、式(2)で計算した額に満たない場合は、式(2)が平均賃金の額となります。
※式(2)に60/100を乗じていることから、これを休業手当と早とちりする方が時々いますが、式(2)はあくまでも平均賃金です。

     \frac{直近3回の賃金総額}{その直近3回の賃金総額の賃金計算期間の実労働日数}×\frac{60}{100}  (2)

(2)賃金の一部が月給制や日給月給制で支給されている場合

具体的には次のようなケースが考えられます。

・月給制もしくは日給月給制であるが、諸手当の中に労働日数に応じて変動する手当がある場合
※営業成績に応じて決まる成果給や勤務実績に応じて決まる精勤手当や通勤手当が出勤日数によって定められている場合などが考えられます。

式(1)で計算した平均賃金が、式(3)で計算した額に満たない場合は、式(3)が平均賃金の額となります。

     \frac{直近3回の賃金A}{その直近3回の賃金総額の賃金計算期間の暦日数}+\frac{直近3回の賃金B}{その直近3回の賃金総額の賃金計算期間の実労働日数}×\frac{60}{100}  (3)

  賃金A:賃金総額-労働日数に応じて変動する手当
  賃金B:労働日数に応じて変動する手当


・直近3回の賃金計算期間の間に賃金体系に変更があり、月給制もしくは日給月給制と日給制もしくは時給制が混在している場合
※時給制のアルバイトから日給月給制の正社員に雇用形態が変更した場合などが考えられます。

式(1)で計算した平均賃金が、式(4)で計算した額に満たない場合は、式(4)が平均賃金の額となります。

  \frac{直近3回の賃金A}{賃金Aの賃金計算期間の暦日数}+\frac{直近3回の賃金B}{賃金Bの賃金計算期間の実労働日数}×\frac{60}{100}  (4)

  賃金A:日給もしくは日給月給制など労働日数に応じて変動しない賃金
  賃金Aの賃金計算期間の暦日数:月給制もしくは日給月給制など労働日数に応じて変動しない賃金体系となっている期間の暦日数
  賃金B:日給制もしくは時給制など労働日数に応じて変動する賃金
  賃金Bの賃金計算期間の実労働日数:日給制もしくは時給制など労働日数に応じて変動する賃金体系となっている期間の実労働日数

少々わかりにくいので例を挙げて説明します。

賃金計算期間:前月16日から当月15日
支給日:25日
賃金体系の変更:7月16日に時給制から月給制に変更
休業開始日:9月1日

平均賃金の対象となる支給日は、6/25・7/25・8/25の3回となります。
従って、式(1)は、

 (1)=\frac{6/25・7/25・8/25の賃金総額}{31日+30日+31日} 

となります。
7月16日から月給制に変っているので、6/25と7/25は時給制、8/25は月給制にそれぞれ基づく賃金となるので、式(4)は、

 (4)=\frac{8/25の賃金}{31日}+\frac{6/25と7/25の賃金総額}{5/16~7/15の実労働日数}×\frac{60}{100}

となります。
そして、この式(1)と式(4)を比較して金額が大きいほうが平均賃金となります。

3.休業手当

平均賃金が求まれば、平均賃金に休業手当の支給率を乗じれば休業手当は簡単に求まりますが、この休業手当というのは休業した1日に対して支払われる手当となります。例えば、法定の最低額であれば、支給率は60/100ですので、平均賃金に60/100を乗じます。

さて、もし休業手当の支給率が100%であれば、どれぐらいの額になるのか計算してみます。

賃金計算期間:前月16日から当月15日
支給日:25日
休業開始日:9月1日
月所定労働日数:20日

このような条件で、月給制で賃金の変動が無いものとし月額賃金30万円として計算してみると、

 平均賃金=\frac{90万円}{92日}=9,783円 

となります。月所定労働日数が20日ですので、1か月休業したとすると9,783円×20日=195,660円となります。
支給率を100%としても、月給の約65%程度、支給率60%であれば、月給の40%弱にしかなりません。
なぜ、この程度の額になるかというと、式(1)で除算しているのが暦日数であるからです。

4.雇用調整助成金における休業手当

休業手当が賃金よりかなり低くなるのは、賃金を暦日数で除しているからですが、雇用調整助成金ガイドブックに記載されている休業協定書に記載されている休業手当の計算式は、所定労働日数で除算されています。
そうすると、あまり深く考えず、ガイドブックのとおり休業手当を支給している企業は、不当に高く休業手当を支払っているのかというと、そうではありません。

雇用調整助成金でいう平均賃金はデフォルトでは式(5)のように定められており、分母で除算するのは年間所定労働日数です。

雇用調整助成金の平均賃金=\frac{賃金総額}{月平均雇用保険被保険者数×年間所定労働日数}  (5)

式(5)で求まる平均賃金に休業手当の支給率を乗じた額を基礎として、一人一日休業当たりの助成額が決まりますので、休業手当の計算をガイドブックのとおりに計算したとしても別に高い休業手当を支払っているということにはならないのです。
それでも、暦日数で除して計算した休業手当の方が少ないじゃないかと思う方もいるかも知れませんが、ガイドブック20ページの右下をご覧ください。この場合は、1年間の暦日数である365日で除算することになっており、助成金の受給額も少なくなるのです。ちなみに、令和1年度は閏年でしたが、361日とする必要は無いようです。
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なお、休業手当を減らそうという会社よりも、休業するにもどうしていいかよくわからずに賃金を全額支給していたり、従業員の生活を考えると法定どおり休業手当では話にならないという会社が、私の周りではほとんどです。
また、所定労働日数がはっきりしないパート従業員が非常に多く、年間の所定労働日数の計算が困難で休業手当の計算は暦日数でせざるを得ないという会社では、時給制の従業員は時給額×休業手当の支給率×所定労働時間とし、日給月給制の従業員は賃金控除の計算を\frac{賃金}{暦日数}×休業日数(このように計算すると、休業による賃金控除額は所定労働日数で除算するより少なくなります)とし、支給額が少なくならないように工夫していました。(さすがに、休業が長引くと厳しくなり、休業手当の支給率を労使で協議したようですが)