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労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第8章の規定等の運用について(令2.2.10雇均発0210第1号)

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労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第8章の規定等の運用について(令2.2.10雇均発0210第1号)

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200213M0030.pdf


今般、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第24 号。以下「改正法」という。)により、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41 年法律第132 号。以下「法」という。)第8章において、職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等に関する規定が新設された。
また、令和元年12 月27日に女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令(令和元年厚生労働省令第86号。以下「改正省令」という。)が公布され、さらに、令和2年1月15日に事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号。以下「指針」という。)が告示され、改正法等はいずれも令和2年6月1日から施行又は適用することとされた。
改正法による改正後の法第8章の規定及び関連規定、改正省令による改正後の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則(昭和41年労働省令第23号。以下「則」という。)の関連規定及び指針の趣旨、内容及び取扱いは下記のとおりであるので、その円滑な実施を図るよう配慮されたい。

第1職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主の講ずべき措置等(法第8章)

1職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等並びに国、事業主及び労働者の責務(法第30条の2及び第30条の3)

⑴職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等

イ 職場におけるパワーハラスメントは、労働者の個人としての尊厳を不当に傷つけ、能力の有効な発揮を妨げるとともに、企業にとっても職場秩序や業務の遂行を阻害し、社会的評価に影響を与える問題であり、社会的に許されない行為であることは言うまでもない。特に、職場におけるパワーハラスメントは、いったん発生すると、被害者に加え行為者も退職に至る場合がある等双方にとって取り返しのつかない損失を被ることが多く、被害者にとって、事後に裁判に訴えることは、躊躇せざるを得ない面があることを考えると、未然の防止対策が重要である。
こうしたことから、法第30条の2第1項は、職場におけるパワーハラスメントを防止するため、その雇用する労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることを事業主に義務付けることとしたものであること。

ロ 法第30条の2第2項は、労働者が事業主から不利益な取扱いを受けることを懸念して、職場におけるパワーハラスメントに関する相談や事業主の相談対応に協力して事実を述べることを躊躇することがないよう、事業主がこれらを理由として解雇その他不利益な取扱いを行うことを禁止することとしたものであること。
「理由として」とは、労働者がパワーハラスメントに関する相談を行ったことや事業主の相談対応に協力して事実を述べたことが、事業主が当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことと因果関係があることをいうものであること
「不利益な取扱い」となる行為の例については、「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18年厚生労働省告示614号)」第4の3⑵に掲げるものと同様であること。また、個別の取扱いが不利益な取扱いに該当するか否かについての勘案事項については、同指針第4の3⑶に掲げる事項に準じて判断すべきものであること。
なお、当該言動を直接受けた労働者だけでなく、それを把握した周囲の労働者からの相談を理由とする解雇その他不利益な取扱いについても、法第30条の2第2項の規定による禁止の対象に含まれること。

ハ 法第30条の2第3項は、同条第1項及び第2項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等の内容を具体化するために、厚生労働大臣が指針を定め、公表することとしたものであること。

⑵職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務

職場におけるパワーハラスメントを防止するためには、職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないことやこれに起因する問題について、事業主だけでなく、国民一般が関心と理解を深め、実際に行為者となり得る事業主や労働者が自らの言動に注意を払うこと等が必要である。このため、法第30条の3は、国、事業主及び労働者がそのために行うよう努めるべき事項について、各々の責務として明確に規定することとしたものであること。
3⑶指針は、事業主が防止のため適切かつ有効な雇用管理上の措置等を講ずることができるようにするため、防止の対象とするべき職場におけるパワーハラスメントの内容や事業主が雇用管理上措置すべき事項等を定めたものであること。

イ 職場におけるパワーハラスメントの内容指針2「職場におけるパワーハラスメントの内容」においては、事業主が、雇用管理上防止すべき対象としての職場におけるパワーハラスメントの内容を明らかにするために、その概念の内容等を示したものであること。
また、実際上、職場におけるパワーハラスメントの状況は多様であり、その判断に当たっては、個別の状況を斟酌する必要があることに留意すること。
なお、法及び指針は、あくまで職場におけるパワーハラスメントが発生しないよう防止することを目的とするものであり、個々のケースが厳密に職場におけるパワーハラスメントに該当するか否かを問題とするものではないので、この点に注意すること。

①職場指針2(2)は「職場」の内容と例示を示したものであること。
「職場」には、業務を遂行する場所であれば、通常就業している場所以外の場所であっても、出張先、業務で使用する車中及び取引先との打ち合わせの場所等も含まれるものであること。なお、勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当する。
その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意か等を考慮して個別に行うものであること。

②労働者指針2⑶にあるとおり、「労働者」とは、事業主が雇用する労働者の全てをいい、正規雇用労働者のみならず、いわゆる非正規雇用労働者も含むものであること。
派遣労働者については、労働者派遣法第47条の4の規定により、派遣先も派遣労働者を雇用する事業主とみなされるものであり、同条の詳細については、平成28年8月2日付け雇児発0802第2号「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第47条の2から第47条の4までの規定の運用について」が発出されているものであること。

③職場におけるパワーハラスメントの3つの要素職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるものであり、(1)から(3)までの要素を全て満たすものをいうこと。
このため、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、(2)の要素を満たさないため、職場におけるパワーハラスメントには該当しないこと。

④「優越的な関係を背景とした」言動指針2⑷は職場におけるパワーハラスメントの1つ目の要素である「優越的な関係を背景とした」言動の内容と例を示したものであること。

⑤「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動指針2⑸は職場におけるパワーハラスメントの2つ目の要素である「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動の内容と例のほか、その判断に当たっての考慮要素や留意点を示したものであり総合的な判断が必要となること。考慮要素の1つである労働者の「属性」とは、例えば、労働者の経験年数や年齢、障害がある、外国人である等が、「心身の状況」とは、精神的又は身体的な状況や疾患の有無等が含まれ得ること。
なお、労働者に問題行動があった場合であっても、人格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、当然職場におけるパワーハラスメントに当たり得ること。

⑥指針2⑹は職場におけるパワーハラスメントの3つ目の要素である「労働者の就業環境が害される」の内容と判断基準を示したものであること。「平均的な労働者の感じ方」を基準とするとは、社会一般の労働者が、同様の状況で当該言動を受けた場合に、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とするという意味であること。なお、言動の頻度や継続性は考慮されるが、強い身体的又は精神的苦痛を与える態様の言動の場合には、一回でも就業環境を害する場合があり得るものであること。

⑦指針2⑺は、職場におけるパワーハラスメントの判断に当たっては、個別の事案における様々な要素を総合的に考慮する必要があること等を示すとともに、その状況は多様であるという前提の下で、代表的な言動の類型と、当該言動の類型ごとに、職場におけるパワーハラスメントに該当し、又は該当しないと考えられる典型例を挙げたものであること。このため、指針に掲げる典型的な例に関しては、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、
また、限定列挙ではないことに十分留意し、指針4⑵ロにあるとおり広く相談に対応する、同⑶イにあるとおり事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するなど、適切な対応を行うようにすることが必要であること。指針2⑺ロ(イ)①の「相手の性的指向性自認に関する侮辱的な言動を行うこと」については、相手の性的指向性自認の如何は問わないものであること。
また、一見、特定の相手に対する言動ではないように見えても、実際には特定の相手に対して行われていると客観的に認められる言動については、これに含まれるものであること。
なお、性的指向性自認以外の労働者の属性に関する侮辱的な言動についても、職場におけるパワーハラスメントの3つの要素を全て満たす場合には、これに該当すること。

ロ 事業主等の責務指針3は、法第30条の3の事業主及び労働者の責務の内容や職場におけるパワーハラスメントに起因する問題の例を示したものであること。

ハ 雇用管理上講ずべき事項指針4は、事業主が雇用管理上講ずべき措置として10項目挙げており、これらについては、企業の規模や職場の状況の如何を問わず必ず講じなければならないものであること。また、措置の方法については、企業の規模や職場の状況に応じ、適切と考える措置を事業主が選択できるよう具体例を示してあるものであり、限定列挙ではないこと。

①「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」指針4⑴は、職場におけるパワーハラスメントを防止するためには、まず事業主の方針として職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないことを明確にするとともに、これを従業員に周知・啓発しなければならないことを明らかにしたものであること。「その発生の原因や背景」とは、例えば、労働者同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題が挙げられるものであることを明らかにしたものであり、事業主に対して留意すべき事項を示したものであること。
イ①並びにロ①及び②の「その他の職場における服務規律等を定めた文書」として、従業員心得や必携、行動マニュアル等、就業規則の本則ではないが就業規則の一部を成すものが考えられること。
イ③の「研修、講習等」を実施する場合には、定期的に実施する、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に職階別に分けて実施する等の方法が効果的と考えられること。

②「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」指針4⑵は、職場におけるパワーハラスメントの未然防止及び再発防止の観点から相談(苦情を含む。以下同じ。)への対応のための窓口を明確にするとともに、相談の対応に当たっては、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制を整備しなければならないことを明らかにしたものであること。
指針4⑵イの「窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する」とは、窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうものであり、併せて、労働者に対して窓口を周知し、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要であること。例えば、労働者に対して窓口の部署又は担当者を周知していることなどが考えられること。
指針4⑵ロの「その内容や状況に応じ適切に対応する」とは、具体的には、相談者や行為者に対して、一律に何らかの対応をするのではなく、労働者が受けている言動等の性格・態様によって、状況を注意深く見守る程度のものから、上司、同僚等を通じ、行為者に対し間接的に注意を促すもの、直接注意を促すもの等事案に即した対応を行うことを意味するものであること。
なお、対応に当たっては、公正な立場に立って、真摯に対応すべきことは言うまでもないこと。
指針4⑵ロの「相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮」することには、相談者が相談窓口の担当者の言動等によってさらに被害を受けること等(いわゆる「二次被害」)を防ぐための配慮も含まれること。
指針4⑵ロの「広く相談に対応し」とは、職場におけるパワーハラスメントを未然に防止する観点から、相談の対象として、職場におけるパワーハラスメントそのものでなくともその発生のおそれがある場合やパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合も幅広く含めることを意味するものであること。例えば、指針4⑵ロで掲げる、放置すれば相談者が業務に専念できないなど就業環境を害するおそれがある場合又は労働者同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題が原因や背景となってパワーハラスメントが生じるおそれがある場合のほか、勤務時間外の懇親の場等においてパワーハラスメントが生じた場合等も幅広く相談の対象とすることが必要であること。
また、当該言動を直接受けた労働者だけでなく、それを把握した周囲の労働者からの相談にも応じることが必要であること。
なお、一見、特定の労働者に対する言動に見えても、周囲の労働者に対しても威圧するために見せしめとして行われていると客観的に認められるような場合には、周囲の労働者に対するパワーハラスメントとも評価できる場合もあるため、留意すること。指針4⑵ロ②の「留意点」や③の「研修」の内容には、いわゆる二次被害を防止するために必要な事項も含まれるものであること。

③「職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」指針4⑶は、職場におけるパワーハラスメントが発生した場合は、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するとともに、当該事案に適正に対処しなければならないことを明らかにしたものであること。
指針4⑶イ①の「相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮する」に当たっては、相談者が行為者に対して迎合的な言動を行っていたとしても、その事実が必ずしもパワーハラスメントを受けたことを単純に否定する理由にはならないことに留意すること。
指針4⑶ロの「被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと」には、職場におけるパワーハラスメントを受けた労働者の継続就業が困難にならないよう環境を整備することや、労働者が職場におけるパワーハラスメントにより休業を余儀なくされた場合等であって当該労働者が希望するときには、本人の状態に応じ、原職又は原職相当職への復帰ができるよう積極的な支援を行うことなども含まれること。
指針4⑶ロ①の「事業場内産業保健スタッフ等」とは、事業場内産業保健スタッフ及び事業場内の心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフ等をいうものであること。

④併せて講ずべき措置指針4⑷は、事業主が⑴から⑶までの措置を講ずるに際して併せて講ずべき措置を明らかにしたものであること。
指針4⑷イは、労働者の個人情報については、「個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)」及び「雇用管理に関する個人情報保護に関するガイドライン平成24年厚生労働省告示第357号)」に基づき、適切に取り扱うことが必要であるが、職場におけるパワーハラスメントの事案に係る個人情報は、特に個人のプライバシーを保護する必要がある事項であることから、事業主は、その保護のために必要な措置を講じるとともに、その旨を労働者に周知することにより、労働者が安心して相談できるようにしたものであること
指針4⑷ロは、労働者が職場におけるパワーハラスメントに関し相談をしたこと等を理由とする解雇その他不利益な取扱いは、法律上禁止されているものも含まれるが、より労働者が実質的に相談等を行いやすくなるよう、企業内でもそのことを改めて定めて労働者に周知・啓発することとしたものであること
また、上記については、事業主の方針の周知・啓発の際や相談窓口の設置に併せて、周知することが望ましいものであること。

ニ 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取組の内容指針5は、職場におけるパワーハラスメントを防止するため、事業主が指針4の措置に加えて行うことが望ましい取組の内容を示したものであること。

①指針5⑴については、近年、様々なハラスメントが複合的に生じているとの指摘もあり、労働者にとっては一つの窓口で相談できる方が利便性が高く、また解決にもつながりやすいと考えられることから、相談について一元的に受け付けることのできる体制を整備することが望ましいことを示したものであること。

②指針5⑵は、職場におけるパワーハラスメントの原因や背景には、コミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題があることから、コミュニケーションの活性化・円滑化のために研修等の必要な取組や、適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組について望ましい旨を定めたものであること。

③指針5⑶については、雇用管理上の措置が職場におけるパワーハラスメントの防止のために適切かつ有効なものとなるよう、労働者や労働組合等の参画を得つつ、その運用の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めることの重要性やその方法の例を示したものであること。


ホ 事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組の内容指針6は、法第30条の2第1項の雇用管理上の措置の対象となるのは事業主が雇用する労働者であるが、法第30条の3の事業主及び労働者の責務の趣旨に鑑み、他の事業主が雇用する労働者、就職活動中の学生等の求職者及び労働者以外の者(例:個人事業主などのフリーランスインターンシップを行っている者、教育実習生等)についても、行うことが望ましい取組を示したものであること。
「4の措置も参考にしつつ」とは、予防から再発防止に至る一連の雇用管理上の措置全体を参考にするという趣旨であること。
なお、裁判例では、採用内定の法的性質は事案により異なるとしつつ、採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていない事案において、採用内定通知により、始期付きの解約権を留保した労働契約が成立するとしている。このため、採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定者についても、法第30条の2第1項の雇用管理上の措置や同条第2項の相談等を理由とした解雇その他不利益な取扱いの禁止の対象となるものであり、採用内定取消しは不利益な取扱いに含まれるものであること。

へ 事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容指針7は、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為については法第30条の2第1項の雇用管理上の措置の対象には含まれないが、その雇用する労働者への安全配慮の観点から、これらについても事業主が雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組を示したものであること。

2紛争の解決の促進に関する特例(法第30条の4)

⑴法第30条の2第1項及び第2項に定める事項に係る事業主の一定の措置等についての労働者と事業主との間の個別具体的な私法上の紛争(以下「職場におけるパワーハラスメントに関する紛争」という。)については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号。以下「個別労働紛争解決促進法」という。)第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、法第30条の5から第30条の8までの規定によるものとしたものであること。

⑵「紛争」とは、⑴の事業主の一定の措置等に関して労働者と事業主との間で主張が一致せず、対立している状態をいうものであること。

3紛争の解決の援助(法第30条の5)

⑴紛争の解決の援助(法第30条の5第1項)

職場におけるパワーハラスメントに関する紛争の迅速かつ円満な解決を図るため、都道府県労働局長は、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決について援助を求められた場合には、必要な助言、指導又は勧告をすることができることとしたものであること。

イ 「紛争の当事者」とは、現に紛争の状態にある労働者及び事業主をいうものであること。したがって、労働組合等の第三者は関係当事者にはなりえないものであること。

ロ 「助言、指導又は勧告」は、紛争の解決を図るため、当該紛争の当事者に対して具体的な解決策を提示し、これを自発的に受け入れることを促す手段として定められたものであり、紛争の当事者にこれに従うことを強制するものではないこと。

⑵紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第30条の5第2項)

イ 法第30条の5第1項の紛争の解決の援助により、紛争の当事者間に生じた個別具体的な私法上の紛争を円滑に解決することの重要性にかんがみれば、事業主に比べ弱い立場にある労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、労働者が紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。

ロ 「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義については、それぞれ1⑴のロと同じであること。

4調停の委任(法第30条の6)

⑴調停の委任(法第30条の6第1項)

イ 紛争当事者(以下「関係当事者」という。)間の個別具体的な私法上の紛争について、都道府県労働局長による紛争解決の援助に加え、公正、中立な第三者機関の調停による解決を図るため、職場におけるパワーハラスメントに関する紛争について、関係当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、都道府県労働局長は、紛争調整委員会(以下「委員会」という。)に調停を行わせるものとすることとしたものであること。

ロ 「関係当事者」とは、現に紛争の状態にある労働者及び事業主をいうものであること。したがって、労働組合等の第三者は関係当事者にはなり得ないものであること。

ハ 「調停」とは、紛争の当事者の間に第三者が関与し、当事者の互譲によって紛争の現実的な解決を図ることを基本とするものであり、行為が法律に抵触するか否か等を判定するものではなく、むしろ行為の結果生じた損害の回復等について現実的な解決策を提示して、当事者の歩み寄りにより当該紛争を解決しようとするものであること。

ニ 次の要件に該当する事案については、「当該紛争の解決のために必要があると認め」られないものとして、原則として、調停に付すことは適当であるとは認められないものであること。

①申請が、当該紛争に係る事業主の措置が行われた日(継続する措置の場合にあってはその終了した日)から1年を経過した紛争に係るものであるとき

②申請に係る紛争が既に司法的救済又は他の行政的救済に係属しているとき(関係当事者双方に、当該手続よりも調停を優先する意向がある場合を除く。)

③集団的な労使紛争にからんだものであるときホ都道府県労働局長が「紛争の解決のために必要がある」か否かを判断するに当たっては、ニに該当しない場合は、原則として調停を行う必要があると判断されるものであること。

⑵調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第30条の6第2項)

イ 法第30条の6第1項の調停により、関係当事者間に生じた個別具体的な私法上の紛争を円滑に解決することの重要性にかんがみれば、事業主に比べ弱い立場にある労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、労働者が調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。

ロ 「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義は、それぞれ1⑴のロと同じであること。

5調停(法第30条の7)

⑴調停の手続については、法第30条の7において準用する雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「男女雇用機会均等法」という。)第19条から第26条までの規定及び則第12条の2において準用する雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(昭和61年労働省令第2号。以下「男女雇用機会均等法施行規則」という。)第3条から第12条の規定に基づき行われるものであること。

⑵委員会の会長は、調停委員のうちから、法第30条の6第1項の規定により委任を受けて同項に規定する紛争についての調停を行うための会議(以下「優越的言動問題調停会議」という。)を主任となって主宰する調停委員(以下「主任調停委員」という。)を指名するものであること。また、主任調停委員に事故があるときは、あらかじめその指名する調停委員が、その職務を代理するものとなるものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第3条第1項及び第2項)。

⑶優越的言動問題調停会議は、主任調停委員が招集するものであること。また、優越的言動問題調停会議は、調停委員2人以上が出席しなければ、開くことができないものであること。さらに、優越的言動問題調停会議は、公開しないものであること(則11第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第4条第1項から第3項)。

⑷優越的言動問題調停会議の庶務は、当該都道府県労働局雇用環境・均等部(室)において処理するものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第5条)。

⑸法第30条の6第1項の調停の申請をしようとする者は、調停申請書を当該調停に係る紛争の関係当事者である労働者に係る事業所の所在地を管轄する都道府県労働局長に提出しなければならないものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第6条及び別記様式)。

都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせることとしたときは、遅滞なく、その旨を会長及び主任調停委員に通知するものであること。また、都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせることとしたときは関係当事者の双方に対して、調停を行わせないこととしたときは調停を申請した関係当事者に対して、遅滞なく、その旨を書面によって通知するものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第7条第1項及び第2項)。

⑺調停は、3人の調停委員が行うこととされており、調停委員は、委員会のうちから、会長があらかじめ指名するものとされていること(法第30条の7において準用する男女雇用機会均等法第19条第1項及び第2項)。

⑻委員会は、調停のために必要があると認めるときは、関係当事者又は関係当事者と同一の事業所に雇用される労働者その他の参考人(以下「関係当事者等」という。)の出頭を求め、その意見を聴くことができるものとされていること(法第30条の7において準用する男女雇用機会均等法第20条)。
ただし、この「出頭」は強制的な権限に基づくものではなく、相手の同意によるものであること。これらの出頭については、必ず関係当事者等(法人である場合には、委員会が指定する者)により行われることが必要であること。
「その他の参考人」とは、関係当事者である労働者が雇用されている事業所に過去に雇用されていた者、同一の事業所で就業する派遣労働者などを指すものであること。委員会に「関係当事者と同一の事業所に雇用される労働者その他の参考人」の出頭を求めることができるとしたのは、法第30条の2第1項及び第2項に定める事項に係る事業主の一定の措置等についての紛争に係る調停においては、職場におけるパワーハラスメントに係る事実関係の確認に関わる事項が紛争の対象となることもあることから、これらの者を参考人として意見聴取することが必要な場合があるためであること。

⑼委員会から出頭を求められた関係当事者等は、主任調停委員の許可を得て、補佐人を伴って出頭することができるものであり、補佐人は、主任調停委員の許可を得て陳述を行うことができるものであること(則第12条の2において準用する男女雇12用機会均等法施行規則第8条第1項及び第2項)。「補佐人」は、関係当事者等が陳述を行うことを補佐することができるものであること。
なお、補佐人の陳述は、あくまでも関係当事者等の主張や説明を補足するためのものであり、補佐人が自ら主張を行ったり、関係当事者等に代わって意思表示を行ったりすることはできないこと。

⑽委員会から出頭を求められた関係当事者等は、主任調停委員の許可を得て当該事件について意見を述べることができるほか、他人に代理させることができるものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第8条第3項)。
他人に代理させることについて主任調停委員の許可を得ようとする者は、代理人の氏名、住所及び職業を記載した書面に、代理権授与の事実を証明する書面を添付して主任調停委員に提出しなければならないものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第8条第4項)。

⑾委員会は、当該事件の事実の調査のために必要があると認めるときは、関係当事者等に対し、当該事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができるものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第9条)。

⑿委員会は、必要があると認めるときは、調停の手続の一部を特定の調停委員に行わせることができるものであること。
「調停の手続の一部」とは、現地調査や、提出された文書等の分析・調査、関係当事者等からの事情聴取等が該当するものであること。この場合において、則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第4条第1項及び第2項の規定は適用せず、則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第8条の規定の適用については、同条中「主任調停委員」とあるのは、「特定の調停委員」とするものであること。
また、委員会は、必要があると認めるときは、当該事件の事実の調査を都道府県労働局雇用環境・均等部(室)の職員に委嘱することができるものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第10条第1項及び第2項)。

⒀委員会は、関係当事者からの申立てに基づき必要があると認めるときは、当該委員会が置かれる都道府県労働局の管轄区域内の主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者から意見を聴くものとすることとされていること(法第30条の7において準用する男女雇用機会均等法第21条)。
「主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者」については、主要な労働者団体又は事業主団体に対して、期限を付して関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者の指名を求めるものとするものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第11条第1項)。
関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者の指名は、事案ごとに行うものであること。指名を求めるに際しては、管轄区域内のすべての主要な労働者団体及び事業主団体から指名を求めなければならないものではなく、調停のため必要と認められる範囲で、主要な労働者団体又は事業主団体のうちの13一部の団体の指名を求めることで足りるものであること。
則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第11条第1項により委員会の求めがあった場合には、当該労働者団体又は事業主団体は、当該事件につき意見を述べる者の氏名及び住所を委員会に通知するものとするものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第11条第2項)。

⒁委員会は、調停案を作成し、関係当事者に対しその受諾を勧告することができるものであること(法第30条の7において準用する男女雇用機会均等法22条)。調停案の作成は、調停委員の全員一致をもって行うものとするものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第12条第1項)。
また、「受諾を勧告する」とは、両関係当事者に調停案の内容を示し、その受諾を勧めるものであり、その受諾を義務付けるものではないこと。委員会は、調停案の受諾を勧告する場合には、関係当事者の双方に対し、受諾すべき期限を定めて行うものとするものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第12条第2項)。
関係当事者は、調停案を受諾したときは、その旨を記載し、記名押印した書面を委員会に提出しなければならないものであること(則第12条の2において準用する男女雇用機会均等法施行規則第12条第3項)。しかしながら、この「書面」は、関係当事者が調停案を受諾した事実を委員会に対して示すものであって、それのみをもって関係当事者間において民事的効力をもつものではないこと。

⒂委員会は、調停に係る紛争について調停による解決の見込みがないと認めるときは、調停を打ち切ることができ、その場合、その旨を関係当事者に通知しなければならないものとされていること(法第30条の7において準用する男女雇用機会均等法第23条)。
「調停による解決の見込みがないと認めるとき」とは、調停により紛争を解決することが期待し難いと認められる場合や調停により紛争を解決することが適当でないと認められる場合がこれに当たるものであり、具体的には、調停開始後長期の時間的経過をみている場合、当事者の一方が調停に非協力的で再三にわたる要請にもかかわらず出頭しない場合のほか、調停が当該紛争の解決のためでなく労使紛争を有利に導くために利用される場合等が原則としてこれに含まれるものであること。

6時効の完成猶予(法第30条の7において準用する男女雇用機会均等法第24条)

本条は、調停が打ち切られた場合に、当該調停の申請をした者が打ち切りの通知を受けた日から30日以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、調停の申請の時に遡り、時効の完成猶予が生じることを明らかにしたものであること。
「調停の申請の時」とは、申請書が現実に都道府県労働局長に提出された日であって、申請書に記載された申請年月日ではないこと。また、調停の過程において申請人が調停を求める事項の内容を変更又は追加した場合にあっては、当該変更又は追加した時が「申請の時」に該当するものと解されること。14「通知を受けた日から30日以内」とは、民法の原則に従い、文書の到達した日の当日は期間の計算に当たり参入されないため、書面による調停打ち切りの通知が到達した日の翌日から起算して30日以内であること。
「調停の目的となった請求」とは、当該調停手続において調停の対象とされた具体的な請求(地位確認、損害賠償請求等)を指すこと。本条が適用されるためには、これらと訴えに係る請求とが同一性のあるものでなければならないこと。

7訴訟手続の中止(法第30条の7において準用する男女雇用機会均等法第25条)

本条は、当事者が調停による紛争解決が適当であると考えた場合であって、調停の対象となる紛争のうち民事上の紛争であるものについて訴訟が係属しているとき、当事者が和解交渉に専念する環境を確保することができるよう、受訴裁判所は、訴訟手続を中止することができることとするものであること。
具体的には、法第30条の4第1項に規定する紛争のうち民事上の紛争であるものについて関係当事者間に訴訟が係属する場合において、次のいずれかに掲げる事由があり、かつ、関係当事者の共同の申立てがあるときは、受訴裁判所は、4月以内の期間を定めて訴訟手続を中止する旨を決定することができるものであること。

⑴当該紛争について、関係当事者間において調停が実施されていること。

⑵⑴の場合のほか、関係当事者間に調停によって当該紛争の解決を図る旨の合意があること。なお、
受訴裁判所は、いつでも訴訟手続を中止する旨の決定を取り消すことができるものであること。また、関係当事者の申立てを却下する決定及び訴訟手続を中止する旨の決定を取り消す決定に対しては不服を申し立てることができないものであること。

8資料提供の要求等(法第30条の7において準用する男女雇用機会均等法第26条)

委員会は、当該委員会に継続している事件の解決のために必要があると認めるときは、関係行政庁に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができるものであること。
「関係行政庁」とは、例えば、国の機関の地方支分部局や都道府県等の地方自治体が考えられるものであること。
「その他必要な協力」とは、情報の提供や便宜の供与等をいうものであること。


第2雑則(法第10章)

1助言、指導及び勧告(法第33条第1項)

⑴法の目的を達成するための行政機関固有の権限として、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができることとしたものであること。

⑵本条の厚生労働大臣の権限は、労働者からの申立て、第三者からの情報、職権等その端緒を問わず、必要に応じて行使し得るものであること。

⑶第1項の「この法律の施行に関し必要があると認めるとき」とは、法によって具体的に事業主の責務とされた事項について、当該責務が十分に遂行されていないと考えられる場合において、当該責務の遂行を促すことが法の目的に照らし必要であると認められるとき等をいうものであること。

⑷則第15条第1項第3号は、法第33条第1項に規定する厚生労働大臣の権限を都道府県労働局長に委任するものであること。「厚生労働大臣が自らその権限を行う」事案とは、

イ 広範囲な都道府県にまたがり、その事案の処理に当たって各方面との調整が必要であると考えられる事案

ロ 当該事案の性質上社会的に広汎な影響力を持つと考えられる事案

ハ 都道府県労働局長が勧告を行ったにもかかわらず是正されない事案等をいうものであり、厚生労働大臣が自ら又は都道府県労働局長の上申を受けてその都度判断するものであること。

2公表(法第33条第2項)

職場におけるセクシュアルハラスメント等の措置義務等と同様に、厚生労働大臣は、法第30条の2第1項及び第2項(第30条の5第2項及び第30条の6第2項において準用する場合を含む。3において同じ。)の規定に違反している事業主に対し自ら勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとしたものであること。

3資料の提出の要求等及び報告の請求(法第35条及び第36条第1項)

⑴法の目的を達成するための行政機関固有の権限として、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、
・法第30条の3第2項及び第3項の規定の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、法第35条の規定により資料の提出の要求等を求めることができることとするとともに、
・法第30条の2第1項及び第2項の規定の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、法第36条第1項の規定により報告を求めることができることとしたものであること。
なお、6にあるとおり、法第36条第1項の規定による報告の請求については、職場におけるセクシュアルハラスメント等の措置義務等に関する報告の徴収の場合と同様に過料の対象となり得るものであること。

厚生労働大臣の権限は、労働者からの申立て、第三者からの情報、職権等その端緒を問わず、必要に応じて行使し得るものであること。

⑶「施行するために必要があると認めるとき」又は「施行に関し必要な事項」とは、法によって具体的に事業主の責務とされた事項について、当該責務が十分に遂行されていないと考えられる場合において、当該責務の遂行を促すことが法の目的に照らし必要であると認められるとき又は当該責務の遂行を促すために必要な事項等をいうものであること。

⑷則第15条第1項第5号及び第6号は、法第35条及び第36条第1項に規定する厚生労働大臣の権限を都道府県労働局長に委任するものであること。
厚生労働大臣が自らその権限を行う」事案とは、

イ 広範囲な都道府県にまたがり、その事案の処理に当たって各方面との調整が必要であると考えられる事案

ロ 当該事案の性質上社会的に広汎な影響力を持つと考えられる事案

ハ 都道府県労働局長が勧告を行ったにもかかわらず是正されない事案

等をいうものであり、厚生労働大臣が自ら又は都道府県労働局長の上申を受けてその都度判断するものであること。

4船員に関する特例(法第38条)

船員に係る労働関係については、国土交通省が所管する別の体系となっているため、法中「厚生労働大臣」とあるのを「国土交通大臣」と読み替える等所要の整備を行ったものであること。

5適用除外(法第38条の2)

⑴法第30条の4から第30条の8まで、第33条第1項(第8章の規定の施行に関するものに限る。)及び第2項並びに第36条第1項の規定は、国家公務員及び地方公務員に関しては適用しないこととしたものであること。
「国家公務員及び地方公務員」とは、一般職又は特別職、常勤又は非常勤の別にかかわりなく、これに該当するものであること。
また、国家公務員の身分が与えられている特定独立行政法人の職員、地方公務員の身分が与えられている特定地方独立行政法人もこれに含まれているものであること。⑵法第30条の2及び第30条の3の規定は、一般職の国家公務員(特定独立行政法人等に勤務する者を除く。)、裁判所職員、国会職員及び自衛隊員に関しては適用しないこととしたものであること。
なお、地方公務員については、適用することとなること。

6罰則(法第41条)

第33条第1項の助言、指導及び勧告を適切に行うためには、その前提として、法第36条第1項の報告の請求を適切に行う必要がある。このため、法第41条は同項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者に対して、20万円以下の過料に処することとしたものであること。
なお、過料については、非訟事件手続法明治31年法律第14号)第4編の過料事17件の規定により、管轄の地方裁判所において過料の裁判の手続を行うものとなること。
都道府県労働局長は、法第36条第1項違反があった場合には、管轄の地方裁判所に対し、当該事業主について、同項に違反することから、法第41条に基づき過料に処すべき旨の通知を行うこととなること。

第3改正法附則

1中小事業主に関する経過措置(改正法附則第3条)

中小事業主(国、地方公共団体及び行政執行法人以外の事業主であって、その資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については5千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下であるもの及びその常時使用する労働者の数が3百人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については百人)以下であるものをいう。)については、令和4年3月31日までの間、法第30条の2第1項の雇用管理上の措置義務は努力義務とし、その間は、当該措置義務については、紛争解決の促進に関する特例、勧告違反の場合の公表、違反した場合に過料が科される報告の請求は適用しないこととしたこと。
なお、派遣先の事業主及び船員を雇用する事業主も同じであること。

2紛争の解決の促進に関する特例に関する経過措置

改正法の施行の際に、現に個別労働紛争解決促進法のあっせんの手続に係属している改正法により調停の対象となる紛争については、同法のあっせんの手続により引き続き処理することとしたこと(改正法附則第4条第1項)。
また、法第30条の2第1項の措置義務についての中小事業主と労働者の間の紛争については、令和4年3月31日までは調停の対象とならないため、同日を基準として同様の経過措置を設けたこと(改正法附則第4条第2項)。

3罰則に関する経過措置(改正法附則第5条)

改正法の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によることとしたこと。


第4適用時期

この通達は、令和2年6月1日から適用すること。