社会保険労務士川口正倫のブログ

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「改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について」の一部改正について(令2.2.10雇均発0210第2号)

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「改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について」の一部改正について(令2.2.10雇均発0210第2号)

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200213M0040.pdf


雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)及び事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成28年厚生労働省告示第232号)等については、平成18年10月11日付け雇児発1011002号「改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について」(以下「解釈通達」という。)により、その趣旨、内容及び取扱いを示し、それに基づく行政指導等を指示してきたところである。
今般、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第24号。以下「改正法」という。)が令和元年6月5日に公布され、改正法の施行に伴い、令和元年12月27日に女性活躍推進法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令(令和元年厚生労働省令第86号)が、令和2年1月15日に事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針等の一部を改正する告示(令和2年厚生労働省告示第6号)が公布又は告示され、令和2年6月1日から施行又は適用することとされたことに伴い、解釈通達の一部を別紙の新旧対照表のとおり改め、同日から適用することとしたので、その円滑な実施を図るよう配慮されたい。

(以下、改定後の通達のみを掲載する)

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律(平成18年法律第82号。以下「平成18年改正法」という。)については、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令(平成18年厚生労働省令第183号)、労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18年厚生労働省告示第614号。以下「性差別禁止指針」という。)及び事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号。以下「セクハラ防止指針」という。)とともに、平成19年4月1日から施行又は適用されている。
また、平成29年1月1日以降は、雇用保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(平成28年厚生労働省令第137号)、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき事項についての指針の一部を改正する件(平成28年厚生労働省告示第314号)及び事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成28年厚生労働省告示312号。以下「妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針」という。)が施行又は適用されている。
今般、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第24号。以下「改正法」という。)が令和元年6月5日に公布され、改正法の施行に関して、女性活躍推進法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令(令和元年厚生労働省令第86号)及び事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針等の一部を改正する告示(令和2年厚生労働省告示第6号)(以下「改正省令等」という。)が公布又は告示されたところであり、改正省令等は、改正法とともに令和2年6月1日から施行又は適用されることとなっている。
改正法による改正後の雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「法」という。)、改正省令等による改正後の雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(昭和61年労働省令第2号。以下「則」という。)、性差別禁止指針、セクハラ防止指針及び妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針の趣旨、内容及び取扱いは下記のとおりであるので、その円滑な実施を図るよう配慮されたい。




第1(略)

第2性別を理由とする差別の禁止等(法第2章第1節)

(略)

1性別を理由とする差別の禁止(法第5条及び第6条)

⑴総論

イ(略)

ロ法第5条の「その性別にかかわりなく均等な機会を与え」るとは、男性、女性といった性別にかかわらず、等しい機会を与えることをいい、男性又は女性一般に対する社会通念や平均的な就業実態等を理由に男女異なる取扱いをすることはこれに該当しないものであること。
なお、合理的な理由があれば男女異なる取扱いをすることも認められるものであり、性差別禁止指針第2の14⑵はこれに当たる場合であること。

ハ性差別禁止指針第2の1の「企業の雇用管理の実態に即して行う」とは、例えば、職務内容が同じでも転居を伴う転勤の有無によって取扱いを区別して配置等を行っているような場合には、当該労働者間において客観的・合理的な違いが存在していると判断され、当該労働者の雇用管理区分は異なるものとみなすことなどが考えられること。

ニ性差別禁止指針第2の2⑵から第2の13⑵までにおいて「一の雇用管理区分において」とあるとおり、性別を理由とする差別であるか否かについては、一の雇用管理区分内の労働者について判断するものであること。
例えば、「総合職」の採用では男女で均等な取扱いをしているが、「一般職」の採用では男女異なる扱いをしている場合は、他の雇用管理区分において男女で均等な機会を与えていたとしても、ある特定の雇用管理区分において均等な機会を与えていないこととなるため、第5条違反となるものであること。

ホ法第6条における「性別を理由として」とは、例えば、労働者が男性であること又は女性であることのみを理由として、あるいは社会通念として又は当該事業場において、男性
労働者と女性労働者の間に一般的又は平均的に、能力、勤続年数、主たる生計の維持者である者の割合等に格差があることを理由とすることの意であり、個々の労働者の意欲、能力等を理由とすることはこれに該当しないものであること。

ヘ(略)

⑵募集及び採用(法第5条)

イ(略)
ロ性差別禁止指針第2の2(2)イ②の「職種の名称」とは、男性を表すものとしては、例えば、ウェイター、営業マン、カメラマン、ベルボーイ、潜水夫等「マン」、「ボーイ」、「夫」等男性を表す語が職種の名称の一部に含まれているものがこれに当たるものであり、女性を表すものとしては、ウェイトレス、セールスレディ等「レディ」、「ガール」、「婦」等女性を表す語が職種の名称の一部に含まれているものがこれに当たるものであること。
「対象を男女のいずれかのみとしないことが明らかである場合」とは、例えば、「カメラマン(男女)募集」とする等男性を表す職種の名称に括弧書きで「男女」と付け加える方法や、「ウェイター・ウェイトレス募集」のように男性を表す職種の名称と女性を表す職種の名称を並立させる方法が考えられること。
「『男性歓迎』、『女性向きの職種』等の表示」の「等」には、「男性優先」、「主として男性」、「女性歓迎」、「貴女を歓迎」等が含まれるものであること。

ハ性差別禁止指針第2の2(2)ロの「自宅から通勤すること等」の「等」には、「容姿端麗」、「語学堪能」等が含まれるものであること。

ニ性差別禁止指針第2の2(2)ハ④の「結婚の予定の有無」、「子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無」については、男女双方に質問した場合には、法には違反しないものであるが、もとより、応募者の適正・能力を基準とした公正な採用選考を実施するという観点からは、募集・採用に当たってこのような質問をすること自体望ましくないものであること。

ホ性差別禁止指針第2の2(2)ホの「募集又は採用に係る情報」とは、求人の内容の説明のほか、労働者を募集又は採用する目的で提供される会社の概要等に関する資料等が含まれること。
なお、ホは男性又は女性が資料の送付や説明会への出席を希望した場合に、事業主がその希望のすべてに対応することを求める趣旨ではなく、先着順に、又は一定の専攻分野を対象として資料を送付する等一定の基準により一定の範囲の者を対象として資料送付又は説明会の開催を行うことは含まれないこと。
①については、内容が異なる複数の資料を提供する場合には、それぞれの資料について、資料を送付する対象を男女いずれかのみとしないこと等が求められるものであること。
②については、複数の説明会を開催するときは、個々の説明会についてその対象を男女いずれかのみとしないことが求められるものであって、男女別の会社説明会の開催は②に該当するものであること。

⑶~⑸(略)

⑹教育訓練(法第6条第1号)

イ~ハ(略)
ニ性差別禁止指針第2の6⑵イ③の「接遇訓練」とは、接客等のために必要な基本的な作法、マナー等を身につけるための教育訓練をいうものであること。

ホ性差別禁止指針第2の6⑵ロ①の「将来従事する可能性のある職務に必要な知識を身につけるための教育訓練」とは、例えば、管理職に就くために必要とされる能力、知識を付与する教育訓練が考えられるものであること。

⑺~⑼(略)

2性別以外の事由を要件とする措置(法第7条)

⑴~⑸(略)

⑹性差別禁止指針第3の2⑵ロの「通常の作業において筋力を要さない場合」とは、日常の業務遂行において筋力を要しない場合をいい、突発的な事故の発生等予期せざる事態が生じた場合に筋力を要する場合は、通常の作業において筋力を要するとは認められないものであること。

⑺性差別禁止指針第3の3⑵イの「計画等」とは、必ずしも書面になっている必要はなく、取締役会での決定や、企業の代表が定めた方針等も含むが、ある程度の具体性があることが必要であり、不確実な将来の予測などは含まれないものであること。
ハの「組織運営上」とは、処遇のためのポストの確保をする必要性がある場合や、不正行為の防止のために異動を行う必要性がある場合などが含まれるものであること。

3女性労働者に係る措置に関する特例(法第8条)

⑴~⑷

⑸本条により特例とされる女性労働者に係る措置は、過去の女性労働者に対する取扱い等により女性労働者に現実に男性労働者との格差が生じている状況を改善するために暫定的、一時的に講ずることが許容されるものであり、性差別禁止指針第2の14の(1)イからヘまでの「相当程度少ない」状態にある限りにおいて、認められるものであること。

⑹性差別禁止指針第2の14の⑴は募集・採用、配置、昇進、教育訓練、職種の変更及び雇用形態の変更に関して本条により違法でないとされる措置を具体的に明らかにしたものであること。
イからヘまでにおいて「相当程度少ない」とは、我が国における全労働者に占める女性労働者の割合を考慮して、4割を下回っていることをいうものであること。4割を下回っている
か否かについては、募集・採用は雇用管理区分又は役職ごとに、配置は一の雇用管理区分における職務ごとに、昇進は一の雇用管理区分における役職ごとに、教育訓練は一の雇用管理区分における職務又は役職ごとに、職種の変更は一の雇用管理区分における職種ごとに、雇用形態の変更は一の雇用管理区分における雇用形態ごとに、判断するものであること。

⑺性差別禁止指針第2の14⑴イにおける「その他男性と比較して女性に有利な取扱いをすること」とは、具体的には、例示されている「募集又は採用に係る情報の提供について女性に有利な取扱いをすること」、「採用の基準を満たす者の中から男性より女性を優先して採用すること」のほか、募集又は採用の対象を女性のみとすること、募集又は採用に当たって男性と比較して女性に有利な条件を付すこと等男性と比較して女性に有利な取扱いをすること一般が含まれるものであること。
ロ、ハ、ホ及びヘにおいて同じであること。

⑻性差別禁止指針第2の14⑴ニの「職務又は役職に従事するに当たって必要とされる能力を付与する教育訓練」とは、現在従事している業務の遂行のために必要な能力を付与する教育訓練ではなく、将来就く可能性のある職務又は役職に必要な能力を付与する教育訓練であり、例えば、女性管理職が少ない場合において、管理職に就くために必要とされる能力を付与する教育訓練をいうものであること。

⑼性差別禁止指針第2の14⑴ニの「その他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること」には、例えば、女性労働者に対する教育訓練の期間を男性労働者よりも長くすること等が含まれること。


4婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等(法第9条)

⑴・⑵(略)

⑶第3項の適用に当たっては、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)」第47条の2の規定により、派遣先は、派遣労働者を雇用する事業主とみなされるものであり、同条の詳細については、平成28年8月2日付け雇児発0802第2号「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第47条の2から第47条の4までの規定の運用について」が発出されているものであること。

⑷(略)

⑸性差別禁止指針第4の3⑴柱書きの「法第九条第三項の「理由として」とは、妊娠・出産等と、解雇その他の不利益な取扱いの間に因果関係があることをいう。」につき、妊娠・出産等の事由を契機として不利益取扱いが行われた場合は、原則として妊娠・出産等を理由として不利益取扱いがなされたと解されるものであること。
ただし、
イ①円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障があるため当該不利益取扱いを行わざるを得ない場合において、
②その業務上の必要性の内容や程度が、法第九条第三項の趣旨に実質的に反しないものと認められるほどに、当該不利益取扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特段の事情が存在すると認められるとき

又は

ロ①契機とした事由又は当該取扱いにより受ける有利な影響が存在し、かつ、当該労働者が当該取扱いに同意している場合において、
②当該事由及び当該取扱いにより受ける有利な影響の内容や程度が当該取扱いにより受ける不利な影響の内容や程度を上回り、当該取扱いについて事業主から労働者に対して適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば当該取扱いについて同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき

についてはこの限りでないこと。

なお、「契機として」については、基本的に当該事由が発生している期間と時間的に近接して当該不利益取扱いが行われたか否かをもって判断すること。
例えば、育児時間を請求・取得した労働者に対する不利益取扱いの判断に際し、定期的に人事考課・昇給等が行われている場合においては、請求後から育児時間の取得満了後の直近の人事考課・昇給等の機会までの間に、性差別禁止指針第4の3⑵リの不利益な評価が行われた場合は、「契機として」行われたものと判断すること。

⑹性差別禁止指針第4の3⑴なお書きの「妊産婦」とは、労働基準法第64条の3第1項に規定する妊産婦を指すものであること。

⑺性差別禁止指針第4の3⑵のイからルまでに掲げる行為は、法第9条第3項により禁止される「解雇その他不利益な取扱い」の例示であること。したがって、ここに掲げていない行為について個別具体的な事情を勘案すれば不利益取扱いに該当するケースもあり得るものであり、例えば、長期間の昇給停止や昇進停止、期間を定めて雇用される者について更新後の労働契約の期間を短縮することなどは、不利益な取扱いに該当するものと考えられること。

イ性差別禁止指針第4の3⑵ロの「契約の更新をしないこと」が不利益な取扱いとして禁止されるのは、妊娠・出産等を理由とする場合に限られるものであることから、契約の更新回数が決まっていて妊娠・出産等がなかったとしても契約は更新されなかった場合、経営の合理化のためにすべての有期契約労働者の契約を更新しない場合等はこれに該当しないものであること。
契約の不更新が不利益な取扱いに該当することになる場合には、休業等により契約期間のすべてにわたり労働者が労務の提供ができない場合であっても、契約を更新しなければならないものであること。
ロ性差別禁止指針第4の3⑵ホの「降格」とは、性差別禁止指針第2の5⑴と同義であり、同列の職階ではあるが異動前の職務と比較すると権限が少ない職務への異動は、「降格」には当たらないものであること。


⑻性差別禁止指針第4の3⑶は、不利益取扱いに該当するか否かについての勘案事項を示したものであること。
イ性差別禁止指針第4の3⑶ロの「等」には、例えば、事業主が、労働者の上司等に嫌がらせ的な言動をさせるようし向ける場合が含まれるものであること。
ロ性差別禁止指針第4の3⑶ハのなお書きについては、あくまで客観的にみて他に転換すべき軽易な業務がない場合に限られるものであり、事業主が転換すべき軽易な業務を探すことなく、安易に自宅待機を命じる場合等を含むものではないことに留意すること。

ハ性差別禁止指針第4の3⑶ヘの「通常の人事異動のルール」とは、当該事業所における人事異動に関する内規等の人事異動の基本方針などをいうが、必ずしも書面によるものである必要はなく、当該事業所で行われてきた人事異動慣行も含まれるものであること。「相当程度経済的又は精神的な不利益を生じさせること」とは、配置転換の対象となる労働者が負うことになる経済的又は精神的な不利益が通常甘受すべき程度を著しく越えるものであることの意であること。
③の「原職相当職」の範囲は、個々の企業又は事業所における組織の状況、業務配分、その他の雇用管理の状況によって様々であるが、一般的に、(イ)休業後の職制上の地位が休業前より下回っていないこと、(ロ)休業前と休業後とで職務内容が異なっていないこと及び(ハ)
休業前と休業後とで勤務する事業所が同一であることのいずれにも該当する場合には、「原職相当職」と評価されるものであること。

ニ性差別禁止指針第4の3(3)ト①の「派遣契約に定められた役務の提供ができる」と認められない場合とは、単に、妊娠、出産等により従来よりも労働能率が低下したというだけではなく、それが、派遣契約に定められた役務の提供ができない程度に至ることが必要であること。また、派遣元事業主が、代替要員を追加して派遣する等により、当該派遣労働者の労働能率の低下や休業を補うことができる場合についても、「派遣契約に定められた役務の提供ができる」と認められるものであること。②においても同様であること。

⑼性差別禁止指針第4の3(1)ハからチまでに係る休業等については、労働基準法及び法がその権利又は利益を保障した趣旨を実質的に失わせるような取扱いを行うことは、公序良俗に違反し、無効であると判断された判例があることに留意すること。

⑽(略)

5性差別禁止指針(法第10条)

⑴(略)

⑵性差別禁止指針は、法により性別を理由とする労働者に対する差別が禁止されることとなった直接差別(募集、採用、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種及び雇用形態の変更、退職の勧奨、定年及び解雇)、間接差別、婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い(婚姻・妊娠・出産を退職理由として予定する定め、婚姻したことを理由とする解雇、妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益な取扱い)各分野について、禁止される措置として具体的に明らかにする必要があると認められるものについて定めたものであること。性差別禁止指針に定めた例はあくまでも例示であり、限定列挙ではなく、これら以外の措置についても違法となる場合があること。
また、性差別禁止指針においては、法第5条から第7条までに関し、男女双方の例を挙げているものと男性又は女性の一方のみの例を挙げているものがあるが、これは、例示という性格にかんがみ、現実に男性及び女性の双方への差別が起こる可能性が高いものについては男女双方の例を、現実には一方の性に対する差別が起こる可能性が低いものについては男性又は女性の一方のみの例を掲げたものであること。したがって、男性又は女性のみの例示であるからといって、他方の性に対する差別を行ってよいというものではないこと。

⑶性差別禁止指針第2の2⑵から13⑵までの「排除」とは、機会を与えないことをいうものであること。

⑷性差別禁止指針第2の3⑵の「一定の職務」とは、特定の部門や特定の地域の職務に限られるものではなく、労働者を配置しようとする職務一般をいうものであること。これは、性差別禁止指針第2の6⑵において同様であること。

⑸性差別禁止指針第2の1の「その他の労働者についての区分」としては、例えば、勤務地の違いによる区分が考えられるものであること。

⑹性差別禁止指針第2の14⑵は、男女異なる取扱いをすることに合理的な理由があると認められることから、法違反とはならないものについて、明らかにしたものであること。
イ性差別禁止指針第2の14⑵イ①には、俳優、歌手、モデル等が含まれるものであること。
①には守衛、警備員であればすべて該当するというものではなく、単なる受付、出入者のチェックのみを行う等防犯を本来の目的とする職務でないものは含まれないものであること、また、一般的に単なる集金人等は含まれないが、専ら高額の現金を現金輸送車等により輸送する業務に従事する職務は含まれるものであること。
②の「宗教上(中略)必要性があると認められる職務」とは、例えば、一定の宗派における神父、巫女等が考えられること。
また、「風紀上(中略)必要性があると認められる職務」とは、例えば、女子更衣室の係員が考えられること。
①、②及び③はいずれも拡大解釈されるべきではなく、単に社会通念上男性又は女性のいずれか一方の性が就くべきであると考えられている職務は含まれないものであること。

ロ性差別禁止指針第2の14(2)ロの「通常の業務を遂行するために」には、日常の業務遂行の外、将来確実な人事異動等に対応する場合は含まれるが、突発的な事故の発生等予期せざる事態、不確実な将来の人事異動の可能性等に備える場合等は含まれないものであること。
労働基準法について「均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合」とは、男女の均等な取扱いが困難であることが、真に労働基準法の規定を遵守するためであることを要するものであり、企業が就業規則労働協約等において女性労働者について労働基準法を上回る労働条件を設定したことによりこれを遵守するために男女の均等な取扱いをすることが困難である場合は含まれないものであること。

ハ性差別禁止指針第2の14(2)ハの「風俗、風習等の相違により男女のいずれかが能力を発揮し難い海外での勤務」とは、海外のうち治安、男性又は女性の就業に対する考え方の相違等の事情により男性又は女性が就業してもその能力の発揮が期待できない地域での勤務をいい、海外勤務すべてがこれに該当するものではないこと。
「特別の事情」には、例えば、勤務地が通勤不可能な山間僻地にあり、事業主が提供する宿泊施設以外に宿泊することができず、かつ、その施設を男女共に利用することができない場合など、極めて特別な事情をいい、拡大して解釈されるべきではなく、例示にある海外勤務と同様な事情にあることを理由とした国内での勤務は含まれないものであること。
また、これらの場合も、ロと同様、突発的な事故の発生等予期せざる事態、不確実な将来の人事異動の可能性等に備える場合等は含まれないものであること。


第3事業主の講ずべき措置等(法第2章第2節)

本章は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保のための前提条件を整備する観点から、労働者の就業に関して講ずべき措置を規定したものであって、第2章第1節及び第3節の規定と相まって労働者の職業生活の充実を図ることを目的とし
ているものであること。

1職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等並びに国、事業主及び労働者の責務(法第11条及び第11条の2)

⑴職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等

イ職場におけるセクシュアルハラスメントは、労働者の個人としての尊厳を不当に傷つけ、能力の有効な発揮を妨げるとともに、企業にとっても職場秩序や業務の遂行を阻害し、社会的評価に影響を与える問題であり、社会的に許されない行為であることは言うまでもない。特に、職場におけるセクシュアルハラスメントは、いったん発生すると、被害者に加え行為者も退職に至る場合がある等双方にとって取り返しのつかない損失を被ることが多く、被害者にとって、事後に裁判に訴えることは、躊躇せざるを得ない面があることを考えると、未然の防止対策が重要である。
また、近年、女性労働者に対するセクシュアルハラスメントに加え、男性労働者に対するセクシュアルハラスメントの事案も見られるようになってきところである。
こうしたことから、法第11条第1項は、職場におけるセクシュアルハラスメントの対象を男女労働者とするとともに、その防止のため、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることを事業主に義務付けることとしたものであること。

ロ法第11条第2項は、労働者が事業主から不利益な取扱いを受けることを懸念して、職場におけるセクシュアルハラスメントに関する相談や事業主の相談対応に協力して事実を述べることを躊躇することがないよう、事業主がこれらを理由として解雇その他不利益な取扱いを行うことを禁止することとしたものであること。
「理由として」とは、労働者がセクシュアルハラスメントに関する相談を行ったことや事業主の相談対応に協力して事実を述べたことが、事業主が当該労働者に対して不利益な
取扱いを行うことと因果関係があることをいうものであること。
「不利益な取扱い」となる行為の例については、性差別禁止指針第4の3⑵に掲げるものと同様であること。また、個別の取扱いが不利益な取扱いに該当するか否かについての勘案事項については、性差別禁止指針第4の3⑶に掲げる事項に準じて判断すべきものであること。
なお、当該言動を直接受けた労働者だけでなく、それを把握した周囲の労働者からの相談を理由とする解雇その他不利益な取扱いについても、法第11条第2項の規定による禁止の対象に含まれること。

ハ法第11条第3項は、同条第1項の雇用管理上の措置の対象となる職場におけるセクシュアルハラスメントの行為者には、セクハラ防止指針2⑷にあるとおり、取引先等の他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)や他の事業主の雇用する労働者も含まれるものであるところ、その問題解決を円滑に図るに当たっては、被害を受けた労働者を雇用する事業主が講ずる事実関係の確認や再発防止などの雇用管理上の措置に、行為者を雇用する事業主が協力することが望まれることから、協力を求められた場合に事業主がこれに応じる努力義務を設けることとしたものであること。

ニ法第11条第4項は、同条第1項から第3項までの規定に基づき事業主が講ずべき措置等の内容を具体化するために、厚生労働大臣が指針を定め、公表することとしたものであること。


⑵職場における性的な言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務
職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するためには、職場におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならないことやこれに起因する問題について、事業主だけでなく、国民一般が関心と理解を深め、実際に行為者となり得る事業主や労働者が自らの言動に注意を払うこと等が必要である。このため、法第11条の2は、国、事業主及び労働者がそのために行うよう努めるべき事項について、各々の責務として明確に規定することとしたものであること。


⑶セクハラ防止指針は、事業主が防止のため適切かつ有効な雇用管理上の措置等を講ずることができるようにするため、防止の対象とするべき職場におけるセクシュアルハラスメントの内容や事業主が雇用管理上措置すべき事項等を定めたものであること。

イ職場におけるセクシュアルハラスメントの内容
セクハラ防止指針2「職場におけるセクシュアルハラスメントの内容」においては、事業主が、雇用管理上防止すべき対象としての職場におけるセクシュアルハラスメントの内容を明らかにするために、その概念の内容を示すとともに、典型例を挙げたものであること。
また、実際上、職場におけるセクシュアルハラスメントの状況は多様であり、その判断に当たっては、個別の状況を斟酌する必要があることに留意すること。
なお、法及びセクハラ防止指針は、あくまで職場におけるセクシュアルハラスメントが発生しないよう防止することを目的とするものであり、個々のケースが厳密に職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否かを問題とするものではないので、この点に注意すること。

①職場
セクハラ防止指針2⑵は「職場」の内容と例示を示したものであること。
「職場」には、業務を遂行する場所であれば、通常就業している場所以外の場所であっても、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店(接待の席も含む)、顧客の自宅(保険外交員等)の他、取材先(記者)、出張先及び業務で使用する車中等も含まれるものであること。
なお、勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当する。その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意か等を考慮して個別に行うものであること。

②労働者
セクハラ防止指針2⑶にあるとおり、「労働者」とは、事業主が雇用する労働者の全てをいい、正規雇用労働者のみならず、いわゆる非正規雇用労働者も含むものであること。
派遣労働者については、労働者派遣法第47条の2の規定により、派遣先も派遣労働者を雇用する事業主とみなされるものであり、同条の詳細については、平成28年8月2日付け雇児発0802第2号「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第47条の2から第47条の4までの規定の運用について」が発出されているものであること。

③性的な言動
セクハラ防止指針2⑷は「性的な言動」の内容と例示のほか、当該言動の行為者を示したものであること。「性的な言動」に該当するためには、その言動が性的性質を有することが必要であること。
したがって、例えば、女性労働者のみに「お茶くみ」等を行わせること自体は性的な言動には該当しないが、固定的な性別役割分担意識に係る問題、あるいは配置に係る女性差別の問題としてとらえることが適当であること。
「性的な言動」には、(イ)「性的な発言」として、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を意図的に流布することのほか、性的冗談、からかい、食事・デート等への執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すこと等が、
(ロ)「性的な行動」として、性的な関係の強要、必要なく身体に触ること、わいせつな図画(ヌードポスター等)を配布、掲示することのほか、強制わいせつ行為、強姦等が含まれるものであること。
職場におけるセクシュアルハラスメントの行為者には、事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員。以下この③において同じ。)、上司、同僚に限らず、取引先等の他の事業主又はその雇用する労働者、顧客、患者又はその家族、学校における生徒等もなり得るものであり、
また、女性労働者が女性労働者に対して行う場合や、男性労働者が男性労働者に対して行う場合についても含まれること。また、被害を受けた者(以下「被害者」という。)の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、法及びセクハラ防止指針の対象となること。
性的指向」とは、人の恋愛・性愛がいずれの性別を対象とするかを表すものであり、「性自認」とは、性別に関する自己意識をいうものであること。

④対価型セクシュアルハラスメント
セクハラ防止指針2⑸は対価型セクシュアルハラスメントの内容とその典型例を示したものであること。
「対応により」とは、例えば、労働者の拒否や抵抗等の対応が、解雇、降格、減給等の不利益を受けることと因果関係があることを意味するものであること。
「解雇、降格、減給等」とは労働条件上不利益を受けることの例示であり、「等」には、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換等が含まれるものであること。
なお、セクハラ防止指針に掲げる対価型セクシュアルハラスメントの典型的な例は限定列挙ではないこと。

⑤環境型セクシュアルハラスメント
セクハラ防止指針2⑹は環境型セクシュアルハラスメントの内容とその典型例を示したものであること。
「労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」とは、就業環境が害されることの内容であり、単に性的言動のみでは就業環境が害されたことにはならず、一定の客観的要件が必要であること。
具体的には個別の判断となるが、一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合には、一回でも就業環境を害することとなり得るものであること。
また、継続性又は繰り返しが要件となるものであっても、明確に抗議しているにもかかわらず放置された状態の場合又は心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合には、就業環境が害されていると解し得るものであること。
なお、セクハラ防止指針に掲げる環境型セクシュアルハラスメントの典型的な例は限定列挙ではないこと。

⑥「性的な言動」及び「就業環境が害される」の判断基準
「労働者の意に反する性的な言動」及び「就業環境を害される」の判断に当たっては、労働者の主観を重視しつつも、事業主の防止のための措置義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要である。具体的には、セクシュアルハラスメントが、男女の認識の違いにより生じている面があることを考慮すると、被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とし、被害を受けた労働者が男性である場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準とすることが適当であること。
ただし、労働者が明確に意に反することを示しているにもかかわらず、さらに行われる性的言動は職場におけるセクシュアルと解され得るものであること。

ロ事業主等の責務
セクハラ防止指針3は、法第11条の2の事業主及び労働者の責務の内容や職場におけるセクシュアルハラスメントに起因する問題の例を示したものであること。

ハ雇用管理上講ずべき事項セクハラ防止指針4は、事業主が雇用管理上講ずべき措置として10項目挙げており、これらについては、企業の規模や職場の状況の如何を問わず必ず講じなければならないものであること。
また、措置の方法については、企業の規模や職場の状況に応じ、適切と考える措置を事業主が選択できるよう具体例を示してあるものであり、限定列挙ではないこと。

①「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」
セクハラ防止指針4⑴は、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するためには、まず事業主の方針として職場におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならないことを明確にするとともに、これを従業員に周知・啓発しなければならないことを明らかにしたものであること。
「その発生の原因や背景」とは、例えば、企業の雇用管理の問題として労働者の活用や能力発揮を考えていない雇用管理の在り方や労働者の意識の問題として同僚である労働者を職場における対等なパートナーとして見ず、性的な関心の対象として見る意識の在り方が挙げられるものであること。さらに、両者は相互に関連して職場におけるセクシュアルハラスメントを起こす職場環境を形成すると考えられること。
また、「その発生の原因や背景」には、性別役割分担意識に基づく言動も考えられることを明らかにしたものであり、事業主に対して留意すべき事項を示したものであること。
イ①並びにロ①及び②の「その他の職場における服務規律等を定めた文書」として、従業員心得や必携、行動マニュアル等、就業規則の本則ではないが就業規則の一部を成すものが考えられること。
イ③の「研修、講習等」を実施する場合には、定期的に実施する、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に職階別に分けて実施する等の方法が効果的と考えられること。

②「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」
セクハラ防止指針4⑵は、職場におけるセクシュアルハラスメントの未然防止及び再発防止の観点から相談(苦情を含む。以下同じ。)への対応のための窓口を明確にするとともに、相談の対応に当たっては、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制を整備しなければならないことを明らかにしたものであること。
セクハラ防止指針4⑵イの「窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する」とは、窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうものであり、併せて、労働者に対して窓口を周知し、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要であること。
例えば、労働者に対して窓口の部署又は担当者を周知していることなどが考えられること。セクハラ防止指針4⑵ロの「その内容や状況に応じ適切に対応する」とは、具体的には、相談者や行為者に対して、一律に何らかの対応をするのではなく、労働者が受けている性的言動等の性格・態様によって、状況を注意深く見守る程度のものから、上司、同僚等を通じ、行為者に対し間接的に注意を促すもの、直接注意を促すもの等事案に即した対応を行うことを意味するものであること。
なお、対応に当たっては、公正な立場に立って、真摯に対応すべきことは言うまでもないこと。
セクハラ防止指針4⑵ロの「相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮」することには、相談者が相談窓口の担当者の言動等によってさらに被害を受けること等(いわゆる「二次被害」)を防ぐための配慮も含まれること。
セクハラ防止指針4⑵ロの「広く相談に対応し」とは、職場におけるセクシュアルハラスメントを未然に防止する観点から、相談の対象として、職場におけるセクシュアルハラスメントそのものでなくともその発生のおそれがある場合やセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合も幅広く含めることを意味するものであること。
例えば、セクハラ防止指針4(2)ロで掲げる、放置すれば相談者が業務に専念できないなど就業環境を害するおそれがある場合又は男性若しくは女性に対する差別意識など性別役割分担意識に基づく言動が原因や背景となってセクシュアルハラスメントが生じるおそれがある場合のほか、勤務時間外の懇親の場等においてセクシュアルハラスメントが生じた場合等も幅広く相談の対象とすることが必要であること。
また、当該言動を把握した周囲の労働者からの相談にも応じることが必要であること。
セクハラ防止指針4⑵ロ②の「留意点」や③の「研修」の内容には、いわゆる二次被害を防止するために必要な事項も含まれるものであること。

③「職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」
セクハラ防止指針4⑶は、職場におけるセクシュアルハラスメントが発生した場合は、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するとともに、当該事案に適正に対処しなければならないことを明らかにしたものであること。
セクハラ防止指針4⑶イの事実関係の確認及びニの再発防止に向けた措置については、職場におけるセクシュアルハラスメントについては、他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)又は取引先等の他の事業主の雇用する労働者又も行為者となり得ることから、これらの者に対して必要に応じて協力を求めることも含まれる旨を明らかにしたものであり、協力を求められた事業主は、法第11条第3項の規定によりこれに応じる努力義務があること。
セクハラ防止指針4⑶イ①の「相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮する」に当たっては、相談者が行為者に対して迎合的な言動を行っていたとしても、その事実が必ずしもセクシュアルハラスメントを受けたことを単純に否定する理由にはならないことに留意すること。
セクハラ防止指針4⑶ロの「被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと」には、職場におけるセクシュアルハラスメントを受けた労働者の継続就業が困難にならないよう環境を整備することや、労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントにより休業を余儀なくされた場合等であって当該労働者が希望するときには、本人の状態に応じ、原職又は原職相当職への復帰ができるよう積極的な支援を行うことなども含まれること。
セクハラ防止指針4⑶ロ①の「事業場内産業保健スタッフ等」とは、事業場内産業保健スタッフ及び事業場内の心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフ等をいうものであること

④併せて講ずべき措置
セクハラ防止指針4⑷は、事業主が⑴から⑶までの措置を講ずるに際して併せて講ずべき措置を明らかにしたものであること。
セクハラ防止指針4⑷イは、労働者の個人情報については、「個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)」及び「雇用管理に関する個人情報保護に関するガイドライン平成24年厚生労働省告示第357号)」に基づき、適切に取り扱うことが必要であるが、職場におけるセクシュアルハラスメントの事案に係る個人情報は、特に個人のプライバシーを保護する必要がある事項であることから、事業主は、その保護のために必要な措置を講じるとともに、その旨を労働者に周知することにより、労働者が安心して相談できるようにしたものであること。
セクハラ防止指針4⑷ロは、労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントに関し相談をしたこと等を理由とする解雇その他不利益な取扱いは、法律上禁止されているものも含まれるが、より労働者が実質的に相談等を行いやすくなるよう、企業内でもそのことを改めて定めて労働者に周知・啓発することとしたものであること。
また、上記については、事業主の方針の周知・啓発の際や相談窓口の設置に併せて、周知することが望ましいものであること。

ニ他の事業主の講ずる雇用管理上の措置の実施に関する協力
セクハラ防止指針5は、法第11条第3項の他の事業主の講ずる雇用管理上の措置への事業主の協力に関する努力義務の内容を示すとともに、同項の規定の趣旨に鑑みれば、事業主が、この協力を求められたことを理由として、他の事業主に対し、当該事業主との契約を解除する等の不利益な取扱いを行うことは望ましくない旨を明らかにしたものであること。

ホ職場における性的な言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取組の内容
セクハラ防止指針6は、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するため、事業主がセクハラ防止指針4の措置に加えて行うことが望ましい取組の内容を示したものであること。

①セクハラ防止指針6⑴については、近年、様々なハラスメントが複合的に生じているとの指摘もあり、労働者にとっては一つの窓口で相談できる方が利便性が高く、また解決にもつながりやすいと考えられることから、相談について一元的に受け付けることのできる体制を整備することが望ましいことを示したものであること。

②セクハラ防止指針6⑵については、雇用管理上の措置が職場におけるセクシュアルハラスメントの防止のために適切かつ有効なものとなるよう、労働者や労働組合等の参画を得つつ、その運用の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めることの重要性やその方法の例を示したものであること。

ヘ事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組の内容セクハラ防止指針7は、法第11条第1項の雇用管理上の措置の対象となるのは事業主が雇用する労働者であるが、法第11条の2の事業主及び労働者の責務の趣旨に鑑み、他の事業主が雇用する労働者、就職活動中の学生等の求職者及び労働者以外の者(例:個人事業主などのフリーランスインターンシップを行っている者、教育実習生等)についても行うことが望ましい取組を示したものであること。
「4の措置も参考にしつつ」とは、予防から再発防止に至る一連の雇用管理上の措置全体を参考にするという趣旨であること。
なお、裁判例では、採用内定の法的性質は事案により異なるとしつつ、採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていない事案において、採用内定通知により、始期付きの解約権を留保した労働契約が成立するとしている。このため、採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定者についても、法第11条第1項の雇用管理上の措置や同条第2項の相談等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止の対象となるものであり、採用内定取消しは不利益な取扱いに含まれるものであること。


2職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等並びに国、事業主及び労働者の責務(法第11条の3及び第11条の4)

⑴職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等
イ事業主による妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いについては、法第9条第3項により禁止されているところであるが、近年、事業主による不利益取扱いのみならず、上司又は同僚による妊娠、出産等に関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されること(以下「職場における妊娠、出産等に関するハラスメント」という。)も見られるようになってきところである。
こうしたことから、法第11条の2第1項は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを防止するため、その雇用する女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることを事業主に義務付けることとしたものであること。

ロ法第11条の3第2項は、労働者が事業主から不利益な取扱いを受けることを懸念して、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに関する相談や事業主の相談対応に協力して事実を述べることを躊躇することがないよう、事業主がこれらを理由として解雇その他不利益な取扱いを行うことを禁止することとしたものであること。
「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義は、それぞれ第3の1⑴ロと同じであること。
なお、当該言動を直接受けた労働者だけでなく、それを把握した周囲の労働者からの相談を理由とする解雇その他不利益な取扱いについても、法第11条の3第2項の規定による禁止の対象に含まれること。

ハ法第11条の3第3項は、法第11条の3第1項及び第2項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等の内容を具体化するために、厚生労働大臣が指針を定め、公表することとしたものであること。

⑵職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務
職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを防止するためには、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを行ってはならないことやこれに起因する問題について、事業主だけでなく、国民一般が関心と理解を深め、実際に行為者となり得る事業主や労働者が自らの言動に注意を払うこと等が必要である。このため、法第11条の4は、国、事業主及び労働者がそのために行うよう努めるべき事項について、各々の責務として明確に規定することとしたものであること。

⑶妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針は、事業主が防止のため適切かつ有効な雇用管理上の措置等を講ずることができるようにするため、防止の対象とするべき職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの内容や事業主が雇用管理上措置すべき事項等を定めたものであること。

イ職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの内容
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針2「職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの内容」においては、事業主が、雇用管理上防止すべき対象としての職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの内容を明らかにするために、その概念の内容を示すとともに、典型例を挙げたものであること。
また、実際上、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの状況は多様であり、その判断に当たっては、個別の状況を斟酌する必要があることに留意すること。
なお、法及び妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針は、あくまで職場における妊娠、出産等に関するハラスメントが発生しないよう防止することを目的とするものであり、個々のケースが厳密に職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに該当するか否かを問題とするものではないので、この点に注意すること。

①職場
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針2⑵は「職場」の内容と例示を示したものであること。
「職場」には、業務を遂行する場所であれば、通常就業している場所以外の場所であっても、出張先、業務で使用する車中及び取引先との打ち合わせ場所等も含まれるものであること。
なお、勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当する。その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意か等を考慮して個別に行うものであること。

②労働者
「労働者」の考え方については、1⑶イ②と同様であること。

③制度等の利用への嫌がらせ型
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針2⑷は制度等の利用への嫌がらせ型の内容を示したものであること。なお、妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針に掲げる制度等の利用への嫌がらせ型の典型的な例は限定列挙ではないこと。
制度等の利用への嫌がらせ型については、女性労働者が妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針2⑷イに規定する制度等の利用の請求等をしようとしたこと、制度等の利用の請求等をしたこと又は制度等の利用をしたことと、行為との間に因果関係あるものを指すこと。
「解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの」とは、女性労働者への直接的な言動である場合に該当すると考えられること。
なお、解雇その他不利益な取扱いを示唆するものについては、上司でなければ該当しないと考えられるが、一回の言動でも該当すると考えられること。
「制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの」とは、単に言動があるのみでは該当せず、客観的にみて、一般的な女性労働者であれば、制度等の利用をあきらめざるを得ない状況になるような言動を指すものであること。これは、女性労働者への直接的な言動
である場合に該当すると考えられること。
また、上司の言動については、一回でも該当すると考えられる一方、同僚の言動については、繰り返し又は継続的なもの(意に反することを言動を行う者に明示しているにもかか
わらず、さらに行われる言動を含む。)が該当すると考えられること。
なお、労働者が制度等の利用の請求等をしたところ、上司が個人的に請求等を取り下げるよう言う場合については、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに該当し、妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針に基づく対応が求められる。一方、単に上司が個人的に請求等を取り下げるよう言うのではなく、事業主として請求等を取り下げさせる(制度等の利用を認めない)場合については、そもそも制度等の利用ができる旨を規定した各法(例えば産前休業の取得であれば労働基準法第65条第1項)に違反することとなること。
「制度等の利用をしたことにより嫌がらせ等をするもの」とは、単に言動があるのみでは該当せず、客観的にみて、一般的な女性労働者であれば、「能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなもの」を指すものであること。
これは、女性労働者への直接的な言動である場合に該当すると考えられること。
また、上司と同僚のいずれの場合であっても繰り返し又は継続的なもの(意に反することを言動を行う者に明示しているにもかかわらず、さらに行われる言動を含む。)が該当すると考えられること。

④状態への嫌がらせ型
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針2⑸は状態への嫌がらせ型の内容を示したものであること。なお、妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針に掲げる状態への嫌がらせ型の典型的な例は限定列挙ではないこと。
状態への嫌がらせ型については、妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針2⑸イに規定する事由と行為との間に因果関係があるものを指すこと。
「解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの」とは、女性労働者への直接的な言動である場合に該当すると考えられること。なお、解雇その他不利益な取扱いを示唆するものについては、上司でなければ該当しないと考えられるが、一回の言動でも該当すると考えられること。
「妊娠等したことにより嫌がらせ等をするもの」とは、単に言動があるのみでは該当せず、客観的にみて、一般的な女性労働者であれば、「能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなもの」を指すものであること。これは、女性労働者への直接的な言動である場合に該当すると考えられること。
また、上司と同僚のいずれの場合であっても繰り返し又は継続的なもの(意に反することを言動を行う者に明示しているにもかかわらず、さらに行われる言動を含む。)が該当すると考えられること。

ロ事業主等の責務
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針3は、法第11条の4の事業主及び労働者の責務の内容や職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに起因する問題の例を示したものであること。

ハ雇用管理上講ずべき事項
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4は、事業主が雇用管理上講ずべき措置として11項目挙げており、これらについては、企業の規模や職場の状況の如何を問わず必ず講じなければならないものであること。
また、措置の方法については、企業の規模や職場の状況に応じ、適切と考える措置を事業主が選択できるよう具体例を示してあるものであり、限定列挙ではないこと。

①「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑴は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを防止するためには、まず事業主の方針として職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを行ってはならないことを明確にするとともに、これを従業員に周知・啓発しなければならないことを明らかにしたものであること。
「その発生の原因や背景」とは、例えば、妊娠、出産等に関する制度等の利用に不寛容な職場風土が挙げられるものであり、具体的には、妊娠、出産等に関する否定的な言動(不妊治療に対する否定的な言動を含め、他の女性労働者の妊娠、出産等の否定につながる言動(当該女性労働者に直接行わない言動も含む。)をいい、単なる自らの意思の表明を除く。以下同じ。)も考えられること、
また、妊娠、出産等に関する制度等の利用ができることを職場において十分に周知できていないことが考えられることを明らかにしたものであり、事業主に対して留意すべき事項を示したものであること。
イ①並びにロ①及び②の「その他の職場における服務規律等を定めた文書」として、従業員心得や必携、行動マニュアル等、就業規則の本則ではないが就業規則の一部を成
すものが考えられること。
イ③の「研修、講習等」を実施する場合には、定期的に実施する、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に職階別に分けて実施する等の方法が効果的と考えられること。

②「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑵は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの未然防止及び再発防止の観点から相談(苦情を含む。以下同じ。)への対応のための窓口を明確にするとともに、相談の対応に当たっては、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制を整備しなければならないことを明らかにしたものであること。
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑵イの「窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する」とは、窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうものであり、併せて、労働者に対して窓口を周知し、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要であること。例えば、労働者に対して窓口の部署又は担当者を周知していることなどが考えられること。
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑵ロの「その内容や状況に応じ適切に対応する」とは、具体的には、相談者や行為者に対して、一律に何らかの対応をするのではなく、労働者が受けている言動等の性格・態様によって、状況を注意深く見守る程度のものから、上司、同僚等を通じ、行為者に対し間接的に注意を促すもの、直接注意を促すもの等事案に即した対応を行うことを意味するものであること。
なお、対応に当たっては、公正な立場に立って、真摯に対応すべきことは言うまでもないこと。妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑵ロの「相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮」することには、相談者が相談窓口の担当者の言動等によってさらに被害を受けること等(いわゆる「二次被害」)を防ぐための配慮も含まれること。
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑵ロの「広く相談に対応し」とは、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを未然に防止する観点から、相談の対象として、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントそのものでなくともその発生のおそれがある場合や妊娠、出産等に関するハラスメントに該当するか否か微妙な場合も幅広く含めることを意味するものであること。
例えば、妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑵ロで掲げる、放置すれば相談者が業務に専念できないなど就業環境を害するおそれがある場合又は妊娠、出産等に関する否定的な言動が原因や背景となって妊娠、出産等に関するハラスメントが生じるおそれがある場合のほか、休憩時間等において妊娠、出産等に関するハラスメントが生じた場合、妊娠、出産等に関するハラスメントが取引先等から行われる場合等も幅広く相談の対象とすることが必要であること。
また、当該言動を把握した周囲の労働者からの相談にも応じることが必要であること。
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑵ロ②の「留意点」や③の「研修」の内容には、いわゆる二次被害を防止するために必要な事項も含まれるものであること。

③「職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑶は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントが発生した場合は、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するとともに、当該事案に適正に対処しなければならないことを明らかにしたものであること。
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑶イ①の「相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮する」に当たっては、相談者が行為者に対して迎合的な言動を行っていたとしても、その事実が必ずしも妊娠・出産等に関するハラスメントを受けたことを単純に否定する理由にはならないことに留意すること。
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑶ロの「被害を受けた労働者に対する配慮のための措置を適正に行うこと」には、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを受けた女性労働者の継続就業が困難にならないよう環境を整備することや、女性労働者が職場における妊娠、出産等に関するハラスメントにより休業を余儀なくされた場合等であって当該女性労働者が希望するときには、本人の状態に応じ、原職又は原職相当職への復帰ができるよう積極的な支援を行うことなども含まれること。
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑶ロ①の「事業場内産業保健スタッフ等」とは、事業場内産業保健スタッフ及び事業場内の心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフ等をいうものであること。

④「妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置」
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑷イは、妊娠等した労働者の業務の分担等を行う他の労働者の業務負担が過大となり、妊娠、出産等に関する否定的な言動が行われる場合があるため、それらを解消するための措置について定めたものであること。なお、「業務体制の整備など」には、代替要員の確保などについても含まれるものであること。

⑤併せて講ずべき措置
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑸は、事業主が⑴から⑷までの措置を講ずるに際して併せて講ずべき措置を明らかにしたものであること。
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑸イは、労働者の個人情報については、「個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)」及び「雇用管理に関する個人情報保護に関するガイドライン平成24年厚生労働省告示第357号)」に基づき、適切に取り扱うことが必要であるが、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの事案に係る個人情報は、特に個人のプライバシーを保護する必要がある事項であることから、事業主は、その保護のために必要な措置を講じるとともに、その旨を労働者に周知することにより、労働者が安心して相談できるようにしたものであること。
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針4⑷ロは、労働者が職場における妊娠、出産等に関するハラスメントに関し相談をしたこと等を理由とする解雇その他不利益な取扱いは、法律上禁止されているものも含まれるが、より労働者が実質的に相談等を行いやすくなるよう、企業内でもそのことを改めて定めて労働者に周知・啓発すること
としたものであること。
また、上記については、事業主の方針の周知・啓発の際や相談窓口の設置に併せて、周知することが望ましいものであること。

ニ職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取組の内容
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針5は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントを防止するため、事業主が指針4の措置に加えて行うことが望ましい取組の内容を示したものであること。

①妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針5⑴については、近年、様々なハラスメントが複合的に生じているとの指摘もあり、労働者にとっては一つの窓口で相談できる方が利便性が高く、また解決にもつながりやすいと考えられることから、相談について一元的に受け付けることのできる体制を整備することが望ましいことを示したものであること。

②妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針5⑵は、職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの原因や背景には、制度等の利用ができることを妊娠等した労働者自身が認識できていない場合があることや、妊娠中は体調の変化が起きやすく通常通りの業務遂行が難しくなることもあり、周囲の労働者とのコミュニケーションがより一層重要となることについて妊娠等した労働者自身が意識を持っていない場合があることから、周知・啓発等について望ましい旨を定めたものであること。

③妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針5⑶については、雇用管理上の措置が職場における妊娠、出産等に関するハラスメントの防止のために適切かつ有効なものとなるよう、労働者や労働組合等の参画を得つつ、その運用の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めることの重要性やその方法の例を示したものであること。

ホ事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組の内容
妊娠、出産等に関するハラスメント防止指針6は、法第11条の3第1項の雇用管理上の措置の対象となるのは事業主が雇用する労働者であるが、法第11条の4の事業主及び労働者の責務の趣旨に鑑み、他の事業主が雇用する労働者、就職活動中の学生等の求職者及び労働者以外の者(例:個人事業主などのフリーランスインターンシップを行っている者、教育実習生等)についても、行うことが望ましい取組を示したものであること。
「4の措置も参考にしつつ」とは、予防から再発防止に至る一連の雇用管理上の措置全体を参考にするという趣旨であること。
なお、裁判例では、採用内定の法的性質は事案により異なるとしつつ、採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていない事案において、採用内定通知により、始期付きの解約権を留保した労働契約が成立するとしている。このため、採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定者についても、法第11条の3第1項の雇用管理上の措置や同条第2項の相談等を理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止の対象となるものであり、採用内定取消しは不利益な取扱いに含まれるものであること。

3・4(略)

5男女雇用機会均等推進者(法第13条の2)

⑴企業における法に沿った雇用管理の実現や女性労働者が能力を発揮しやすい職場環境の整備のための取組を推進するためには、各企業においてその取組に係る実施体制を明確化することが必要であることから、事業主に対し、
①法第8条、第11条第1項、第11条の2第2項、第11条の3第1項、第11条の4第2項、第12条及び第13条第1項に定める措置等の適切かつ有効な実施を図るための業務
②職場における男女の均等な機会及び待遇の確保が図られるようにするために講ずべきその他の措置の適切かつ有効な実施を図るための業務を担当する者(以下「男女雇用機会均等推進者」という。)を選任する努力義務を課し、企業における法に沿った雇用管理の実現や女性労働者が能力を発揮しやすい職場環境の整備のための取組に係る実施体制を整備させることとしたものであること。

⑵①の業務とは、ポジティブ・アクションの推進方策の検討、事業主に対する助言、具体的な取組の着実な実施の確保(法第8条)のほか、職場におけるセクシュアルハラスメント、妊娠、出産等に関するハラスメントの防止のための措置や配慮(第11条第1項、第11条の2第2項、第11条の3第1項、第11条の4第2項)について、関係法令の遵守のために必要な措置等の検討・実施、事業主に対する助言等の業務をいうものであること。

⑶「職場における男女の均等な機会及び待遇の確保が図られるようにするために講ずべきその他の措置の適切かつ有効な実施を図るための業務」とは、法第2章第1節の性別を理由とする差別の禁止等並びに労働基準法第4条の男女同一賃金の原則及び第64条の2から第67条までの母性保護の規定の遵守のために必要な措置等の検討・実施や事業主に対する助言等のほか、女性労働者が能力発揮しやすい職場環境の整備に関する関心と理解の喚起、その業務に関する都道府県労働局との連絡等の業務をいうものであること。

⑷法附則第2項の規定により、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)の有効期限である令和8年3月31日まで間は、同法の規定による一般事業主行動計画に基づく取組や情報公表の推進のための措置の検討・実施や事業主に対する助言等の業務も男女雇用機会均等推進者の業務とされているものであること。

⑸男女雇用機会均等推進者は、(1)①及び②並びに⑷の業務を遂行するために必要な知識及び経験を有していると認められる者のうちから選任することとしたこと(則第77条)。
具体的には、上記の業務を自己の判断に基づき責任をもって行える地位にある者を、1企業につき1人、自主的に選任させることとすること。


第4(略)

第5紛争の解決の援助(法第3章第1節)

1(略)

2紛争の解決の促進に関する特例(法第16条)

⑴雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主の一定の措置等についての労働者と事業主との間の紛争については、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)」第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、法第17条から第27条までの規定によるものとしたものであること。

⑵「紛争」とは、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主の一定の措置等に関して労働者と事業主との間で主張が一致せず、対立している状態をいうものであること。

3紛争の解決の援助(法第17条)

⑴紛争の解決の援助(法第17条第1項)
法第5条から第7条まで、第9条、第11条第1項及び第2項(第11条の3第2項において準用する場合を含む。)、第11項の3第1項、第12条並びに第13条第1項に定める事項に係る事業主の一定の措置についての労働者と事業主との間の個別具体的な私法上の紛争の迅速かつ円満な解決を図るため、都道府県労働局長は、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決について援助を求められた場合には、必要な助言、指導又は勧告をすることができることとしたものであること。

イ・ロ(略)

⑵紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第17条第2項)

イ法第17条第1項の紛争の解決の援助により、紛争の当事者間に生じた個別具体的な私法上の紛争を円滑に解決することの重要性にかんがみれば、事業主に比べ弱い立場にある労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、労働者が紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。

ロ「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義は、それぞれ第3の1⑴ロと同じであること。


第6調停(法第3章第2節)

1調停の委任(法第18条)

⑴調停の委任(法第18条第1項)

イ~ハ(略)

ニ次の要件に該当する事案については、「当該紛争の解決のために必要があると認め」られないものとして、原則として、調停に付すことは適当であるとは認められないものであること。

①申請が、当該紛争に係る事業主の措置が行われた日(継続する措置の場合にあってはその終了した日)から1年を経過した紛争に係るものであるとき
②申請に係る紛争が既に司法的救済又は他の行政的救済に係属しているとき(関係当事者双方に、当該手続よりも調停を優先する意向がある場合を除く。)
③集団的な労使紛争にからんだものであるとき

ホ(略)

⑵調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第18条第2項)

法第18条第1項の調停により、関係当事者間に生じた個別具体的な私法上の紛争を円滑に解決することの重要性にかんがみれば、事業主に比べ弱い立場にある労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、労働者が調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。
「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義は、それぞれ第3の1⑴ロと同じであること。

2調停(法第19条から第23条まで)

⑴(略)

⑵法第20条の関係当事者又は関係当事者と同一の事業場に雇用される労働者その他の参考人(以下「関係当事者等」という。)の「出頭」は強制的な権限に基づくものではなく、相手の同意によるものであること。これらの出頭については、必ず関係当事者等(法人である場合には、委員会が指定する者)より行われることが必要であること。「その他の参考人」とは、関係当事者である労働者が雇用されている事業場に過去に雇用されていた者、同一の事業場で就業する派遣労働者などを指すものであること。
委員会に「関係当事者と同一の事業場に雇用される労働者その他の参考人」の出頭を求めることができるとしたのは、性別を理由とする差別や妊娠、出産等を理由とする不利益取扱い等を判断するにあたり、他の労働者の就業の実態を踏まえる必要があることや、調停案の内容によっては同一の事業場において雇用される他の労働者に対しても影響を及ぼしうること及び法第11条第1項及び第2項並びに法第11条の3第1項及び第2項に定める事項に係る事業主の一定の措置等についての紛争に係る調停においては、職場におけるセクシュアルハラスメ
ント又は妊娠、出産等に関するハラスメントに係る事実関係の確認に関わる事項が紛争の対象となることもあることから、これらの者を参考人として意見聴取することが必要な場合があるためであること。

⑶則第8条第1項の「補佐人」は、関係当事者等が事情の陳述を行うことを補佐することができるものであること。
補佐人の陳述は、関係当事者等が直ちに異議を述べ又は訂正しない限り、関係当事者等本人の陳述とみなされるものであること。
なお、補佐人は、意見の陳述はできないものであること。

⑷則第8条第3項の代理人は、意見の陳述のみを行うことができるものであること。

⑸~⑺(略)

3時効の完成猶予(法第24条)

法第24条は、法第23条により調停が打ち切られた場合に、当該調停の申請をした者が打ち切りの通知を受けた日から30日以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、調停の申請の時に遡り、時効の完成猶予が生じることを定めるものであること。
「調停の申請の時」とは、申請書が現実に都道府県労働局長に提出された日であって、申書に記載された申請年月日ではないこと。
また、調停の過程において申請人が調停を求める時効の内容を変更又は追加した場合にあっては、当該変更又は追加した時が「申請の時」に該当するものと解されること。
「通知を受けた日から30日以内」とは、民法の原則に従い、文書の到達した日は期間の計算に当たり参入されないため、書面による調停打ち切りの通知が到達した日の翌日から起算して30日以内であること。
「調停の目的となった請求」とは、当該調停手続において調停の対象とされた具体的な請求(地位確認、損害賠償請求等)を指すこと。本条が適用されるためには、これらと訴えに係る請求とが同一性のあるものでなければならないこと。

4・5(略)


第7雑則(法第4章)

1・2(略)

3公表(法第30条)

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇を確固たるものとし、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進するためには、労働者に対する差別等を禁止し、事業主に一定の措置を義務付けるとともに、法違反の速やかな是正を求める行政指導の効果を高め、法の実効性を確保することが必要である。
このような観点から、厚生労働大臣は、法第5条から第7条まで、第9条第1項から第3項まで、第11条第1項及び第2項(第11条の3第2項、第17条第2項及び第18条第2項において準用する場合を含む。)、第11条の3第1項、第12条並びに第13条第1項の規定に違反している事業主に対し自ら勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとしたものであること。

4(略)

5適用除外(法第32条)

⑴法第2章第1節、第13条の2、同章第3節、第3章、第29条及び第30条の規定は、国家公務員及び地方公務員に関しては適用しないこととしたものであること。
「国家公務員及び地方公務員」とは、一般職又は特別職、常勤又は非常勤の別にかかわりなく、これに該当するものであること。また、国家公務員の身分が与えられている特定独立行政法人の職員、地方公務員の身分が与えられている特定地方独立行政法人もこれに含まれているものであること。

⑵法第2章第2節(法第13条の2を除く。)の規定は、一般職の国家公務員(特定独立行政法人等に勤務する者を除く。)、裁判所職員、国会職員及び自衛隊員に関しては適用しないこととしたものであること。
なお、地方公務員については、適用することとなること。

第8~第10(略)