社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【雇止め】中野区(非常勤保育士)事件(東京高判平19.11.28労判951号47頁)

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中野区(非常勤保育士)事件(東京高判平19.11.28労判951号47頁)

事件番号   :平成18(ネ)3454
裁判年月日 :平成19年11月28日
裁判所名・部 :東京高等裁判所  第17民事部

1.事件の概要

Xら4名は、平成4年7月1日から同7年2月1日にかけて、地方自治体であるY区の保育園において、地方公務員法3条3項3号に定める特別職の非常勤の保育士として任用され、同15年まで、任用期間を1年として再任用されてきた。ところが、Y区は、保育士に関して、施設の民営化等により、配置する職員や非常勤職員数を削減することとし、平成15年度末で非常勤保育士の職を廃止した。それにともない、Xらは平成16年4月に再任用されなかった。そこで、Xらは本件再任用拒否は解雇権を濫用したもので無効であると主張し、Y区に対して、非常勤職員としての地位確認、再任用に対する期待権の侵害を理由とする損害賠償等を求めて訴えを提起した。1審は、地位確認請求を認めなかったが、再任用への期待権侵害を理由として、1人あたり40万円の慰謝料を認めたが、XらとY区の双方が控訴したのが本件である。

2.判決の要旨

Xらの任用関係については、地方公務員法3条3項3号により規律されるとともに、その具体的内容は、Y区の任用行為によって決定されるなどの行政処分であり、これに基づく本件勤務関係は、公法上の任用関係であると認められる。
本件では、XらとY区との間の勤務関係に、解雇権濫用法理を類推適用される実態と同様の状態が生じていたと認められ、Xらの職務の継続確保が考慮されてしかるべき事態であった。
地方公共団体における非常勤職員については、期間の定めのない任用の意思を考えることができず、また、任命行為は行政行為であって、当事者双方の意思を推定する規定である民法629条1項を類推適用することは困難であるし、雇止めに関する判例法理を適用することもできない。
本件において、Y区は、Xらに対し非常勤保育士の任用の際に本件任用が公法上の任用関係であることについて説明しなかったこと、採用担当者が長期の職務従事を期待するような言動を示していたこと、Xらの職務内容が常勤保育士と変わらず継続性が求められる恒常的な職務であること、それぞれ9回から11回にかけて再任用され、結果的に職務の継続が10年前後という長期間に及び、再任用が形式的でしかなく、実質的には当然のように継続していたことに照らすと、Xらが再任用を期待するような行為をY区においてしていたという特別の事情があったものと認められる。したがって、Xらの任用継続に対する期待は法的保護に値するものと評価する。

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