社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



【雇止め】大阪大学(図書館事務補佐員)事件(最一平6.7.14労判655号14頁)

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大阪大学(図書館事務補佐員)事件(最一平6.7.14労判655号14頁)

1.事件の概要

Xは、国立Y大学で、昭和54年9月1日から3回の更新を経て昭和56年5月10日まで国公法の一般職たる事務補佐員(時間雇用非常勤職)として、同月11日から2回の更新を経て昭和59年3月30日まで事務補佐員(日々雇用非常勤職員)として任用され、同大学附属図書館に勤務していたが、同日の任期期間終了をもって再任用されなかった。
これに対して、Xが国に地位確認等を提訴したが、一審、二審ともに棄却されたため、Xが上告したのが本件である。

2.判決の要旨

Xは、期限付き任用に係る非常勤の国家公務員である日々雇用職員、すなわち任期を1日と定め、任用予定期間内は任用権者が別段の措置をしない限り任用を日々更新し、任用予定期間が経過したときは任期満了により当然に退職する職員として任用されたものであるところ、その任用当時、Xが配属されたY大学附属図書館閲覧課閲覧第一掛の事務量は、正規任用に係る常勤職員のみによって処理することができる範囲を超えていたが、直ちに常勤職員の定員を増加することは実際上困難であり、同掛の業務のうち、図書の貸出し、返却図書の受領等のいわゆるカウンター業務は、特別の習熟、知識、技術又は経験を必要としない代替的事務であって、日々雇用職員によっても適正に処理することができるものであったとみることができる。このような事情の下においては、日々雇用職員として任用することを明示した上で、Xをカウンター業務に従事させることを予定して任用したことが、職員の任用を原則として無期限とした国家公務員の趣旨に反するものとまでは解し難い。したがって、学長がXを日々雇用職員として任用したことを違法ということはできないとした原審の判断は、正当として是認することができる。Xは昭和59年3月30日に任用予定期間が満了したことによって当然に退職したものとした原審の判断は、正当として是認することができる。
 Xが、任用予定期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的権利を有するものと認めることはできないから、学長がXを再び任用しなかったとしても、その権利ないし法的利益が侵害されたものと解する余地はない。もっとも、任命権者が日々雇用職員に対して、任用予定期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど、右期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものと見られる行為をしたというような特別の事情がある場合には、職員がそのような誤った期待を抱いたことによる損害につき、国家賠償法に基づく賠償を認める余地があり得るとしても、原審の適法に確定した事実関係の下においては、右のような特別の事情があるということはできない。

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