社会保険労務士川口正倫のブログ

横浜市の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ

古河電気工業・原子燃料工業事件(最二小判昭和60.4.5民集39巻3号675頁)

古河電気工業・原子燃料工業事件(最二小判昭和60.4.5民集39巻3号675頁)

1.事件の概要

Y1会社は、同社の原子燃料部門を独立させ、訴外A社の同種部門と合併した新会社Y2を設立した。Y2会社としては、当座の操業に支障を生じさせないようにするため、Y1社とAから拠出された人的・物的施設をそのまま引き継ぎつつ有機的に統合し、かつ両社からの出向者がほぼ同数になるように人員を調整することを予定していた。また、Y1は、Y2が独立の企業としての基盤を持つに至るまでの間は、出向者をY2における人員調整、適切な人員配置等の人事上の都合により自社に復帰させることがあり得ることを予定して従業員に出向を命じ、従業員もそのことを予定して出向に同意した。ところが、Y1が復帰を命じたところ、Xがこれを拒否したため、Y1はXを懲戒解雇処分に処した。そこで、Xが、Y1およびY2の両方に雇用関係があること、およびY1で勤務する義務のないことの確認を求めて訴えを提起した。

2.判決の概要

在籍出向が命じられた場合において、その後出向元が、出向先の同意を得た上、右出向関係を解消して労働者に対し復帰を命ずるについては、特段の事由のない限り、当該労働者の同意を得る必要はないものと解すべきである。なぜなら、右の場合における復帰命令は、指揮監督の主体を出向先から出向元へ変更するものではあるが、労働者が出向元の指揮監督の下に労務するということは、もともと出向元との当初の雇用契約において合意されていた事柄であって、在籍出向においては、・・・(中略)特段の事由がない限り、労働者が出向元の指揮監督の下に労務を提供するという当初の雇用契約における合意自体には何らの変容を及ぼさず、右合意の存在を前提とした上で、一時的に出向先の指揮監督の下に労務を提供する関係となっていたにすぎないものというべきであるからである。

3.解説

出向においては、出向元の労働契約が重視され、これが出向先と労働者の関係を規定するため、労働者の復帰の場合には、単に出向元との労働契約が通常の状態にもどるだけであるから、あらためて労働者の同意を要するものではないとの見解を最高裁が示したもの。

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