健康保険法等の一部を改正する法律案の概要~育児休業による社会保険料免除の変更や傷病手当金の通算化等
https://www.mhlw.go.jp/content/000733601.pdf
※赤字部分は、川口が補足しました。
Ⅰ.改正の趣旨
「全世代型社会保障改革の方針について」(令和2年12月15日閣議決定)等を踏まえ、現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、全ての世代で広く安心を支えていく「全世代対応型の社会保障制度」を構築するため、所要の改正を行う。
Ⅱ.改正の概要
1.全ての世代の安心を構築するための給付と負担の見直し
(1)後期高齢者医療における窓口負担割合の見直し【高齢者の医療の確保に関する法律】(令和4年10月1日から令和5年3月1日までの間において政令で定める日に施行)
後期高齢者医療の被保険者のうち、現役並み所得者以外の被保険者であって、一定所得以上(※)であるものについて、窓口負担割合を2割とする。
※課税所得が28万円以上かつ年収200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は後期高齢者の年収合計が320万円以上)。政令で規定。
※長期頻回受診患者等への配慮措置として、外来受診において、施行後3年間、1ヶ月の負担増を最大でも3,000円とする措置については、政令で規定。
(2)傷病手当金の支給期間の通算化【健康保険法、船員保険法】(令和4年1月1日施行)
傷病手当金について、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して支給を受けられるよう、支給期間の通算化を行う。
※これまでは病気が再発し休業した場合は、最初の支給日から1年6か月以内の休業でなければ支給対象となりませんでした。
(3)任意継続被保険者制度の見直し【健康保険法、船員保険法】(令和4年1月1日施行)
任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直しや、被保険者からの申請による資格喪失を可能とする。
※申出が受理された日の末日に喪失となります。これまでは、任意継続期間の途中で国民健康保険に切り替えたい場合は、実務上、保険料の納付を故意に1か月滞納することで強制的に資格喪失されるという、本来の制度趣旨と異なる方法が行なわれていましたが、今後は申し出により可能となります。
2.子ども・子育て支援の拡充
(1)育児休業中の保険料の免除要件の見直し【健康保険法、船員保険法、厚生年金保険法等】(令和4年10月1日施行)
短期の育児休業の取得に対応して、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合には当該月の保険料を免除するとともに、賞与に係る保険料については1月を超える育児休業を取得している場合に限り、免除の対象とすることとする。
※これまでは、月末に育児休業をしていれば、申し出により、その月の社会保険料について免除の適用を受けることが可能でした。そのため、これを目的として、月末の1日だけ育児休業を取得するという、制度趣旨に反する事例がかなりありました。今回の改正により、育児休業の日数が2週間未満の月は、社会保険料免除の適用を受けることができなくなります。また、その月に賞与が支給されれば、これに対する社会保険料も免除されていましたが、今回の改正により、賞与については、1か月を超える育児休業を取得していないと社会保険料免除の適用を受けることができなくなります。
(2)子どもに係る国民健康保険料等の均等割額の減額措置の導入【国民健康保険法、地方税法】(令和4年4月1日施行)
国民健康保険の保険料(税)について、子ども(未就学児)に係る被保険者均等割額を減額し、その減額相当額を公費で支援する制度を創設する。