新型コロナウイルス感染症の影響により厚生年金保険料等の納付が困難となった場合の猶予制度(換価の猶予)
【事業主の皆様へ】新型コロナウイルス感染症の影響により厚生年金保険料等の納付が困難となった場合の猶予制度について|日本年金機構
厚生年金保険料等の猶予制度のあらまし
保険料等の納期限までにその納付がなく、督促状に記載のある指定期限を過ぎても納付がない場合には、納付するまでの日数に応じて延滞金がかかるほか、財産の差押えなどの滞納処分を受けることがあります。
ただし、個々の実情により保険料等を一時に納付することが困難な理由がある場合には、年金事務所に申請することにより、財産の換価(売却)や差押えなどが猶予される制度があります。
換価の猶予の効果
⇒ 換価の猶予が認められると…
① 既に差押えを受けている財産の換価(売却)が猶予されます。
② 差押えにより事業の継続又は生活の維持を困難にする恐れがある財産については、差押えを猶予(又は既にした差押えを解除)することができます。
③ 換価の猶予期間中の延滞金の一部が免除されます。
納付の猶予の効果
⇒ 納付の猶予が認められると…
① 新たな差押えや換価(売却)などの滞納処分の執行を受けません。
② 既に差押えを受けている財産がある場合には、年金事務所に申請することにより、その差押えが解除される場合があります。
③ 納付の猶予が認められた期間中の延滞金の全部又は一部が免除されます。
猶予制度の概要
1.換価の猶予の概要
保険料等を一時に納付することにより事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある場合に、申請に基づいて差押財産の換価(売却)が猶予される制度です。
(1)換価の猶予受けるための要件
次の①から⑥に掲げる要件の全てに該当する場合は、換価の猶予を受けることができます。
なお、申請による換価の猶予を受けることができる保険料等は、平成27 年4 月1 日以降に納期限が到来する保険料等に限られます。
① 納付すべき保険料等を一時に納付することにより、事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあること(※1)
② 保険料等の納付について誠実な意思を有すると認められること(※2)
③ 納付すべき保険料等の納期限から6か月以内に「換価の猶予申請書」が提出されていること
④ 納付すべき保険料等について、納付の猶予の適用を受けていないこと
⑤ 換価の猶予を受けようとする保険料等以外の保険料等の滞納がないこと
⑥ 猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること(※3、4)
※1 「事業の継続を困難にする」とは、事業の不要不急の資産を処分するなど、事業経営の合理化を行った後においても、なお保険料等を一時に納付すると、事業の継続を困難にする場合をいいます。また、「生活の維持を困難にする」とは、保険料等を一時に納付することにより、必要最低限の生活費が確保できなくなる場合をいいます。
※2 「保険料等について誠実な意思を有すると認められる」とは、納付義務者がその保険料等を優先的に納付する意思を有していると年金事務所長が認めることができることをいいます。
※3 担保として提供することができる財産は、主に次に掲げるものです。
① 国債や年金事務所長が確実と認める上場株式などの有価証券
② 土地、建物
③ 年金事務所長が確実と認める保証人の保証
※4 次の①から③のいずれかに該当する場合には、原則として、担保を提供する必要はありません。
なお、猶予の申請に当たって、③に該当する事情を申請書に記載された場合には、年金事務所の職員が確認のためご連絡することがあるそうです。
① 猶予を受けようとする金額が100 万円以下である場合
② 猶予を受けようとする期間が3 か月以内である場合
③ 担保を提供することができない特別の事情(国税通則法により担保として提供することができることとされている種類の財産がないなど)がある場合
(2)猶予期間
換価の猶予を受けることができる期間は、1年(※)の範囲内で、申請者の財産や収支の状況に応じて最も早く保険料等を完納することができると認められる期間に限られます。
なお、換価の猶予を受けた保険料等は、猶予期間中に各月に分割して納付する必要があります。
※ 換価の猶予が許可された後、猶予期間内に完納することができないやむを得ない理由があると認められる場合は、年金事務所に申請することにより、当初の猶予期間と合わせて最長2年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることがあります。
(3)申請のための書類
① 換価の猶予を申請する場合は、次の書類を管轄の年金事務所に提出してください。
・猶予を受けようとする金額が100 万円以下の場合
- ○ 「換価の猶予申請書」
- ○ 「財産収支状況書」
・猶予を受けようとする金額が100 万円を超える場合
- ○ 「換価の猶予申請書」
- ○ 「財産目録」
- ○ 「収支の明細書」
- ○ 担保の提供に関する書類
※ 担保の提供する必要がない、又はすることができない場合には、提出は不要です。
※ 「財産収支状況書」、「財産目録」及び「収支の明細書」の提出の際は、その根拠となる資料を提出する必要があります。
② 担保の提供に関する書類
担保を提供する必要がある場合は、「担保提供書」や抵当権の設定のための書類(不動産等を担保とする場合)などを提出する必要がありますので、詳しくは管轄の年金事務所(徴収担当)にお
尋ねください。
(4)提出された申請書等の審査
年金事務所では、必要な書類が提出されているか、必要な事項が記載されているかを確認し、換価の猶予の許可・不許可、猶予を許可する金額、期間などの審査を行います。
① 申請書等の補正
申請に当たって必要となる書類が提出されていない場合や、書類の記載に不備がある場合は、電話等により補正を命じられます。
なお、年金事務所から補正通知書が送付された場合において、補正通知書の送付を受けた日の翌日から起算して20日以内に補正後の申請書等の提出がないときは、猶予の申請を取り下げたものとみなされますので、ご注意ください。
② 申請内容の審査
年金事務所の職員から、申請者に対して、申請書や添付書類に記載された内容(一時に納付することにより事業の継続又は生活の維持が困難となる事情の詳細、財産の状況、収支の実績及び見込み等)について、質問をしたり、帳簿書類等を確認されることがあります。
※ 換価の猶予の申請があった場合、又は換価の猶予が許可された場合であっても、その猶予を受けようとする保険料等について督促状がまだ送付されていないときは、督促状が送付されます。
(5)猶予が許可された場合
換価の猶予が許可された場合には、「換価の猶予許可通知書」が申請者に送付されますので、その通知書に記載された分割納付計画のとおりに、猶予を受けている保険料等を納付する必要があります。
なお、年金事務所での審査の結果により、①申請書に記載された猶予を受けようとする金額の一部についてのみ許可される場合、②猶予を受けようとする期間よりも短い猶予期間により許可される場合、又は③申請書に記載された分割納付計画と異なる内容の分割納付計画により許可される場合があります。
上記①、②及び③に不服がある場合は、所定の期間内に限り不服申立てをすることができます。
(6)不許可となる場合
次のいずれかに該当するときは、換価の猶予を許可されません。
なお、猶予の不許可に不服がある場合は、所定の期間内に限り不服申立てをすることができます。
① 猶予の要件に該当しないとき
② 国税、地方税その他の公課の滞納によって、滞納処分を受けるときなど、繰上徴収の事由(※1)に該当する事実(厚生年金保険法第85 条、健康保険法第172 条、船員保険法第62 条の4 並びに子ども・子育て支援法第71 条)が発生したとき
③ 申請者が、猶予の審査をするために年金事務所の職員が行う質問に対して回答せず、又は帳簿書類等の検査を妨げたとき(※2)
④ 不当な目的で猶予の申請がされたとき、その他その申請が誠実にされたものでないとき(※3)
※1 「繰上徴収の事由」とは、①滞納処分、強制執行、又は破産手続開始の決定を受け、若しくは企業担保の実行手続き又は競売の開始があった場合、②法人である納付義務者が解散した場合、③事業所が廃止された場合、④船舶所有者の変更、又は船舶が滅失し、沈没し、若しくは全く運航に堪えなくなるに至った場合などが該当します。
※2 「帳簿書類等の検査を妨げたとき」とは、具体的には、猶予の要件を調査するための日程の調整や帳簿書類の提示の求めに対して理由もなく応じない場合、年金事務所の職員からの連絡等に対して何ら応答しない場合などが該当します。
※3 具体的には、申請者が破産手続開始の申立ての準備中であるにもかかわらず、猶予の申請がされたときや、猶予の申請が不許可又はみなし取下げとなった後に、同一の保険料等について再度猶予の申請がされたとき(新たな猶予該当事実が生じたことにより納付の猶予を申請する場合などを除きます。)などが該当します。
(7)猶予の取消し又は猶予期間の短縮
換価の猶予が許可された後に、次のいずれかに該当することとなったときは、猶予が取り消されたり、猶予期間が短縮されることがあります。
なお、猶予の取消し又は猶予期間の短縮を受けたことに不服がある場合は、所定の期間内に限り不服申立てをすることができます。
① 猶予を受けている者について、「(6) 不許可となる場合」の②と同様の事情がある場合で、猶予を受けている保険料等を猶予期間内に完納することができないと認められるとき
② 猶予を受けている保険料等を「換価の猶予許可通知書」により通知された分割納付計画のとおりに納付しないとき(※)
③ 年金事務所長が行った担保の変更等の命令に応じないとき
④ 猶予を受けている保険料等以外に新たに納付すべきこととなった保険料等が滞納となったとき(※)
⑤ 偽りその他不正な手段により猶予の申請がされ、その申請に基づき猶予が許可されたことが判明したとき
⑥ 財産の状況その他の事情の変化によりその猶予を継続することが適当でないと認められるとき
※ 猶予をしたときにおいて予見できなかった事実(猶予を受けている者の責めに帰すことができない事実に限ります。)が発生した場合など、やむを得ない理由がある場合を除きます。
やむを得ない理由がある場合には、管轄の年金事務所(徴収担当)へご相談ください。
2.納付の猶予の概要
災害、病気、事業の休廃業などによって保険料等を一時に納付することができないと認められる場合や、届出が遅延したことにより遡及した月分に係る保険料等の納付義務が発生し、本来の法定納期限から1年以上経過した月分に係る保険料等を一時に納付することができない理由があると認められる場合に、申請に基づいて納付が猶予される制度です。
(1)災害等により納付困難となった場合の納付の猶予
次の①から④に掲げる要件の全てに該当する場合は、納付の猶予を受けることができます。
① 次に掲げるもののいずれかに該当する事実(以下「猶予該当事実」といいます。)があること(納付義務者の責めに帰することができないやむを得ない事由により生じた事実に限ります。)
- イ 納付義務者がその財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難に遭ったこと(※1)
- ロ 納付義務者(国、地方公共団体及び法人の事業所、事務所以外の事業所、事務所に限るものとし、納付義務者と生計を同一にする親族を含む。)が病気にかかり、又は負傷したこと
- ハ 納付義務者がその事業を廃止し、又は休止したこと
- ニ 納付義務者がその事業につき著しい損失を受けたこと(※2)
- ホ 納付義務者に上記イからニに類する事実があったこと(※3)
② 猶予該当事実に基づき、納付義務者がその納付すべき保険料等(納期限を経過した保険料等に限る。)を一時に納付することができないと認められること
③ 納付義務者から「納付の猶予申請書」が提出されていること
④ 猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること(※4)
※1 保険料等の納期限前に災害等により財産に相当な損失を受けた場合には、上記のほかに国税通則法第46 条第1 項の規定による納付の猶予があります。詳しくは、管轄の年金事務所にお尋ねください。
※2 「事業につき著しい損失を受けた」とは、納付の猶予を受けようとする期間の始期の前日以前の1年間(以下「調査期間」といいます。)の損益計算において、その直前1 年間(以下「基準期間」といいます。)の利益の額の2分の1を超えて損失が生じていること(基準期間において損失が生じている場合には、調査期間の損失の金額が基準期間の損失の金額を超えていること)をいいます。
※3 「上記イからニに類する事実」のうち、ニ(納付義務者がその事業につき著しい損失を受けたこと)に類するものとは、売上の著しい減少又は経費の著しい増加によって損失が生じていることをいいます。
※4 担保についての取扱いは、換価の猶予の申請の場合と同様です。
(2)届出遅延による遡及保険料等(1 年以上経過分)の納付が困難となった場合の納付の猶予
次の①から④に掲げる要件の全てに該当する場合は、納付の猶予を受けることができます。
① 納付義務者に、届出が遅延したことにより遡及した月分の保険料等の納付義務が発生し、遡及した各月分の保険料等の法定納期限の翌日から起算して1年を経過した日以後に納入告知書の送達があった場合における当該遡及した月分の保険料等があること
② 納付義務者が①の保険料等を一時に納付することができない理由があると認められること
③ やむを得ない理由があると認められる場合(※1)を除き、納付義務者から①の保険料等の納入告知書記載の納付期限までに「納付の猶予申請書」が提出されていること
④ 猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること(※2)
※1 「やむを得ない理由」とは、震災、風水害等による災害、交通事故等人為による異常な災害があったことその他納付義務者の責めに帰すことができないと認められるやむを得ない理由をいいます。
※2 担保についての取扱いは、換価の猶予の申請の場合と同様です。
(3)猶予期間
納付の猶予を受けることができる期間は、1年(※)の範囲内で、申請者の財産や収支の状況に応じて最も早く保険料等を完納することができると認められる期間に限られます。
なお、納付の猶予を受ける金額を、申請者の財産や収支の状況に応じて、猶予期間中に分割して納付する方法によることを、別に定めることがあります。
※ 納付の猶予が許可された後、猶予期間内に完納することができないやむを得ない理由があると認められる場合は、申請により、当初の猶予期間と合わせて最長2年以内の範囲で猶予期間の延長が認められることがあります。
(4)申請のための書類
納付の猶予を申請する場合は、次の書類を管轄の年金事務所に提出してください。
・猶予を受けようとする金額が100 万円以下の場合
- ○ 「納付の猶予申請書」
- ○ 「財産収支状況書」
- ○ 災害等により納付困難となった場合の納付の猶予の申請をする場合には、猶予該当事実があることを証する書類(※1、2)
・猶予を受けようとする金額が100 万円を超える場合
- ○ 「納付の猶予申請書」
- ○ 「財産目録」
- ○ 「収支の明細書」
- ○ 災害等により納付困難となった場合の納付の猶予の申請をする場合には、猶予該当事実があることを証する書類(※1、2)
- ○ 担保の提供に関する書類
※ 担保の提供する必要がない、又はすることができない場合には、提出は不要です。
※ 「財産収支状況書」、「財産目録」及び「収支の明細書」の提出の際は、その根拠となる資料を提出する必要があります。(担保の提供に関する書類については、換価の猶予の申請の場合と同様です。)
※1 災害、病気等により納付困難となった場合(1 の①イ、ロ又はホ(イ又はロに類する事実に限ります。)に該当する場合)の納付の猶予の申請をするに際して、これらの添付書類の提出を困難とする事情があるときには、年金事務所にご相談ください。
※2 猶予該当事実があることを証する書類には、例えば次のようなものがあります。詳しくは、管轄の年金事務所にお尋ねください。
① 災害又は盗難のときは、罹災証明書、盗難の被害届の写しなど
② 病気又は負傷のときは、医師による診断書、医療費の領収書など
③ 事業の廃止又は休止のときは、廃業届など
④ 事業について著しい損失を受けたときは、猶予を受けようとする期間の始期の前日以前の1年間(「調査期間」といいます。)と、調査期間の直前1年間(「基準期間」といいます。)のそれぞれの期間の仮決算書など
(5)申請等の審査などの手続
1.換価の猶予の「(4)提出された申請書等の審査」から「(7)猶予の取消し又は猶予期間の短縮」までの手続については、納付の猶予の申請があった場合にも同様となります。