新型コロナウイルスに関する事業者・職場のQ&A(令和2年2月4日時点版)
安全衛生に関する問い合わせ
問1 職場で取り組むべき新型コロナウイルス対策にはどのようなことがありますか。
予防法としては、一般的な衛生対策として、風邪や季節性インフルエンザ対策と同様に、咳エチケット※や手洗い、うがい、アルコール消毒など行っていただくようお願いします。
また、湖北省から帰国・入国される方あるいはこれらの方と接触された方におかれましては、咳や発熱等の症状がある場合には、マスクを着用するなどし、事前に保健所へ連絡したうえで、受診していただきますよう、御協力をお願いします。
また、医療機関の受診にあっては、湖北省の滞在歴があることまたは湖北省に滞在歴がある方と接触したことを事前に申し出てください。
※ 咳エチケットとは、感染症を他人に感染させないために、個人が咳・くしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえることです。
特に電車や職場、学校など人が集まるところで実践することが重要です。
問2 労働者が湖北省に滞在していましたが、どのような対応をしたらよいのでしょうか。
入国してから2週間の間に、発熱や呼吸器症状がある場合には、マスクを着用するなどの咳エチケットを実施の上、あらかじめ保健所に連絡の上速やかに医療機関を受診していただきますよう、御協力をお願いします。なお、受診に当たっては、湖北省への滞在歴があることを申告してください。ご不明な点は、最寄りの保健所にお問い合わせください。
また、湖北省に滞在していた方と接触された方で咳や発熱等の症状がある場合にも同様に受診してください。
問3 労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業禁止の措置を講ずる必要はありますか。
2月1日付けで、新型コロナウイルス感染症が指定感染症として定められたことにより、労働者が新型コロナウイルスに感染していることが確認された場合は、感染症法に基づき、都道府県知事が就業制限や入院の勧告等を行うことができることとなりますので、それに従っていただく必要があります。
労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業制限の措置については対象となりません。
労働基準法に関する問い合わせ
問4 新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の現状からは、中国国内ではヒトからヒトへの感染は認められるものの、我が国において、現在、流行が認められている状況ではありません。
国民の皆様におかれては、風邪や季節性インフルエンザ対策と同様にお一人お一人の咳エチケットや手洗いなどの実施がとても重要です。感染症対策に努めていただくようお願いいたします。
また、新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、欠勤中の賃金の取扱については、労使で十分に話し合っていただき、労使が協力して、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。
なお、賃金の支払の必要性の有無等については、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案すべきものですが、法律上、労働基準法第26条に定める休業手当を支払う必要性の有無については、一般的には以下のように考えられます。(以下は現時点の状況を基にしており、今後の新型コロナウイルスの流行状況等に応じて変更される可能性がありますのでご留意ください。)
①労働者が新型コロナウイルスに感染したため休業させる場合
新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。
②労働者に発熱などの症状があるため休業させる場合
新型コロナウイルスかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱っていただき、病気休暇制度を活用すること等が考えられます。
一方、例えば熱が37.5度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。
③武漢市を含む湖北省から帰国した労働者等の新型コロナウイルスに感染した可能性のある労働者を休業させる場合
入国してから2週間の間に、発熱や呼吸器症状がある場合には、マスクを着用するなどの咳エチケットを実施の上、あらかじめ保健所に連絡の上速やかに医療機関を受診していただきますよう、御協力をお願いします。なお、受診に当たっては、湖北省への滞在歴があることを申告してください。ご不明な点は、最寄りの保健所にお問い合わせください。また、湖北省に滞在していた方と接触された方で咳や発熱等の症状がある場合にも同様に受診してください。
医療機関の受診の結果を踏まえても、職務の継続が可能である労働者について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。
※なお、①から③において休業手当を支払う必要がないとされる場合においても、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討する等休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります。
問5 新型コロナウイルスに感染している疑いのある労働者について、一律に年次有給休暇を取得したこととする取扱いは、労働基準法上問題はありませんか。病気休暇を取得したこととする場合はどうですか。
年次有給休暇は原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものですので、使用者が一方的に取得させることはできません。事業場で任意に設けられた病気休暇により対応する場合は、事業場の就業規則等の規定に照らし適切に取り扱ってください。
問6 新型コロナウイルスの感染の防止や感染者の看護等のために労働者が働く場合、労働基準法第33条第1項の「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合」に該当するでしょうか。
御質問については、新型コロナウイルスに関連した感染症への対策状況、当該労働の緊急性・必要性等を勘案して個別具体的に判断することになりますが、今回の新型コロナウイルスが指定感染症に定められており、一般に急病への対応は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、労働基準法第33条第1項の要件に該当し得るものと考えられます。
ただし、労働基準法第33条第1項に基づく時間外・休日労働はあくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものですので、 過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を 月45時間以内にするなどしていただくことが重要です。また、やむを得ず月に80時間を超える時間外・休日労働を行わせたことにより 疲労の蓄積の認められる労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じる必要があります。
そもそも、労働基準法第32条においては、1日8時間、1週40時間の法定労働時間が定められており、これを超えて労働させる場合や、労働基準法第35条により毎週少なくとも1日又は4週間を通じ4日以上与えることとされている休日に労働させる場合は、労使協定(いわゆる36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出ていただくことが必要です。
しかし、災害その他避けることのできない事由により臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合においても、例外なく、36協定の締結・届出を条件とすることは実際的ではないことから、そのような場合には、36協定によるほか、労働基準法第33条第1項により、使用者は、労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な限度の範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。労働基準法第33条第1項は、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用すべきものです。
なお、労働基準法第33条第1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。