社会保険労務士川口正倫のブログ

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新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大による影響を踏まえた中小企業等への対応について(厚生労働省発基0317 第17 号)

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新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大による影響を踏まえた中小企業等への対応について(厚生労働省発基0317 第17 号)

新型コロナウイルス感染症が経済活動に影響を及ぼす中、中小企業・小規模事業者(以下「中小企業等」という。)から、労働基準関係法令への対応に困難を伴う状況がある旨の声が寄せられているところである。
このため、下記のとおり、都道府県労働局及び労働基準監督署においては、新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大が中小企業等に与える影響に配慮すること等を徹底するよう、命により通達するので、万全を期されたい。

1.中小企業等への配慮

労働施策基本方針(平成30 年12 月28 日閣議決定)第2章の1⑶では、「中小企業等における労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情に配慮し中小企業等の立場に立った対応を行い、労働基準法労働安全衛生法等の労働基準関係法令に係る違反が認められた場合においても、当該中小企業等の事情を踏まえ、使用者に対し自主的な改善を促していく」とされている。
この閣議決定における「その他の事情」には、新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大が中小企業等に与える影響も含まれるものであること。もとより、中小企業等への対応においては、中小企業等の立場に立った丁寧な相談・支援を行うこととしているところであるが、今般の新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大が中小企業等に与える影響についても、十分に配慮するものであること。
このため、中小企業等に対する相談・支援に当たっては、新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大による影響を十分勘案し、労働基準関係法令の趣旨を踏まえた自主的な取組が行われるよう、きめ細かな対応を図ること。併せて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止の観点から、当該中小企業等の置かれた状況に応じ、時差出勤やテレワークについて必要な周知等を行うこと。

2.労働基準法第33 条の解釈の明確化

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、人命や公益の観点から緊急に業務を行わなければならない場合も想定される。
労働基準法(昭和22 年法律第49 号)第33 条第1項では、災害等による臨時の必要がある場合においては、労働基準監督署長の許可を受けて、又は事後の届出により、法定の労働時間を延長し、必要な限度において労働させることができることが規定されている。
これについては、新型コロナウイルス感染症に感染した患者を治療する場合、手厚い看護が必要となる高齢者等の入居する施設において新型コロナウイルス感染症対策を行う場合及び新型コロナウイルスの感染・蔓延を防ぐために必要なマスクや消毒液、医療機器等を緊急に増産又は製造する場合等が対象になり得るものであること。
また、労働基準法第33 条第1項の運用においては、このほか、人命・公益を保護するために臨時の必要がある場合には、これに該当し得るとしているところであり、状況に応じた迅速な運用を図ること。
なお、労働基準法第33 条第1項に基づく時間外・休日労働は、あくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものであり、やむを得ず月に80 時間を超える時間外・休日労働を行わせたことにより疲労の蓄積の認められる労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じる必要があること。

3.1年単位の変形労働時間制の運用の柔軟化

今般の新型コロナウイルス感染症に関連して、人手不足のために労働時間が長くなる場合や、事業活動を縮小したために労働時間が短くなる場合等については、1年単位の変形労働時間制を導入することが考えられる。一方で、新型コロナウイルス感染症対策により、1年単位の変形労働時間制を既に採用している事業場において、当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが困難となる場合も想定される。
このように、新型コロナウイルス感染症対策のため、当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、特例的に、1年単位の変形労働時間制の労使協定について、労使で合意解約をし、又は協定中の破棄条項に従って解約し、改めて協定し直すことも可能であること。
なお、解約までの期間を平均し、1週40 時間を超えて労働させた時間について割増賃金を支払うなど協定の解約が労働者にとって不利になることのないよう留意すること。

4.36 協定の特別条項の考え方の明確化

労働基準法第36 条第1項に規定する協定(以下「36 協定」という。)においては、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)には、限度時間を超えることができるとされている。
今般の新型コロナウイルス感染症の状況については、36 協定の締結当時には想定し得ないものであると考えられるため、例えば、36 協定の「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」に、繁忙の理由が新型コロナウイルス感染症とするものであることが明記されていなくとも、一般的には、特別条項の理由として認められるものであること。
なお、現在、特別条項を締結していない事業場においても、法定の手続を踏まえて労使の合意を行うことにより、特別条項付きの36 協定を締結することが可能であること。

5 地域の中小企業等への周知

労働局長は、上記1から4までについて、あらゆる機会を通じて、地域の中小企業等への周知を徹底すること。