細谷服装事件 最二小判昭和35.3.11民集14巻3号403頁
参照法条 : 労働基準法20条
裁判年月日 : 1960年3月11日
裁判所名 : 最高二小
裁判形式 : 判決
事件番号 : 昭和30年 (オ) 93
1.事件の概要
Y社は、その従業員であるXに対して、昭和24年8月4日、予告手当を支給することなく解雇した。Xは未払賃金と解雇予告手当の支払いを求め、昭和25年3月に提訴した。地裁(横浜地昭和26.3.19民集14巻3号412頁)と高裁(東京高判昭和29.10.30民集14巻3号414頁)は、いずれもXの請求を棄却した。そこで、Xが上告したのが本件である。
2.判決の概要
使用者が労働基準法20条所定の予告期間をおかず、または解雇予告手当の支払をしないで労働者に解雇を通知した場合、その通知は即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後同条所定の30日の期間を経過するか、または通知の後に同条所定の解雇予告手当の支払をしたときは、そのいずれかのときから解雇の効力を生ずる。
3.解説
会社が即時解雇に固執している場合 ⇒ 無効
そうでない場合 ⇒
①30日の解雇予告の期間が経過した日 or ②定められた解雇予告手当を支払った日
に解雇の効力が生じる(これを「相対的無効説」という)。
しかし、「固執している」かどうかは使用者の内心であり労働者が誤認する危険がある。
もし「使用者が即時解雇に固執している」と労働者が誤認(本当は固執していない)すると
⇒使用者は即時解雇に固執していなため、解雇は通知後30日間を経過すれば効力が生じるので、30日間労働者が勤務すればその分の賃金がもらえたハズである。しかし、即時解雇と誤認した労働者が通知の翌日から労働者が出勤しなかったら、ノーワークノーペイの原則により労働者は賃金が請求できないうえ、30日の解雇予告の期間が経過した日に解雇がする。
これでは、本来無効な即時解雇を言い渡された労働者の保護に欠くため、この判例には批判が多い。
労働基準法20条
- 第20条
- 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
- 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
- 前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。