社会保険労務士川口正倫のブログ

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令和3年4月高年齢者雇用安定法の改正内容

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令和3年4月高年齢者雇用安定法の改正案の内容

令和2年1月8日に労働政策審議会へ厚生労大臣から提示された改正案となります。
なお、施行日は令和2年4月1日とされています。
最終的には令和3年4月となったようです。
雇用保険法等の一部を改正する法律案の概要 - 社会保険労務士川口正倫のブログ


「70歳定年法」といったフレーズがありますが、とりあえずは努力義務で罰則等は予定されていないようです。
とはいえ、近い将来義務化されることが見込まれます。令和7年3月末に労使協定による継続雇用制度の対象者基準を適用できる経過措置が終了し、それ以降は65歳までは希望者全員が雇用確保できるようなりますので、その時期に合せて義務化されることが予想されます。
なお、同審議会が公表している「高年齢者の雇用・就業機会の確保及び中途採用に関する情報公表について(案)」という資料によれば、
「現行の65 歳までの雇用確保措置では、希望する高年齢者全員を対象とした制度を導入することが事業主の義務とされているが、65 歳以降の高年齢者については、それ以前と比べて体力や健康状態その他の本人を取り巻く状況がより多様なものとなる。このため、今般の努力義務を設けるに当たり、事業主が講ずる措置について、対象者の限定を可能とすることが適当である。なお、対象者を限定する場合には、その基準について労使で合意が図られることが望ましいことから、この点について指針において明示することが適当である。」
とあることから、対象者をある程度限定できる制度となることが見込まれます。

確かに65歳を超えても元気な方もたくさんいるとは思いますが、逆に認知症になる方や判断力や記憶力が業務に追いつかなくなる方も多数出てくるでしょうから、ある程度絞り込める制度にすべきでしょうね。
なお、創業支援等措置についてですが、これは65歳以上の高年齢者を労働者として雇用するのではなく、個人事業主として業務委託で従事してもらうものです。また、会社が直接委託するのではなく、間に受託業者を入れて、元従業員である65歳以上の高年齢者に委託することも認めています。形式的には孫請けのように見えて無駄なように思えますが、会社が直接個人一人一人に委託するよりは、間に受託業者を入れて業務を整理したうえで、委託したほうがスムーズにできると思います。
ただ、結局はアウトソージングすることですから、すでに行われていて、できる業務も限られるでしょうから、創業支援等措置は限定的になるんじゃないでしょうかね。


一 高年齢者就業確保措置

1.定年(65歳以上70歳未満のものに限る。以下同じ。)の定めをしている事業主等は、次に掲げる措置のいずれかを講じることにより、現に雇用している高年齢者等の65歳から70歳までの安定した雇用を確保するよう努めなければならないものとすること。ただし、当該事業主が、創業支援等措置を講ずることにより、当該高年齢者の65歳以上から70歳までの安定した就業の機会を確保する場合はこの限りではないものとすること。

(一)当該定年の引上げ
(二)65歳以上継続雇用制度(現に雇用している高年齢者等が希望するときは、当該高年齢者をその定年後に引き続いて雇用する制度をいう。3及び4において同じ。)の導入
(三)当該定年の定めの廃止

2.1に規定する創業支援等措置は、次に掲げる制度であって労働者の過半数を代表する者等の同意を厚生労働省令で定めるところにより得た上で導入されるものをいうものとすること。

(一)現に雇用している高年齢者等が希望するときは、当該高年齢者が定年後等に引き続いて新たに事業を開始する場合等に、事業主が、当該高年齢者等との間で、当該事業に係る委託契約等(労働契約を除き、当該委託契約に基づき当該事業主が当該高年齢者等に金銭を支払うものに限る。)を締結する制度
(二)現に雇用している高年齢者等が希望するときは、当該高年齢者等が定年後等に引き続いて次に掲げる事業(当該事業を実施する者と当該高年齢者が、当該事業に係る委託契約等(労働契約を除き、当該委託契約に基づき当該事業を実施する者が当該高年齢者に金銭を支払うものに限る。)を締結するものに限る。)であって不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とするものに係る業務に従事できる制度。ただし、ロ又はハの事業に係る業務に従事できる制度については、事業主と当該事業を実施する者との間で、当該者が、当該高年齢者が当該業務に従事する機会を提供する契約を締結するものに限る。

イ 事業主が実施する事業
ロ 事業主が団体に委託する事業
ハ 事業主が事業の円滑な実施に必要な資金の提供その他の援助を行う団体が実施する当該事業

3.65歳以上継続雇用制度には、事業主が他の事業主との間で、当該事業主が現に雇用している高年齢者等であって定年後等に雇用されることを希望するものを、定年後に当該他の事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結し、当該契約に基づき当該高年齢者の雇用を確保する制度が含まれるものとすること。

4.厚生労働大臣は、1に掲げる措置及び創業支援等措置(5において「高年齢者就業確保措置」という。)の実施及び運用(心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の65歳以上継続雇用制度及び創業支援等措置における取扱いを含む。)に関する指針を定めるものとすること。

5.厚生労働大臣は、高年齢者等職業安定対策基本方針に照らして、高年齢者の65歳から70歳までの安定した雇用の確保その他就業機会の確保のため必要があると認めるとき等に、事業主に対し、高年齢者就業確保措置の実施について必要な指導及び助言をすること並びに高年齢者就業確保措置の実施に関する計画の作成を勧告すること等ができることとすること。

6.事業主による厚生労働大臣への報告事項に、創業支援等措置等に関する状況を加えるものとすること。

二 その他

その他所要の改正を行うこと。



【現行高年齢者雇用安定法第9条】

(高年齢者雇用確保措置)
第九条 定年(六十五歳未満のものに限る。以下この条において同じ。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の六十五歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。

一 当該定年の引上げ
二 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
三 当該定年の定めの廃止

2 継続雇用制度には、事業主が、特殊関係事業主(当該事業主の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある事業主その他の当該事業主と特殊の関係のある事業主として厚生労働省令で定める事業主をいう。以下この項において同じ。)との間で、当該事業主の雇用する高年齢者であつてその定年後に雇用されることを希望するものをその定年後に当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結し、当該契約に基づき当該高年齢者の雇用を確保する制度が含まれるものとする。
3 厚生労働大臣は、第一項の事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用(心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の継続雇用制度における取扱いを含む。)に関する指針(次項において「指針」という。)を定めるものとする。
4 第六条第三項及び第四項の規定は、指針の策定及び変更について準用する。