社会保険労務士川口正倫のブログ

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年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要

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年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律の概要

https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf

改正の趣旨

より多くの人がより長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、在職中の年金受給の在り方の見直し、受給開始時期の選択肢の拡大、確定拠出年金の加入可能要件の見直し等の措置を講ずる。

改正の概要

1.被用者保険の適用拡大【厚生年金保険法、健康保険法、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成24年改正法)、国家公務員共済組合法地方公務員等共済組合法

①短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件について、段階的に引き下げる(現行500人超→100人超→50人超)。
②5人以上の個人事業所に係る適用業種に、弁護士、税理士等の資格を有する者が行う法律又は会計に係る業務を行う事業を追加する。
③厚生年金・健康保険の適用対象である国・自治体等で勤務する短時間労働者に対して、公務員共済の短期給付を適用する。

2.在職中の年金受給の在り方の見直し【厚生年金保険法

①高齢期の就労継続を早期に年金額に反映するため、在職中の老齢厚生年金受給者(65歳以上)の年金額を毎年定時に改定することとする。
②60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止とならない範囲を拡大する(支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を、現行の28万円から47万円(令和2年度額)に引き上げる。)。

3.受給開始時期の選択肢の拡大【国民年金法、厚生年金保険法等】

現在60歳から70歳の間となっている年金の受給開始時期の選択肢を、60歳から75歳の間に拡大する。

4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し等【確定拠出年金法確定給付企業年金法独立行政法人農業者年金基金法等】

確定拠出年金の加入可能年齢を引き上げる(※)とともに、受給開始時期等の選択肢を拡大する。
※企業型DC:厚生年金被保険者のうち65歳未満→70歳未満個人型DC(iDeCo):公的年金の被保険者のうち60歳未満→65歳未満
確定拠出年金における中小企業向け制度の対象範囲の拡大(100人以下→300人以下)、企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和など、制度面・手続面の改善を図る。

5.その他【国民年金法、厚生年金保険法年金生活者支援給付金の支給に関する法律、児童扶養手当法等】

国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え
②未婚のひとり親等を寡婦と同様に国民年金保険料の申請全額免除基準等に追加
③短期滞在の外国人に対する脱退一時金の支給上限年数を3年から5年に引上げ(具体の年数は政令で規定)
年金生活者支援給付金制度における所得・世帯情報の照会の対象者の見直し
児童扶養手当障害年金の併給調整の見直し等

施行日

令和4(2022 )年4月1日 (ただし、1①は令和( 2022 )年 10 月1日・令和6( 2024 )年 10 月1日、1②・③は令和4( 2022 )年 10 月1日、4①は令和4( 2022 )年4月1日・同年5月1日等、4②は公布日から6月を超えない範囲で政令で定める日 ・令和4( 2022 年 10 月 1日等 、5②・③は令和3( 2021 )年4月1日、5④は公布日、5⑤は令和 2021 )年3月1日 等)


1.被用者保険の適用拡大に係る見直し

【1】短時間労働者への適用拡大

(1)企業規模要件

今回の改正では、50人超規模の企業まで適用するスケジュールを明記する。具体的には、2024年10月に50人超規模の企業まで適用することとし、その施行までの間にも、できるだけ多くの労働者の保障を充実させるため、2022年10月に100人超規模の企業までは適用する。

【補足①】
企業規模要件の「従業員数」は、適用拡大以前の通常の被保険者の人数を指し、それ以外の短時間労働者を含まない。

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【補足②】
月ごとに従業員数をカウントし、直近12か月のうち6か月で基準を上回ったら適用対象となる。
(※)一度適用対象となったら、従業員数が基準を下回っても引き続き適用。ただし被保険者の3/4の同意で対象外となることができる。

【補足③】
従業員数のカウントは、法人なら同一の法人番号を有する全事業所単位、個人事業主なら個々の事業所単位で行う。

(2)労働時間要件(週20時間)⇒まずは週20時間以上労働者への適用を優先するため、現状維持とする。

【補足】
週20時間の判定は、基本的に契約上の所定労働時間によって行うため、臨時に生じた残業等を含まない。
(※)現行の運用では、実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、なお引き続くと見込まれる場合には、3か月目から保険加入。

(3)賃金要件(月8.8万円)⇒最低賃金の水準との関係も踏まえて、現状維持とする。

【補足 】
月 8.8 万円の判定は、基本給及び諸手当によって行う。ただし、残業代・賞与・臨時的な賃金等を含まない。

判定基準に含まれないものの例:
・臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
・1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
・時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)

(4)勤務期間要件(1年以上)実務上の取扱いの現状も踏まえて撤廃し、フルタイム等の被保険者と同様の2か月超の要件を適用する。

【補足】
現行制度の運用上、実際の勤務期間にかかわらず、基本的に下記のいずれかに当てはまれば1年以上見込みと扱う。
就業規則雇用契約書等その他書面において契約が更新される旨又は更新される場合がある旨が明示されていること
•同一の事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新等により1年以上雇用された実績があること
⇒適用除外となるのは、契約期間が1年未満で、書面上更新可能性を示す記載がなく、更新の前例もない場合に限られている

(5)学生除外要件⇒本格的就労の準備期間としての学生の位置づけ等も考慮し、現状維持とする。

【2】非適用業種(法定 16 業種以外の個人事業所は非適用)の見直し(令和 2022 )年 10 月施行)

非適用業種⇒弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業については、他の業種と比べても法人割合が著しく低いこと、社会保険の事務能力等の面からの支障はないと考えられることなどから、適用業種に追加

【3】健康保険の適用拡大

健康保険についても、被用者保険として、厚生年金保険と一体として適用拡大
※また、厚生年金・健康保険の適用対象である国・自治体等で勤務する短時間労働者に対して、公務員共済の短期給付(医療保険)を適用する。



2.①在職定時改定の導入

【見直しの趣旨】
○老齢厚生年金の受給権を取得した後に就労した場合は、資格喪失時(退職時・70歳到達時)に、受給権取得後の被保険者であった期間を加えて、老齢厚生年金の額を改定している(いわゆる退職改定)。
○高齢期の就労が拡大する中、就労を継続したことの効果を退職を待たずに早期に年金額に反映することで、年金を受給しながら働く在職受給権者の経済基盤の充実を図る。

【見直し内容】(令和4(2022)年4月施行)
○65歳以上の者については、在職中であっても、年金額の改定を定時に行う(毎年1回、10月分から)。


2.②在職老齢年金制度の見直し

【見直し内容】(令和4(2022)年4月施行)
○60~64歳の在職老齢年金制度(低在老)について、
・就労に与える影響が一定程度確認されている
・2030年度まで支給開始年齢の引上げが続く女性の就労を支援する
・制度を分かりやすくする
といった観点から、支給停止の基準額を28万円から、現行の65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)と同じ「47万円」に引き上げる。
※男性は2025年度まで、女性は2030年度までの経過的な制度であるため、見直しによる長期的な財政影響は極めて軽微。



https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf