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事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案(概要)

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事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案(概要)

厚生労働大臣は、令和3年7月28日に、労働政策審議会(会長 清家 篤 日本私立学校振興・共済事業団理事長、慶應義塾学事顧問)に対し、「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」について諮問を行い、この諮問を受け、同審議会安全衛生分科会(分科会長 城内 博(独)労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所化学物質情報管理研究センター長)で審議が行われ、本日、同審議会より概ね妥当であるとの答申がありました。
厚生労働省において、この答申を踏まえて、令和3年12月上旬(照度基準については、令和4年12月1日)の施行に向け、速やかに省令の改正作業を進められるようです。

なお、事務所衛生基準規則とは、労働安全衛生法に基づき定められた、事務所の衛生基準を定めた厚生労働省令です。本規則における「事務所」とは、本規則第1条において、「建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第1号に掲げる建築物又はその一部で、事務作業に従事する労働者が主として使用するものについて適用する」と定められています。
また、昭和46年8月23日付基発第597号で、工場現場の一部において、ついたて等を設けて事務作業を行っているものは、本規則による事務所に該当しないこと。と解釈されています。

通常、事務所は、有害物、危険物を取り扱うことのない作業場といえます。そのため、重篤度の高い労働災害や職業性疾病が発生する可能性は少ないのですが、本規則は、事務所の衛生確保を目的として、環境管理、清潔、休養、救急用具等を考慮すべきことを定めています。
本規則第1条第2項において、「事務所(これに附属する食堂及び炊事場を除く)における衛生基準については、労働安全衛生規則第3編の規定は適用しない」とされています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21600.html

1.改正の趣旨

事務所における清潔保持や休養のための措置、事務所の作業環境等、事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号)等で規定されている衛生基準については、制定されてから50年近く経過していることから、その間の社会状況の変化を踏まえて現在の実状や関係規定を確認し、関係有識者による検討を行い、取りまとめた報告書等をもとに、関係省令の改正されるものです。

2.改正のポイント

・事務室の作業面の照度基準について、作業の区分を「一般的な事務作業」及び「付随的な事務作業」とし、それぞれ300ルクス(現行は150ルクス)以上及び150ルクス(現行は70ルクス)以上とすること。
・作業場における便所の設置基準について、以下のとおり見直すこと。
(1)男性用と女性用に区別して設置した上で、独立個室型の便所を設置する場合は、男性用大便所の便房、男性用小便所及び女性用便所の便房をそれぞれ一定程度設置したものとして取り扱うことができるものとすること。
(2)作業場に設置する便所は男性用と女性用に区別して設置するという原則は維持した上で、同時に就業する労働者が常時10人以内である場合は、便所を男性用と女性用に区別することの例外として、独立個室型の便所を設けることで足りることとすること。
・事業者に備えることを求めている救急用具について、必要な見直しを行うこと。

3.事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案(概要)

第1 事務所衛生基準規則の一部改正

① 照度の基準

【現行】
現在の事務所則第10条第1項において、事業者は、室の作業面の照度を表1の作業の区分に応 じて、同表の基準に適合させなければならない(ただし、感光材料の取扱い等特殊な作業を行な う室については、この限りでない。)旨規定されている。

【改正の内容】
(1)作業の区分を「一般的な事務作業」及び「付随的な事務作業」の2区分に変更すること。
(2)照度基準については、一般的な事務作業においては300ルクス以上、付随的な事務作業に おいては150ルクス以上とすること。
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② 便所の設置基準

【現行】
現在の事務所則第17条第1項においては、以下の事項等が規定されている。
事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。
・男性用と女性用に区別すること。
・男性用大便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者六十人以内ごとに一個以上とすること。
・男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者三十人以内ごとに一個以上とすること。
・ 女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者二十人以内ごとに一個以上とすること。

【改正の内容】
(1)基本方針
男性用と女性用に区別して設けることが原則であること。

(2)少人数の事務所における例外
同時に就業する労働者が常時十人以内である場合は、現行で求めている、便所を男性用と女 性用に区別することの例外として、独立個室型の便所を設けることで足りることとすること。
(3)男性用と女性用に区別した便所を各々設置した上で付加的に設ける便所の取扱い 男性用と女性用に区別した便所を設置した上で、独立個室型の便所を設置する場合は、男性 用大便所の便房、男性用小便所及び女性用便所の便房をそれぞれ一定程度設置したもの※とし て取り扱うことができるものとする。
※男性用大便所又は女性用便所の便房の数若しくは男性用小便所の箇所数を算定する際に基準とする 当該事業場における同時に就業する労働者の数について、独立個室型の便所1個につき男女それぞれ 十人ずつ減ずることができることとすること。

第2 労働安全衛生規則の一部改正

① 便所

 第1の2同様の改正を行うこととすること。

② 救急用具

【現行】
現在、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)においては以 下のとおり規定されている。

(救急用具)
第六百三十三条 事業者は、負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え、その備付け場所及び使用方法を労 働者に周知させなければならない。
2 事業者は、前項の救急用具及び材料を常時清潔に保たなければならない。

(救急用具の内容)
第六百三十四条 事業者は、前条第一項の救急用具及び材料として、少なくとも、次の品目を備えなければなら ない。
一 ほう帯材料、ピンセツト及び消毒薬
二 高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬
三 重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木、担架等

【改正の内容】
安衛則第633条において事業者に備えることを求めている救急用具に関し、少なくとも備えなけ ればならない品目を定めている安衛則第634条を削除する。
「負傷者の手当に必要な救急用具及び材料」の備え付けについて、事業場において労働災害等 により労働者が負傷し、又は疾病にり患した場合には、その場で応急手当を行うことよりも速や かに医療機関に搬送することが基本であること及び事業場ごとに負傷や疾病の発生状況が異なる ことから、事業場に一律に備えなければならない品目についての規定は削除することとする。

第3 施行日

 公布日:令和3年12月上旬(予定)
 施行期日:公布日(第1の①については令和4年12月1日)(予定)