社会保険労務士川口正倫のブログ

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歩合給がある場合の雇用調整助成金の助成額算定方法が令和3年9月1日以降の休業から変更

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歩合給がある場合の雇用調整助成金の助成額算定方法が令和3年9月1日以降の休業から変更

判定基礎期間の初日が令和3年9月1日以降の休業より、タクシードライバーや営業等、賃金に歩合給がある場合は助成金の算定方法が変更になります。
休業手当は歩合給を除いた固定的な賃金に休業手当を支給率を乗じて計算されることが多く(ただし、歩合給を含んで計算される平均賃金の60%以上)、労使協定で定めた支給率に基づいて助成金を支給すると支給額が不均衡に高くなることがあるための措置と考えられます。

例えば、基本給20万+歩合給という賃金体系では、休業1日当たりの休業手当として20万円/月所定労働日数を支給すれば、従来の雇用調整助成金の申請では、100%の休業手当を支給したことになります。しかし、前年度の賃金総額(当然、歩合給を含む)に基づいて計算される平均賃金と比較すると、100%相当とは言えません。
なぜなら、前年の雇用保険被保険者数の平均1名、賞与なし、前年度の基本給総額240万円(20万×12か月)・歩合給の総額24万円、年所定労働日数240日とすれば、
 雇用調整助成金上の平均賃金=(240万円+24万円)/(1名×240日)=11,000円
となります。100%相当と言うのであれば、歩合給も含んだ11,000円を基準とすべきです。
そこで、休業手当=20万/20日=10,000円の場合の休業手当支給率を
 10,000円/11,000円=90.9%≒91%
とし、これを基に助成金額を計算するように変更するものです。

ただし、賃金総額に賞与が含まれている場合は、休業手当支給率が不相応に低くなります。この点が疑問なので、参考様式等が公開されたら、再度考察してみたいと覆います。

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000821251.pdf


対象となる事業主

〇給与に歩合給(出来高払)制が含まれている労働者を休業等させた場合、対象となります。
※該当する場合は、厚生労働省HPで公開予定の参考様式等を提出する必要があります。

変更内容

判定基礎期間の初日が令和3年9月1日以降の休業より※、助成額算定に用いる休業手当支払率(雇用調整助成金助成額算定書の「(5)休業手当等の支払い率」)を以下により算定する方法に変更します。
※「初日が令和3年9月1日以降の休業より」とは:例えば、判定基礎期間(通常は、賃金計算期間)が毎月21日から翌月20日であれば、令和3年9月21日から同10月20日の判定基礎期間における休業から、本変更が行われるという意味です。
f:id:sr-memorandum:20210826221251p:plain

〇また、この休業手当支払率は、6か月経過ごとに見直しが行われます。
・今回の変更は、助成額が実際に支払われた休業手当額に応じた額になるようにするものです。
・また、休業手当額は月ごとに変動する可能性があることから、このような変動をできるだけ助成額に反映させるため、休業手当支払率は6カ月経過ごとに見直しが行われます。

具体的な算定方法・手続きなど

〇判定基礎期間の初日が令和3年9月1日以降の休業について、雇用調整助成金助成額算定書の「(5)休業手当等の支払い率」は、末尾を参考に、上記の変更内容に基づいて算定した率を当該算定書に記入して下さい。
〇この見直し月の翌月以降の申請の際は、上記の算定書の写しを添付して下さい。 また、6か月経過後の見直しがなされた場合は、その見直し後の算定書を添付し て下さい。

雇用調整助成金助成額算定書

【計算方法の例】
以下の雇用調整を行った場合
①休業:休業手当額7,500円(基本給分80%、歩合給分0%)、全日休業60人日、短時間休業12人日
②教育訓練:教育訓練時の賃金9,375円(基本給分100%、歩合給分0%)、教育訓練10人日
f:id:sr-memorandum:20210826222444p:plain

【その他】
〇今回の変更後に、実際に支払われた休業手当額が助成額を上回る月がある場合には、当該月については、同月の休業手当額に基づき、休業手当支払率を算定し直すことができ、申請の際に、実際に支払われた休業手当額が確認できる資料の提出が必要となるようです。
○該当する場合に提出する必要がある参考様式は近日中に厚生労働省HPに公開される予定です。
〇なお、従業員が概ね20人以下の事業主におかれては、実際に支払った休業手当等の額により申請できる「小規模事業主用様式」をご利用いただけます。