社会保険労務士川口正倫のブログ

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「職場のハラスメントに関する実態調査」の公表

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「職場のハラスメントに関する実態調査」の公表

厚生労働省より、「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書が公表されています。
この調査は、平成28年度に実施した職場のパワーハラスメントに関する実態調査から4年が経過し、ハラスメントの対策に取り組む企業割合や労働者の状況も変化していると考えられることから実施されました。
今回の調査は、全国の企業と労働者等を対象に、令和2年10月に実施されたものです。

改正労働施策総合推進法により、職場でのハラスメント対策の強化が企業に義務付けています。
中小企業はまだ努力義務の段階ですが、2022年(令和4年)4月から義務化されます。(大企業は2020年(令和2年)6月より既に義務化)

改正法が施行されたとはいえ
パワハラ、セクハラを受けた際の労働者の対応として「何もしなかった」の割合が最も高かった。
パワハラを知った際の企業の対応として「何もしなかった」という回答が半数以上
という結果が出ています。

本人が何もできないのは仕方ない面もありますが、企業が対応を「何もしなかった」というのは、あまりにも残念な結果で、職場環境配慮義務や安全配慮義務の点からも大問題です。

改正労働施策総合推進法により、企業に義務付けられるのは次の3点です。
・企業の「職場におけるパワハラに関する方針」を明確化し、労働者への周知、啓発を行うこと
・労働者からの苦情を含む相談に応じ、適切な対策を講じるために必要な体制を整備すること
・職場におけるパワハラの相談を受けた場合、事実関係の迅速かつ正確な確認と適正な対処を行うこと

これらにより、「事実関係の迅速かつ正確な確認と適正な対処を行うこと」ができる「適切な対策を講じるために必要な体制を整備」がなされて、今後の調査では「何もしなかった」という、あまりにも情けない回答は無くなって欲しいものです。
相談窓口を明確にすることにより、パワハラ、セクハラを受けた際の労働者が「何もできない」ということも少なくなることが期待されます。

なお、本調査によると、ハラスメントの予防・解決のための取組を進めたことにより、「職場のコミュニケーションが活性化する風通しが良くなる」という副次的な効果が得られることも多いようです。

下記に概要を抜粋いたしました。
詳細は、リンクをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18384.html

1.調査目的等

平成28年度に実施した職場のパワーハラスメントに関する実態調査から4年が経過し、ハラスメントの対策に取り組む企業割合や労働者の状況も変化していると考えられることから、本調査を実施されたものです。
○本調査は、企業調査と労働者等調査からなるアンケート調査で、2020年(令和2年)10月に実施されました。

2.調査結果の主要点

ハラスメントの発生状況・ハラスメントに関する職場の特徴

○過去3年間のハラスメント相談件数の推移については、パワハラ、顧客等からの著しい迷惑行為、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、介護休業等ハラスメント、就活等セクハラでは「件数は変わらない」の割合が最も高く、セクハラのみ「減少している」の割合が最も高かった。
○過去3年間のハラスメント該当件数の推移については、顧客等からの著しい迷惑行為については「件数が増加している」の方が「件数は減少している」よりも多いが、それ以外のハラスメントについては、「件数は減少している」のほうが「件数は増加している」より多かった。
○職場の特徴として、パワハラ・セクハラともに「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」、「ハラスメント防止規定が制定されていない」、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」、「残業が多い/休暇を取りづらい」等の特徴について、ハラスメントを経験した者と経験しなかった者の差が特に大きい。

(※)この調査では、就職活動中のセクハラだけでなく、インターンシップ参加中のセクハラの経験についても調査しており、就職活動中またはインターンシップ参加中に経験したセクハラを「就活等セクハラ」とされています。

ハラスメント行為を受けた後の行動、ハラスメントを知った後の勤務先の対応、ハラスメントを受けていることを認識した後の勤務先の対応

○ハラスメントを受けた後の行動として、パワハラ、セクハラでは「何もしなかった」の割合が最も高かった。一方、顧客等からの著しい迷惑行為では、「社内の上司に相談した」の割合が最も高く、次いで「社内の同僚に相談した」が高かった。
○ハラスメントを知った後の勤務先の対応としては、パワハラでは「特に何もしなかった」(47.1%)、セクハラでは「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」(34.6%)、顧客等からの著しい迷惑行為では、「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」(48.6%)の割合が最も高かった。
パワハラ認定後の勤務先の対応としては、「行為者に謝罪させた」(28.5%)が最も多く、次いで「何もしなかった」(22.3%)であった。セクハラ認定後の勤務先の対応としては、「会社として謝罪をした」(32.4%)が最も多く、次いで「行為者に謝罪させた」(27.0%)が多かった。

ハラスメントの発生状況(企業調査)

○過去3年間のハラスメント相談件数の推移については、パワハラ、顧客等からの著しい迷惑行為、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、介護休業等ハラスメント、就活等セクハラでは「件数は変わらない」の割合が最も高く、セクハラのみ「減少している」の割合が最も高かった。
○過去3年間のハラスメント該当件数の推移については、顧客等からの著しい迷惑行為については「件数が増加している」の方が「件数は減少している」よりも多いが、それ以外のハラスメントについては、「件数は減少している」のほうが「件数は増加している」より多かった。
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ハラスメントに関する職場の特徴(労働者等調査)

パワハラ・セクハラともに「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」、「ハラスメント防止規定が制定されていない」、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」、「残業が多い/休暇を取りづらい」等の特徴について、ハラスメントを経験した者と経験しなかった者の差が特に大きい。
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ハラスメントの予防・解決のための取組状況(企業調査)

パワハラ、セクハラおよび妊娠・出産・育児休業等・介護休業等ハラスメントに関する雇用管理上の措置として、「ハラスメントの内容、ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発」および「相談窓口の設置と周知」を実施していると回答した企業は約8割程度であった。一方、「相談窓口担当者が相談内容や状況に応じて適切に対応できるための対応」の割合は全てのハラスメントにおいて約4割程度であった。
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ハラスメントの予防・解決のための取組を進めたことによる効果(労働者等調査・企業調査)

○勤務先がハラスメントの予防・解決に「積極的に取り組んでいる」と回答した者で、ハラスメントを経験した割合が最も低く、「あまり取り組んでいない」と回答した者でハラスメントを経験した割合は最も高い。
○ハラスメントの予防・解決のための取組を進めたことによる副次的効果は、「職場のコミュニケーションが活性化する風通しが良くなる」の割合が最も高く、次いで「管理職の意識の変化によって職場環境が変わる」が高かった。
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ハラスメントの予防・解決のための取組を進める上での課題(企業調査)

○ハラスメントの予防・解決のための取組を進める上での課題としては、「ハラスメントかどうかの判断が難しい」の割合が最も高く、次いで「発生状況を把握することが困難」が高かった。
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