社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の公布・施行について(令3.4.23医政発0423第55号・健発0423第8号・職発0423第8号)

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労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の公布・施行について(令3.4.23医政発0423第55号・健発0423第8号・職発0423第8号)



労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の公布・施行について(令3.4.23医政発0423第55号・健発0423第8号・職発0423第8号)

https://www.mhlw.go.jp/content/000774927.pdf



労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則の一部を改正する省令」(令和3年厚生労働省令第89 号。以下「改正省令」という。)が本日公布・施行され、へき地以外のワクチン接種会場への看護師・准看護師の労働者派遣が可能となったところである。
その改正の概要、留意事項等は下記のとおりであるので、御了知の上、管内市町村、関係団体等にその周知徹底を図り、その円滑な運用に万全の対応をしていただくようお願いしたい。
なお、令和3年4月1日から可能となっている、へき地のワクチン接種会場への看護師・准看護師の労働者派遣についても、改めて下記にご留意いただくよう、管内市町村、関係団体等にその周知徹底をお願いしたい。

                   記

1.改正の概要

看護師及び准看護師(以下「看護職員」という。)が行う保健師助産師看護師法(昭和23 年法律第203 号)第5条及び第6条に規定する業務(以下「診療補助行為等」という。)については、医療機関への労働者派遣が原則禁止されている。
今般、本年4月1日より可能となったへき地の医療機関への看護職員の労働者派遣に加え、へき地以外についても、以下のとおり、従事者、場所及び期間を限定して、労働者派遣を可能とするもの。
なお、改正省令の内容については、別紙1を参照されたい。

(1)従事者

看護職員が行う診療補助行為等のうち、予防接種法(昭和23 年法律第68 号)附則第7条第1項の規定による予防接種(以下「コロナワクチン接種」という。)に係るものに限る。

(2)場所

コロナワクチン接種を行うへき地以外の病院又は診療所(以下「接種会場」という。)に限る。

(3)期間

予防接種法附則第7条第1項の規定により厚生労働大臣が指定する期日又は期間(令和4年2月28 日まで)に限る。
※ 接種会場には、市町村が設置する特設会場、集団接種を行う医療機関、個別接種を行う医療機関のいずれも含まれる。
※ 接種会場への労働者派遣であっても、看護職員が行う診療補助行為等のうち、コロナワクチン接種以外の業務について労働者派遣を行うこと(例:個別接種を行う診療所において、コロナワクチン接種とは関係のない、通常の診療に係る診療補助行為等を行う)は、今回の特例的な扱いの対象外である点に留意すること。

2.改正の趣旨

(1) 今回講じる措置については、従事者(看護職員)、場所(接種会場)、期間(令和4年2月28 日まで)を限定の上で、労働者派遣を可能とするもので、新型コロナウイルス感染症に対応するための特例措置として、例外的に認めるものであること。

(2) あくまで、接種会場における看護職員の確保の選択肢の一つとして労働者派遣の形態によることを可能とする趣旨であり、看護職員の確保に当たって必ず労働者派遣の形態によらなければならないこととするものではないこと。接種会場における看護職員の確保に当たり、労働者派遣の活用を検討する場合は、これら改正の趣旨を十分踏まえること。

(3) 接種会場における看護職員の確保策については、現在、各都道府県ナースセンターにおいて、就職希望を登録している潜在看護職員に対し、各自治体におけるワクチン接種のための看護職員の求人ニーズについて積極的なマッチング支援を行っているため、各都道府県ナースセンターに求人のご相談をいただくことも効果的であること。また、医療機関への看護職員の確保のため、民間職業紹介事業者を活用することも効果的であること。接種会場における看護職員の確保に当たっては、これらの方法を活用し、看護職員を直接雇用により確保することについても検討されたい。

3.労働者派遣制度の概要

労働者派遣制度の主な概要については以下のとおりであるが、同制度の詳細については別紙2のパンフレットを参照されたい。
なお、労働者派遣制度の詳細について不明な点等があれば、適宜、都道府県労働局に照会されたい。

(1)無許可事業主からの派遣労働者の受入れの禁止

派遣先は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60 年法律第88 号。以下「法」という。)第5条に基づく労働者派遣事業の許可を受けていない派遣元事業主から派遣労働者を受け入れてはならないこととされていること(法第24 条の2)。
なお、医療機関が派遣元事業主となる場合についても、当然に労働者派遣事業の許可を受けている必要があること。

(2)派遣労働者を特定することを目的とする行為の制限

派遣先は、労働者派遣契約を締結する際、派遣労働者を特定することを目的とする行為(事前面接や履歴書の送付等)をしないよう努めなければならないこととされていること(法第26 条第6項)。

(3)派遣先責任者の選任

派遣先は、事業所その他派遣就業の場所ごとに労働者派遣された派遣労働者に関する就業の管理を一元的に行う派遣先責任者を選任し、派遣労働者の適正な就業を確保しなければならないこと(法第41 条)。

(4)派遣先管理台帳の作成・管理

派遣先は、労働日、労働時間等の派遣労働者の就業実態を的確に把握するため、派遣就業に関し、派遣先管理台帳を作成し、派遣就業をした日、派遣就業をした日ごとの始業し、及び終業した時刻並びに休憩した時間等の事項を記載しなければならないこと(法第42 条)。

(5)労働基準法等の適用

労働者派遣制度においては、派遣先に対して、労働基準法労働安全衛生法等に基づく事業主としての責務の一部(労働時間の管理、労働者の危険又は健康障害を防止するための措置等)が課せられていること(法第3章第4節)。

(6)労働・社会保険の加入状況等の確認

派遣先は、派遣労働者を受け入れるに当たって、社会保険・労働保険への加入の有無を確認し、派遣労働者社会保険・労働保険に加入していない場合には、派遣元事業主に対して、その理由を明らかにするよう求めること。
その際、加入していない理由が適正でないと考えられる場合には、派遣元事業主に対し、社会保険・労働保険に加入させてから派遣するよう求めること。

4.接種会場においてコロナワクチン接種を行う看護職員の確保に当たり、派遣労働者を受け入れる際の留意点

労働者派遣の形態によりコロナワクチン接種を行う看護職員を確保する場合には、上記3の労働者派遣制度の特性を十分に踏まえるとともに、コロナワクチン接種の適正実施等の観点から、以下の点に留意の上、適切に対応する必要があること。

(1)派遣元事業主の選定に当たっての留意事項

労働者派遣制度においては、派遣元事業主及び派遣先においてそれぞれ責任者を選任し、派遣労働者からの苦情の処理等の業務に当たらせることとしているところであるが、医療関連業務の専門性等にかんがみると、医療資格者の派遣を行う派遣元事業主は、医療資格者である派遣労働者からの相談・苦情等に適切に対応し得る体制(専門的なスタッフの配置等)を有していることが望ましいものであること。
また、派遣先は、社会保険・労働保険への加入や適切な休暇の付与等の雇用管理が適正になされていることに加え、必要な教育訓練を適切に実施している等の適切な派遣元事業主を選定することが重要であること。

(2)業務内容の把握と派遣元事業主に対する適切な説明

派遣先は、労働者派遣契約を締結するに当たっては、派遣労働者が従事する業務を行うために求められる知識、技術又は経験等について、派遣元事業主に対して事前に十分説明し、派遣元事業主がそのニーズに応じた派遣労働者の選定ができるよう努めること。

(3)派遣就業前の事前研修の実施

コロナワクチン接種の適切な実施を確保するため、コロナワクチン接種の実施主体である市町村等において、派遣される看護職員に対し、ワクチンの接種方法等についての事前の研修(以下「事前研修」という。)を受けさせること。
現在、市町村等においては、以下のような事前研修が行われているので参考にすること。
・薬液の溶解・希釈方法や接種方法等について、コロナワクチン接種を行っている医師による事前研修を行う。
・接種会場において、薬液の溶解・希釈や、コロナワクチン接種の方法を撮影し、その映像を派遣される看護職員に事前に視聴させる。
・市区町村が作成した接種会場の運営マニュアルや、ファイザー社が作成・公開している薬液の溶解・希釈方法に関する動画、日本プライマリ・ケア連合学会予防医療・健康推進委員会ワクチンチームが作成・公開している筋肉注射の方法を解説した動画(「新型コロナワクチンより安全な新しい筋注の方法(2021 年3月版)」)等を一つのパッケージにし、派遣元事業主の協力の下、派遣される看護職員に事前研修を行う。
また、市町村が研修を実施する方法の他、都道府県の調整の下、一部の都道府県看護協会・ナースセンターにおいて、コロナワクチン接種の基礎知識、接種手技の習得等のための講習会が実施されている。これらの実施状況については、別途、情報提供する予定であること。

(4)派遣される看護職員へのコロナワクチン接種について

コロナワクチン接種に関し、医療従事者等は接種順位が上位に位置づけられているところ、派遣される看護職員も医療従事者等に含まれ得るものである。
なお、「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き」(「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引きについて」(令和2年12 月17 日付け健発1217 第4号厚生労働省健康局長通知別添))第2章2(2)表2にて示したとおり、市町村がコロナワクチン接種に係る特設会場を設ける場合についても、当該特設会場は医療機関であることから、コロナワクチン接種に従事する者であって、新型コロナウイルス感染症患者と頻繁に接すると当該特設会場を設ける自治体が判断した者を接種対象として差し支えないこと。ただし、この場合、直接会場で予診や接種等を行う者を対象とし、単に非接種者の送迎や会場設営等を行う者は含まないこと。
このため、派遣される看護職員に対しても、コロナワクチン接種について、接種会場で働く他の医療従事者等と同様の扱いとすること。

(5)その他派遣労働者受入後の対応

派遣先は、派遣労働者を受け入れた場合には、当該派遣労働者と当該派遣先において直接雇用している医師、看護師等の医療職やその他の職員との相互の意思疎通が十分になされるよう、必要な措置を講じるよう努めること。
また、派遣労働者からの苦情や相談に対応し得る体制を派遣先責任者の活用等により整え、当該苦情等の適切かつ迅速な処理を図らなければならないこと。

(6)円滑な業務引継のための対応

派遣先においては、派遣労働者の交代により業務の引継ぎの必要が生じた場合でも円滑に業務の引継ぎができるよう、業務に関する記録の作成や管理方法等の標準化に努めること。

(7)責任の所在の明確化

一般に、派遣労働者の業務遂行に伴い患者等の第三者に損害を与えた場合、派遣元事業主と派遣先との間においては、派遣労働者に対して指揮命令を行う派遣先が損害賠償責任を負うものと考えられることを前提に、派遣元事業主との間で労働者派遣契約を締結する際には、損害賠償を含む責任の所在について明確にするよう努めること。

(8)予防接種法に基づく健康被害救済

予防接種による健康被害について、予防接種と健康被害に因果関係があるものについては、接種に係る過失の有無にかかわらず、予防接種健康被害救済制度による救済の対象となること。制度の詳細については、「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き」第5章を参照すること。

5.都道府県等による患者等の苦情や相談への対応

都道府県等においては、医療に関する患者等の苦情や相談に対応し、医療安全対策を推進するため、医療法第6条の13 に基づき設置された医療安全支援センターに相談窓口が設けられているところであるが、苦情や相談の内容が、派遣労働の問題に関わるような場合にも、必要に応じ都道府県労働局等とも連携の上、適切な対応を行うこと。

6.派遣元事業主との連携について

派遣元事業者団体に対しては、本日付けで、別紙3のとおり通知している。派遣先は、接種会場への看護職員の労働者派遣を受け入れるに当たっては、別紙3の通知の内容も踏まえ、派遣元事業主と連携を図ること。