社会保険労務士川口正倫のブログ

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フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインが公表されました!!

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フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインが公表されました!!

フリーランスについては、成長戦略実行計画(令和2年7月17日閣議決定)において、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、事業者とフリーランスとの取引について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律下請代金支払遅延等防止法、労働関係法令の適用関係を明らかにするとともに、これらの法令に基づく問題行為を明確化するため、実効性があり、一覧性のあるガイドラインを策定することとされています。
これを踏まえ、、内閣官房公正取引委員会中小企業庁厚生労働省の連名で同ガイドラインが策定されました。

概要を抜粋しました。
詳細はリンクをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000759477.pdf

策定の目的

事業者とフリーランスとの取引について、独占禁止法下請代金支払遅延等防止法、労働関係法令の適用関係を明らかにするとともに、これらの法令に基づく問題行為を明確化するため、実効性があり、一覧性のあるガイドラインについて、内閣官房公正取引委員会中小企業庁厚生労働省連名で策定し、フリーランスとして安心して働ける環境を整備。

第1 フリーランスの定義

○本ガイドラインにおける「フリーランス」とは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者。

第2 独禁法、下請法、労働関係法令との適用関係

独占禁止法は、取引の発注者が事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることからら、事業者とフリーランス全般との取引に適用。
○下請法は、取引の発注者が資本金1000万円超の法人の事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、一定の事業者とフリーランス全般との取引に適用。
〇これらの法律の適用に加えて、フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けていると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用。

第3 フリーランスと取引を行う事業者が遵守すべき事項

1.フリーランスとの取引に係る優越的地位の濫用規制についての基本的な考え方

〇自己の取引上の地位がフリーランスに優越している発注事業者が、フリーランスに対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、優越的地位の濫用として、独占禁止法により規制される。

2.発注時の取引条件を明確にする書面の交付に係る基本的な考え方

〇優越的地位の濫用となる行為を誘発する原因とも考えられ、発注事業者が発注時の取引条件を明確にする書面をフリーランスに交付しない場合は、独占禁止法上不適切。
〇下請法の規制の対象となる場合で、発注事業者が書面をフリーランスに交付しない場合は、下請法第3条で定める書面の交付義務違反となる。

3.独占禁止法(優越的地位の濫用)・下請法上問題となる行為類型

〇優越的地位の濫用につながり得る行為について、行為類型ごとに下請法の規制の対象となり得るものも含め、その考え方を明確化。
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第4 仲介事業者が遵守すべき事項

1.仲介事業者とフリーランスとの取引について

○仲介事業者は、フリーランスが役務等を提供する機会を獲得・拡大することや、発注事業者や消費者が、フリーランスから良質廉価な役務等を受けることに貢献。
○一方で、今後フリーランスと仲介事業者との取引の増加により、仲介事業者が取引上優越した地位に立ち、フリーランスに対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合も考えられる。

2.規約の変更による取引条件の一方的な変更

〇規約の変更を一方的に行うことにより、自己の取引上の地位がフリーランスに優越している仲介事業者が、フリーランスに対して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなるときは、優越的地位の濫用として問題となる。

第5 現行法上「雇用」に該当する場合の判断基準

1.フリーランスに労働関係法令が適用される場合

フリーランスとして請負契約や準委任契約などの契約で仕事をする場合であっても、労働関係法令の適用に当たっては、契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて、「労働者」かどうか判断。
労基法上の「労働者」と認められる場合は、労働基準法の労働時間や賃金等に関するルールが適用される。
〇労組法上の「労働者」と認められる場合は、団体交渉を正当な理由なく拒んだりすること等が禁止される。

2・3 労働基準法における「労働者性」の判断基準とその具体的な考え方

(1)「使用従属性」に関する判断基準
① 「指揮監督下の労働」であること(労働が他人の指揮監督下において行われているか)
② 「報酬の労務対償性」があること(報酬が「指揮監督下における労働」の対価として支払われているか)

(2)「労働者性」の判断を補強する要素
① 事業者性の有無(仕事に必要な機械等を発注者等と受注者のどちらが負担しているか等)
② 専属性の程度(特定の発注者等への専属性が高いと認められるか。)

4・5労働組合法における「労働者性」の判断要素とその具体的な考え方

(1)基本的判断要素
①事業組織への組み入れ(業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか)
②契約内容の一方的・定型的決定(労働条件や労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか)
③報酬の労務対価性(労務供給者の報酬が労務供給に対する対価などとしての性格を有するか)
(2)補充的判断要素
④業務の依頼に応ずべき関係(相手方からの個々の業務の依頼に対し、基本的に応ずべき関係にあるか)
⑤広い意味での指揮監督下の労務提供(労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務の提供を行っている
と広い意味で解することができるか等)

(3)消極的判断要素(この要素が肯定される場合には、労働組合法上の労働者性が弱まる場合がある)
⑥顕著な事業者性(恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者か)

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