社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



令和4年10月より短時間労働者に対する社会保険適用の拡大

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令和4年10月より短時間労働者に対する社会保険適用の拡大

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html

1.現行の短時間労働者に対する社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用

(1)社会保険が適用となる労働者の原則

社会保険が適用とない被保険者となる労働者は、次のとおりです。

  • ① 通常の労働者(正社員)
  • ② 1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上の労働者

ただし、次のいずれかに該当する場合は、適用となります。

  • ①日々雇い入れられる人

※ただし、1カ月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。

  • ②2カ月以内の期間を定めて使用される人

※所定の期間を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。

  • ③所在地が一定しない事業所に使用される人
  • ④季節的業務(4カ月以内)に使用される人

継続して4カ月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。

  • ⑤臨時的事業の事業所(6カ月以内)に使用される人

(2)短時間労働者に対する社会保険の適用

原則は上記(1)のとおりですが、平成28年10月から、特定適用事業所(※1)で働くパート・アルバイト等の短時間労働者が、一定の要件(※2)を満たすことで、社会保険の被保険者となりました。
また、特定適用事業所でなくても労使合意を得ることで、任意特定適用事業所(※3)になるための申請ができます。

(※1)特定適用事業所とは
事業主が同一(※)である一または二以上の適用事業所で、被保険者(短時間労働者を除く(※))の総数が常時500人を超える事業所
(※)「事業主が同一」である適用事業所とは
・法人事業所(株式会社、社団・財団法人、独立行政法人等)で、法人番号が同一の適用事業所
・個人事業所(人格なき社団等を含む)で、現在の適用事業所
(※)「短時間労働者を除く」の意味
上記(1)の原則で社会保険が適用となる被保険者が常時500人を超えるという意味

(※2)短時間労働者が被保険者となる一定の要件とは
・週の所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が1年以上見込まれること
・賃金の月額が88.000円以上であること
・学生でないこと

(※3)任意特定適用事業所とは
国または地方公共団体に属する事業所および特定適用事業所以外の適用事業所で、労使合意に基づき、短時間労働者を健康保険・厚生年金保険の適用対象とする申出をした適用事業所


2.令和4年10月からの短時間労働者に対する社会保険の適用拡大

法律改正に伴い短時間労働者の社会保険の適用が更に拡大されます。
従前の制度との変更点は以下のとおりです。

基準となる被保険者の人数は、「短時間労働者を除く」となっていますので、上記1(1)の通常の被保険者だけをカウントすします。例えば、正社員90名・週20時間以上30時間未満の無期雇用パートタイマーが20名いても、被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超えるには該当しません。

令和4年10月からの改正

「特定適用事業所」の要件
(変更前)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所
(変更後)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所

「短時間労働者」の適用要件
(変更前)雇用期間が1年以上見込まれること
(変更後)雇用期間が2か月以上見込まれること(通常の被保険者と同じ)

※「短時間労働者」の適用要件が、雇用期間1年以上見込まれることから、同2か月以上見込まれることに変更されることから、被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人をすでに超えている事業所についても、適用の拡大が生じます。

被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人超過の事業所
f:id:sr-memorandum:20210222233226p:plain
※正社員の所定労働時間を週40時間としています。

被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人超過の事業所
f:id:sr-memorandum:20210222233754p:plain
※正社員の所定労働時間を週40時間としています。


令和6年10月からの改正

「特定適用事業所」の要件
(変更前)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時100人を超える事業所
(変更後)被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時50人を超える事業所

※短時間労働者の社会保険の適用要件についての変更はありません。

被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時50人超過の事業所
f:id:sr-memorandum:20210222234209p:plain
※正社員の所定労働時間を週40時間としています。


要件早見表
f:id:sr-memorandum:20210222221022p:plain:w800

3.必要な手続き

令和4年10月から新たに特定適用事業所となる事業所について、必要な準備は以下のとおりです。

(1)新たに被保険者となる短時間労働者の把握
短時間労働者で、被保険者となっていない従業員等の労働条件を確認する必要があります。

(2)従業員への説明(※)
これまで配偶者の扶養範囲内で労働条件を抑えて働いていた従業員等へ、令和4年10月以降は上記の労働条件によって社会保険の被保険者となることを説明いただく必要があります。

(3)令和4年10月以降の資格取得届の準備
(1)、(2)の確認の結果、新たに被保険者となる従業員に対する資格取得の届け出を令和4年10月から行っていただくことになりますので、可能な場合は、事前に作成等をお願いします。

(※)法律改正に伴う制度内容の変更点等も含め、社会保険加入のメリットやそれに伴う働き方の変化の必要性について、事業主が従業員に説明することは、とても大切です。社会保険加入のメリットについては、新規ウインドウで開きます。厚生労働省ホームページ(外部リンク)をご確認ください。
また、新たに被保険者となられる従業員の方に対し制度説明を行うに当たって、社会保険労務士等の専門家が説明会等のサポート手続きに関するアドバイス等を無償で行う制度を5月から実施(予定)することとしています。詳細については厚生労働省で調整中のため、決まり次第、改めてご案内いたします。

4.関係資料

ファイルダウンロード 新規ウィンドウで開きます。チラシ「パート・アルバイトのみなさまへ」(第1号被保険者用)
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/1goutirasi.pdf

ファイルダウンロード 新規ウィンドウで開きます。チラシ「配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさまへ」(第3号被保険者用)
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/3goutirasi.pdf

ファイルダウンロード 新規ウィンドウで開きます。チラシ「従業員数500人以下の事業主のみなさまへ」(事業主用)
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/jigyounusitirasi.pdf

ファイルダウンロード 新規ウィンドウで開きます。リーフレット「パート・アルバイトのみなさまへ 配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさまへ」(従業員用)
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/juugyouinnri-huretto.pdf

ファイルダウンロード 新規ウィンドウで開きます。リーフレット「従業員数500人以下の事業主のみなさまへ」(事業主用)
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.files/jigyounusiri-huretto.pdf