社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



3月31日~4月上旬退職者の社会保険料控除は要注意!!

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3月31日~4月上旬退職者の社会保険料控除は要注意!!


社会保険料が発生するのは、入社した日の属する月から退職日の翌日(資格喪失日)が属する月の前月までです。

例えば、3月14日に退職する場合は、退職日の翌日が3月15日、その日が属する月の前月が2月となり、2月分までの社会保険料が発生します。要件に当てはめてみればわかるように、退職日が2月28日(閏年なら2月29日)から3月30日の間であれば、すべて2月分までとなります。
一方、退職日が3月31日であれば、その翌日は4月1日なので、属する月の前月は3月となり、3月分までの社会保険料が発生します。3月31日から4月29日退職なら3月分までです。
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法定どおり、前月分を当月に控除していれば(厚生年金法84条1項・健康保険法167条1項)、2月28日(閏年なら2月29日)から3月30日の間に退職する従業員については、通常どおり3月分の給与から2月分を控除すれば問題ありません。15日締め25日支払いであれば、3月25日支給分からの控除が最後となり、4月25日にいくらか日割りで支給される給与があったとしても、社会保険料を控除する必要はないということになります。
一方、3月31日から4月上旬に退職する従業員からは3月分まで徴収する必要があります。15日締め25日支払いで、4月25日支給分から3月分を控除できれば問題ありませんが、住民税や社宅の精算等があり、4月25日支給の給料から控除できないことが見込まれる場合には、3月25日支給分から2月と3月の社会保険料を控除しなければなりません。最終の給与が日割りで少なくなることから、ありがちなため、会社によっては「月末退職の場合は2倍の社会保険料を控除する。」とマニュアル化されているところもあるかも知れません。

ところが、2月と3月の社会保険料の合計が、2月分の2倍になることはあまりありません。
なぜなら、例年3月には健康保険料率と介護保険料率の改定があるため、3月の社会保険料は2月と異なるからです。(たまたまその年の保険料率が改定されなければ同じになりますが、そのようなことは稀です)
従って、3月31日~4月上旬に従業員が退職し、3月支給の給与から2月と3月分を徴収する場合、3月分については改定後の社会保険料を控除しなければならないのです。ほとんどの給与計算システムは適切なシステムの更新等を行えば、社会保険料率の改定をそれほど意識する必要はありませんが、3月31日~4月上旬に退職する従業員に限っては注意してください。システムが対応していて、自動的に控除額に改定後の社会保険料が設定されるなら問題ありませんが、対応していなければ、協会けんぽのホームページ等で改定後の社会保険料を調べ、手入力で控除額を設定しなければなりません。単純に2倍にしてしまったら、過誤が発生してしまいます。

なお、令和3年3月以降の健康保険と介護保険の料率は以下のとおりです。
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介護保険料率:(令和2年度) 1.79%  ⇒ (令和3年度)1.80%