社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について(令3.2.9職発0209第3号)

バナー
Kindle版 職場の出産・育児関係手続ガイドブック~令和の常識~
定価:800円で好評発売中!!


にほんブログ村
続き

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について(令3.2.9職発0209第3号)

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000736911.pdf


雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号。以下「改正法」という。)の一部施行に伴い、12月28日に労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第210号。以下「改正省令」という。)については、令和2年12月28日に公布され、同日付け職発1228第3号「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の公布について」により、貴職宛通達したところである。
改正法による労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号。以下「法」という。)の改正及び改正省令による労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則(昭和41年労働省令第23号。以下「省令」という。)の内容については、資料(別添1,2)をとりまとめ、厚生労働省のホームページにおいて公表したところである(掲載先:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/tp120903-1_00001.html)。
改正のその趣旨を十分に理解の上、その円滑な施行に万全を期されたい。


第1 法改正の背景、経緯等

人生100年時代において職業生活の長期化が見込まれる中、労働者の主体的なキャリア形成による職業生活の更なる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備をさらに推進していくことが必要である。
成長戦略実行計画(令和元年6月21日閣議決定)においても、従業員規模が大きい企業ほど中途採用・経験者採用比率が低い状況にあるなど、中途採用・経験者採用を促進する観点から「個々の大企業に対し、中途採用・経験者採用比率の情報公開を求めるといった対応を図る」とされた。
こうした背景、経緯等を踏まえ、企業が長期的な安定雇用の機会を中途採用者にも提供している状況を「見える化」し、企業間比較を可能とすることで、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進していくため、統一的な指標により中途採用に関する情報の公表を求めること等を内容とした改正法が、第201回通常国会に提出され、同国会において成立したものである。

第2 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の一部改正(改正法第3条)

1.正規雇用労働者の中途採用比率の公表(法第27条の2)

(1)基本的考え方
常時雇用する労働者数が300人を超える事業主は、省令で定めるところにより、労働者の職業選択に資するよう、正規雇用労働者の中途採用比率を定期的に公表しなければならないものとされていること。
なお、常時雇用する労働者数が300人以下の事業主であっても、その後、常時雇用する労働者数が300人を超えた場合にあっては、その事業年度から、中途採用比率の公表の義務が課されるものであること。

(2)事業主による自主的な情報公表について
求職者等にとっては、就職を希望する企業において自身が働く姿をイメージできる情報が得られることも有用であり、次の点を踏まえつつ、事業主による自主的な情報公表に係る検討が進むよう適切に周知されたい。
①常時雇用する労働者数が300人を超える事業主については、自社のニーズに応じて、中高年齢者、就職氷河期世代、管理職・役員などに係る中途採用比率や中途採用者の定着率のほか、中途採用に関する事業主の考え方、中途採用後のキャリアパス・人材育成・処遇・女性の活躍状況等の情報に関する自主的な公表に係る検討が有用であること。
②常時雇用する労働者数が300人以下の事業主については、自社のニーズに応じて、正規雇用労働者の中途採用比率と併せて、上記の情報等に関する自主的な公表に係る検討が有用であること。
なお、事業主による自主的な情報公表に係る検討に資するよう、情報公表に積極的な企業の取組を収集した好事例集をとりまとめることとしている。また、令和3年度予算案においては、自主的な情報公表に取り組む事業主を支援するため、中途採用等支援助成金中途採用拡大コース)を拡充することとしている。これらの詳細については、各労働局に対して追って通知する予定であるが、こうした支援策についても、事業主に対して積極的に周知されたい。

(3)「事業主」とは、国及び地方公共団体以外の労働者を雇用して事業を行う全ての事業主を指し、個人事業主にあってはその事業主個人、会社その他の法人組織の場合はその法人そのものを指すものであること。したがって、独立行政法人国立大学法人大学共同利用機関法人及び地方独立行政法人は事業主に該当すること。

(4)「常時雇用する労働者」とは、雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指すものであり、次のような者は常時雇用する労働者となること。
ア 期間の定めなく雇用されている者
イ 一定の期間を定めて雇用されている者又は日々雇用される者であってその雇用期間が反復更新されて事実上アと同等と認められる者。すなわち、過去一年以上の期間について引き続き雇用されている者又は雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者

(5)「正規雇用労働者の中途採用比率」とは、各事業年度に雇い入れた正規雇用労働者数に占める中途採用された正規雇用労働者数の割合とすること。

(6)「正規雇用労働者」とは、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)第2条に規定する「通常の労働者」を指すものであること。

(7)中途採用の定義
中途採用」とは、新規学卒等採用者以外の雇入れを指すものであること。
ただし、次の点に留意すること。
派遣労働者については、派遣先の事業主における中途採用として取り扱わないこと。
・出向者については、出向先の事業主における中途採用として取り扱わないこと。
・雇用している非正規雇用労働者との労働契約の内容を変更し、当該労働者が正規雇用労働者となった場合は、変更した事業年度における中途採用として取り扱うこと。

(8)新規学卒者等採用者の定義(省令第9条の2第3項、第4項)
「新規学卒等採用者」とは、以下のいずれかに該当する者であることを条件とした求人により雇い入れられた者とすること。
ア学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(小学校(特別支援学校の小学部を含む。)及び幼稚園(特別支援学校の幼稚部を含む。)を除く。以下「学校」という。)の学生又は生徒であって卒業することが見込まれる者
イ学校教育法第124条に規定する専修学校(以下「専修学校」という。)の学生又は生徒であって卒業することが見込まれる者
職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第15条の7第1項各号に掲げる公共職業能力開発施設(第4号の職業能力開発促進センターを除く。以下「公共職業能力開発施設」という。)又は同法第27条第1項に規定する職業能力開発総合大学校(以下「職業能力開発大学校」という。)の行う職業訓練を受ける者であって修了することが見込まれるもの
エ次に掲げる者であって、学校若しくは専修学校の学生又は生徒であって卒業することが見込まれる者及び公共職業能力開発施設又は職業能力開発総合大学校の行う職業訓練を受ける者であって修了することが見込まれるものに準ずるもの
(ⅰ)学校又は専修学校を卒業した者
(ⅱ)公共職業能力開発施設又は職業能力開発総合大学校の行う職業訓練を修了した者
(ⅲ)学校教育法第134条第1項に規定する各種学校(以下「各種学校」という。)に在学する者であって卒業することが見込まれるもの又は各種学校を卒業した者
(ⅳ)学校若しくは専修学校に相当する外国の教育施設(以下「外国の教育施設」という。)に在学する者で卒業することが見込まれるもの又は外国の教育施設を卒業した者

(9)情報公表の頻度、方法等(省令第9条の2第1項)
正規雇用労働者の中途採用比率を公表するに当たっては、おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者等が容易に閲覧できるように行わなければならないこと。
「インターネットの利用」とは、原則として自社のホームページの利用等を指すものであること。また、厚生労働省がインターネット上に開設する「職場情報総合サイト「しょくばらぼ」」の利用も含まれるものであること。
「その他の方法」とは、「日刊紙への掲載」等、一般の者が正規雇用労働者の中途採用比率を知り得る状況にする方法が考えられるが、事務所の見やすい場所に備え付ける等の方法により、求めに応じて一般の者が知り得るようにする方法も差し支えないこと。
「容易に閲覧できるように」とは、一般の者から見て、どこに掲載されているか明確となっていることをいう。
公表する値は、原則として小数点以下第1位を四捨五入した整数値とする。ただし、小数点以下第2位以下の位を四捨五入した値を公表しても差し支えないものとすること。
なお、(2)に記載した事業主による自主的な情報公表に当たっては、求職者等にとって分かりやすく情報が発信されることが重要であり、上記のような情報公表の頻度、方法などが参考とされ、事業主の検討に資するよう適切に周知されたい。

2.施行期日について

改正法及び改正省令は令和3年4月1日から施行するものとしたこと。