社会保険労務士川口正倫のブログ

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【同一労働同一賃金】社会福祉法人青い鳥事件(横浜地判令2.2.13労判1222号38頁)

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同一労働同一賃金社会福祉法人青い鳥事件(横浜地判令2.2.13労判1222号38頁)

1.事件の概要

Y社は、第二種社会福祉事業として、障害福祉サービスの経営等を行うほか、公益事業として、障害児の診療相談、検診及び治療に関わる事業、Dを経営する事業等を行う社会福祉法人であり、就労支援・援助センターであるC就労支援センター(以下「本件支援センター」という。)を運営しており、Xは、社会福祉士の資格を有する女性であり、平成25年5月1日、Y社との間で、期間を平成26年3月31日までとする有期労働契約を締結した後、同契約を1年ごとに5回更新し、現在に至るまで本件支援センターにおいて相談員として勤務していた。
Xは、平成27年6月30日に第一子を、平成30年1月29日に第二子を出産ししたが、Xが、第一子出産時にY社との間で締結していた労働契約の内容は、以下のとおりである。

 (ア)就業場所 本件支援センター
 (イ)仕事の内容 就労支援業務
 (ウ)就業日 週4日(月、火、水、木)
 (エ)就業時間 午前8時45分から午後5時15分まで(休憩1日1時間)
 (オ)賃金 時給1360円
 (カ)賃金支払日 翌月25日

また、Xが、第二子出産時にY社との間で締結していた労働契約の内容は、時給が1540円であるほかは、第一子出産時と同様であった。

このようなXが、期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)をY社と締結している職員との間で、産前休暇の期間及び産前産後の休暇期間における給与の支給の有無に相違があることは、労働契約法20条に違反すると主張して、

①労働契約に基づき、産前休暇及び産前産後の休暇期間における給与の支給について、無期労働契約の職員と同様の就業規則の規定の適用を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
不法行為に基づく損害賠償として、第一子の出産の際に、無期労働契約の職員と同様の扱いを受けていれば産前8週間に支払われるべきであった給与と、Xが全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」という。)から出産手当金として支給された金員との差額に相当する14万1560円
③第二子の出産に関して、不法行為に基づく損害賠償として、産前8週間前から同6週間前までの期間にXが取得した年次有給休暇相当額である9万2400円及び主位的には労働契約に基づく賃金請求として、予備的に不法行為に基づく損害賠償として、無期労働契約の社員と同様の扱いを受けていれば産前6週間及び産後8週間の期間に支払われるべきであった給与と、Xが協会けんぽから出産手当金として支給された金員との差額に相当する19万1520円
不法行為に基づく損害賠償として、Xが無期雇用契約社員と有期雇用契約社員を区別する違法な取扱いによって被った精神的苦痛に対する慰謝料

等を求めて、Y社を提訴したのが本件である。

なお、Y社の就業規則等は次のとおりであった。

(Y社の就業規則の規定 )
Y社には、通常の就業規則(以下、無期就業規則)のほかに、主として有期労働契約の職員を対象とした「有期雇用契約職員就業規則」(以下「有期就業規則」という。)が定められている(以下、Y社との間で無期労働契約を締結し、無期就業規則の適用を受ける職員を「無期契約職員」と、有期労働契約を締結し、有期就業規則の適用を受ける職員を「有期契約職員」という。)。
就業規則における出産休暇に係る規定では、無期契約職員について、産前8週間、産後8週間の出産休暇が付与され、これらの休暇期間中通常の給与が支給されることとなっている一方で、有期契約職員については、出産休暇期間が産前6週間、産後8週間とされ、これらの休暇期間中は無給であるとの相違があった(以下、無期契約職員に付与される産前休暇を「本件出産休暇」、出産休暇期間中に支給される給与を「本件出産手当金」という。)。

※要約すると、次のような差異があったということです。
Xは、社会保険に加入しているので、無給であっても協会けんぽから出産手当金(標準報酬月額の約2/3)の支給を受けることはできました。

産前休業期間
 無期契約職員:8週間(有給)
 有期契約職員:6週間(無給)

産後休業期間
 無期契約職員:8週間(有給)
 有期契約職員:8週間(無給)

また、X産前産後休暇の取得等の状況は次のとおりであった。

(Xの産前産後休暇の取得状況等 )
ア  Xは、第一子の出産時(出産予定日は平成27年7月8日)に、産前産後休暇として出産予定日の8週間前である同年5月14日から、出産日の8週間後である同年8月25日まで就労せず、同期間は無給とされた。
なお、Xは、同年9月7日、協会けんぽから、出産手当金として43万9830円を受給した。
イ  Xは、第二子の出産時(出産予定日は平成30年1月31日)に、出産予定日の8週前である平成29年12月7日から出産予定日の6週間前である同月20日までの2週間、年次有給休暇を取得し、その後、産前産後休暇として、同月21日から出産日の8週間後である平成30年3月26日まで就労せず、同期間は無給とされた。
なお、Xは、同年4月17日、協会けんぽから、出産手当金として36万2880円を受給した。

※産前休暇について、出産手当金は出産予定日より6週間前からしか支給されないため、8週間前から産前休暇に入ったXは、最初の2週間は何の支給もない状態となります。本来であれば、無期契約職員は、法定どおり、出産予定日の6週間前からしか産前休暇は認められないので、最初2週間は会社の承諾のある欠勤であるとも考えられます。なお、有給となっている日に対して、出産手当金が支給されませんので、無期契約職員には出産手当金は支給されません。

また、Y社の職員の状況は次のとおりであった。

(Y社の職員について)
Y社に勤務する無期労働契約の職員は、専門職である精神保健福祉士社会福祉士等として、障害児の療育相談、障害者の地域生活・就労支援等の相談及び支援等を内容とするソーシャルワーカー業務に従事する者(以下「ソーシャルワーカー正社員」という。)と、これらのソーシャルワーカー業務に従事しない者(以下「非ソーシャルワーカー正社員」という。)に分けられる。
他方で、Xのように、有期労働契約の職員の中にも、ソーシャルワーカー業務に従事する者(以下「ソーシャルワーカー非正規社員」という。)が存在する。

2.双方の主張

争点 本件出産休暇及び本件出産手当金に係る労働条件の相違が労働契約法20条に違反するか否かに関する主張

※他にも争点がありましたが、判決では本争点の結論から判断をしていませんので、省略します。

(Xの主張)
ア 本件出産休暇及び本件出産手当金は、出産以外を契機として与えられることはなく、その目的は、労働基準法所定の出産休暇や一般的な産休手当と同様、母体の保護及び産休中の経済的安定を図ることによる実質的男女平等の確保にある。そのため、業務内容、責任の範囲、業務範囲等や配置の変更の範囲は関係なく、等しく女性であれば与えられるべきであり、Xと無期契約職員との間に労働条件の相違を設ける本件区別は不合理ある。
イ Y社は、本件出産休暇及び本件出産手当金の趣旨は中核的人材の確保にあるところ、中核的人材として確保しなければならない人材は、育成に時間と費用がかかる専門職従事者であるとしており、そうであれば、専門職であるソーシャルワーカー以外に本件出産休暇及び本件出産手当を付与する理由はないし、また、中核的人材は必ずしもY社内で育成する必要はないから、本件出産休暇及び本件出産手当について、有期契約職員のみを除外する理由はない。
また、Y社は、法定の給付部分とそうでない部分を分け、後者についての使用者の裁量権を強調するが、就業規則上も、運用上も、法定の給付部分とそうでない部分を分ける根拠や分離して運用している実態は存在しないから、手当は一体として考慮されるべきである。Y社の主張は、法定の最低限を充足していれば、最低限とそれ以上を分けて、それ以上の部分について労働契約法20条等の均等均衡原則が及ばないとするに等しく、失当である。
Xと比較対象とされるべき無期契約職員である支援員Aの地位にある者では、①中核的業務は相談業務と共通しており、②その責任の範囲も基本的には同一で、③業務等及び変更の範囲については、Xも無期雇用労働者も業種の変更ができない。また、無期契約職員には転勤があるものの、転勤の回数が少ない者や、これを経ずに管理職になった者もいる以上、重要な違いには当たらない。このように、業務等が同一である中で、Y社は本件出産休暇及び本件出産手当金による労働条件の相違の内容を合理的に説明しておらず、本件出産休暇及び本件出産手当金が不合理であることは明らかである。


(Y社の主張)
ア 無期就業規則28条4項に基づく本件出産手当金が定められた昭和59年当時、女性労働者の割合が少なく、出産を機に退職する女性労働者が多かったため、女性労働者の割合が多いY社にとって、将来の法人経営における中核的人材及びその候補者となる女性労働者の確保は、重要な経営課題であり、また、女性労働者の中には、専門職に従事する者が多数含まれ、専門職従事者の育成には時間と費用がかかるため、出産による女性労働者の退職は他の法人よりも深刻な問題であった。そこで、本件出産手当金は、出産による女性労働者の流出を防ぎ、将来の法人経営における中核的人材を確保するために導入されたものである。
ここでいう中核的人材とは、Y社の経営の中枢として、各施設、事業の管理・運営の責任者となっている者で、勤務成績に応じて変動する全8段階からなるグレード制職位のうち、グレード6及び7に位置する人材をいい、本件に関していえば、ソーシャルワーカー正社員で、事業所の施設長等の立場でY社の経営に参画する者をいう。実際、Y社においては、11か所の事業所のうち、少なくとも4か所の事業所の施設長をソーシャルワーカー正社員が務め、中核的人材としての役割を果たしているが、その理由は、専門職たるソーシャルワーカーとしての実務経験を積むことで、実務経験のないソーシャルワーカーの新人従業員を適切に指導育成することができるからである。
このような経緯に鑑みれば、本件出産手当金は、主に出産に伴って将来の法人経営における中核的人材が退職することを防ぐという人的資源の確保を目指したものであり、経営上の裁量に委ねられるべき要素の強いものである。そして、これは、本件出産休暇についても同様である。
イ 将来、中核的人材に登用される可能性があるのは、グレード1ないし5に属する無期契約職員であり、Y社においては、中核的人材による部下に対する影響力の強さや、職員のモチベーションへの影響を考慮して、無期契約職員に対して組織をマネジメントできる能力を身に付けられるよう時間をかけて段階的に育成するとともに、施設の事業契約を踏まえた個人の目標を設定させ、その達成度とリンクさせる等した人事考課制度を適用している。また、無期契約職員は、転勤が予定されているが、この配置転換を通じて様々な事業所を経験し、事業所の施設長の補佐業務を担当することで、事業所運営を学び、組織マネジメント能力を身に付けることができている。
他方で、有期契約職員は、雇用契約上、業務の内容、就業時間、場所について制限があることから、無期契約職員のように複数の事業所を経験したり、事業所運営に携わったりすることができず、組織をマネジメントするための能力を身に付けることができない。そのため、無期契約職員に設けられているような人材育成を目的とした人事考課制度やグレート制職位は適用されず、中核的人材に登用される可能性もない。
ウ 上記に述べた本件出産手当金の趣旨との関係からすれば、本件区別には合理性が認められる。すなわち、Y社における無期契約職員の女性労働者は、事務職で41.7パーセント、専門職で80.7パーセントと非常に高い割合を占めていることから、現在においても出産に伴う女性労働者の退職の防止による将来の法人経営における中核的人材の確保という課題は、Y社にとって非常に重要な課題となっているところ、本件出産手当金の支給は、出産に伴う女性労働者の退職防止という目的との関係で非常に効果が高い。
他方で、有期契約職員は、事業所ごとに採用されており、局所的業務を担当することしか想定されていないことから、これらの労働者の退職を防いだとしても必ずしも将来の法人経営における中核的人材の確保につながるわけではない。したがって、本件区別には合理性が認められる。
エ また、Xは、健康保険法に基づく出産手当金を受けているから、本件区別は、産前2週の給与相当額及び法定出産期間中の標準報酬月額の3分の1に相当する金額の賃金が受給できるか否かに留まるが、他方、Y社にとっては、本件出産手当金が有期契約職員にも適用されるとした場合、健康保険法108条2項により、法定出産手当金を含む産前8週産後8週の給与全てを自己資金で賄わなければならなくなるという重大な影響を受け、非常に負担が大きくなる。これを考慮すると、本件区別によりXの受ける影響は相対的に小さいものである。加えて、仮に有期契約職員に本件出産手当金制度が適用されるとすると、通常であれば協会けんぽから法定出産手当金額の出産手当金すら支給されない有期契約のパートタイム労働者にも、Y社が全額自己負担で産前8週産後8週の給与全額を支給しなければならないことになり、不合理である。
※「通常であれば協会けんぽから法定出産手当金額の出産手当金すら支給されない有期契約のパートタイム労働者」とは、社会保険に加入していない有期契約職員をさしています。


3.判決の要旨

① 本件出産休暇及び本件出産手当金に係る労働条件の相違が労働契約法20条に違反するか否かに関する主張
(1)本件出産休暇及び本件出産手当金に係る労働条件の相違は、有期契約職員の出産休暇に関する労働条件について、有期就業規則の規定が適用されることにより生じているものであり、これは、労働契約に係る期間の定めの有無に関連して生じたものといえるから、労働契約法20条にいう期間の定めがあることによる労働条件の相違に当たる。
そこで、上記相違が、同条にいう不合理と認められるものに当たるか否か、すなわち、不合理であると評価することができるものであるかについて以下検討する。

ア 本件支援センターにおいて、有期契約職員のうち、Xを含むソーシャルワーカー非正規職員は、専門職員である支援員Bの立場として勤務し、支援員Aの立場にあるソーシャルワーカー正社員と同様、相談業務や就労支援業務に従事しており、その担当業務の内容及び業務に伴う責任の程度において、重なる部分が認められる。
しかし、ソーシャルワーカー正社員が従事するセンター長又は支援員Aは、センター長において支援センターの総括・管理業務を、支援員Aにおいてセンター長の補佐をそれぞれ担当するとされており、相談業務等のソーシャルワーカー業務に加え、施設全体の総括・管理に関する業務を行う立場にある。Y社においては、無期契約職員についてのみ、全8段階によるグレード制職位が設けられ、グレード6以上の者が管理職として各課長職や就労支援センターの所長等の役職に就くこととされているほか、就業場所や業務変更などの配置転換が予定され、特に専門職としてソーシャルワーカー業務に従事するソーシャルワーカー正社員は、Y社が運営する11か所の事業所等のうち少なくとも4か所で施設長を務めるなど、人事制度上、Y社の組織運営面に関わる役割を担うことが予定されているものと認められる。
他方で、専門職たるソーシャルワーカーとして勤務する者であっても、有期契約職員は、労働契約上、業務の内容、就業時間及び場所等について制限があり、基本的には配置転換が予定されていないほか、グレード制職位の適用がないなど、人事制度上の取扱いが無期契約職員と異なっている。
以上によれば、有期契約職員は、管理職への登用や組織運営面への関与が予定されておらず、業務内容及びその変更の範囲について、無期契約職員とは職務上の違いがあるということができる。

イ Y社のソーシャルワーカー正社員については、平成30年4月時点において約8割を女性が占めるなど、女性比率の高い点が特徴であるところ、本件出産手当金がY社の就業規則に定められた昭和59年当時において、一般的な統計上、出産から子育てを担う25~29歳及び30~34歳の各年齢階級における女性の労働力人口比率が約50パーセント余りと低かったという状況を併せ考慮すると、Y社において、将来グレード6以上の職位に就き、運営面において中核になる可能性のある女性のソーシャルワーカー正社員が、出産を機に仕事を辞めることを防止し、その人材を確保することは、組織運営上の課題であったと認められる。
そして、本件出産休暇は、無期契約職員に対し、労働基準法65条1項及び同2項が定める産前6週、産後8週の出産休暇に加え、さらに産前2週の出産休暇を付与するものであり、本件出産手当金は、通常の給与を全額支給するものである。この場合、健康保険法108条2項により、本件出産手当金の支給を受ける職員には、健康保険法102条1項、同2項、同法99条2項及び同3項に基づいて支給される標準報酬月額の3分の2に相当する金額の出産手当金は支給されないこととなるから、結局、上記制度は、使用者であるY社の出捐により、無期契約職員の範囲において、出産時の経済的支援等を一部(標準報酬月額の3分の1に相当する金額分)手厚くする内容となっている。

ウ 以上のとおり、無期契約職員の職務内容に加え、Y社における女性職員の比率の多さや、本件出産休暇及び本件出産手当金の内容に照らすと、これらの制度が設けられた目的には、Y社の組織運営の担い手となる職員の離職を防止し、人材を確保するとの趣旨が含まれるものと認められる。
そうすると、本件出産休暇及び本件出産手当金の制度は、有期契約職員を、無期契約職員に比して不利益に取り扱うことを意図するものということはできず、その趣旨が合理性を欠くとは認められない。これに加え、無期契約職員と有期契約職員との実質的な相違が、基本的には、2週間の産前休暇期間及び通常の給与額と健康保険法に基づく出産手当金との差額部分に留まることを併せ考えると、本件出産休暇及び本件出産手当金に係る労働条件の相違は、無期契約職員及び有期契約職員の処遇として均衡を欠くとまではいえない。
なお、ソーシャルワーカー正社員を含む無期契約職員の離職防止を図りつつ、有期契約職員との労働条件の相違を生じさせないために、有期契約職員を含めた全職員に対し、本件出産休暇及び本件出産手当金の付与を行うことも合理的な一方策であるということはできるが、上記のとおり、本件出産休暇及び本件出産手当金の支給は、Y社の相応の経済的負担を伴うものであって、本件出産休暇及び本件出産手当金の目的に照らし、これをいかなる範囲において行うかはY社の経営判断にも関わる事項である。本件出産休暇及び本件出産手当金の制度を、有期契約職員を含む全職員に対し適用しない限り違法であるとすることは、Y社に対し、無期契約職員を含め全職員に対しこれらの制度を提供しないとの選択を強いることにもなりかねず、かえって、女性の社会参画や男性との間での格差の是正のための施策を後退させる不合理な事態を生じさせるというべきである。

(2)以上の検討によれば、本件出産休暇及び本件出産手当金に係る労働条件の相違は、これが不合理であると評価することができるものということはできず、労働契約法20条に違反するものではない。


以上によれば、その余の点を判断するまでもなく、Xの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

※無期契約職員の職務内容に、Y社における女性職員の比率の多さや、本件出産休暇及び本件出産手当金の内容に照らすと、これらの制度が設けられた目的には、Y社の組織運営の担い手となる職員の離職を防止し、人材を確保するとの趣旨が、本当に含まれているものと認められたことが、実質的な差異である「産前休暇2週間の分の賃金と産前産後期間中の賃金の約3分の1」が均衡を欠くまでとはいえないと判断される前提です。職務内容や女性職員の比率などを考慮せずに、このような制度を設けた場合は、差異が不合理であると判断される可能性がありますのでご注意ください。