社会保険労務士川口正倫のブログ

横浜市の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ

【偽装請負・正社員転換】AQソリューションズ事件(東京地判R2.6.11労経速2431号18頁)

AQソリューションズ事件(東京地判R2.6.11労経速2431号18頁)

※争点を主要なものに絞って記載しています。

1.事件の概要

コンピューターのソフトウェアの開発、労働者派遣等を営んでいる被告CTは、コンピューターのソフトウェアの開発、労働者派遣及び有料職業紹介等を業とする被告AQとの間で、被告CTを委託者・被告AQを受託者として、被告CTが開発するソフトウェアの開発業務を個別契約により委託すること等を定めた業務委託基本契約書を平成29年7月7日付けで作成した。
被告AQは、システムエンジニアであるXとの間で、平成29年9月21日、両者のソフトウェアに関する業務に関する請負、業務委託等の取引に関して基本事項を定めること、同取引において、対象業務の内容、納期、数量及び単価等は個別契約の都度、被告AQが指定する様式により別途決定すること等を定めたソフトウェア基本契約書(以下、「本件基本契約」という。)を作成し、以降、Xは、被告CTの事業所でソフトウェアの開発業務に従事した。
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被告AQは、平成29年12月8日、Xに対し、同日をもって被告AQ・X間の本件基本契約に係る契約及び同契約に基づいて締結した個別契約を解除する旨の意思表示をした(以下「本件解除」という。)。
これに対して、Xが、被告AQとXの契約の実態は、被告AQがXを雇用し、その雇用関係の下に、被告CTの指揮命令を受けて、被告CTのために労働に従事させる労働者派遣契約であり、被告らによる契約期間の中途解消は無効であると主張し、①被告AQに対しては平成29年12月以降の賃金の支払、②被告CTに対しては、被告CTは労働契約法40条の6第1項5号(偽装請負に係る派遣先による労働契約申込みのみなし)に該当する行為をした派遣労働者の役務の提供を受ける者であるから、Xの承諾により、両者の間で労働契約が成立したと主張して、①と同額の賃金等の支払、③被告らに対し、連帯して、違法な解雇による不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料の支払を求めて提訴したのが本件である。
なお、Xの代理人弁護士は、被告CTの代理人弁護士らに対し、平成30年9月11日、「被告CTは、平成29年9月26日以降、労働者派遣法等の法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、労働者派遣法26条1項各号に掲げる事項を定めずにXの派遣を受けてその役務の提供を受けているため、同法40条の6第1項5号により、Xに対して労働契約の申込みをしたものとみなされる。また、同年11月1日及び同月7日に、被告AQとXとの間で労働契約の期間が延長された際にも、Xに対し延長後の労働契約の申込みをしたものとみなされる。Xはこれらの申込みを承諾する。」旨の意思表示をした。

労働者派遣法第40条の6
労働者派遣の役務の提供を受ける者・・・(中略)・・・が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、その行つた行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ、知らなかつたことにつき過失がなかつたときは、この限りでない。

五 この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第26条第1項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。

2.双方の主張

①被告AQとXとの契約は、労働者派遣契約であったか?

(Xの主張)
被告AQとXの契約は、AQ・X間の本件基本契約により、形式上は業務委託ないし請負の体裁をとっているが、その実質は、被告AQがXを月額60万円(月末締め翌月末日払)で雇用し、その雇用関係の下、Xが被告CTの指揮命令を受けて被告CTのために労働力を提供するという労働者派遣を内容とする労働契約であった。
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根拠
・Xが行うべき業務が特定されたことはなく、Xは、被告CTの事業所において、被告CTの社員に指示された業務を行っており、Xが担当した業務は被告CTが被告AQに発注したソフトウェア(以下、「本件管理ソフト」という。)のバッチプログラムの詳細設計、開発(実装)及び単体テストに限られなかった。
・被告AQは、被告CTから受託ないし請け負った業務を自己の業務として被告CTから独立して処理することはなく、Xが被告CTの事業所で行う業務に関し、被告AQから指示や管理はされていなかった。
・被告AQとXの契約前の面接は、被告CTの事業所で実施され、業務内容の説明やXのスキルチェックなどの質問はすべて被告CTの社員が行っており、同席した被告AQ代表者は質問することはなかった。
・Xの作業場所は被告CTの事業所内と指定され、被告CTは、Xに対して、作業の際に使用するサーバーの作業フォルダの位置を指定したり、課題管理一覧表の作成を指示して確認したり、Xの成果物をチェックしたり、内部打ち合わせの時間を指定して進捗状況の報告を求めたりするなど、業務の遂行方法に関する指示をしていた。
・被告CTは、Xの労働時間数を指定し、Xから退社時刻の報告を受けて了承し、休日出勤を仕向けるなど、労働時間に関する指示もしていた。

(被告AQの主張)
被告AQとXの契約が労働者派遣の契約に当たることは否認する。
被告AQは、被告CTから、本件管理ソフトのTCC向けのカスタマイズ業務の一部であるバッチプログラムの基本設計、詳細設計、開発(実装)及び単体テストの業務を受注した。被告AQは、前記受注した業務を個人事業主であるX及びZ1に発注したものであり、被告AQとXとの契約は、前記業務を仕事内容として報酬月額60万円(月末締め翌月末日払)でXに発注した請負ないしは業務委託契約である。
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根拠
・バッチプログラムの基本設計及び詳細設計はXが担当し、開発及び単体テストはX及びZ1が担当した。
・具体的な作業内容や作業時間はXに任されており、Xが被告CTや被告AQの指揮命令を受けていた事実はない。
・被告AQは、受託者として、ウイチャットや月1回の訪問等により、作業者であるXに進捗状況を確認して適切に業務を管理していたから、単にXの労働力を被告CTに提供していたわけではない。

※Xは、本件基本契約を締結していることから、XとAQとの契約は請負(少なくとも偽装請負)であることは認識しており、労働契約であるとの認識はなかったと思われます。Xの認識が請負であろうと偽装請負であろうと、客観的にみて労働契約であると考えられる場合は、労働基準法や労働契約法の強行法規が両者に適用され、極端な話、半ば共犯的に偽装請負の契約形態に入っ労働者も保護されることになります。そういう事情があるため、請負という形態を取るのであれば、もう少し誤解を受けないような図式を取れないものかと試み程度に作成したのが次の図です。
ポイントは、(1)CT事業所を作業場所としない(図では、AQの事業所としていますが、Xの自宅であるほうがさらに良いです。)、(2)CTの従業員はXを監督はしても指揮命令はしない(本件では、CTがシステム要件の確認や進捗状況を管理する必要性が高かったうえ、CTが派遣業を営んでいることもあり、図では、CTの従業員をAQに派遣し、CTの従業員がAQからの指揮命令を受けつつXを監督するとしています。当然、AQの従業員が監督するほうが良いです。)というところです。なお、これが必ずしも請負として有効であることを保障するものではありませんのでご注意ください。(単に、本件より有効と認められる可能性が高いのでは、と私が考える図式です。)
なお、この図式でも、CTの従業員が監督の範囲を超えて、Xに指揮命令していれば、AQとXの関係は雇用契約となり得ます。本判決でも、CTからXへの指揮命令の有無が大きな争点になっており、詳細は判決の要旨をご確認ください。
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②本件解除の有効性

(被告AQの主張)
Xのスキル不足により、コーディングが不完全で、単体テストの開始までに終了すべきコンパイルの作業や動作確認が行われていなかった。また、平成29年12月初旬、Xが外出・退出を繰り返したことで、単体テストのスケジュールが大幅に遅延した。このようにXに起因して作業が遅延したことは、被告AQとXとの個別契約12項に定める解除事由「実スキル等により作業遂行が困難と判断した場合」に該当する。
また、Xは、被告AQの了解を得ることなく被告CTに対し、Xと関係のあるZ1の社員を作業要員として提案し、個別条項11項及びAQ・X間の本件基本契約の40条1項の背信行為を行なった。
これらの事由があるため本件解除は有効である。

(Xの主張)
単体テストのスケジュール遅延の原因は、Xのスキル不足ではなく、Xが業務に加わった平成29年9月26日時点で本来終了しているはずの要件定義や基本設計等が完成しておらず、Xが無理な作業を強いられたことにある。
また、作業に従事する人材が不足しており、Xは、被告CTから人材を紹介するよう申し入れられ、Z1の人材を紹介したことはあったが、被告AQ代表者に無断で行ったものではない。
したがって、本件解除は理由が無効である。

③本件解除は、違法な解雇に当たり、不法行為が成立するか?

(Xの主張)
被告AQは、理由がないにもかかわらず本件解除を行ったもので、違法な解雇であり、不法行為が成立する。従業員たる地位を争われ、賃金を失い、能力不足といわれ社会的名誉を失ったXの精神的苦痛は著しく、慰謝料は200万円が相当である。

※争点①により、一度労働契約と認められることになれば、AQがした業務委託契約の解除は、労働契約の解雇にすり替わります。すると、XとAQ間の契約は期限付きの労働契約となり、労働契約法17条1項により「やむを得ない事由」がある場合でなければ、契約期間が満了するまでは解雇できないことになります。業務委託契約の解除であれば、契約条項に従って粛々と進められますが、労働者を保護する労働法規が適用される解雇となると、認められるハードルが別次元に高くなります。当事者全員が想定したとおりに業務が進めば、請負契約であろうと労働契約であろうと大きな違いは無いように思うでしょうが、想定外の事態(AQの視点ではXのスキル不足、Xの視点では契約の中途解約)が生じれば法的紛争になることもあり、そうなったときのことを仮想して、請負契約を否定されない形態を構築して業務を行うべきなのです。

(被告AQの主張)
②(被告AQの主張)のとおり、本件解除は、請負、業務委託契約債務不履行又は約定により解除したのであり、有効であるし、解雇ではない。したがって、不法行為は成立しない。損害額は争う。

※単に解雇ではないと主張するだけで、「仮に解雇であったとしても、これこれこういう理由で、やむえない事由によるものであった」と主張していません。もし、AQに偽装請負という認識があったのなら、解雇であっても有効となり得る程度の既成事実に基づいて解除したでしょうから、もしかしたら偽装請負という認識が無かったのかも知れません。あるいは、偽装請負なのだから、あくまでも請負であることに徹して解除したのか?。どちらもなく、全くそういう周到さが無かったのか。淡白な主張ですが、考える(妄想?)と興味深いところです。

④被告CTは、Xを、被告AQとの雇用関係の下に、被告CTの指揮命令を受けて、被告CTのために労働に従事させ、労働者派遣の役務提供を受けたか?

(Xの主張)
被告AQとXの間では、形式上、被告CTから被告AQが受託ないし請け負った業務を、Xが下請負する体裁の契約書が作成されたが、実質は、被告CTは、Xを、被告AQとの雇用関係の下に、被告CTの指揮命令を受けて被告CTのために労働に従事させ、労働者派遣の役務提供を受けていた。
したがって、被告CTは、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、労働者派遣法26条1項各号に掲げる事項を定めず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(同条40条の6第1項本文、5号)に当たる。

(被告CTの主張)
(ア) 被告CTが、Xを、被告CTの指揮命令を受けて、被告CTのために労働に従事させ、労働者派遣の役務提供を受けていた事実は否認する。
(イ) 被告CTは、平成29年7月、被告AQとの間で、CT・AQ間の本件基本契約書に係る契約を締結し、同年9月、被告AQに対して、本件管理ソフトをTCC向けにカスタマイズする業務のうちバッチプログラムに関する基本設計、詳細設計、開発(実装)及び単体テストの業務を発注した。そして、被告AQの担当者であったXが、同年9月26日からこれらを担当することになった。
(ウ) 被告CTから、Xに対して直接の指揮命令を行ったことはない。被告CTはXの勤務時間の管理はしていない。前記請負の業務はTCCの機密情報を扱うものであるため、被告CTは、情報セキュリティの観点から、Xの勤務場所を被告CTの事業所内と指定したが、Xは被告AQの区画で勤務し、被告CTから独立して作業していた。
また、システム開発は、専門的な知見と技能を必要とする業務であり、分業によることが可能で、作業の進め方自体は各人の裁量に委ねられることが多い一方で、単体としての稼動に問題がなかったとしても、システム全体に組み入れた際には正常に作動しないといった事態もあり得るから、全体的な進捗状況を調整、確認する必要がある。被告CTは、委託者として、TCCとの間で調整したシステム要件の確認と作業全体の進捗状況を確認するため、Xとの間で打ち合わせ等を行っていたものであり、これは被告CTからXに対する業務上の指揮命令には当たらない。
なお、Xは、被告AQとの間で秘密情報の安全管理に関する覚書、被告CTとの間で機密保持に関する確認書(以下「本件確認書」という。)をそれぞれ締結し、被告AQは、被告CTとの間で機密保持契約書を交わしている。Xが本件訴訟で証拠提出している被告CT関係者とXとのメール、被告CT内での打ち合わせ議事録及び被告CT関係者とXとのメールはいずれも機密情報に該当しており、Xが、これらを被告CTに無断で複製し、持ち出して証拠提出したことは、本件確認書の2条、4条で禁止された行為に当たり、これらは違法収集証拠であるから証拠能力を否定すべきである。

⑤被告CTがXにより労働者派遣の役務提供を受けた行為が、労働者派遣法又は同法44条ないし47条の3の規定により適用される法律の適用を免れる目的でされたか?

(Xの主張)
(ア) 被告CTには、労働者派遣法40条の6第1項5号にいう労働者派遣法又は同条44条ないし47条の3の規定により適用される法律の適用を免れる目的があった。
(イ) CT・AQ間の本件基本契約書には、一切の指揮命令は被告AQが行うこと、被告らの間には労働者派遣関係がないことが記載されており、被告CTは、作業者に自らが指揮命令を行えば、労働者派遣関係に立つことを認識していたといえる。また、被告CTが、労働者派遣法26条6項で禁じられている事前面接をXや他の作業者に対して行っていること、作業実績報告書によりXや他の作業者の作業時間を監視・記録していたこと、作業者に対し本件確認書の作成及び提出を指示していたこと、これらが全て常態化していたことから、労働者派遣法等の規制を免れる目的があったといえる。

(被告CTの主張)
被告CTは、労働局から偽装請負に関して調査や指導を受けたことはなく、被告CTの担当であったZ2は、Xが被告AQに委託した業務の代表者であると認識していたのであり、労働者派遣法等の規制を免れる目的は存在しない。
※「Xが被告AQに委託した業務の代表者であると認識していた」とは、Xは被告AQの従業員であり、Z1などの他の下請けを監督する地位であると認識していたことを意味する。

⑥被告CT代表者が、被告CTがXにより労働者派遣の役務提供を受けた際、労働者派遣法等の規制を免れる目的で労働者派遣以外の名目で契約を締結して労働者派遣の役務の提供を受ける行為に該当することを知らず、かつ、知らなかったことについて過失がないといえるか?

(被告CTの主張)
被告CTは、労働局から偽装請負に関して調査や指導を受けたことはなく、被告CTの担当者であったZ2は、Xについて、被告AQに委託した業務の代表者であると認識していたのであり、労働者派遣法40条の6第1項ただし書の善意無過失であったといえる。

(Xの主張)
被告CTにおいて労働者派遣法等の規制を免れる目的があったことは、⑤(イ)のとおりであり、被告CTが善意無過失であったことは否認する。

⑦Xが、平成29年9月26日に被告CTの指示に従い就労を開始したこと、又は、平成30年9月11日に被告CTに意思表示したことにより、労働契約の承諾がされ、労働契約が成立したと認められるか?

(Xの主張)
被告CTは、Xの労働者派遣の役務の提供を受けたことにより、労働者派遣法40条の6第1項本文に基づき、Xに対して労働契約の申込みをしたものとみなされる。Xが、平成29年9月26日に被告CTの指揮命令下で就労を開始したことにより、Xの黙示の承諾の意思表示がされたといえるから、同日、被告CTとの間で労働契約が成立した。そうでなくても、被告CTが申込みをしたとみなされる同日から1年以内の日である平成30年9月11日には、Xは、被告CTに対し、承諾の意思表示を行い、同日、被告CTとの間で労働契約が成立した。

(被告CTの主張)
被告CTからXに対する労働契約の申込みが擬制されるとしても、Xの就労開始時にXによる黙示の承諾の意思表示がなされたということはできず、平成29年9月26日の意思表示の時点で労働契約が成立したとはいえない。また、平成30年9月11日の意志表示の時点では、TCC向けのバッチプログラム業務は終了しており、Xの労務提供義務は原始的不能となっているから、労働契約は成立していない。

3.判決の要旨

①被告AQとXとの契約は、労働者派遣契約であったか?

(1)労働者派遣契約とは、自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものをいう(労働者派遣法2条1号)。
労働者派遣の労働契約というには、被告AQとXとの関係が雇用関係といえることが必要であるため、被告AQとXとの契約が、契約書においては業務委託契約の形式をとるものであるが、実質は雇用関係(労働契約関係)であったといえるか、以下、検討する。

(2)被告AQとXの契約の性質
ア 労働者は、使用者に使用されて労働し、労働の対償としての賃金を支払われる者をいい(労働契約法2条、労働基準法11条)、実質的にこのような関係(使用従属関係)にある場合には、契約の形式にかかわらず、労働契約関係すなわち雇用関係にあるといえる。そして、このような関係にあるといえるかは、
 ①仕事の依頼の許諾の自由
 ②業務遂行上の指揮監督
 ③時間的、場所的拘束性
 ④代替性
 ⑤報酬の算定支払方法
を主たる要素として考慮し、
 ⑥機械・器具の負担、報酬の額等に現れた事業者性
 ⑦専属性
を補助的な要素として考慮すべきである。
※この判断基準は、1985年(昭和60年)に厚生労働省にある労働基準法研究会が、労働者の備える性質(労働者性)について示したもので、多くの裁判例で取り入れられています。(参照:Uber Eatsの配達員は労働者であるか!?~労働者の2つの意味~ - 社会保険労務士川口正倫のブログ


イ 被告AQ・X間の本件基本契約書には、請負ないし業務委託の目的とするシステム開発業務の内容や報酬について具体的な定めはなく、対象業務の内容、単価その他の条件は個別契約で別途決定するとされているところ、個別契約の内容を定める注文書には、作業内容が「ECObjectsカスタマイズ業務」との記載しかなく、また、契約前の被告CTの社員との面談時や契約条件についての被告AQ代表者とのやりとりの時点においても、Xが担当する具体的な業務内容は明確にされておらず、注文書発行後、Xは、被告CTの事業所に赴き、平成29年9月26日から11月末までは被告CTの社員が作成した作業スケジュール表(WBC)のとおり仕事の分担を決められ、その後は、被告AQ代表者が示した表のとおり仕事の分担を決められており、被告CTの社員がXに指示して担当させた業務には、当初予定されていたバッチプログラムの詳細設計、開発(実装)及び単体テストの業務のみならず、基本設計に関わる業務もあり(ただし、その内容は、基本設計といっても補助的なもので、詳細設計に付随した業務と考えられる。)、①Xには、被告CTの社員を通じた被告AQからの業務の依頼(指示)を断る自由があったとは認められない。
また、Xは、平成29年9月26日から同年11月30日まで、被告CTの求めに応じて、被告CT社員に対し、作業スケジュール表や会議において、作業の内容及び進捗状況について毎日報告し、確認を受けており、成果物も被告CTの社員による検査を受けて対応を行う等、②業務遂行において、被告CTの社員を通じた被告AQによる指揮監督を受けていた。
作業場所は被告CTの事業所内と指定され、作業時間は1箇月あたり151時間から185時間までの間とされ、Xは、被告CTの社員から、作業実績報告書により作業時間を被告AQに報告することを要求されたほか、平日の午前9時30分から午後6時15分まで作業し、午後5時に退社するときや、前記時間に外出するときには被告CTの社員にその旨報告して了承を得ており、また、休日とされる土曜日に出勤することを被告CTの社員との会議で確認されるなどしていたことから、③Xは、時間的、場所的拘束を受けていたといえる。
被告AQとの契約前に、Xは被告CTの社員と面談し、システムエンジニアとしての経験や保有する資格の確認を受けており、被告CTと被告AQとの個別契約に係る発注書にもXが作業者であることが明記されており、Xが第三者に作業を代替させたり、補助者を使ったりすることは想定されておらず、④代替性はなかった。
被告AQは、被告CTを通じてXの作業時間を管理・把握しており、報酬は、作業時間が1箇月あたり151時間から185時間までの間に収まる場合には月額60万円、151時間を下回る場合には時間単価を3980円として控除し、185時間を上回る場合には時間単価を3240円として加算することとなっており、⑤報酬の支払計算方法は、ほぼ作業時間に応じて決まっていたといえ、作業時間と報酬には強い相関性があったといえる。
また、⑥Xは開発のためのコンピューター、ソフトウェア等の機械・器具を有する者ではなく、報酬は月60万円であり、著しく高いとはいえず、また、Z1の経営に携わっていることを自認しているが、同社の役員ではなく、事業者性が高いとはいえない。
⑦Xは、被告AQの仕事以外に就くことは禁止されていないが、1日の作業時間によれば事実上専属の状態であった。
以上からすると、Xは、被告AQに使用されて労働し、労働の対償としての賃金を支払われる者といえるから、被告AQとXとの契約は、形式上は業務委託契約の体裁を取っているものの、実質的には、被告AQがXを月額60万円で雇用する労働契約であったと認められる。
※Xが労働者であり、雇用契約に相当する業務委託契約を締結し、賃金に相当する報酬を支払っているのが被告AQであることから、被告AQに使用されている(雇用されている)こととなり、実際の指揮命令を被告CTが行っていれば、労働者派遣となります。


(3)被告AQと被告CTの契約の性質
ア 次に、被告AQと被告CTとの関係が、労働者派遣契約といえるか、すなわち、被告AQが、Xとの雇用契約の下に、Xを被告CTの指揮命令を受けて、被告CTのために労働に従事させる関係であったといえるか検討する。

イ 別紙1の区分基準告示によれば、請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であっても、当該事業主が当該業務の処理に関し、別紙1の一及び二のいずれにも該当する場合を除き、当該事業者は労働者派遣事業を行う事業者に当たるとされているところ、被告AQと被告CTとの関係を検討するにおいても、この基準を参考とするのが相当である。

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年4月17日労働省告示第37号)
第2条
請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であつても、当該事業主が当該業務の処理に関し次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする。

1. 次のイ、ロ及びハのいずれにも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。
イ 次のいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
(1)労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
(2)労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと。
ロ 次のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
(1)労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
(2)労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
ハ 次のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。
(1)労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。
(2)労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。
2. 次のイ、ロ及びハのいずれにも該当することにより請負契約により請け負つた業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。

イ 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。

ロ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。

ハ 次のいずれかに該当するものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
(1)自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。
(2)自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。

ウ 本件についてみると、少なくとも平成29年9月26日から11月30日までは、Xが分担する業務ついては、被告CTの社員が、スケジュール表(WBC)や会議等で指示することで、その内容を決定し、Xにスケジュール表及び会議で毎日その進捗状況を報告させ、成果物も検査していたこと、前記の期間中、被告AQ代表者は、前記会議に参加したことはなく、被告CTやXから、Xの作業内容、進捗状況及び成果物の検査結果を伝達されたことはなく、報告されたXの作業内容に関心を払っていなかったことが認められるから、被告AQは、Xの業務の遂行方法に関する指示その他の管理及び業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行っていたとはいえない(区分基準告示の2条1号イ(1)(2))。
また、Xに対し、始業及び終業の時刻を作業実績報告書により報告させてこれを点検し、外出を了承し、作業時間の延長、休日出勤を確認していたのは被告CTの社員であり、被告AQ代表者は、被告CTを介することなくXの作業時間を把握・管理したことはなかったから、被告AQがXの労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行っていたとはいえない。(同2条1号ロ(1)(2))
また、Xの開発作業に必要なコンピューター、サーバー及び開発ソフトを提供したのは被告CTであって、被告AQは提供しておらず、被告AQは、自己の責任と負担で準備し、調達した設備等で業務を処理することはなかった。かつ、被告AQ代表者は、平成29年9月26日から11月30日まで、Xの成果物について確認しておらず、XからXがリーダー役をやっているのか聞き出そうとしたり、作業展開が順調なのか聞き出そうとしたりするなど、Xの業務内容や進捗状況を把握していなかったことが認められ、被告AQは、自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて業務を処理していたともいえない。

エ そうすると、被告AQは、Xの労働力を自ら直接利用していたともいえず(同2条1号本文)、かつ、業務を自己の業務として契約の相手方である被告CTから独立して処理していたということもできない(同2条2号本文)
したがって、被告AQは、労働者派遣事業を行う事業主といえ、Xは被告CTの指揮命令下に置かれ、被告CTのために労働に従事していたと認めるのが相当である。

(4)小括
以上から、被告AQとXとの契約は、実態としては、被告AQがXを月額60万円で雇用したものと認められ、その雇用関係の下、被告CTの指揮命令を受けて、被告CTのためにXを労働に従事させるという労働者派遣の労働契約であったと認められる。

②本件解除の有効性

(1)被告AQとXの契約は、平成29年12月31日までの有期労働契約であるところ、本件解除は、有期労働契約の期間途中の使用者による解除ということになるから、「やむを得ない事由」がなければならない(労働契約法17条1項)。

(2)被告AQは、「Xのスキル不足により、コーディングが不完全で、単体テストの開始までに終了すべきコンパイルの作業や動作確認が行われなかった。また、平成29年12月初旬、Xが外出・退出を繰り返したことで、単体テストのスケジュールが大幅に遅延した。」旨主張し、被告AQ代表者もこれに沿う供述をする。
しかし、コーディングが不完全であった等の事実を裏付けるに足りる的確な証拠はない以上、それがXのスキル不足によることを裏付ける証拠はない。むしろ、被告CTのZ2は、Xが作業に従事していた当時、Xの開発技術や作業内容に問題があるとは認識しておらず、会議の議事録にも作業の遅れがXの技能不足にあることをうかがわせる指摘はなかった。また、Xが平成29年12月初旬に2回外出し、1回午後5時に終業した事実はあるが、同年11月のXの作業時間は240時間を超えており、外出等によりXが開発作業を懈怠していたとはいえない。TCC向けカスタマイズ業務の作業が遅延していたのは、被告CTの基本設計の担当者が休養に入ったこと等により基本設計が完成していなかったことや、TCCの要望により開発の分量が当初より増えたことによる。
したがって、TCC向けカスタマイズ業務の遅延が、Xのスキル不足や、Xの作業離脱によるものとは認められない。

(3)被告AQは「Xは、被告AQ了解を得ることなく、被告CTに対し、Xと関係のあるZ1の社員を作業要員として提案し、背信行為を行なった。」旨主張する。
Xは、被告CTの社員のZ2の依頼により、TCC向けカスタマイズ業務に従事する開発作業者としてZ1のZ6及びZ11を紹介した事実はあるが、Z2に対しては、いずれも被告AQの者として紹介したもので、同じ時期に被告AQ代表者にも、Z1、Z6及びZ11が紹介されていること、Z1と契約して、Z6やZ11を開発作業者とするかどうかは、被告AQ代表者がZ1を条件を交渉して決定していることからすれば、Xが被告CTにZ6及びZ11を紹介した行為が被告AQに損害を与える行為とはいえず、背信行為ということはできない。

(4)以上によれば、被告AQが主張する事実は、いずれも「やむを得ない事由」(労働契約法17条1項)に当たるとはいえない。したがって、本件解除は、同条の要件を欠いてなされたものであるから、無効である。

③本件解除は、違法な解雇に当たり、不法行為が成立するか?

(1)本件解除は労働契約法の要件を満たさず無効である。そればかりか、被告AQが本件解除の理由として主張するXのスキル不足や懈怠による業務遅延という事実は、これを認めるに足りる証拠はなく、作業者の紹介は背任行為とはいえないもので、いずれも根拠を欠くものであった。このように、根拠なくなされた本件解除は、違法の評価を免れない。また、根拠がない違法は解雇を行ったことについて、被告AQ代表者には少なくとも過失が認められるから、Xに対する不法行為が成立する。

(2)本件解除を理由とする不法行為の慰謝料額については、本件解除により、Xが、労働者たる地位を失って生活の資を失ったこと、スキル不足や作業遅延に責任があるとされて不本意な思いをしたこと、就労した部分の賃金も含めて賃金の支払を拒絶される等して、本件訴訟で本件解除の効力を争うほかなくなったことを考慮すべきである。他方で、Xを被告AQとの契約期間は3箇月と5日、更新は3回にとどまること、12月分の賃金は別途認容されることも考慮すべきである。
以上を総合し、慰謝料は8万円とするのが相当である。

④被告CTは、Xを、被告AQとの雇用関係の下に、被告CTの指揮命令を受けて、被告CTのために労働に従事させ、労働者派遣の役務提供を受けたか?

(1)前記①(2)ないし(4)のとおり、被告CTは、Xを、被告AQとの雇用関係の下に、被告CTの指揮命令を受けて、被告CTのために労働に従事させ、労働者派遣の役務提供を受けたことが認められる。
したがって、被告CTは、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、労働者派遣法26条1項各号に掲げる事項を定めず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(同法40条の6第1項本文、5号)に当たる。

(2)被告CTは、「Xに対して作業時間の管理はしていない。Xは被告AQの区画で勤務し、被告CTから独立して作業していた。システムの特性上、単体としての稼動に問題がなかったとしても、システム全体に組み入れた際には正常に作動しないといった事態もあり得るから、全体的な進捗状況の調整、確認する必要があり、被告CTは、委託者として、TCCとの間で調整したシステム要件の確認と作業全体の進捗状況を確認するため、Xとの間で打ち合わせ等を行ったものであり、被告CTからXに対する業務上の指揮命令に当たらない」旨主張するが、これらが採用できないことは、前記①2(3)ウで判断したとおりである。少なくとも、平成29年9月26日から同年11月30日までの間は、Xの業務内容の決定、業務遂行方法についての管理、成果物の評価、作業時間の管理は、いずれも被告CTの社員が行い、被告AQがこれを独自で行ったことはなかったから、前期期間中のXの被告CTの事業所における作業は、客観的には労働者派遣の役務の提供と評価されるべきものである。

(3)被告CTは、「Xが本件訴訟で証拠提出している甲2、甲3及び甲7はいずれも機密情報に該当しており、Xがこれらを被告CTに無断で複製し、持ち出して証拠提出したことは、被告CTとの間で、機密情報の複製、持出し、公開しないことを誓約する本件確認書に違反する行為であり、これらは違法収集証拠であるから証拠能力を否定すべきである。」旨主張する。
Xが本件訴訟で証拠提出している甲2、甲3及び甲7は、非公開の情報であり、Xがこれを被告CTに無断で複製し、持ち出して証拠提出したことは、本件確認書の2条、4条で禁止された行為に当たる可能性がある。しかし、Xが、これらを複製し持ち出したのは、被告AQから本件解除を受けて、その効力を争う目的であったこと、Xが持ち出したものは被告CTのソフトウェアや成果物ではなく、その作成過程の作業内容や情報交換の記録であり、機密として保護すべき価値が高いとはいえないこと、Xが被告CTの指揮命令下に置かれていた事実等を立証するに当たり、これらの証拠は不可欠であって、証拠としての価値は極めて高いことからすれば、これらの証拠を採用することが訴訟法上の信義則に反するまでとはいえない。
したがって、被告CTの前記主張は採用できず、甲2、甲3及び甲7については、その証拠能力を否定排除すべきとはいえない。


⑤被告CTがXにより労働者派遣の役務提供を受けた行為が、労働者派遣法又は同法44条ないし47条の3の規定により適用される法律の適用を免れる目的でされたか?

(1)労働者派遣法40条の6第1項5号が、同号の成立に、派遣先(発注者)において労働者派遣法等の規定の適用を「免れる目的」があることを要するとしたのは、同項の違反行為のうち、同項5号の違反に関しては、派遣先において、区分基準告示の解釈が困難である場合があり、客観的に違反行為があるというだけでは、派遣先にその責めを負わせることが公平を欠く場合があるからであると解される。そうすると、労働者派遣の役務提供を受けていること、すなわち、自らの指揮命令により役務の提供を受けていることや、労働者派遣以外の形式で契約をしていることから、派遣先において直ちに同項5号の「免れる目的」があることを推認することはできないと考えられる。また、同項5号の「免れる目的」は、派遣先が法人である場合には法人の代表者、又は、法人から契約締結権限を授権されている者の認識として、これがあると認められることが必要である。
※労働者派遣法40条の6第1項5号について、解釈が示されています。

(2)被告CTと被告AQとの契約においては、被告CTの担当者であったZ2が、被告AQ等の業務委託先との間で業務委託契約を締結するか否か決定する権限を有していたから、Z2において「免れる目的」があったかを検討すべきである。

(3)Z2は、被告AQ代表者を介することなく、Xに対して直接、業務を依頼し報告を求めた理由について、「被告AQ代表者から、Xが被告AQの責任者であるため、Xに直接伝えてほしいと言われたからである。Xは被告AQに雇用されていると思っていた。」(※1)旨証言し、週に1~4回会議を開く等して作業の進捗状況の報告を求めた理由については、「納期が切羽詰った状況下で、1日の遅れも致命的となってしまうため、問題が発生していないかを毎日確認する必要があった。」(※2)旨証言するところ、前者(※1)は、Z2との面接時に被告AQ代表者がXに同道してXを紹介したことや、X自身が、Z6やZ11を被告AQの者としてZ2に紹介していたことから不合理ではないし、後者(※2)も、作業の進捗状況の確認や成果物の確認がされるようになった時期が、TCC向けカスタマイズ業務の遅延が顕著となり増員が検討された時期と符号することから、不合理とはいえない。
また、Xが従事していた業務は、TCC向けカスタマイズ業務のバッチプログラムの詳細設計、開発(実装)及び単体テストであったところ、システム開発の過程では、これらの業務は細分化して発注できる業務とされていること、Xは、基本設計に関する業務を一部担当したこともあったが、それは、基本設計が一部未完成であったため、詳細設計の際に要件定義を参照しつつ仮の作業として進めたとか、顧客の要望により要件定義及び基本設計が変更になった際、基本設計のダブルチェックを行ったというにとどまり、詳細設計に付随する業務といえるものであること、被告CTが顧客であるTCCとの打ち合わせにXを同席させることはなかったことから、被告CTが、Xに対し、被告AQへの委託業務であるか否かに意を払うことなく、様々な業務を担当させていたとは認め難い。
そして、作業者に対する指揮命令と業務委託・請負における注文者の指図との区別は困難な場合があること、被告CTは、過去に労働基準監督署ないし労働局から個別の指導を受けたこともなかったことを踏まえると、Z2において、「免れる目的」があったと認めるには無理がある。

(4)Xは、「CT・AQ間の本件基本契約書には、一切の指揮命令は被告AQが行うこと、被告らの間には労働者派遣関係がないことが記載されており、被告CTは、作業者が自ら指揮命令を行えば、労働者派遣関係に立つことを認識していたとえる。」旨主張し、CT・AQ間の基本契約書にはXの主張どおりの記載がある。しかし、同記載は、被告CTによる作業者への指揮命令があれば労働者派遣の役務提供になるという一般的な理解を示すものであり、被告CT代表者やZ2において、作業者に対する指揮命令と業務委託・請負における注文者の指図との区別を適切に判断できていたことを示すものではないから、この記載をもって「免れる目的」があるとはいえない。
また、被告CT及びZ2が、業務を発注する前に、Xら外部の開発作業者との面接を常々行っていた事実は認められる。しかし、被告CT代表者及びZ2において、面接した開発作業者により当初から労働者派遣の役務の提供を受ける意図を有していたとは認められないから、これが労働者派遣法の禁止行為に当たるとは必ずしもいえない。また、システム開発には技能が必要であるため、発注に当たり、発注先が当該システム開発のため必要な技能を持っているか判断する一助として、発注先の開発作業者と面接を行う場合もあると考えられるから、面接を行ったという事実をもって、業務委託や請負ではないということはできず、「免れる目的」があるとまではいえない。
また、被告CTが、作業者に対し、本件確認書(機密保持契約書)の作成提出を求めていたことは、顧客や被告CTの秘密保持のためであり、業務委託や請負であっても、そのような文書の作成を求めることは不合理ではない。作業実績報告書によりXや他の作業者の作業時間を記録していたことは、作業時間により委託者に支払う報酬が増減する契約であり、そのような契約であることと業務委託であることとは必ずしも矛盾せず、不合理とはいえない。
したがって、Xの主張するところを検討しても、被告CT代表者ないしZ2において、労働者派遣法の規制を免れる目的があったということはできない。
※被告AQと被告CTは派遣業も営んでいながら、「業者に対する指揮命令と業務委託・請負における注文者の指図との区別を適切に判断できない。」ということが許容されるのか疑問です。

(5)以上から、被告CT代表者やZ2において「免れる目的」があったとは認められない。

前記⑤のとおり、「免れる目的」がない以上、被告CTにおいて、労働者派遣法40条の6第1項5号が成立する余地はなく、Xと被告CTとの間で労働契約は成立しない。また、Xと被告CTには契約関係がないから、被告CTがXを解雇することもあり得ない。
したがって、Xの被告CTに対する請求は、その余の点(⑥~⑦)について判断するまでもなく、理由がない。