社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



別居の連れ子は被扶養者にできない!?

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別居の連れ子は被扶養者にできない!?

先日、入社手続を受託した際に、同時に本人と姓が異なる子を被扶養者とする手続を行いました。
受託する際には依頼書に内容を記入していただくことになっていますが、詳細が記載されていなかったので確認すると、配偶者の子、いわゆる連れ子とのことです。
依頼書には「同居」と記載されていたので、特に問題ないだろうと思い、通常どおり電子申請を行いました。
ところが、数日後にその申請は差し戻しとなりました。理由が記載された添付ファイルによると、配偶者の子が別居である場合は被扶養者とすることができず、同居が確認できなかった、とのことです。
平成30年10月から被扶養者異動届の提出には、原則として、本人及び被扶養者のマイナンバーを記載することとなりました。年金機構は、記載されたマイナンバーに基づいて住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)にアクセスし、本人と配偶者が同居しているか等を確認するのです。
このケースでは、年金機構が住基ネットにアクセスした際に同居であることが確認できなかったため、差し戻しとなりました。なお、同居について本人に確認したところ、住民票の転居・入居の届出をまだしていなかったとのことで、後日、同居となったことが確認できる住民票を添付することで無事に申請できました。
今回の被扶養者異動届はこれで特に問題なかったのですが、連れ子が別居であると被扶養者にはなれません。例えば、連れ子が大学に進学して別居となるケースや継父との関係があまり良くないため別居するケースでは、被扶養者となれないのです。私のように、継父と連れ子(継母と連れ子も同じ。)は親子関係が擬制されると単純に思っている人にとっては、違和感しかありませんが、子と連れ子は同じ1親等であっても血族か姻族かによって、区別されるのです。これが、相続なら、本人の実子の不利益(連れ子が相続人になれば、本人の実子の相続財産が減少する)を考えればわからないでもないのですが、社会保険の被扶養者でこのような差異を設けることに意味があるのでしょうか?
それでも別居の連れ子を被扶養者にしたいのであれば、養子縁組という制度もありますが、社会保険の被扶養者とすることを目的として養子にするというのはあまりにも短絡的な発想です。養子となれば、法律上は実子と同等に扱われることとなるため、当然、別居であっても収入の要件等を満たせば社会保険の被扶養者となれますが、相続においても実子と平等の扱われます。これは、前述のとおり、相続財産が減少するという直接的な不利益となるため、実子にとっては、簡単に養子縁組なんかされてしまっては、まさにたまったもんじゃない話なのです。
ところで、養子縁組をしても社会保険の被扶養者となる必要がなくなれば解消したらいいと安直に考える人もいるかも知れませんが、まず、社会保険の被扶養者を外れることを条件(解除条件)として養子縁組をするのは、身分関係を経済的利益によって決定することですので、恐らく公序良俗違反で無効となります。また、養子縁組の解消のことを「養子離縁」といいますが、養子離縁は簡単に一方の意思だけでできるものではなく、養親と養子のどちらかが離縁を希望しないケースでは、婚姻における離婚と同等に難しいものとなります。