社会保険労務士川口正倫のブログ

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(適用範囲が拡大)中小事業主掛金納付制度(iDeCo プラス) の概要

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中小事業主掛金納付制度(iDeCo プラス) の概要

1.中小事業主掛金納付制度とは

確定拠出年金には、企業型と個人型(iDeCo)とがあります。企業型の場合、各企業が運営管理機関(金融機関)を決めて制度を導入します。掛金を拠出(積み立て)するのは企業で、運用するのは従業員となります。
一方、iDeCoは、個人が自分でお金を拠出して運用する制度です。あくまで従業員個人が自身の老後資金を形成するプライベートな制度であるため、ここに企業が直接関わることはありませんでした。
もし、ここに企業が掛金を上乗せすることができたら、企業は手軽に福利厚生を充実させられますし、従業員も掛金が増える(負担が減る)メリットがあります。
これを実現したのがiDeCo+です。

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iDeCoの掛金は、加入者本人に拠出(納付は原則翌月26日)していただくのが基本的な取扱いとなっていますが、平成30年5月より、一定の要件を満たしている事業主(以下「中小事業主」といいます。)に使用される従業員でiDeCoに加入している方については、中小事業主が必要な手続き等をとった場合、従業員の加入者掛金に対して、中小事業主が中小事業主掛金を上乗せして拠出することが可能になりました(中小事業主掛金納付制度)。
主体はあくまでも従業員個人のiDeCoなので、運営管理手数料などのコストは従業員の負担となります。また、上乗せした事業主掛金の運用も従業員が行い、最終的な給付額まで企業が責任を負うことはありません。

なお、中小事業主掛金納付制度の取扱いには、事前の必要な手続きを含めて詳細なルールがありますので、中小事業主のみなさまにおかれましては、以下の内容を十分ご確認いただいた上で導入をご検討ください。

中小事業主掛金納付制度を実施できる事業主の要件は、次のとおりです。
①従業員(使用する第1号厚生年金被保険者)が300人以下※であること。
②企業型確定拠出年金確定給付企業年金厚生年金基金のいずれも実施していないこと。
③従業員の過半数で組織する労働組合又は、従業員の過半数を代表する従業員に、中小事業主掛金を実施することについて同意を得る(労使合意をする)こと。

※令和2年10月に、従業員要件が100人以下から300人以下に拡大されました。

2.中小事業主掛金の拠出方法

中小事業主掛金納付制度は、拠出対象者となる従業員がiDeCoの加入者となり、拠出している加入者掛金に対して中小事業主が上乗せして拠出する仕組みとなっています。したがって、拠出対象者となる従業員がiDeCoの加入者となり、加入者掛金を拠出している必要があります。(iDeCoの加入者とならない従業員に対して、中小事業主掛金のみを拠出することはできません。)
中小事業主は、中小事業主掛金の拠出対象者となる従業員について、一定の資格(職種、勤続期間)を定めることができます。

3.中小事業主掛金の額

中小事業主掛金の額は、加入者掛金と合計して、月額5,000円以上23,000円以下(加入者が年単位拠出を行っている場合は、「5,000円×拠出区分の月数」の金額以上、当該拠出区分の拠出限度額以下)となるよう、1,000円単位で決めます。
中小事業主掛金の額は、基本的に、拠出対象者全員が同額となるように決定しますが、資格※ごとに掛金額を設定することも可能です。(特定の者について不当に差別的なものであってはなりません。)

※「資格」は、拠出対象者の一定の資格(職種、勤続期間)のほか、労働協約又は就業規則その他これらに準ずるものにおける給与及び退職金等の労働条件が異なるなど合理的な理由がある場合において区分する資格に限ります。

4.中小事業主掛金の納付方法

加入者掛金と中小事業主掛金を中小事業主が取りまとめて納付(事業主払込)する必要があります。
中小事業主掛金は、加入者掛金を納付する時期と同じ時期に納付します。
したがって、年単位拠出を行う加入者がいる場合は、月ごとに事業主掛金の納付合計額も異なります。(中小事業主は、従業員の加入状況・加入者掛金額等を把握する必要があります。)
加入者掛金、中小事業主掛金ともに、前納及び追納はできません。

5.税法上の扱い

iDeCoの掛金の税制上の取扱いは、加入者掛金と中小事業主掛金でそれぞれ次のようになります。

加入者掛金:小規模企業共済等掛金控除として、本人の所得から控除できます。
中小事業主掛金:企業が負担する支出として、損金に算入できます。

iDeCoの詳細については、下記をご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2020kaisei.html

また、金融機関が運用管理機関となりますので、導入に際しては最寄りの銀行等にご相談ください。
恐らく、喜んで説明に来てくださると思います。