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派遣労働者に係るテレワークに関するQ&A (令和2年8月26日)

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派遣労働者に係るテレワークに関するQ&A(令和2年8月26日)

https://www.mhlw.go.jp/content/000662802.pdf

1.契約内容等

問1-1 派遣労働者がテレワークにより就業を行う場合、労働者派遣契約は、どのように記載すればよいか。

答 労働者派遣契約には、労働者派遣法第26条第1項第2号及び第3号に基づき、派遣先の事業所だけでなく、具体的な派遣就業の場所を記載するとともに、所属する組織単位及び指揮命令者についても明確に定めることが必要となる。このため、労働者派遣契約には、例えば、次のとおり記載することが考えられる。
また、個人情報保護の観点から、派遣労働者の自宅の住所まで記載する必要はないこと
に留意すること。

(例1:派遣先の事業所に出社する就業を基本とし、必要に応じてテレワークにより就業する場合)
・派遣先の事業所:○○株式会社○○営業所
就業の場所:○○株式会社○○営業所○○課○○係(〒・・・-・・・・○○県○○市○○○Tel****-****)
ただし、必要に応じて派遣労働者の自宅
・組織単位:○○株式会社○○営業所○○課
・指揮命令者:○○株式会社○○営業所○○課○○係長○○○○

(例2:テレワークによる就業を基本とし、必要が生じた場合(週1~2日程度)に派遣先の事業所に出社して就業する場合)
・派遣先の事業所:○○株式会社○○営業所
就業の場所:派遣労働者の自宅
ただし、業務上の必要が生じた場合には、○○株式会社○○営業所○○課○○係での週1~2日程度の就業あり(〒・・・-・・・・○○県○○市○○○○Tel****-****)
・組織単位:○○株式会社○○営業所○○課
・指揮命令者:○○株式会社○○営業所○○課○○係長○○○○

(例3:自宅に準じる場所(例えば、サテライトオフィスや特定の場所)で就業する場合)
・派遣先の事業所:○○株式会社○○支社(〒・・・-・・・・○○県○○市○○○Tel****-****)
就業の場所:派遣先所有の所属事業場以外の会社専用施設(専用型オフィス)又は派遣先が契約(指定)している他会社所有の共用施設(共用型オフィス)のうち、派遣労働者が希望する場所
・組織単位:○○株式会社○○支社○○課
・指揮命令者:○○株式会社○○支社○○課○○係長○○○○


問1-2 派遣労働者がテレワークのみによ り就業を行うことは可能か。

答 派遣労働者の就業をテレワークのみにより行うことは可能であるが、以下の点などに十分に留意し実施することが必要となる。
・労働者派遣契約において、自宅等の具体的な派遣就業の場所を記載すること。なお、派遣労働者と打合せを行う場合等に派遣先の事業所等で派遣就業を行う可能性がある場合には、必ずその旨を明記すること。
派遣労働者が、通常の労働者派遣の取扱いと同様に、派遣元責任者及び派遣先責任者に迅速に連絡をとれるようになっていること。
派遣労働者においても「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」に基づいた雇用管理が必要であること。
また、派遣就業の全期間の業務遂行において、派遣先からの指揮命令等のコミュニケーション等が円滑に行われるかを派遣先及び派遣労働者に十分に確認することが望ましいものである。

※「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html


問1-3 派遣労働者が予定になかったテレワークにより就業を行う場合、労働者派遣契約の変更を行うことが必要か。

答 労働者派遣契約には、派遣先の事業所だけでなく、具体的な派遣就業の場所を記載することが必要となる。このため、派遣労働者がテレワークにより就業を行う場合には、労働者派遣契約の一部変更が必要になる場合がある。
なお、緊急の必要がある場合についてまで、事前に書面による契約の変更を行うことを要するものではないが、派遣元事業主と派遣先の間で十分話し合い、合意しておくことが必要なことに留意すること。
また、派遣労働者がテレワークにより就業を行うことがあらかじめ予定されている場合においては、当初からテレワークを行う就業場所を労働者派遣契約に記載することが必要となるため、問1-1の回答も参考に対応すること。


問1-4 派遣先での派遣労働者に対する指揮命令は、必ず対面で実施しなければならないのか。

答 派遣先での派遣労働者に対する指揮命令は、必ずしも対面で実施しなければならないものではない。業務の内容を踏まえ、テレワークによっても必要な指揮命令をしながら業務遂行が可能かどうか、個別に検討いただくものである。


2.訪問巡回・住所の把握

問2-1 「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第137号)」及び「派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号)」では、定期的に派遣労働者の就業場所を巡回することとしているが、派遣労働者が自宅でテレワークを実施する場合にも、自宅を巡回する必要があるか。

答 「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」においては、派遣元事業主は派遣先を定期的に巡回すること等により派遣労働者の就業状況が労働者派遣契約の定めに反していないことの確認等を行うこととされており、ここでいう派遣先とは、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」のみならず、具体的な派遣労働者の就業場所がこれらと異なる場合には当該就業場所も含むものである。
また、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」においては、派遣先は定期的に派遣労働者の就業場所を巡回し、派遣労働者の就業の状況が労働者派遣契約に反していないことを確認することとされている。
ただし、派遣労働者に対して自宅でテレワークを実施させるときは、就業場所は自宅となるが、派遣労働者のプライバシーにも配慮が必要であるので、例えば、電話やメール、ウェブ面談等により就業状況を確認することができる場合には派遣労働者の自宅まで巡回する必要はない。
なお、派遣労働者のテレワークが労働者派遣契約に反せず適切に実施されているかどうか、派遣労働者の就業の状況を実際に確認できることが必要であり、そのためには、例えば、①派遣先の指揮命令の方法等をあらかじめ派遣労働者と合意し、労働者派遣契約等において定めておくこと、②日々の派遣労働者の業務内容に係る報告を書面(電子メール等の電子媒体によるものを含む。)で明示的に提出させること等により確認することが考えられる。


問2-2 派遣労働者について自宅でのテレワークを実施するに当たって、就業場所の巡回等のため、派遣先として、自宅の住所を把握しておきたいが、派遣会社から教えてもらってもよいか。

答 派遣先からの求めに応じ、派遣元事業主から派遣先に対し、派遣労働者の自宅の住所に関する情報を提供する場合には、派遣元事業主として、派遣労働者本人に使用目的(テレワークの実施に当たって派遣先が住所を把握することが真に必要であり、派遣先に提供すること)を示して同意を得ることが必要になる(※)。また、派遣労働者を特定する目的で、労働者派遣契約の締結に際し、派遣元事業主に当該労働者派遣の対象となり得る個々の派遣労働者の自宅の住所を教えるよう求めてはならないことに留意すること。
派遣元事業主及び派遣先の双方が、労働者派遣法や「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」、個人情報保護法の規定を遵守し、派遣労働者の個人情報を適切に取り扱うことが必要である。

(※)「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」において、派遣元事業主による個人情報の保管又は使用は、「収集目的の範囲に限られること。(中略)なお、派遣労働者として雇用し労働者派遣を行う際には、労働者派遣事業制度の性質上、派遣元事業主が派遣先に提供することができる派遣労働者の個人情報は、労働者派遣法第35条第1項各号に掲げる派遣先に通知しなければならない事項のほか、当該派遣労働者の業務遂行能力に関する情報に限られるものであること。ただし、他の保管若しくは使用の目的を示して本人の同意を得た場合又は他の法律に定めのある場合は、この限りでないこと」とされている。


3.苦情処理

問3-1 自宅等でテレワークを実施する派遣労働者が苦情を申し出た場合に、訪問面談により苦情の処理や助言・指導を行う必要があるか。

答 苦情処理や、派遣労働者に対する必要な助言及び指導については、電話やメール、ウェブ面談等の活用も考えられ、全ての事案において、派遣労働者の自宅等に出向く必要はないものである。
ただし、本人が対面による相談を希望する場合や、苦情の内容等によっては、派遣元責任者本人が直接自宅等に出向いて対面で処理する必要がある場合も想定されるため、こうした場合には、テレワーク以外の派遣労働者への対応と同様に、対面で対応できるようにすることが必要である。


問3-2 苦情の処理等に当たって、派遣労働者の自宅に近い他の派遣元事業所の派遣元責任者が訪問することは可能か。

答 派遣元責任者は派遣元事業主の事業所ごとに選任し、個々の派遣労働者ごとに担当となる責任者を決めておくことが必要であるが、苦情処理等に当たり、派遣先の事業所や派遣労働者の自宅に近い他の派遣元事業所の派遣元責任者等と連携して対応することも可能である。
その際は、労働者派遣契約書において、担当となる派遣元責任者のみでなく、連携して苦情処理に対応する派遣元責任者等を苦情の処理に関する事項(苦情の申出を受ける者、苦情処理方法、連絡体制等)に記載することが必要となるとともに、派遣労働者に対しても、就業条件の明示(労働者派遣法第34条)として、同様に、担当となる派遣元責任者と、苦情処理に関する事項として苦情の申し出を受ける派遣元責任者等を明示する必要がある。
ただし、問3-1の回答のとおり、苦情の内容等によっては、個々の派遣労働者ごとに担当となる派遣元責任者本人が直接対応することができることが必要である。


問3-3 派遣先が自宅等で就業する派遣労働者から苦情の申し出を受けた場合には、どのように対応を行えばよいか。

答 派遣先の派遣先責任者等が自宅等で就業する派遣労働者から苦情の申出を受けた場合には、通常の取扱いと同様に、原則、当該苦情の内容を、遅滞なく、派遣元事業主に通知するとともに、派遣先として適切かつ迅速な処理を図ることが必要となる。


4.苦情処理

問4 テレワークを行う場合に、派遣労働者の労働時間の把握について、派遣先はどのようにすればよいか。
答 派遣先はテレワークの場合にも、通常の取扱いと同様、派遣先管理台帳に派遣就業をした日ごとの始業及び終業時刻並びに休憩時間等を記載し、派遣元事業主に通知することが必要である。
その他のテレワークの場合の労働時間の把握に係る留意事項については、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」2(2)イを参照されたい。
派遣元事業主は、派遣先を通じて労働時間を把握するに当たり、ガイドラインの取扱いについて派遣先とよく認識を共有するとともに、テレワークの実施とあわせて、始業・終業時刻の変更等を行う場合は、就業規則に記載することが必要となる。

※「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html
※「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」
https://telework.mhlw.go.jp/wp/wpcontent/uploads/2019/12/TWmodel.pdf


5.同一労働同一賃金

問5-1 正社員についてはテレワークを実施しているが、派遣労働者についてはテレワークを実施できないため、全員出社してもらうこととしている。労働者派遣法上問題があるか。

答 製造業務や販売業務など、業務内容によってはテレワークの利用が難しい場合も考えられるが、派遣労働者であることのみを理由として、一律にテレワークを利用させないことは、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目指して改正された労働者派遣法の趣旨・規定に反する可能性がある。


問5-2 労使協定方式における地域指数を選択する際、自宅でテレワークを実施する派遣労働者は、どの地域の指数を当てはめればよいか。

答 地域指数の選択については、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」で判断するものである。具体的には、派遣先責任者を選任することとなる事業所の単位であり、派遣労働者がテレワークにより就業する自宅については、これに当たらないものである。
なお、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」については、工場、事務所、店舗等、場所的に他の事業所その他の場所から独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即して判断するものである。


問5-3 労使協定方式において実費支給として通勤手当を支払っているが、自宅でテレワークを実施する派遣労働者をどのように取り扱えばよいか。

答 自宅において就業することにより、通勤に係る実費が生じていない場合には、結果として、通勤手当の支給がなかったとしても、局長通知(※)第2の2(1)の実費支給と解される。
なお、通常の労働者も含め通勤手当の制度がない場合には、局長通知第2の2(2)により、一般基本給・賞与等の額に一般通勤手当を加えた額と同等以上であることが必要となる。
また、業務の必要が生じ、派遣先の事業所に出社する場合には、派遣先の事業所と自宅の場所との間の通勤距離や通勤方法に応じた実費が支給されることが必要である。
(※)令和元年7月8日付け職発0708第2号「令和2年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について


6.機器の整備等

問6-1 派遣労働者が自宅等でテレワークを実施するためのPCやインターネット環境等の設備に係る費用について、派遣労働者側に負担させることはできるか。
答 まず、派遣労働者に一方的に負担を強いるようなテレワークの実施は望ましくないものであることに留意することが必要である。仮に、派遣労働者に対してテレワークに要する機器等の費用負担をさせようとする場合には、あらかじめ労使で十分に話し合い、当該事項について派遣元事業主の就業規則に規定する必要があるとともに、テレワークによる労働者派遣に係る就業条件の明示の際に併せて派遣労働者に説明をしておくことが望ましいものである。
なお、トラブル防止の観点から、労働者派遣契約において、派遣元、派遣先の間の費用負担の在り方について、あらかじめ定めておくことが望ましいものである。
就業規則への費用負担の記載例「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」
https://telework.mhlw.go.jp/wp/wp-content/uploads/2019/12/TWmodel.pdf

第○条 会社が貸与する情報通信機器を利用する場合の通信費は会社負担とする。
2 在宅勤務に伴って発生する水道光熱費は在宅勤務者の負担とする。
3 業務に必要な郵送費、事務用品費、消耗品その他会社が認めた費用は会社負担とする。
4 その他の費用については在宅勤務者の負担とする。

※「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」3その他テレワークの制度を適切に導入及び実施するに当たっての注意点
(4)通信費、情報通信機器等のテレワークに要する費用負担の取扱い
テレワークに要する通信費、情報通信機器等の費用負担、サテライトオフィスの利用に要する費用、専らテレワークを行い事業場への出勤を要しないとされている労働者が事業場へ出勤する際の交通費等、テレワークを行うことによって生じる費用については、通常の勤務と異なり、テレワークを行う労働者がその負担を負うことがあり得ることから、労使のどちらが負担するか、また、使用者が負担する場合における限度額、労働者が請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等において定めておくことが望ましい。
特に、労働者に情報通信機器、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならないこととされている(労働基準法第89条第5号)。


問6-2 テレワークによる職場外での就業に当たり、情報セキュリティに係る問題が発生した場合に、どのように責任を負うこととなるか。

答 万一情報セキュリティに係る問題が発生した場合の責任の所在については、あらかじめ派遣元事業主と派遣先でよく話し合った上で、労働者派遣契約に規定することが望ましいものである。
 なお、テレワークを行う上でのセキュリティ対策に係る教育については、労働者派遣法第40条第2項に規定する業務の遂行に必要な能力を付与するためのものとして、派遣先において実施することや、派遣先に関わらず必要となるものについては、雇入れ時の安全衛生教育等と合わせて、雇用主である派遣元事業主において実施することが考えられる。

※「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」3その他テレワークの制度を適切に導入及び実施するに当たっての注意点
(5)社内教育等の取扱い
テレワークを行う労働者については、OJTによる教育の機会が得がたい面もあることから、労働者が能力開発等において不安に感じることのないよう、社内教育等の充実を図ることが望ましい。
なお、社内教育等を実施する際は、必要に応じ、総務省が作成している「テレワークセキュリティガイドライン」を活用する等して、テレワークを行う上での情報セキュリティ対策についても十分理解を得ておくことが望ましい。(略)