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新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した者についての健康保険の標準報酬月額の保険者算定の特例について(令2.6.24保保発0624 第1号)

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新型コロナウイルス感染症の影響による休業に伴い報酬が急減した者についての健康保険の標準報酬月額の保険者算定の特例について(令2.6.24保保発0624 第1号)

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200630S0010.pdf


今般の新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言(新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24 年法律第31 号)第32 条第1項に規定する緊急事態宣言をいう。以下同じ。)に伴う自粛要請等を契機として、休業に伴い所得が急減する被保険者が相当数生じている等の状況がある。また、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律(令和2年法律第54 号)により、新たに新型コロナウイルス感染症対応休業支援金が創設されるなど、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により休業をさせられた労働者のうち、休業中に賃金を受けることができなかったものに対する特例の措置も講じられることとされている。
こうした特別の状況にかんがみ、休業があった者について、通常の随時改定(健康保険法(大正11 年法律第70 号)第43 条第1項の規定による改定をいい、「健康保険法及び厚生年金保険法における標準報酬月額の定時決定及び随時改定の取扱いについて」(昭和36 年1月26 日付け保発第4号厚生省保険局長通知)、「一時帰休等の措置がとられた場合における健康保険及び厚生年金保険の被保険者資格及び標準報酬の取扱いについて」(昭和50 年3月29 日付け保険発第25 号・庁保険発第8号厚生省保険局保険課長並びに社会保険庁医療保険部健康保険課長及び年金保険部厚生年金保険課長通知)等(以下「昭和36 年通知等」という。)により従前示してきた取扱いを含む。以下同じ。)によって算定する額によらず、定時決定(健康保険法第41 条第1項の規定による決定をいう。以下同じ。)までの間について、より速やかに、現状に適合した形で、標準報酬月額を改定できるようにするため、保険者算定について、臨時の特例的な取扱い(以下「本特例措置」という。)を下記のとおり整理したため、内容について了知いただくとともに、適切に対応されたい。
なお、本特例措置については、日本年金機構において、厚生年金保険及び協会管掌健康保険に係る取扱いとして講じられることとしている。こうした取扱いも踏まえ、健康保険及び厚生年金保険の社会保険制度としての適用上の一体性を確保するとともに、給与実務等の複雑化を防止する観点から、各健康保険組合についても、適切に対応いただくようお願いする。
また、本特例措置は、今般の新型コロナウイルス感染症による特別の状況等を踏まえ、通常の随時改定及び定時決定とは別途の手続として、臨時特例的かつ限定的に随時改定における保険者算定の取扱いを整理したものであることから、本特例措置の内容は、通常の随時改定及び定時決定には適用されるものでないことに留意されたい。


                         記 

1 趣旨

今般の新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言に伴う自粛要請等を契機として、休業に伴い所得が急減する被保険者が相当数生じている等の状況がある。また、新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律により、新たに新型コロナウイルス感染症対応休業支援金が創設されるなど、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により休業をさせられた労働者のうち、休業中に賃金を受けることができなかったものに対する特例の措置も講じられることとされている。
こうした特別の状況にかんがみ、休業があった者について、通常の随時改定によって算定する額によらず、定時決定までの間について、より速やかに、現状に適合した形で、標準報酬月額を改定できるようにするための臨時特例措置を講ずる。

2 内容

適用事業所の事業主から、(1)の対象者について、(3)に定める手続等の方法により、休業により報酬に著しく低下が生じたものとして届出があった場合には、随時改定に係る保険者算定(健康保険法第44 条第1項及び厚生年金保険法第24 条第1項の規定に基づく報酬月額の算定の特例をいう。以下同じ。(※1))により、急減月((1)の①の「急減月」をいう。)に受けた報酬の総額(※2、※3)を報酬月額として算定し、当該急減月の翌月から、標準報酬月額を改定できる(※4、※5、※6)取扱いとする。

(※1)今般の新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言に伴う自粛要請等を契機とする休業により、例えば、休業中に賃金が支払われない、報酬支払の基礎となる日数が著しく減少するなど、通常時の賃金体系と著しく異なる不安定な事態が広範かつ相当の期間生じ、又は生じうる等の特別の状況にかんがみ、休業による報酬急減が生じた場合には、健康保険法第43 条第1項に規定する「継続した三月間に受けた報酬の総額を三で除して得た額」が、健康保険法第44 条第1項に規定する「著しく不当」なものに該当するものとして解釈上取り扱った上で、健康保険法第43 条第1 項の規定による改定を特例的に行うもの。
(※2)本特例措置においては、報酬支払の基礎となった日数(17 日以上(健康保険法第41 条第1項の規定により11 日とされる者にあっては11 日以上。以下同じ。))については、事業主からの休業命令や自宅待機指示などがあり、その間、使用関係が継続していれば、当該休業した日を、当該休業した日について支払われた報酬の有無にかかわらず、当該報酬支払の基礎となった日として取り扱う。(その上で、報酬支払の基礎となった日数が17 日未満となる場合は、健保法第43 条第1 項との関係上、本特例措置による届出の対象とはならないこととなる。)
(※3)新型コロナウイルス感染症対応休業支援金は、事業主が被保険者に支払う報酬でないから、ここにいう報酬の総額には含まれない。
(※4)本特例措置においては、固定的賃金の変動を伴わない場合を含む取扱いとする。
(※5)本特例措置による改定を令和2年7月分又は8月分の保険料から受けた者(9月の定時決定の対象とならない者)にあっては、当該者について、当該休業が回復した月(注)から継続した3か月間(各月とも、報酬支払の基礎となった日数が17 日以上でなければならない。)に受けた報酬の総額を3で除して得た額が、その者の標準報酬月額(本特例改定によるものを指す。)に比べて2等級以上上昇した場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、通常の随時改定の手続の例により、速やかに、その内容を届け出なければならないこと。

(注)休業が回復した月とは、報酬支払の基礎となった日が17 日以上ある状態とする。(この場合の日数の算定においては、※2により、報酬が発生していないが報酬支払の基礎となった日として取り扱われる日は含まないものとする。)
(※6)保険料の賦課や給付の調整、給与事務の複雑化を防止する等の観点から、本特例措置による改定を行った者は、再度本特例措置による手続を行うことはできない取扱いとすること。適用事業所の事業主はその旨を適切に確認しなければならないこと。

(1)対象者

次のいずれにも該当する被保険者であること。
① 事業主が新型コロナウイルス感染症の影響により休業(※1)させたことにより、急減月((2)の期間内の1 か月であって、当該休業により報酬が著しく低下した月として事業主が届け出た月をいう。以下同じ。)が生じた者であること
② 当該急減月に支払われた報酬の総額に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて、2等級以上低下した者(※2、※3)であること
③ 本特例措置による改定を行うことについて、本人が書面で同意している者であること


(※1)休業とは、労働者が事業所において、労働契約、就業規則労働協約等で定められた所定労働日に労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、当該所定労働日の全1日にわたり労働することができない状態又は当該所定労働日の労働時間内において1 時間以上労働することができない状態をいう。
(※2)2等級以上低下した者には、次の場合を含む。
・ 健康保険第50 級の標準報酬月額にある者の報酬月額(報酬月額が141 万5,000 円以上である場合に限る。)が降給したことにより、その算定月額が健康保険第49 級の標準報酬月額に該当することとなった場合。
・ 第2級の標準報酬月額にある者の報酬月額が降給したことにより、その算定月額が5万3,000 円未満となった場合。
(※3)例えば、急減月に、報酬が何ら支払われていない者については、第1級の標準報酬月額として取り扱うこととなる。
(※4)なお、被保険者期間が急減月を含めて3か月未満の者については、健康保険法第43 条第1項の規定上、本特例措置による届出の対象とはならないこととなる。
(※5)また、急減月の翌月に被保険者資格を喪失する者については、当該急減月の翌月の保険料が賦課されないため、本特例措置による届出の対象にはならない。(なお、急減月の翌月末に退職する者については、当該急減月の翌々月1日に被保険者資格を喪失する。)

(2)急減月の期間

急減月は、令和2年4月(緊急事態宣言が発せられた月)から7月(※)までの間の月であること。(急減月の取扱いについては(4)③も参照すること。)
(※)本特例措置が、定時決定までの間の臨時特例措置であることから、定時決定による改定月(9月)の前月分の保険料(8月分)までが本特例措置による改定の対象となることによるもの。なお、本特例措置による改定の対象となる保険料でみると、急減月の翌月(令和2年5月~8月分(定時決定月の前月分))の保険料となる。

(3)手続等の方法

① 提出書類
適用事業所の事業主が(イ)の届書に、(ロ)の申立書を添えて、急減月が生じた後、速やかに、提出すること。

(イ)被保険者報酬月額変更届(特例改定用)(別紙1)
「被保険者報酬月額変更届」(特例改定用)中、継続した3か月の各月の報酬月額等を記載する欄のうち一番下の月(3か月目)の欄のみに、急減月に係る報酬月額等を記載する取扱いとしても差し支えないこと。
なお、算定事務の適正化のため、保険者判断により3月分の支払基礎日数の記載を求めることを妨げるものではない。
また、保険者判断により、現行の「被保険者報酬月額変更届」の様式を用いることも差し支えないが、この場合には事業主に対して、3月とも支払基礎日数を満たした方のみが特例対象者であることを示す、又は3月分の支払基礎日数の記載を求めることにより、算定事務の適正化を図ること。


(ロ)申立書(別紙2)
申立書は、以下の点を申し立てるものとすること。
新型コロナウイルス感染症の影響による休業があった旨
ⅱ 本特例措置による届出を行っている被保険者が、(1)の対象者の要件に該当していることを確認した旨
ⅲ 本特例措置による届出を行っている被保険者について、被保険者本人の同意を書面で得ている旨
ⅳ 本特例措置の届出の内容が事実であることを確認できる書類(②の書類)及び本特例措置による届出を行っている被保険者の同意書を、届出から2年間、確実に保存する旨
ⅴ 本特例措置による届出を行っている被保険者について、過去に本特例措置による届出を行っていないことを確認している旨
ⅵ 令和2年7月又は8月から本特例措置による改定を受けようとする場合(9月の定時決定の対象とならない場合)にあっては、当該被保険者について、当該休業が解消した月から継続した3か月間(各月とも報酬支払の基礎となった日数が17 日以上)に受けた報酬の総額を3で除して得た額が、その者の標準報酬月額(本特例改定による改定後のもの)に比べて2等級以上上昇した場合には、固定的賃金の変動にかかわらず、通常の随時改定の手続の例により、速やかに、その内容を届け出ることを確約する旨(その旨の本人同意があることを含む。)
ⅶ 厚生年金保険についても同様の特例改定の手続を行う旨


② 関連書類の保存
①のほか、添付書類等の提出は原則として不要とするが、本特例措置の届出及び申立書の内容が事実であることを確認できる書類については、各保険者から資料提出を求めることにより後日確認する場合があるので、事業所では届出日から2年間は保存を要するものとする。
なお、保険者の判断により添付書類を求めることを妨げるものではない。
(例:休業命令が確認できる書類、出勤簿、賃金台帳、本人の本特例改定の申請内容への同意書など)


③ 受付期間等
本特例措置による届出については、本特例措置の趣旨等も踏まえるとともに、長期の遡及による保険料の賦課や給付の調整、給与事務の複雑化を防止する等の観点から、令和3年1月末までを受付期間とする。


(4)その他の運用上の留意点等

① 本人の同意
本特例措置による改定を行う場合は、被保険者の保険料額への影響のみならず、年金給付、傷病手当金及び出産手当金への影響も生じることを、被保険者本人が十分に理解した上で同意することが必要である。このため、被保険者に不利益が生じないよう、その内容につきあらかじめ本人の自署による同意を要するとともに、その同意書を適切に保存することが必要であることに特に留意すること。
なお、本人の同意書についての参考様式は、別紙3のとおりであること。


② 再度の特例措置の届出の取扱い
本特例措置による届出は、保険料の賦課や給付、給与事務の複雑化、不安定化等を防ぐため、同一の被保険者について複数回行うことや、届出後に急減月の選択等を変更すること等はできないので留意すること。


③ 急減月の取扱い
例えば、4月から休業が発生し、4月・5月ともに休業があった場合において、急減月を4月として届出があった場合には、4月分の報酬の総額を基礎としてその翌月(5月分)の保険料から反映する取扱いとなること。また、この場合において、急減月を5月として届出があった場合には、5月分の報酬の総額を基礎としてその翌月(6月分)の保険料から反映する取扱いとなることに留意すること。
なお、急減月は、実際に休業により報酬が著しく低下した月を意味していることから、例えば、休業が5月以降である場合には、急減月は、4月とはできず、5月以降で休業が実際に発生している月となることに留意すること。


④ 本特例措置による改定後の随時改定
本特例措置による改定後であっても、随時改定の対象となる場合は、従前のとおり、随時改定の届出が必要となることに留意すること(※)。
このため、休業状況が改善し随時改定の対象となる場合(例:休業手当の支給が通常給与に切り替わった場合など)(3か月経過後)には、従前のとおり、随時改定の手続により「被保険者報酬月額変更届」の提出が必要となることに留意すること。
(※)固定的賃金(日給等の単価変更を含む。)の変動を伴う場合であって、継続した3か月(報酬支払の基礎となった日数が17 日以上)に受けた報酬の総額を3で除して得た額が、本特例措置により改定された標準報酬月額に比べて、2等級以上変動した場合に届出が必要となる。


⑤ 7月分又は8月分から本特例措置による改定が行われた場合
本特例措置による改定を令和2年7月又は8月から受けた場合(9月の定時決定の対象とならない場合)にあっては、当該者について、当該休業が回復した月(注)から継続した3か月間(各月とも報酬支払の基礎となった日数が17 日以上)に受けた報酬の総額を3で除して得た額が、その者の標準報酬月額(本特例改定によるもの)に比べて2等級以上上昇した場合には、固定的賃金の変動の有無にかかわらず、通常の随時改定の手続の例により、速やかに、その内容を届け出なければならないことに留意すること。
(注)2の※5の(注)のとおり、休業が回復した月とは、報酬支払の基礎となった日が17 日以上ある状態(この場合の日数の算定においては、2の※2により、報酬が発生していないが報酬支払の基礎となった日として取り扱われる日は含まないものとする。)であることに留意すること。


⑥ 厚生年金保険との関係
健康保険と厚生年金保険の社会保険制度としての適用上の一体性を確保し、給与事務等の複雑化を防止する等の観点から、事業主からの申立書において、厚生年金保険についても同様の特例改定の手続を行う旨のチェック欄を設けているため、この点を確認し、チェックがない場合には、事業者に対し申立書を返戻した上で、日本年金機構に対しても一体的に手続きを行うよう求めること。]


⑦ 通常の随時改定及び定時決定における取扱いとの関係
本特例措置は、今般の新型コロナウイルス感染症による特別の状況等を踏まえ、通常の随時改定及び定時決定とは異なる別途の手続として、臨時特例的かつ限定的に設けたものである。このため、通常の随時改定及び定時決定には、本特例措置の内容が適用されるものではなく、引き続き、従前のとおり(※)となることに留意すること。
(※)一時帰休に伴い、就労していたならば受けられるであろう報酬よりも低額な休業手当等が支払われることとなった場合の標準報酬月額の決定及び改定については、本通知における特例的対応以外の取扱いは昭和36 年通知等によるものであること。


標準報酬月額の特例改定について(休業による社会保険料の減額) - 社会保険労務士川口正倫のブログ