社会保険労務士川口正倫のブログ

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雇用調整助成金の申請手続の更なる簡素化について

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雇用調整助成金の申請手続の更なる簡素化について

https://www.mhlw.go.jp/stf/press1401_202005061030.html


<助成額の算定方法の簡略化>

雇用調整助成金の助成額の算定方法について、次のような簡略化が図られるようです。
なお、詳細については後日公表されるようですが、注目すべきは、「実際に支払った休業手当額」×「助成率」=「助成額」であったとしても、一日休業一人当たりの助成額の上限8,330円が撤廃されるかどうかです。


1.小規模の事業主(概ね従業員20人以下)については、「実際の休業手当額」を用いて、助成額を算定できるようにする。
※ 「実際に支払った休業手当額」×「助成率」=「助成額」となる。

2.小規模の事業主以外の事業主についても、助成額を算定する際に用いる「平均賃金額」の算定方法を大幅に簡素化する。

(1) 「労働保険確定保険料申告書」だけでなく、「源泉所得税」の納付書を用いて1人当たり平均賃金を算定できることとする。
※ 源泉所得税の納付書における俸給、給料等の「支給額」及び「人員」の数を活用し、1人当たり平均賃金(「支給額」÷「人員」)を算出する。

(2) 「所定労働日数」を休業実施前の任意の1か月をもとに算定できることとする。


なお、現行の「平均賃金額」の算定方法の原則は次のような内容です。


   平均賃金額 = A÷B÷C

     A:労働保険料の算定基礎となる「年間賃金総額」
     B:前年度における「月平均被保険者数」
     C:前年度における「年間所定労働日数」(1人当たり)
※一人当たりの休業手当の算定の際に暦日数を用いた場合には、Bは365となります。
※現行では、Aは、労働保険の確定保険料申告書における「保険料算定基礎額」、Bは、同申告書における「雇用保険被保険者数」を用いることとしています。

AとBについては、例年年度更新の際に計算する数字ですのでそれほど難しくありません。また、Cについては人によって所定労働日数が異なる場合は、加重平均を取る必要がありますが、就業規則で定められた正社員の所定労働日数で、一日休業一人当たりの助成金額を試算してみて、上限8,330円に達するのであれば、問題ないと思います。パートタイマーやアルバイトは、正社員よりも所定労働日数が少ないのが一般的なため、加重平均して正確に所定労働日数を求めても、正社員の所定労働日数よりも少なくなるだけですので、結局、平均賃金額が高くなり、上限8,330円を超えることに変りはないからです。

なお、Aには賞与が含まれているため、必然的に平均賃金は実際よりも高く計算されますが、上限があるため、休業手当を100%、助成率が100%であったとしても、一日休業一人当たりの助成金額は8,330円を超えることはありません。


   一日休業一人当たりの助成金額=平均賃金×休業手当の支給率×助成率
※上限8,330円
※助成率は、大企業2/3・中小企業4/5(解雇をを伴わない場合は、大企業3/4・中小企業9/10)です。中小企業に対しては、ケースに応じて、これをさらに100%に拡充することも行われていますが、上限が8,330円とされているため、あまり実効性がありません。