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労働基準法の一部を改正する法律及び労働基準法施行規則等の一部を改正する省令の公布及び施行について(令2.4.1基発0401第27号)

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労働基準法の一部を改正する法律及び労働基準法施行規則等の一部を改正する省令の公布及び施行について(令2.4.1基発0401第27号)

https://www.mhlw.go.jp/content/000617994.pdf


労働基準法の一部を改正する法律(令和2年法律第13号。以下「改正法」という。)については、令和2年3月31日に公布されたところであるが、改正法による改正後の労働基準法昭和22年法律第49号。以下「新労基法」という。)並びに同日に公布された労働基準法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第76号。以下「改正省令」という。)による改正後の労働基準法施行規則昭和22年厚生省令第23号。以下「新労基則」という。)及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則(平成4年労働省令第26号。以下「新労働時間等設定改善則」という。)の内容等は以下のとおりであるので、これらの施行に遺漏なきを期されたい。


第1賃金請求権の消滅時効期間の延長等(新労基法第115条及び第143条第3項並びに改正法附則第2条第2項関係)

1.趣旨

改正法による改正前の労働基準法(以下「旧労基法」という。第115条では、労働者保護や取引安全等の観点から、賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権について2年間(退職手当については5年間)の消滅時効期間を定めていたところ、民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号。以下「民法一部改正法」という。)により、労働基準法第115条が設けられる際にその根拠となった使用人の給料等に関する短期消滅時効(1年間)が廃止されるとともに、一般債権に係る消滅時効については、①債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき、又は②権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年間行使しないときに時効によって消滅するとされたことを踏まえ、賃金請求権の消滅時効期間の見直し等を行ったものであること。

2.賃金請求権の消滅時効期間の延長(新労基法第115条関係)

賃金請求権の消滅時効期間について、民法一部改正法による使用人の給料を含めた短期消滅時効廃止後の契約上の債権の消滅時効期間とのバランスも踏まえ、5年とすること。なお、賃金請求権以外の請求権及び退職金の請求権については、現行の消滅時効期間(賃金請求権以外の請求権については2年、退職金の請求権については5年)を維持することとすること。

3.消滅時効の起算点の明確化(新労基法第115条関係)

賃金等請求権の消滅時効の起算点は、現行の労働基準法の解釈・運用を踏襲するため、客観的起算点である賃金支払日を維持し、これを労働基準法上明記すること。

4.経過措置(新労基法第143条第3項及び改正法附則第2条第2項関係)

賃金請求権について、直ちに長期間の消滅時効期間を定めることは、労使の関係を不安定化するおそれがあり、紛争の早期解決・未然防止という賃金請求権の消滅時効が果たす役割への影響等も踏まえて慎重に検討する必要があるため、当分の間、旧労基法第109条に規定する記録の保存期間に合わせて3年とすること。なお、退職手当の請求権の消滅時効期間については、
現行の消滅時効期間(5年)を維持することとすること。
また、賃金請求権の消滅時効期間の延長を行う新労基法第115条及び第143条第3項の規定については、賃金債権は大量かつ定期的に発生するものであり、その斉一的処理の要請も強いことから、改正法の施行期日以後に支払期日が到来する労働基準法の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権について適用することとすること。


第2労働者名簿等の記録の保存期間の延長等新労基法第109条及び第143条第1項並びに新労基則第17条第2項、第24条の2の2第3項第2号、第24条の2の3第3項第2号、第24条の2の4第2項、第24条の7、第34条の2第15項第4号、第56条及び第72条並びに新労働時間等設定改善則第2条及び附則第4条関係)

1.趣旨

労働者名簿や賃金台帳等の記録については、旧労基法第109条等において、紛争解決や監督上の必要から、その証拠を保存する意味で、3年間の保存義務が設けられていたところ、改正法及び改正省令において、当該趣旨を踏まえ、賃金請求権の消滅時効期間に合わせて記録の保存期間の延長を行うとともに、労働基準法第109条に規定する記録等の保存期間の起算日の明確化を行ったものであること。

2.記録の保存期間の延長(新労基法第109条並びに新労基則第17条第2項、第24条の2の2第3項第2号、第24条の2の3第3項第2号、第24条の2の4第2項、第24条の7及び第34条の2第15項第4号並びに新労働時間等設定改善則第2条関係)

労働基準法第109条に規定する記録の保存期間について、賃金請求権の消滅時効期間に合わせて5年とすること。
また、労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則において、労働基準法第109条を参考に保存期間を定めている各種記録等についても、保存期間を5年とすること。

3.記録の保存期間の起算日の明確化新労基則第56条関係)

改正法により、賃金請求権の消滅時効と記録の保存期間が同一となることを踏まえ、賃金請求権の消滅時効期間が満了するまでは、タイムカード等の必要な記録の保存がなされるよう、新労基法第109条に定める賃金台帳及び賃金その他労働関係に関する重要な書類の保存期間の起算日について、当該記録に基づく賃金の支払期日が新労基則第56条第1項第2号又は第5
号に掲げる起算日より遅い場合には、当該支払期日を起算日とすること。
また、労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則において、労働基準法第109条を参考に保存期間を定めている各種記録のうち、賃金請求権の行使に関係し得るものについても、同様の取扱いとすること。

4.経過措置新労基法第143条第1項、新労基則第72条及び新労働時間等設定改善則附則第4条関係)

上記2で延長することとした各種記録の保存期間については、新労基法の賃金請求権の消滅時効期間に合わせて当分の間3年とすること。


第3付加金の請求を行うことができる期間の延長(新労基法第114条及び第143条第2項並びに改正法附則第2条第1項関係)

1.趣旨

付加金は、割増賃金等の支払義務違反に対する一種の制裁として未払金の支払を確保することや私人による訴訟のもつ抑止力を強化する観点から設けられた制度であり、その請求を行うことができる期間は、旧労基法第114条において、賃金等請求権の消滅時効期間に合わせて2年と定められていたところ、改正法において、付加金の請求期間について、賃金請求権の消滅時効期間に合わせて請求を行うことができる期間の見直しを行ったものであること。

2.付加金の請求を行うことができる期間の延長(新労基法第114条関係)

付加金の請求を行うことができる期間は、賃金請求権の消滅時効期間に合わせて5年とすること。

3.経過措置(新労基法第143条第2項及び改正法附則第2条第1項関係)

付加金の請求を行うことができる期間は、新労基法の賃金請求権の消滅時効期間に合わせて当分の間3年とすること。
また、新労基法第114条及び第143条第2項の規定は、改正法の施行日以後に新労基法第114条に規定する違反がある場合における付加金の支払に係る請求について適用すること。


第4施行期日(改正法附則第1条及び改正省令附則関係)

改正法及び改正省令の施行期日は、民法一部改正法の施行の日である令和2年4月1日としたこと。


第5検討規定(改正法附則第3条関係)

政府は、改正法の施行後5年を経過した場合において、改正法による改正後の規定について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要がある認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするとしたこと。


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