社会保険労務士川口正倫のブログ

都内の社会保険労務士事務所に勤務する社会保険労務士のブログ



年金記録の訂正手続について

バナー
Kindle版 職場の出産・育児関係手続ガイドブック~令和の常識~
定価:800円で好評発売中!!


にほんブログ村
続き

年金記録の訂正手続について

年金記録の訂正手続のあらまし

年金記録が事実と異なると思われる方は、厚生労働省に対し、年金記録の訂正請求をすることができます。

訂正請求とは
年金に加入していた期間や保険料の納付状況など、国の年金記録が事実と異なると、将来受け取る年金額が少なくなってしまうことがあります。
そのため、年金記録が事実と異なると思われる方は、年金記録の訂正を国に請求することができ、これを年金記録の「訂正請求」といいます。

請求後の流れ
請求を受けた厚生労働省(地方厚生支局)は、関係する法人や行政機関などに対する調査や資料収集を行い、有識者で構成されている地方年金記録訂正審議会で審議します。
審議の結果、請求が認められるときは、年金記録を訂正する決定をします。既に年金を受け取っている方の場合は、訂正後の記録に基づいて年金額を変更します。

1.訂正ができる方

◆年金に加入している方(過去に加入していた方を含む)ご本人が行うことができます。
◆ご本人が亡くなっている場合は、ご遺族の方※が行うことができます。
※ご本人の死亡に伴う未支給年金または遺族年金等を受けることができる方に限られます。

2.訂正請求の対象となる期間

国民年金・厚生年金保険の被保険者であった期間
国民年金昭和36年4月1日以降、厚生年金保険は昭和17年6月1日以降が対象となります。
※賞与については、平成15年4月以降に支給されたものが対象となります。
◆厚生年金保険に統合された旧船員保険の被保険者期間、旧農林共済組合、旧三公社(JR、JT、NTT)共済組合の組合員期間
国民年金基金厚生年金基金の加入員となっている国民年金、厚生年金保険の被保険者の期間に
ついても、訂正請求の対象となります。この場合、基金の加入員記録も考慮して訂正の可否が判断されます。
※国家公務員共済組合(旧陸軍共済組合などを含む)と地方公務員共済組合の組合員期間、日本私立学校振興・共済事業団の加入者期間は訂正請求の対象となりません。なお、戦時中の軍などの無給嘱託期間については対象となる場合があります。

3.訂正請求の対象となる例

年金記録の訂正請求ができるのは、例えば以下のような場合です。
・A社で働いた期間、厚生年金保険の記録がない。
・B社で働いた期間、厚生年金保険に加入した日が就職日より後になっている。
・C社で働いた期間、厚生年金保険の資格を喪失した日が退職日より前になっている。
・D社で働いた期間、標準報酬月額が相違している。
・E社から支払われた賞与のうち、○年○月○日支払い分の記録がない。
・○年○月から△年△月までの期間、国民年金保険料を納付したはずなのに「未納」となっている。

◆訂正請求に期限はありません。年金記録が事実と異なると思われる方は、過去の記録であっても、厚生労働省に対して年金記録の訂正を請求することができます。
年金記録が事実と異なると思われる方は、お早めに年金事務所にご相談ください。

4.訂正請求に必要な書類

次の書類をお近くの年金事務所にお持ちいただくか、ご郵送ください。
 ① 年金記録訂正請求書
 ② 同意書
 ③ 請求の概要
※ 請求書類及び書類の記載方法についてはお近くの年金事務所にお問い合わせください。請求書類は日本年金機構のホームページからもダウンロードできます。
http:// https://www.nenkin.go.jp/service/nenkinkiroku/torikumi/tetsuduki/20150303.html
 ④ 請求内容に関する状況が分かる資料
  ・年金手帳
  ・国民年金手帳
  ・厚生年金保険被保険者証
  ・確定申告書(控)
  ・給与明細書
  ・家計簿
  ・源泉徴収票
  ・預貯金通帳
  ・勤務先の辞令/当時の履歴書
  ・厚生年金基金加入員証
  ・事業主や総務担当、同僚の方のお名前
  ・勤務実態を示す当時の写真 など

◆訂正請求の手続に手数料はかかりません。
年金事務所の所在地は日本年金機構のホームページをご覧ください。
全国の相談・手続き窓口|日本年金機構

5.訂正請求の留意点

厚生労働省(地方厚生支局長)は、請求内容について、様々な関連資料や周辺事情に基づき、訂正するかどうかを総合的に判断します。
訂正請求にあたっては、訂正を求める期間当時の年金の加入や保険料の納付状況などについて、関連資料を集め、できる限り思い出していただくとともに、証言等ができる方を教えていただくなど、的確な判断のためにご協力をお願いします。

関連資料の例
給与明細書、源泉徴収票、預貯金通帳、勤務先の辞令、賃金台帳、雇用保険の記録、厚生年金基金の記録など

周辺事情の例
事業主・総務担当・同僚の証言、ご本人・配偶者の保険料納付状況、納付方法など

証言等ができる方の例
当時の勤務状況、給与や賞与からの厚生年金保険料控除の有無、国民年金保険料の納付状況についてご記憶がある方など
※調査審議しても、年金への加入や保険料の納付(厚生年金保険は、給与・賞与からの保険料控除)などについて、記録訂正につながる関連資料や周辺事情が乏しい場合には、記録訂正が認められない場合があります。

訂正手続に関するQ&A

Q1 年金事務所で記録訂正できるのは、どのような場合ですか?
A:例えば次のような場合、地方厚生支局における審議を経ることなく、年金事務所で記録訂正できます。
◆賞与から厚生年金保険料が控除された給与明細書があるのに、年金記録の中に賞与の支払記録がない場合。
◆過去に転勤したとき、厚生年金保険料は引き続き控除されていたが、転勤の前後で被保険者資格が1か月途切れる事務誤りがあり、事業主もこの誤りを認めている場合。
◆勤務実態と厚生年金保険料の控除が確認できる給与明細書があるのに、被保険者資格を取得した記録がない場合。
※ 給与明細書に事業所名や支給年月の記載が無い場合や事業主または役員であった方からの請求の場合は、地方厚生支局での調査審議となります。
年金事務所での調査や確認には、1か月程度かかります。

Q2 地方厚生支局ではどのような調査を行いますか?
A:地方厚生支局は、請求内容について以下のような調査を行います。
◆資料の収集
市区町村、税務署、金融機関、厚生年金基金健康保険組合国民健康保険組合、事業主等から幅広く請求内容に係る関連資料及び周辺事情を収集します。
◆請求者等からの聴取
請求者や配偶者もしくは親族、事業主や請求者の同僚等の関係者から請求内容に関する保険料の納付や控除の状況、生活状況、勤務状況等について、聴取します。

Q3 地方年金記録訂正審議会とは何ですか?
A:地方年金記録訂正審議会は、訂正請求を国民の皆さまの立場で審議し、公平・公正な判断を行うために設置された、有識者(弁護士、社会保険労務士、税理士など)による会議です。
一つ一つの請求について、年金記録を訂正すべきかどうかを審議して判断します。

Q4 地方厚生支局長の決定は公平・公正なものとなりますか?
A:地方厚生支局長は、地方年金記録訂正審議会(Q3参照)での審議結果に基づいて訂正または不訂正の決定を行うこととなっており、これに反する決定をすることはありません。

Q5 訂正手続には、どのくらいの日数がかかりますか?
A:訂正を求める内容により調査・審議にかかる日数が異なりますが、訂正請求書を年金事務所に提出されてから地方厚生支局長が決定を行うまで5か月程度かかります。

Q6 年金記録の訂正が決定された後はどうなりますか?
A:地方厚生支局長の決定に基づき、日本年金機構年金記録の訂正を行い、将来受け取る年金額に反映されます。
既に年金を受け取っている方の場合は、訂正後の記録に基づいて年金額を変更し、さかのぼってお支払いします。ただし、年金記録が訂正されても、年金額に変動がない場合もあります。
※ 訂正後の年金記録に基づき、変更された額の年金をお受け取りになるまでには、地方厚生(支)局での訂正決定後、日本年金機構において数か月程度の処理期間が必要となります。

Q7 地方厚生支局長の決定に不服がある場合はどうすればいいですか?
A:地方厚生支局長の決定に不服がある場合は、行政不服審査法に基づき、決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、厚生労働大臣に対して審査請求をすることができます。
また、地方厚生支局長の決定の取消しを求める場合は、行政事件訴訟法に基づき、決定があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に、厚生労働大臣への審査請求を経ずに、直接裁判所に訴訟を提起することもできます。
※ 審査請求についての詳細は、こちらをご覧ください。
訂正手続に関するQ&A
行政不服審査制度については、総務省のホームページを参照ください。
総務省|行政手続|行政不服審査法

Q8 年金記録の訂正手続の実施機関が総務省(第三者委員会)から厚生労働省(地方厚生局)になって何が変わりましたか?
A:総務省(第三者委員会)は、年金記録問題に対処するため、平成19年6月、臨時に設けられた組織で、主に古い記録の訂正を求める「年金記録の確認申立て」の調査や審議が行われていました。しかし、比較的最近の記録の訂正を求める申立てが増えてきたことから、恒常的な記録の訂正手続を整備することが求められ、平成26年6月に法律を改正し、厚生労働省に新たに年金記録の訂正手続を設け、平成27年3月から手続ができるようになりました。
これにより、訂正請求が皆さまの権利として位置付けられ、訂正または不訂正の決定に不服があるときは、厚生労働大臣への審査請求や裁判所に訴訟提起をすることが可能になりました。
なお、弁護士、社会保険労務士、税理士などの有識者が国民の皆さまの立場に立って審議を行う点では、基本的に同じです。

f:id:sr-memorandum:20200216003132j:plain
f:id:sr-memorandum:20200216003224j:plain
f:id:sr-memorandum:20200216003333j:plain
f:id:sr-memorandum:20200216003420j:plain
f:id:sr-memorandum:20200216003507j:plain
f:id:sr-memorandum:20200216003550j:plain
f:id:sr-memorandum:20200216003631j:plain
f:id:sr-memorandum:20200216003716j:plain